翌日の朝、起きてすぐまず昨日の洗い物を片付けてからまずはご飯を炊き、ジャガイモを茹でておく。
味噌汁を作り、茹でたジャガイモを使ってポテトサラダを作り、ご飯が炊けたら卵焼きを作る。
殆ど完成したところで双子が起きてきた。

「んぁ・・・おはよ、蒼真。」
「おはよー・・・。」

まだ寝ぼけ眼な二人に苦笑しながら

「おはよう、まずは顔を洗って来い。すぐ飯はできるから。」

そう声をかける。二人とも大人しく顔を洗いに行った。
遊星はまだ起きない。さすがに外傷が殆ど無いとはいえ事故の後だからな、もう少し休養がいるのだろう。
テーブルの上に卵焼きと味噌汁、ご飯とポテトサラダを並べておく。遊星の分も一応用意したがすぐには必要なさそうだな。

「いただきまーす!」
「いただきます。」
「俺も頂くか。」

三人揃って食事を始める。うん、悪くない出来だと思う。

「二人とも今日は何か予定あるのか?」

今日の行動を決めるために二人に予定を聞く。
返ってきた答えは

「今日は特に何も無いよー。」
「あの人が起きるまで出かけられないし。」

とのこと。確かに遊星一人置いて出てく訳にはいかないな。
食事が終わり俺が食器を片付けている間二人は遊星を見て

「このほっぺのなんだろ?」
「マーカーだよ、知らないの?」

と話を交わしていた。マーカーか、セキュリティに目を付けられているのは厄介だな・・・。
俺が片付け終わって少ししたら遊星が起きた。

「誰だ?」

当然の反応だな、見知らぬ奴がいるのだから警戒は当たり前だ。

「覚えてない?昨日下で倒れていたんだよ。」
「もっと正確に言うとD・ホイールで突っ込んできて倒れてたんだがな。」

龍亜の説明に俺が補足する。

「あ、俺は龍亜ってんだ。こっちは妹の龍可。俺達双子なんだ。」
「んで、俺は蒼真。一応二人の家庭教師なんてのをやってる。」

こちらを一瞥した後まずデッキを確認する遊星。その態度はどうなんだ?と思ったがいきなり仲良くなんて難しいだろうから気にはしない。

「なぁ、名前何て言うの?」
「遊星だ。」
「・・・遊星?もしかして不動遊星か?旧モーメントを開発した不動博士の息子の。」

話の切り出し方が多少怪しいかもしれないがそこを確認しておきたかった。人違いだったら冗談にならない。

「・・・あぁ、俺の父はモーメント開発に携わっていた。だが、何故父の事を・・・?」
「いや、ちょっとした事であの事故のことを知っていてな、気になっただけだ。他意は無い。」

不審がっているがそれ以上の追求はしてこなかった。
まぁ正直に答えたところで信じれるとは思えないがな・・・。

「・・・ここは?」
「俺等の家。ここらはトップスって言って、ネオ童実野シティで一番高いとこにあるんだ。」
「・・・トップスだったのか。」

「遊星ってデュエリストなんでしょ?」
「ああ。」
「俺もやるんだ。ねぇ、デュエルやらない?俺いろんな奴とデュエルしてみたいんだ!」

遊星と龍亜の間で会話が進んで行く。俺と龍可は

「龍亜って誰でもあんな調子なのか?」
「そうよ、いっつもデュエルデュエルって。うるさいんだから。」
「ははっ、どっちが上か分からなくなるな。」

苦笑しながら二人を見守る。

「せっかくライディングデュエルするのになー。」
「なぜそれを?」
「だってアレD・ホイールだろ?」

龍亜が言った一言で聞きたかったことを思い出した。

「そういえば遊星、あのD・ホイールは自作か?」
「ああ、そうだが・・・それが?」
「十分チューンされてるようだったからな。あそこまで行くと最初から作ったのかと思ってな。」
「分かるのか?」
「俺のも人から貰ったのを自分でカスタマイズした奴だからな。基本的なことぐらいは分かるさ。」

と二人で話を広げていると龍亜がフォーチュンカップの招待状を持ってきた。

「遊星、これ見てよこれ!キングとデュエルできるかもしれないよ?」

そう言い、招待状を開き中を見せた。

「デュエルオブフォーチュンカップ?」
「うん、海馬コーポレーションがランダムに選んだ人たちでトーナメントするんだって!」
「ランダムとはいえ勝手に決まった参加者を変えたら駄目だろう?」

龍亜を嗜め、遊星に謝る。

「悪いな、龍可が出たくないからって代わりを探してるんだよ。」
「いや、気にすることはない。」

そういい招待状を元の場所に投げ戻す。的確に戻ったな・・・すげぇな。

「ちぇー、やっぱり俺が龍可の真似して出るかぁ。」
「龍亜に私の真似無理だから。」
「無理じゃないもん!同じ顔してるじゃん!」
「同じ?どこが!」
「二人とも落ち着けって。」

ちょっと熱くなってきた二人を押さえつつ聞く。

「遊星、これからどうするんだ?さすがにいつまでもここに居てもらっちゃ困るぞ。」
「そうだな、匿ってくれた事には感謝する。だが、これ以上俺に関わらない方がいい。」

そういうと出て行こうとする。

「待って、出てくの!?」
「迷惑はかけられない。」

寂しそうに遊星を見る龍亜を見て、つい言葉が出る。

「今日すぐ出てくなんてそんなに急がなくてもいいだろ。いつまでも居ると困るとは言ったが身体もまだ万全じゃないだろうし、もう少しここに居ろ。」
「しかし・・・」
「ただ居るだけなのがいやなら龍亜の相手をしてくれ、デュエルできるだろ?」
「そうそう、デュエルしようぜ遊星!」

無邪気に跳ねる龍亜を見て遊星の顔が緩んだ、子供は見てて和むからな。

「分かった、やろう。」
「いいの!?やった!」

そういって二人とも外に出て行く。

「龍可は行かないのか?」
「遊星って悪い人じゃないみたいだし龍亜一人で平気だと思うわ、それにお昼ご飯の用意しなきゃでしょ?」

たしかに後1時間ほどで昼飯時だ。だけどその前に買出しに行こうと思ってたんだよな。
ご飯とパンしか主食がないんじゃ、他のが無いとパターンに飽きるだろうから。

「確かにな、でもまずは買出しからだ。何か必要な物があるなら買ってくるが無いか?」

昨日と同じくついでの買い物が無いか聞いておく。すると、

「特には無いけど・・・買い物についていって良い?」
「ん、そりゃまた何でだ?」
「どんなとこで何を買うのか私も知りたくて・・・」

とのこと。特に断る理由も無いので一緒にお買い物に行く事になりました。
俺のD・ホイールは一般的な物より大きめだから二人乗れない事はないが、危ないしセキュリティに厄介になりたくも無いので歩いていく事に。

「へぇー、色々売ってるのねー。」
「まぁここいらは街の中心だからね、必然的に多くの店が集まってくるから品もどんどん増えてくのさ。」

龍可は見慣れない光景なのか、好奇心に満ちた感じで周りを眺めている。
意外と人が多かったのではぐれないように手を繋ぎながら進んで行く。

「で、今日は何を買うつもりなの?」
「今回買うのはまぁ・・・麺類かな。」

乾麺よりかは生麺のがいいかなーなんて考えながら商品を見て行く。
蕎麦にうどん、パスタにラーメン。麺と言ったらここらへんかなと思い見ていくが決まらない。
正直な所自分自身は何でもいいのだから決まりようが無い。
食べる側の一人である龍可に聞いてみることにした。

「なあ、龍可は何が良いと思う?」
「え、うーん・・・どれがいいかなぁ?」

二人して悩んでしまう。
こうなったら埒があかないと思い

「じゃあ、龍可の好きなのはどれ?」
「えーっと・・・パスタかな。」
「じゃパスタを買おう、決定。」

とまぁ適当に決まった。ソースはとりあえずミートソースを買った。
帰り道を歩いていると、龍可が話しかけてきた。

「ねぇ、私の好みで良かったのかな?龍亜も好きだったから龍亜はいいとして、蒼真も遊星も他のが良かったりしたんじゃ・・・」
「いや、そんなに気にしなくていいよ。俺もパスタは嫌いじゃないし。」

そんなことを気にしてたのかと思うと苦笑がこぼれる。
子供はもっと自由でいい。食べ物くらい好きなのでいいさ。

「人の事ばっかり気にしてないでもっと自分の好きなようにしても良いと思うぞ?龍可は。」
「そう・・・かな。」

それでも納得しきれないのか歯切れの悪い回答が返ってきた。
龍可は周りに気を使いすぎてるなぁ、龍亜にはずっと一緒に育ってきたからと思うが遠慮が無いけど・・・。

「ま、すぐに変われなんて言わないけどさ。俺には遠慮せずにもっと言いたい事言って良いんだぞ。大半の我が侭は受け付けてる。」
「・・・どうして?」

どうしてそんなに優しくしてくれるのかという問いなんだろう。
家庭教師だからなんて当たり前のセリフが出そうになるのを飲み込む。
仕事だからってここまで親身になれる人間はそうは居ない。
特に朝霧蒼真という人間はそんな理由で親身になれない。
だから本当にあった事を、思うままに話す。問いの答えとなる事を。

「俺は昔さ、本当に一人だったんだ。家族も無くて友人も無くて知ってる人すら居なくて。」
「え・・・?」

龍可の驚きに彩られた声と表情。
普通に考えて悲惨な過去なんだろう、自分でも冷静に考えればそう思う。

「何で一人だったのかも良く覚えていない。それでも、俺を拾ってくれた人が居たんだ。」

思い出す。共に過ごした日々を。育ててくれた恩義を。託された夢を。

「だからさ、孤独で潰されそうな子は見逃せないんだ。昔の自分を見ているようで。」

自分の見当違いかもしれない。龍亜だって居るし、精霊だって居るらしい。孤独ではなく他の要因かもしれない。
それでも、潰れて欲しくない。希望を持って欲しい。自分が力になるだけで少しでも楽になってくれるなら。

「自分を救ってくれたあの人のようになりたいだけかもしれない。でも、助けたいって気持ちに嘘は無い。」
「蒼真・・・」
「だからさ、もうちょっと頼りにしてくれても良いぜ?出会って数日じゃ難しいかもしれないけど、これから少しづつでいいから・・・な?」
「・・・うん。」

泣きそうになる龍可を宥めながら帰宅。帰ってすぐ涙目の龍可を見て龍亜に問い詰められたのは言うまでも無い。




後書き

まず前回の後書きが二重になってしまったこと。これは自分のちょっとした思い違いのせいでなってしまったことで、管理人さんにも無駄な手間を割かせてしまい失礼しました。
見てる人も何で二重に後書きが?と思ったでしょう。単なるミスです。すみませんでした。

謝罪から始まると言うのは凄く書きづらいものがあるなぁ・・・と思いつつ(苦笑
見て気付いたかもしれませんが今回から会話に移行するときは間を空けてあります。
見やすくなるかと思い試しにやってみましたがどうなんだろう・・・。
試行錯誤しながらやっていくので当分書き方が安定しないと思います。

最後の主人公の昔語りについてですが、最初考えていた話から大分剥離していって気付いたら修正不能になっていたと言う(汗
主人公のキャラが不安定すぎる・・・こんな感じだったっけこいつ?状態です。

最後に、ここからの更新ペースは週1くらいを目安に頑張っていきます。
時間が取れた週は2回くらい・・・と言いたいんですがモチベーションの問題もあるんで週1を目標に頑張っていきます。



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