「じゃ、おやすみー。」
「お休みなさい。」
「あぁ、お休み。」
「お休み。」

双子が挨拶をして自分の部屋に戻っていく。
さて・・・どうするかな。

「なぁ、遊星。」
「なんだ?」
「お前さ、今晩にでも出て行くつもりだろ。」

双子を意識して声を抑えて喋る。
遊星は少し驚いたようだがすぐに元の表情に戻り

「あぁ、やはり俺は迷惑をかけるだけだからな。」

と答えた。止める気は無いがどうするかな・・・。

「お前、ここを出てどこか行くアテはあるのか?」
「雑賀という奴の力を借りようと思う、前にも助けられたからな。」

一応アテはあるのか・・・ふむ・・・

「よし、その雑賀って男に俺も会わせてくれ。」
「・・・何故だ?」
「いや、せめて連絡だけでも取れるようにしないとあの二人に俺が怒られるんだよ。」

笑いながら言う。遊星からあまり目を離したくないのもあるがこれも本音だ。
いきなり音信不通では二人も悲しいし寂しいだろう。
遊星はしばらく悩んでいたようだが

「分かった、一緒に行こうか。」

承諾してくれた。
二人でエレベーターを使い一階まで降りて行く。

「そういや、夕食の後何してたんだ?少しの間見当たらなかったんだが。」
「あぁ・・・あの双子のデュエルディスクを使いやすいように調節していた。せめてものお礼だ。」
「そうか、二人とも喜ぶぜ。」

雑談を交わしている間に一階に到着。先に俺が降りて周りを確認する。

「大丈夫だ、誰も居ない。」

遊星も出てきて二人ともD・ホイールに乗り込む。

「そういえばその雑賀って男、どこに居るのか分かるのか?」
「一応住んでる所は知っている、まずはそこへ向かおうと思う。」
「オッケー。道案内頼んだぜ?」
「分かった。」

遊星が先導し走り出す。
トップスを出て少ししたあたりでセキュリティのD・ホイールがいきなり飛び出てきた。

「待ってたぜくず野郎!」
「くっ・・・!」
「・・・セキュリティか。」

通行を阻むかのように横にD・ホイールを停めている。
こちらも止まらざるを得ない。

「そろそろ観念してもらおうか?」
「・・・逃げるぞ!」
「やっぱりそうなるか!?」

遊星の動きに合わせて動こうとする。
と、後ろに停まっていた無人かと思っていた車のライトがいきなり点いた。明かりに驚き皆の動きが一時的に止まる。

「な、なんだ!?」
「・・・っ!」
「どういうことだ?」

三人とも戸惑っていると車から男が一人降りてきた。
男は悠然とした歩みでこちらに向かってくる。

「捜査官君、この男の身柄はしばし治安維持局に預けてくれないかな?」
「治安維持局?」
「特別調査室長イェーガーと申します。」

しばらく聞きに徹していたが要するに遊星にフォーチュンカップに出ろと言う事か。

「それでは失礼します。イーッヒッヒッヒ。」

何だその笑い声・・・と突っ込みを入れる暇も無くイェーガーを乗せ車は走り出す。
俺が唖然としていると

「命拾いしたなくず野郎!」

と吐き捨てセキリュティの男は去っていった。
遊星は男を見る事も無く手元の招待状と写真を見ていた。

「とりあえず、雑賀という男の所へ行くぞ。ここに居ても仕方が無い。」
「・・・あぁ。」
「いや、大丈夫だ。ここにいるからな。」

いきなり第三者の言葉が飛んできたことに驚き、すぐに声の主を向く。
建物の影から男が出てきた。こいつが雑賀か?

「雑賀!無事だったか。」
「お前こそな。よく逃げおおせたな。」

二人が再会の挨拶を交わす。

「あんたが雑賀か、いたなら助け舟を出してくれよ。」

と俺が横槍を入れる。雑賀は怪訝そうに

「お前は誰だ?」

と質問してくる。直接面識が無いのに名前を呼ばれればそら怪しむわな。

「あぁ、こいつは蒼真。少しの間俺を泊めてくれたんだ。」
「まぁそんな感じだ。んで、何で隠れてたんだ?助けてくれたって良いじゃないか。」

遊星に紹介され、気になっている質問を返す。

「あの場で俺が関わったら話がこじれるだけだ。だから終わるまで待っていたんだが・・・やっかいなことになったらしいな。」

暗い表情を浮かべる遊星を見て言う。確かに中々笑えない状況になってきた。
聞いた限りでは遊星の親しい奴らが人質になったも同然だ。
さすがにそれだと遊星は動かざるをえない。

「・・・とりあえず移動しよう、こんな所じゃ落ち着いて話も出来ない。」
「あぁ・・・蒼真はどうする?」
「んー、俺は連絡さえ取れるようになればそれでいいからな。雑賀、お前たちに連絡を取るときにはどうすればいい?」
「連絡が取りたいだけならここに電話してきてくれ。」

そういって渡される一枚のメモ。それを受け取り、車体の向きを変える。

「サンキュ、じゃあ俺は帰るわ。二人が起きたとき俺まで居なかったら大騒ぎだからな。」
「あぁ、二人によろしく伝えてくれ。」
「わかった、それじゃあな。」

別れの挨拶を交わしD・ホイールを走らせる。

「さて、それじゃあ俺達も引き上げるぞ遊星。」
「分かった。」

二人もD・ホイールを走らせて去る。空は既に少し明るさが出てきていた。
翌朝、二人が起きてくるのを待ちながら朝食を作る。
ちなみに寝てない。寝たら起きれなさそうだったから。
と、龍亜が先に起きてきたみたいだ。

「おはよー蒼真、遊星は?」
「おはよう龍亜。残念ながら遊星は居ないぞ、昨日の夜出て行った。」

答えながらハムを焼く。むぅ、卵は昨日と被るから他に何を作るか。

「え!?何でだよ?そんな事一言も言ってなかったじゃないか!」
「あいつにもあいつの理由があるんだよ、許してやれ。」

そうだな、サンドウィッチにするのもありか。そう思いパンを用意する。

「でも・・・でもぉ!」
「そんな事より机の上に龍亜のディスクが置いてあるぞ、遊星が改良してくれたらしい。」

ん?卵サンドを作るってことは結局卵使うか・・・でもそれ以外だけなると少し寂しくなるな。
和と洋の違いがあるからいいか、うん。

「え、ほんと?うおお、俺のディスクが軽くなってる!」
「朝から騒がしいよ龍亜〜・・・おはよ、蒼真。」
「おはよう龍可。今日の朝食はサンドウィッチだ。ついでに遊星は出て行った。」

パンに具を挟みながら龍可に挨拶する。
ハムに卵にレタスに・・・後はチーズとかか?

「やっぱり出て行っちゃったんだ遊星・・・。」
「あいつが決めたんだ、止めても無駄だったろう。」

朝食のサンドウィッチが完成し、食事を始めようと思った時コールがかかってきた。
龍亜が出るようなので無視して二人の分を分ける。

「おはよー龍亜!」
「おー天兵!早いな!」

二人の話を聞きながら朝食を並べ終える。
黒薔薇の魔女か・・・今俺が関わらずとも遊星と連絡が取り合えていれば必ず会えるだろう。
それより今は・・・やっぱり参加したほうが早いか。その方が色々な事が確実になる。


「遊星の事は秘密よ!」
「うん、分かった・・・。」

気付けば通話は終わっており二人は難しい顔をしていた。

「俺、また遊星に会いたいなぁ・・・。」
「会えると思うぞ?そう遠くない内に。」

そう言いつつ座って食事を始める。卵サンドは至高だな、うん。

「え?蒼真、どういうこと?」
「遊星に会えるの?」

二人とも俺に詰め寄ってくる。思わずたじろぎながら

「あ、あぁ。会えるはずだ、俺の考えが間違ってなければ。」

そう答えると口を揃えて

「「どういうこと!?」」

と聞いてきた。うん、いいシンクロ。

「遊星はフォーチュンカップに参加するはずだからな。そこに行けばまず間違いなく会えるさ。」

「何で遊星がフォーチュンカップに?」
「招待された感じはしなかったけどどうして?」

矢継ぎ早に飛んでくる質問。苦笑しながら

「とりあえず朝食を食え。話は朝食が終わってからでいいだろう?」

と朝食を薦める。二人ともお腹はちゃんと空いているようで、大人しく席に座って食べ始めた。
三人とも食べ終わって話を再開。

「状況を簡単に説明するとだな、昨日遊星を見送っているときに治安維持局の人にあったんだ。」
「治安維持局・・・遊星捕まったの!?」
「いや、捕まりはしなかった。だがなぜかその時遊星はフォーチュンカップの招待状を手渡されたんだ。」
「え・・・何で?」
「分からない、だが参加することは間違いなさそうだ。」
「そっかー、遊星フォーチュンカップに出るのか・・・」

さすがに脅迫されているなんて二人に言えるわけが無い。
参加する事について追求されなかったことに安堵を覚えながら次の話を切り出す。

「で、龍可に頼みがあるんだ。」
「私?何?」
「フォーチュンカップへの招待状。あれを俺に譲ってくれないか?」

まずは状況に関わる所からだ。見てるだけでもある程度のことは分かるだろう。
だが、もっと詳しい状況まで理解しておかないと後々困るかも知れないからな。

「いいけど・・・どうして?参加しないって言ってなかったっけ?」
「どうにも分からない事が多くてな、遊星が招待状を貰ったのも気になるが治安維持局に見逃された理由も分からない。少しでも理解するために問題の中心に近づきたいのさ。」
「別にいいわよ。元々私は出る気無かったし。」

よし、問題は解決した。
大会までにデッキの調節をちゃんとしておかないとな。

「遊星と蒼真が大会にでるのかー、絶対見ないとなこれは!」

一人興奮している龍亜。二人とも遊星に会いたがっているし大会には連れて行くか。
言わなくても来てそうだがな・・・。

「そういや龍亜、さっきの友達はいいのか?」
「あ、そうだ!早く出かける準備しないと!」

そう言うと急いで支度を始める。忙しいなぁ。

「龍可は行かないのか?」
「私は行かない。魔女とかあんまり興味無いし。」

なるほどね。俺も興味無いし行かなくていいかな。
友達も居るみたいだし大丈夫だろう。

「じゃあ俺もう行って来るよ!」
「もう行くの?お昼ご飯どうするのー?」
「あ、どうしよう・・・何も考えてなかった。」

行き当たりばったりすぎるだろ・・・もうちょっと考えて動いてくれよ。

「仕方ないな、少し待ってくれるなら弁当作ってやるぞ?」
「いいの?」
「いいも何も昼飯の当てが無いんだろ?ちゃんと食わないと駄目だからな。」

そう言って弁当を作り始める。
鳥のから揚げとフライドポテト・・・後野菜は何がいいかな。
ほうれん草のゴマ和えでいいか。時間もそんなにかからないし。

「私も手伝おうか?」
「ん、助かる。ジャガイモ切ってあるだろ?それ揚げてくれ。」

龍可にも手伝ってもらいさくさくと製作を進める。
味をしみこませ小麦粉をつけた鶏肉を揚げながらとなりでは龍可がポテトを揚げてる。
全部を15分程で作り終え、弁当に詰めて龍亜に渡す。

「ほら。落としたりするなよ?」
「ありがとー、大丈夫だから!行ってきまーす!」
「気を付けてなー。」
「行ってらっしゃい。」

龍亜を見送り龍可と一緒にソファでのんびりくつろぐ。

「しかし龍亜が居ないと一気にやる事無いな。」
「うーん、普段もやる事は無いからいつも通りといえばいつも通りなんだけどね。」

二人でのんびりと雑談を交わす。しばらく話してると寝ていないせいか眠気が酷くなってきた。

「蒼真?大丈夫?」
「ん・・・あぁ、悪い。眠くてな。」
「無理せずに寝てもいいよ?」

確かに起きてる理由も無いしな、寝るかな・・・。

「じゃあ悪いけど寝るわ、お休み・・・。」

自分で思っていたより限界が近かったのかそのまま寄り掛かって寝てしまった。
隣に居た龍可に寄り掛かって、だ。

「ちょ、ちょっと蒼真!?」

驚いてる龍可の声が聞こえるがもう・・・駄目だ。眠い・・・。

「・・・もう、仕方ないんだから。」
「・・・スー・・・クー・・・」
「さすがにずっとこの状態だと辛いから・・・よいしょっと。」

肩に寄り掛かっていた蒼真の頭を膝の上に置く。
蒼真の寝顔を見て笑いながらのんびり時間が過ぎて行った。




感想

今回は遊星と蒼真のフォーチュンカップへの参加、龍可と蒼真の日常って感じですかね。
ちなみに作者も卵サンド好きですよ、蒼真と一緒で。まぁどうでもいいですけどね。

そろそろデュエルしろよと言われてもおかしくない頃合。
というか作者自身もデュエルが書きたくて仕方が無い。
驚くほど長い日常。フォーチュンカップさえ始まれば連戦できるのに・・・!
というか細かい所突っ込みすぎなんですね。そのせいで長引いてるのかな?
もう少し効率よく書ける様になりたいですね。

次回こそフォーチュンカップ。最初の龍亜の変装する件が無くなって短くなると・・・思いますがどうなんだろう。
第一回戦まで入れるつもりですが・・・ここが難しい。蒼真が代わりに出場するからトーナメント組み合わせ変えるか否かが。
どっちにせよ間違いなく次回はデュエルします。誰かと蒼真のデュエルでフォーチュンカップは始まる予定なので。



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