あらすじ

過去の雪辱を晴らすため、

再び手作りのチョコを作る決心をしたルリはホウメイさんに師事しに行く事に。

一方、ルリの欠けたテンカワ家ではアキト君に貞操(と次いで生命)の危機が訪れていた。

果たしてルリの想いは届くのか?そしてアキトの命の行方は!?

そして本編の始まりへと、物語は移る……。






















明朝、ややげっそりとした感じのアキトは、ごそごそと何かをかばんに詰め込んでいた。

彼の名誉のために言っておけば、彼がげっそりと憔悴しているのは

彼は昨夜言い寄ってくるユリカ嬢を拒み続け、眠れぬ夜を過ごしたからである。


一時はチョコ免除という誘惑に負けかけたが……それでも彼は戦い抜いた

そこで受け入れてしまえば、次の日に待つ悪夢すら受け入れなければならないからと。




「冗談じゃない、ユリカのやつ……年々料理の腕が酷くなりやがって……

今度こそは命に関わるぞ……チョコなんかで死んでたまるか!なんとしても乗り切ってやる!」



アキトがごそごそとやっている後ろでは、ミスマルユリカがすやすやと眠りこけていた。

彼女もまた、アキトを襲い……もといアキトを手篭めに……

違う、アキトと甘い夜を過ごすため奮闘し、つい先ほど眠りについたばかりだった

そうそうの事では眠りから冷めることはないだろう。

時折聞こえる寝言に「アキト〜」とかが混じっているのは、少し罪悪感を感じるアキトだったが

自らの命の危機には代えられない、アキトはいま、生きる事に必死だった。


「……これで、よし……と」


そしてかばんがいっぱいになったところで、紙にペンを滑らせる。

ペンを置き、何かを書いた紙を机の上に見やすいように置き、立ち上がる。


「悪いなユリカ、俺はまだ、死ぬわけにはいかないんだ」


そしてまだ日が出切らないような早朝、アキトは家を出ていった。


置手紙にはでかでかと、こう書かれている



「料理の修業のため、旅に出る」













「な、なんで!?どうして!??アキト、かむばーーーっく!!!」



昼ごろ、日が完全に昇りきってから目を覚ました彼女は、近所中に響き渡る悲鳴をあげたのだった。














シルフェニア 150万HIT記念&ホワイトデー


機動戦艦ナデシコ


〜お手製チョコはビター味〜


後編










昼過ぎ、日も高くなった頃、普段なら客足もそろそろ途切れようかと思われる時間。

ホウメイさんが経営するレストラン『日々平穏』では、いつもと違った賑わいを見せていた。




「ルリ坊、3番テーブルのチャーハンあがりだよ!」

「はい、わかりました」


そこでは数人のウェイトレス(ホウメイガールズ)に紛れ、

輝く銀髪を揺らして料理を運ぶルリの姿。


ほぼ満席、更に最初の注文から2時間は経とうという客からも

更なる注文があるほどの盛況ぶり、その要因である。


客達(女性も含む)は彼女を間近で見んとし、胃袋の限界を超えて次々と注文を頼んでいるのだ。

だが、残念ながら多くの男性客の元へは彼女は来ることはない。

ホウメイさんのありがたい心遣いの賜物である。

かくして女性客の下へと料理を運ぶルリだったが、そこでの扱いもまた決していい物とは言えなかった。


「きゃー、かわいーー♪見てみてこの子すごい綺麗な肌ー♪」

「は、はぁ……ありがとうございます……」


騒ぎ、べたべたと髪やら肌に触れる女性客、ルリはそんな女性達に「ミナトさんに似てるかも……」

との感想を思いながら、接客していた。


もっとも男性客のほとんどは、目があからさまに尋常ではなく

ホウメイさんが安全を認める常連客以外のところにはルリは行かずにすんでいた。

もしも行ったならば、ホウメイさん含む従業員ならびに他の女性客により

1ヶ月の入院では済まされないほどの怪我を負う客がいたかもしれないだろう。




「ルリ坊、そろそろあがっていいよ」


限界を遥かに超えた男性客が、未練がましい視線と共にちらほらと店を去る頃

ホウメイさんは、忙しく働くルリに声をかける。


「あ、はい。それでは皆さんお先に失礼します」


ホウメイガールズ達に挨拶をしてから厨房に入っていくルリ。

残っていた客達は、それを見て残念そうにため息をつき

テーブルに残っている料理を見て、更に重いため息をついていた。



「ねぇマスター、あんな可愛い子いつ雇ったの? 私あの娘のためなら毎日食べに来ちゃおうかしら♪」


会計中の女性客の一人が、少しばかり危なめな視線でルリを見送る。


「ははっ、そうさねぇ……でも残念、あの娘はあたしの弟子のとこの看板娘さ」


とりあえず店の名前を出さずに流しておく。

なんとなくルリの身の危険を感じるホウメイさんであった。











コンコン


「ルリ坊、入るよ」


着替えを済まし……と言ってもエプロンを取っただけだが

宿泊の荷物をまとめていたルリは、ノックの音に手を止めた。


「あ、はい」


自分の家だというのに、わざわざノックをする辺り本当に人間の出来た人だな、とルリは思う。

確認を取り、ドアを開けたホウメイさんの手には、湯気の立つお皿。


「ほら、チキンライスでよかったかい?」


と、テーブルにチキンライスの乗った皿が置かれる。


「あ、すいませんホウメイさん、ありがとうございます」


時間もちょうど昼を少し越えた時間。

少しばかり空腹を感じていたルリはホウメイさんの好意に素直に甘えてテーブルに着いた。


どの道まだ家に帰っても誰も居ない、昼食は頂いていくつもりではあったので

日雇いバイトという事でホウメイさんから頂いた給金、そこから代金分を取り出す。


「ああ、そんなのしまいな、代金なんていらないよ」

「え、でも……」


「なに、今日はルリ坊のおかげで大盛況だったからね、お礼さ」

「……あ、ありがとうございます、いただきます」


そう言うと、ルリは頬を少しだけ赤く染めて、目の前のチキンライスに手をつけ始めた。


その様子になにやら満足したようなホウメイさんは

ちらりと、ルリのまとめていた荷物のうちの1つに視線を移す。

四角の、綺麗な包装を施された箱。

誰がどう見ても、贈り物にしか見えないであろうそれ。


それをルリがどんな想いを込めて作ったのか。

作る手伝いをするためとは言え、詳細を聞いた身としては

願わくば上手く行って欲しい物だ、それに個人的にもホウメイはルリを応援するつもりではあった。


(あのルリ坊がこんな良い顔が出来るようになったんだから……出来れば上手く行って欲しいもんだけど……)


「でもねぇ……ふぅ」

「もぐもぐ……?」


少しばかり愚鈍な我が弟子の事を想うと、ため息が漏れてしまうのだった。


















「……あれ?」


『日々平穏』から家に帰ったルリは、入り口のドアに、ふと違和感を感じていた。


「開いてる……?」


ついでに家の中からはゴトゴトと部屋を漁るような物音が聞こえる。

いまの時間、普段ならアキトはこの時間はまだ屋台の片付けをしている頃。


―――泥棒?


いやまさか、こんな隣人の住んでいるアパートで大きな音を立てる泥棒など居ないだろう。


恐らくは―――。


「アキト、今日はバレンタインだから早めに切り上げようよ」

「な……何言ってんだよ、そんな事出来るわけないだろ?」

「えーー!どうして!?いいじゃん、ねー!ねーねーねー!」

「あーもーうるさい!わかった、わかったよ、早めに切り上げればいいんだろ?」

「やったー!やっぱりアキトは私が好き!」


(ま、こんな感じかな……)


だとしたら、自分という邪魔者の居ない状況を好機と見て、スキンシップを図っている最中かもしれない。

自分とてそれくらいの事はわかっているつもりだ。


少しばかり、胸にモヤモヤした物を感じつつ。

念のため注意を払いながらゆっくりとドアをあける。

と、そこに居たのは想像していた光景―――ではなく。

部屋を引っ掻き回しながら巨大な愛用スーツケース―――ここに来た時に持ってきた物だ

それに衣類やらぬいぐるみやらを詰め込むユリカの姿があった。


「ユ、ユリカさん?何を―――」

「あ、ルリちゃんおかえり!!それよりごめんね、ユリカはアキトを探しに行かないといけないの!」

「え?」


「落ち着いたら連絡するから、とりあえずお父様の所にっ……と、行ってて!」


ぎゅうぎゅうに詰め込んだスーツケースの蓋を無理やり閉めると

ユリカは鏡の前に一瞬だけ立ち、にっこりと笑ってブイサインを作ってみせた。


「じゃ、行ってくるね!」

「え……?えっ!?ちょ、ユリカさん!?」


呼びかけ虚しく、口が開いたのはすでにユリカが飛び出していった後だった。


「……何?」


呆然と、まさに台風が去った後という表現が的確な惨状を見渡す。

がらんとした部屋。

元からアキトとルリは物を持たないほうだったため、部屋にある大半はユリカの私物だった。

それらがほとんど無くなったせいか、狭い筈の部屋が妙に広く見える。

なんでこんな事になっているのか、珍しく動転しているのか、ルリは状況が読めずにいた。


「……?」


ふと足元に、くしゃくしゃになった紙切れが落ちている事に気づいた。

何気なく、何かこの状況のヒントが残されているのでは無いかと思い、拾い上げる。


「えっと…………『料理の修業のため、旅に出る、場所は○○国○○都市、アキト』」




……料理の修行の旅?

……○○国?

……誰が?

……アキトさんが?




……突然のことで混乱しまくっているようだ。

とりあえず深呼吸して落ち着こう。



「ふう…………えええええっっ!!???



テンカワ家に、普段響く事のない悲鳴が高々と響き渡った。


















さて、夕方……ユリカが家を飛び出してから少しばかり経った頃。


ホウメイさんのレストラン『日々平穏』

いま、カウンターでホウメイさんと話をしているのは……


「だから、ルリ坊ならもう家に帰ったよ」

「そうっすか……あ、ルリちゃんがお世話になりました、ありがとうございます、ホウメイさん」


○○国へ行ったはずの、テンカワアキトその人であった。


「なーに言ってんだい、またいつでも来るようにルリ坊に言っておいておくれよ?」

「はいっ、じゃ、俺はこれで」




ホウメイは店を出て、駆けて行く青年の背を見つめ、一言呟いた。


「やれやれ、若いねぇ……ルリ坊も、あの子も……」












ルリは帰ってからずっと、呆然と思考を巡らせていた。

目の前のテーブルには、綺麗にラッピングされた四方形の箱と。

口を付けないままに冷え切ってしまった、気を落ち着かせるために出したお茶。




――――この先、いったいどうすればいいと言うのだろう。


ユリカの言うとおり、ミスマル家に戻ればいいのか。

ミスマルユリカの居ないミスマル家に。

……ミスマル家に戻る以外にも、いくつか候補となる行き先はある。

例えばミナトさんの所。

ミナトさんなら行く当ての無くなった私を引き取ってくれるかもしれない。

ミナトさんには迷惑かもしれないけど、暖かい家庭という点では申し分ない。


それにホウメイさんの所で住み込みで働かせてもらうという手もある。

ゆくゆくは料理人を目指して……なんていうのも悪くないかもしれないが却下。

そんなに甘い物ではないと思う、けど今日のように手伝い程度なら雇って貰えるかもしれない。


最悪の場合は、かなり気は進まないがネルガルかピースランド。

どっちも待遇は私的にはあまり良くないだろうけど、身の保障は万全だろう。


後者はともかく、先に挙げた2つは悪くはない。

それでもルリは湧き上がる苛立ちを抑えられなかった。


(なんでだろ……)


何故こんなにも苛立つのか。 自分は見捨てられたのだろうか。


(どうして……)


どうしてアキトはそんな遠い所まで行ったのか。 自分の事は忘れていたのだろうか。







すると玄関の鍵が開いた、ユリカさんでも帰ってきたのだろうかと、ルリは出迎えに行く。

もしかしたら、ユリカさんに捕まったアキトさんも居ないだろうかと、少しばかり希望的憶測も交えながら。

だがそこに居たのは―――


「ただいま」


―――あれ……?


「え?……あ、お、おかえりなさい……アキトさん……」


背中に巨大なリュックを背負った、少女の想い人1人であった。



「あ、あの……アキトさん?」


「え?なんだい?」

「あの、これ……○○国に行ったんじゃ……」


拾った時より更にくしゃくしゃになった―――

何かの間違いだと思いたくて、何度も読み直した紙を見せる。

問いかけた私は、多分唖然と―――間抜けた顔をしていたかもしれない。


「あっ、ご、ごめん!ルリちゃんには説明しとくつもりだったんだけど、すれ違いになっちゃったみたいで……」


曰く、ユリカを誤魔化す為の狂言だった。

ルリのほうはホウメイさんの店に直接行き、もう一晩泊めてもらうかどうかして

巻き込まないように配慮するつもりだった。

予想以上に早く帰ってきたもので、すれ違いになった、との事。


「ホントごめん!紛らわしい事しちゃって……」

「あ……い、いえ、私は大丈夫です、それよりユリカさんが……」


不思議な事に、先ほどまで沸き滾るように胸中を渦巻いていた苛立ちは、全くといっていいほどに消え去っていた。


「ん……? うわっ!?なんだこりゃ」


ユリカが散らかしていった部屋を見て、げんなりと言った感じで溜息をつく。


「……ユリカのやつ、本気で○○国まで行くつもりなのか……?」


「大丈夫だと思いますよ、ユリカさんそんなに手持ちのお金持ってませんから

ミスマルの小父さんに頼るなら、小父さんのほうで引き止めると思いますし」


「あ……そ、そっか」


冷静に考えればすぐわかる事だ。

先ほどまで思いつかなかったのが不思議なほど、この計画は穴だらけだった。

―――そもそも、首謀者のアキトが○○国に行くほどの貯えを持っていないのだから。



「ん……だったらそろそろユリカが帰ってくる頃か」


そう言い、降ろした荷物を再び担ぐ。


「また、どこかに行くんですか?」

「うん、命が惜しいから……ごめんね、ルリちゃん」


背を向けて、別れの台詞を紡ぐ―――まるで、映画の1シーンのよう。

よくわからない展開だけど、割と好都合だった。



「待ってください」

「ん……なんだい?」



「だったら、その前にこれを貰って行ってください」

「え……?」


そう言って、振り向いたアキトに箱を手渡す。


「チョコです」

「俺に……?いいの?ルリちゃん」

「アキトさんに作った物です」


「そ、そう……じゃあ貰うね、ありがとう」


バレンタインのチョコがトラウマにでもなっているのだろうか

少しばかり青ざめて渇いた笑みを浮かべながら、受け取った箱の包装を解く。


中から現れたのは、大きめなハート型のチョコレート。

少々露骨過ぎるような気もするのだけど

ホウメイさん曰く、この型しか無かったらしい……本当に無かったのだろうか。


それを取り出すと、恐る恐るそのままかぶりつくように口をつける。

割って食べなかったのは、ハート型だったからだろうか。

食べやすい形にしたほうが良かっただろうか。

などと、少々不安に思いながら見守る。


「…………」


鼓動が、強くなっているのがわかる。

口に合うだろうか?

喜んでくれるだろうか?


「あ……美味しい……」

「凄く美味しいよ、ルリちゃん」

「ほ、ホントですか?」

「いやいや!ホントだって!こんな美味しいチョコ貰ったの始めてだよ!本当にありがとうルリちゃん!」



「あ……そ、そうですか……良かった」


顔が熱くなって、思わず顔を背けてしまう。

それでも構わずに大絶賛のアキト、それを聴いたルリは、去年と同じような心の温かさを感じていた。



「いやもう、チョコと言えば何か危険な物が入ってるかそれ自体が危険物なのしか貰った事ないし

実際かなり美味しいってのもあるけど、感激モノだよこれ」



「え?何ですか?」

「い、いや、なんでもないよ、はははは……」



その時、玄関のドアがガチャリと開いた。


「ただいまぁ……」


「「!!!!!」」



そこに居たのは、予想通りミスマルの小父さんに引き止められたのか

納得のいかなそうな顔をしたミスマルユリカだった。


「あ……アキ……!!ああーーーーー!!!!!?」


ユリカの視線の先、そこには―――


「そ……そのチョコ……!!!!」


「あ、あのこれは……その……」


「ち、違うぞユリカ!」


むっ……。

何が違うというのだろうか。

少しばかり胸にもやもやしたモノを感じたが、いまは丸く収めるように努めたほうがいいだろうか。



「くっ……念を入れてアカツキにCCをもらっておいてよかったぜ、ジャンプ!!」


虹色の光に包まれるアキト。


次に現れたのは、家から出て数10メートル、ちょうどドアから見える場所だった。


「あ!!どこに行くのアキト!!待ちなさーい!!」


ユリカもそれを追い、ジャンプする。


その瞬間にはすでにアキトは100mほど先にジャンプしていた。

虹色の光をあちらこちらに撒き散らしながら、2人はそのまま遠くに消えていった。


長距離ではなく、わざと追ってこさせるような短い区間のジャンプ。

それは自分を巻き込まない為の配慮。

問題の後回しに過ぎない事はわかっているのだが、少しだけアキトのその優しさに浸っていた。



玄関から見渡せば、遠くで輝いては消える、幾つもの光。

ルリはその光景を見ながら、微笑みを浮かべ、あの懐かしい言葉を呟く


「くすっ……バカばっか」


―――そして今年もまた手元に残ったチョコ。

それを一口食べてみる。


「ん……おいしい……でも、やっぱりちょっと……苦いかな」


前回食べた物より遥かに上達したチョコレート。

来年、またあの人に渡すときが来たら、もっと美味しいのを作って、

またその次の年、その次の年、もっとおいしいチョコをあの人に贈ろう。

たとえ想いが実らなくても、あの人の笑顔だけで私は十分だから。


と、惚気た思考を巡らせていたルリだったが、ふとある事に気づく。


「……あ、これ……間接キス……」



ボボボン!!


一人真っ赤に染まったルリを残して、夜は更けていくのであった。







終わり。



































その後。


かくして、テンカワアキト対ミスマルユリカの鬼ごっこは、テンカワアキトの勝利に終わった。

何故ならテンカワアキトがその後も生きているからである(笑)

腕につけた万能時計が2月15日の零時を知らせるアラームを聞きながら

鬼ごっこの敗者であるミスマルユリカは口惜しさに肩を震わせていた。


「アキト……アキトの馬鹿ぁ…………ルリちゃんのは食べてたのに……っ」


ユリカにしてみれば、純粋な好意からアキトにチョコを渡そうとしていただけ。

要するに好意を踏みにじられた、被害者である。

もしアキトがチョコを食べ、万が一に死に至ったとしたなら。

それはミスマルユリカはテンカワアキト毒殺という立派な加害者であるが

それはそれとして、結果として現在ユリカは被害者である。


それにアキトにも非はある。

2月14日と言う日、その日のイベントとそれに伴うユリカの行動を

如何に日々忙しかったとは言え、何らかの対策は講じれたはずである。

例を挙げれば

『一から十まで完全に作り方を教え込む』や『何とか説き伏せて市販の物にしてもらう』等。

まあ前者については、これまでの経緯やユリカの強引な性格からして、試みようとして断念したのかもしれないが。

後者においても性格の件を持ち出せばそれもまた不可能な気もするが、まぁ他にも策はあるだろう。


加えてそれに伴う認識が当のミスマルユリカには全く無い。

それ故にユリカは純粋に悲しみ、14日当日に食べて貰えなかったという口惜しい思いで手作りのチョコを握り締めているのだ。


テンカワアキト本人がいまこの場に居たならば、その後自分に命の危険性があるとしても

アキトはユリカに謝り、チョコを食べていただろう。

しかし現在アキトは午前0時を越えた事など気づかずに逃亡を続けている。

追う側と追われる側では危機感という物にもそれなりに差が出る物なのだ。

かくしてしばしの間、落ち込みと口惜しさを堪えるようにじっとしていたユリカであったが

持ち前の前向きな思考と、少しばかりのアキトへの不満を込めて、明るく努めて独り言をぼやく。


「……あーあ、せっかくアキトのために頑張って作ったけど

バレンタインは過ぎちゃったし、アキトは居ないし、もう自分で食べちゃお」


少々やけくそ気味に丁重に施された包装を破き、少し……いや大分形の崩れた

恐らくはハートを目指しただろう形のチョコを取り出し、そのままかじる。


「あーん……もぐも………………!?!?!?!!!!!???☆×△□!?!?」


昨年、アキトが発した奇声を、若干上回るほどの奇声を上げ、ユリカはそのままの体勢で倒れこんだ。

そして運良く早期に通行人に発見され、急遽救急車で運ばれ、そのまま原因不明の意識不明状態が1週間続き。


目が覚めた時、ユリカはバレンタイン当日の記憶を無くしていた。

その後、曖昧な途切れ途切れの記憶とテンカワアキトによる証言により

バレンタインデーは幸せな記憶だった物として補完されたらしい。






本当に終わり。

















後悔という名の後書き



余りにも長引かせてしまったので話の筋を忘れているだろう

という事で、最初によくわからないあらすじを入れてみました(笑……えない)


前編を出してから、約1年と1ヶ月……

まさに1年越しの想いを描くという事を実践してしまう結果になってしまったわけですが(笑)

如何でしたでしょうか。


というか、前編を読んでくださっていた方、本当にすいませんでした。(汗)

まったく以って、締め切りを守らない人というのは嫌なものですね!(死




感想

雪夜さんのバレンタインSS完結編です♪

ふう何とかアキトさんの貞操は守られましたか。

最初に言う事はそれかい!!?

でも、今回はルリ嬢のチョコレートそのものも、そうだけどユリカの動きも面白いね。

アキトはただ逃げ回るのみ、まあ、こういった状況では当然だけど。

命の危機だしねぇ……

まあ、この時点で私が一歩リードと 言った所でしょうか。

この先徐々に歴史を塗り替えてあげます。

そして!

劇場版ではユリカさんだけ誘拐されて見捨てて終わりです!!

鬼かアンタわ(汗)

だって、正直綿その幸せになるパ ターンって何ですか?

ユリカさんを排除しない限り私に幸せは無いんです!!

ん〜っと、ハーリー君とかカイトとかサブロウタとかは?

まあ、人によってはそれが見たい人 もいるでしょう。

ですが!

アキトさん意外と恋仲になる可能性があるのはゲームくらいです!!

うあ、こりゃまたブッちゃけて……

幸せの形はそれぞれだからいいじゃん?

でも、結局SS書きの人たちもアキト×ルリは最大派閥なんですよ?

つまりアキトさんと私こそ真の物語の主人公とヒロインであると言っているんです。

コレが結ばれなくてどうしますか!!?

はははは……

しかしこれ、感想って言っていいのかね? 

押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


 
戻 る

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.