コードギアス 共犯のアキト
第十六話「荒ぶる騎士達」
「ハァ……ハァ……」
動悸が早い。
疲労の蓄積と度重なるダメージで足元もふらつく。
それでも視線は眼前の敵から目を離さない。
離したら最後、敵の牙は己の喉笛に即座に喰らいつき、抵抗する間もなく噛み千切ってしまうだろう。
せめて一太刀でも浴びせてみせる。
そう覚悟を決めて、カレンは半身で左手のナイフを構えた。
そして相手もこちらが構えを取ったのを見て、一気に間合いを詰めてきた。
「ハアァッ!!」
一撃、二撃、三撃。
カレンがこれまで行ってきた喧嘩拳法とは、比べようも無いほど鋭さを増したナイフによる連続突きを繰出す。
しかし相手はそれを容易く捌くと、瞬時に左側――カレンの後ろへと回りこんだ。
だがそれはカレンも予測済み。
足の軸を入れ替えて容赦の無い後ろ回し蹴りを叩き込むが――
「甘い」
足を払われてバランスを崩したと思うと、次の瞬間上から強力な衝撃が加えられて、カレンの華奢な体は地に伏した。
即座に立ち上がろうとするも、気付けば喉元にはナイフの切っ先が突きつけられている。
鈍く光るナイフを見てカレンは悔しそうに顔を歪め、あきらめたように言葉を発した。
「……参りました」
その言葉を聞いて、組み手の相手を務めた黒騎士――テンカワ・アキトはすっと身を引いた。
カレンは若干残る痛みに顔を歪めながらも直立に立ち、アキトの前で姿勢を正す。
「あれほどの近距離で回り込まれた状態で足技や手技は危険だ。格下相手ならともかく、熟練相手には通用しない。ああいう時は体全体を使って相手を押し出すか、素直に距離を取るべきだったな」
「ハイ……」
「だがその前の突きと足捌きは見事だった。基礎も大分固まってきている。これからも訓練を怠らないようにな」
「ハ、ハイッ!!」
目を輝かせながら嬉しそうに頷くカレン。
アキトはそんな弟子の様子に苦笑しながら後ろに向き直ると、胴着を着た地に伏せる屍達に声をかけた。
「今日の格闘訓練はこれで終わりにする。各自明日に備えるように」
「「「「「「「あ……ありがとう…ございました」」」」」」」「ありがとうございましたっ!!!」
唯一人、カレンだけが元気な返答をするが、残った者達は憔悴したようなくぐもった返事を返すだけで精一杯だった。
そうして黒の騎士団の訓練の一つである『黒騎士師範の格闘教室』は終わりを迎えるのだった。
「吉田、お前何回吐いた……?」
「そんなの数える余裕もねぇよ……」
「それでも数日前に比べりゃ大分マシになってきたけどな」
黒の騎士団が発足し、ようやく慣例化してきた戦闘訓練後にこうして飯が食えるようになっただけでも随分と進歩したものだ。始まった時にはそれこそ飯が喉を通らなかったのだから。
長机が並べられた倉庫内の食堂スペースで、訓練を終えたばかりの吉田と木下がぐちりながらも飯をかきこんでいる。
メニューはブリタニア軍の横流し品であるレーションだが、空腹はなによりの調味料となるし、以前のカップ麺すらごちそうであったレジスタンス時代を考えれば、随分と改善したものである。
「でもまぁ、扇に比べたらまだマシだよな……」
「あぁ、そうだな……」
そうやってチラと横目で扇の様子を伺う吉田と木下。
視線の先にはテーブルの上にまるで死体のように突っ伏した扇の姿があった。
「黒騎士の格闘訓練だけじゃなくて、ゼロ直々に戦術理論や作戦指揮の勉強までさせられてるそうだ」
「そりゃああんなゾンビみたいになるのも仕方ないぜ」
元紅月グループのリーダーとしてメンバーをまとめていた扇は、ゼロに副団長のような扱いを受けている。
扇は自分よりも黒騎士がふさわしいのではないかと最初はそれを拒否していたが、黒騎士はあくまで戦闘部隊のリーダーとして働いてもらうと明言しており、黒騎士もそれに同意していた。また、他のメンバーの同調の声もあって仕方なしにそれを承諾したのである。
そして彼にもたらされたのは、ゼロと黒騎士による過剰なまでの教育だった。
戦闘訓練はもとより行軍訓練、武器の分解・整備や、ゼロ直々の戦術・戦略指南や指揮官としての心構え等々……それこそ正規軍隊の士官生なみの教育内容をこの短期間で徹底的に詰め込まれているのだ。
ゼロが言うには、人の生死を左右する指揮官を務めるからにはこれくらいのことはこなして貰わなければならん、との事。
その言葉には確かな説得力があるため、他のメンバー達は心の中で扇に対して精一杯の応援をするしかなかった。
「でも団を運営するその他の雑務なんかは、ほとんどゼロがやってるわよ」
二人の会話に割り込んだのは、カレンの姉貴分的存在でもある井上だった。
後ろには不機嫌顔を隠そうともしない玉城の姿もある。
「あたしも新人の教育とかやらされてるけど、カリキュラムなんかはほとんどゼロが作ったものだし、物資の調達先とかもほとんどがゼロのコネクションで得てるのよ? 正直彼の手腕は認めざるを得ないわ」
此処最近増加した黒の騎士団の入団希望者については井上と玉城が担当し、黒騎士がそれを補佐している。
新人教育など少数人数ならばともかく、50人以上の人数相手にどうすればいいのか途方にくれていた井上だったが、ゼロから渡された教育プログラムはそんな彼女の悩みを容易く打ち消してくれた。
効率的かつ効果的と思われる各種座学や、黒騎士直々の軍事教練は素人同然だったレジスタンスを、即席ながらも立派な兵士に変貌させてくれるもので、ここ数週間の間に自身も随分と成長したと実感している。
同時にここまでの組織を独力で纏め上げたゼロの手腕に驚嘆を覚えてもいた。
当初は新人教育を玉城にも任せることに不安を感じていたが、思っていたよりも面倒見が良くて井上他、元紅月グループの面々も驚いていた。
「つーかよ、体力作るためにトレーニングする意味は分かるけどよ、格闘訓練なんて意味あるのかよ!?」
尤も調子に乗ったり、直ぐに毒付く所はかわっていないが。
玉城は乱暴にレーションをかき込みながら、苛烈とも言える黒騎士の教練にぶちぶちと文句を言い連ねている。
「俺達が使うのはナイトメアだぞ!? 格闘訓練とかよりも射撃訓練とかシミュレータの訓練とかの方がぜってーいいと思わねえか!?」
「――確かにそれには一理あるな」
後ろから発せられた声にピタリと箸を止め、冷や汗と共にゆっくりと後ろを振り向く玉城。
そこには、最早馴染みつつある黒いバイザーと同じ色のマントを纏った黒騎士の姿があった。
「く……黒騎士」
「だが、戦場ではナイトメアだけが戦力ではない。歩兵の存在を甘く見ていると痛い目に会うぞ」
それに尤もなことだと井上らは同意するように首を縦に振った。
例え戦車やナイトメアを倒しても、施設の制圧や陣地の確保などには歩兵が使われる。そうなると銃器の撃ち合いだけではなく、歩兵同士の接近戦も起こり得る場合がある。
その時になって格闘技能があるかどうかで生死を決めるのだから、貴重な兵士の命を失わないためにも格闘訓練はあってしかるべきであろう。なにより効率的な体の使い方というのも、兵士にとっては糧になることは間違いない。
「それにこの格闘訓練はナイトメアライダーとしても、十分価値のあるものだ」
「あ? どういうことだよそりゃ」
「いずれ分かるときが来る。ゼロもそう言うだろう」
そういって倉庫の奥の方に視線を動かす黒騎士。
視線の先には、真紅のカラーリングが目を引く新しく搬入した純日本製のナイトメア――『紅蓮弐式』の操縦方法や特性について、パイロットに選ばれたカレンがゼロから叩き込まれている最中だった。
そんなカレンの瞳は真剣そのものであり、マニュアルテキストを読みつつゼロの言葉に耳を傾けている。
カレンは頑張ってるなぁ……と皆が感心しながらその光景を見守っていると、突っ伏していた扇ががばっ!と体を起こし、重たそうに立ち上がるとゼロの元へフラフラと向かっていく。
「おぉ〜〜い、ゼロぉ……」
弱々しい声で呼びかけながら、たどたどしい足取りで資料を手にゼロに近づく扇。
正直見てるほうとしては危なっかしくて仕方ない。
「なんだ、扇」
「入団志望者のブリタニア人から情報提供があったんだ」
そう言って手に持った資料を手渡す扇。
ゼロはそれを広げると、鋭い目つきの金髪のブリタニア人の写真が目に入り、同時にその男のプロフィールと添付された情報に目を通した。
この男の情報によると、ブリタニア軍は今度の週末にエリア11の最大反抗勢力である「日本開放戦線」に総攻撃を仕掛けるらしい。確かにこれは見過ごせない情報だ。見過ごせない情報だが……。
「どうする? 情報としては見過ごせないが、本人に直接接触するにはかなりリスクがあるが――」
「あぁ、これについてなら裏は取っている。既に大量の物資とナイトメアが成田に向かっているのを確認しているからな」
そう返されたゼロの答えに唖然とする扇。
簡単に言うが、ブリタニア軍の内部情報は機密の塊である。なのにゼロはスケジュールどころか、敵の戦力規模さえ把握しているというのだろうか?
「……いつもながら不思議に思うんだが、そんな情報をどこから仕入れてくるんだ?」
「なに、情報が電子の海を漂っている以上、いくらでもやり様はあるさ」
同時刻、どこかで金色の瞳と桃色の髪をした少女が可愛らしいくしゃみをしたとかしなかったとか……。
「で? 今度はコーネリアに勝てる見込みはあるのか?」
既に時刻は深夜となり、全ての生徒が帰宅したアッシュフォード学園の競泳用のプールにプカプカと身を浮かばせながら、C.C.はプールサイドに備えられたテーブルに腰掛けて端末を弄くるルルーシュに声をかけた。
その傍らにはアキトが涼しげな執事服を着込んで控えており、手に持ったティーポットからカップに紅茶を注ぐと自然な動作でルルーシュに差し出す。そしてルルーシュもそれを自然に、そして優雅な動作で受け取ると、カップに口をつけている。
同じテーブルに座るラピスはそれを見て、慣れてきたなぁと思いつつも自らのカップを差し出しておかわりをせがんだ。
「団員も数を揃える事ができたし、ある程度の訓練は積ませた。手持ちのナイトメアだけでなくキョウトからの支援も取り付けることができたし、根回しも十分に済ませた。それになにより……」
そこでキーに奔らせる手を止めると、傍らにいる執事に意味ありげな視線を寄越して、ニヤリと笑みを浮かべるルルーシュ。
「アキトが日本解放戦線の戦力をこちらの駒として使えるように計らってくれたからな」
「ちょっとルルーシュ。私も頑張ったんだけど」
ジト目で睨みつけるラピスに、ルルーシュは分かってるさと苦笑する。
実質これまでのキョウト――いや、日本の抵抗活動は目の前の少女が仕入れた情報によって、多大な戦果をあげたといっていい。
加えて数々の技術や試作兵器をほぼ無償に近い形で供給してきているため、その借りを返すためならこの程度の要求はキョウトにとっても安いものだと考えているに違いない。
尤も、勝手に指揮系統を他所者に奪われた日本解放戦線にとってはいい迷惑だろう。しかしエリア11の抵抗活動の要とも言えるキョウトの指示を無視することはできないため、渋々とそれを承諾したようだ。
「だが日本解放戦線もプライドというものがある。そう簡単にお前の指示を聞いてくれるものなのか?」
「そのためにわざわざアキトをナリタにいかせたんだ。無頼・改を手土産にしてな」
「あれは元々キョウトのナイトメアだろう?」
「それを俺達の手で更に改良したものだ」
プールから上がり、濡れた艶やかな髪から滴を垂らすC.C.にバスタオルを差し出しながら答えるアキト。
この男、なんだかんだ言いながら、どんな相手に対しても執事の仕事を忘れてはいない。
「日本解放戦線は片瀬少将が長を務めているとはいえ、実質あの組織を支えているのは藤堂鏡志郎のカリスマと、彼の取り巻きである四聖剣だ。彼らを説き伏せることができれば自然と日本解放戦線もついてくるからな」
「……お前が説き伏せたのか」
「簡単ではなかったがな」
ふぅん、となんともなしに頷くC.C.。
差し出されたバスタオルで髪を拭くと、彼女は別に備え付けられたテーブルに座り、用意されたピザへと手を伸ばした。
C.C.のわがままで、深夜になってまでアキトに用意させたものである。
「まぁ、そこまで用意周到にしているならそれでいい。お前達には死んでもらっては困るし、私の願いを聞いてもらわなければならないからな……いい結果になることを祈ってるよ」
フフフと妖艶に、そして魔女のように不気味な笑みを浮かべ、ルルーシュ達にそう呟くC.C.。
そして彼女は下僕のように扱うアキトに用意させたピザに優雅に手を伸ばし、腹を満たそうとするのだった。
「甘っ! あっまっ!! な、なんだこのピザは!?」
「夜半に頭を使うので糖分が必要と思って特別に作ったデザートピッツァですが、なにか問題でも?」
「普通のピザを出さんかこの真っくろ執事!!」
「というかデコレーションを見た時点で気付かないか?」
「片瀬司令! ブリタニアがこのナリタ連山に総攻撃を仕掛けてくるという噂は本当ですか!?」
「事実だ。既に四個大隊もの戦力が此処に集結しつつあるらしい」
「四個大隊……!?」
ナリタ連山の奥深くに位置し、長年に渡る改修によって要塞と化した文字通りの秘密基地。
日本解放戦線の総司令部では、キョウトからもたらされた情報を受けて、主だった幹部が緊急会議を開いていた。
片瀬、藤堂、四聖剣の他に10名以上の幹部が首を並べて話し合っている。
「その情報は一体どこから……?」
「キョウトを経由して黒騎士から提供されたものだ。ご丁寧に詳細なレポートまで添付してな」
「あの裏切り者の!?」
「信用できるのですか!?」
「第一、何故我々が新参の黒の騎士団に下出に出なければならないのです!」
黒騎士を裏切り者と罵倒する多くの軍高官。そして黒の騎士団の指示に従わなければならないという屈辱に不平不満をぶちまける。
指揮権の優先度についてはともかく、黒騎士への罵倒については日本解放戦線では別段珍しいことではない。
長年日本のために戦ってきた藤堂鏡志郎と黒騎士だが、片方は旧日本軍に所属し、厳島の奇跡と言う大金星をあげた生粋の軍人。
片や素性や素顔も知れぬ風来坊で、細々とした戦果しかあげていない怪しい男。
現場の軍人からの評価は高いが、旧日本軍の元高官の中には黒騎士の実力を疑問視している人間も少なくない。
そしてそれに拍車をかけたのが、黒の騎士団の参入だ。
これを知った日本解放戦線の高官の意見は概ねこのようなものだ。
『我々がせっかくお前を有効に使ってやってるのに、断りも無く他の組織に入るとは何事だ!』
と、まぁ自分勝手な意見の押し付けによって、彼らは黒騎士を「裏切者」と評しているのである。
しかし片瀬はそんな高官を冷ややかな目で見つめ、内心あきれはてていた。
(馬鹿者が! 黒騎士の提供した兵器や情報で、どれだけの兵が命を救われたと思っておるのだ! 表面的な戦果しか頭に無いとは情けない……)
仮にも日本最大の抵抗勢力の長を務め、軍人としても正当な評価で少将にまで上り詰めた軍人なのだ。
その片瀬にとってみれば、黒騎士は正体不明の男ではあるが日本人の命を多く救ってくれただけでなく、国の生命線にも等しい最新技術の塊を惜しげもなく渡してくれた恩人なのだ。
そんな技術の恩恵に与る軍人が、あろうことかその恩人に罵倒を浴びせているのを目にし、片瀬は憤慨した。
「黒騎士の情報が無ければ、我々はなんの準備も無くコーネリアに磨り潰されていたのは目に見えている。彼に感謝こそすれ、罵りを浴びせるとは日本人として恥ずかしくないのかっ!!」
片瀬の一喝に何も言えず、静まる高官達。
彼らも頭では分かっており、今まで日本を支えてきたというプライドによって反発しているに過ぎない。
「とにかく、情報があればなんとでも遣り様はある。藤堂、受領した無頼・改についてはどうだ?」
客将として傍に控える藤堂に尋ねるのは、キョウトから新たに受領した無頼・改についてだ。
新しい兵器というのはとにかく信頼性に欠けるため運用が難しい。それに日本解放戦線の最強戦力が搭乗するとなれば、気になるのは当然のことだろう。
「一通り乗ってみましたが、いい機体です。スペックが軒並上がっていますし、新しい機体にありがちな違和感もありません。あれならば親衛隊だけでなく、コーネリアとも互角以上の戦いができるでしょう」
その言葉を聞き、満足そうに頷く片瀬。
藤堂がそれほどまでに言うならば期待できる。これに黒の騎士団の戦力が加われば、なんとかなるかもしれない。
片瀬はその場で立ち上がると、拳を握り締めて力強く吼えた。
「いいかっ! 今度の戦で我々の……いや、日本の命運が決まるといっても過言ではない! 日本の誇りと意地を賭けよ! 全身全霊を尽くして戦に備えるのだっ!!」
『はっ!!』
そして会議場に集まった者達が戦闘に備えるために各員の持ち場へと散っていく中、藤堂は先日訪れた黒騎士――アキトの言葉を反芻していた。
『指揮権の移譲……我々日本解放戦線がこれを受けると?』
『受けざるを得ないさ。ここの戦力だけでコーネリアとまともに戦えるとは思っていまい』
『……黒の騎士団が協力すればコーネリアに勝てるとでも言うのか?』
『保障はできない。しかしこのままでは、日本解放戦線が全滅するのは目に見えている。アンタもむざむざ守るべき主君を死なせたくはないだろう』
『守るべき主君か。あのゼロが、昔お前が言っていた……?』
『――ああ、守るべき大事な男だ』
あの時、黒騎士の瞳を見ることは当然のことながらできなかったが、その時の口にした言葉には、いつもの無感情な声の中に確かに親愛と言う感情を感じ取ることができた。
彼との付き合いは、合った回数こそそう多くないがそれなりに長い。
いつも無感動・無表情のあいつが珍しく見せた感情によって、藤堂は少しだけゼロという男に興味を持った。
(ゼロか……単に怪しい男としか思えなかったが、会うのが楽しみになったな)
だが全てはこの戦いを乗り切ってからだ。
藤堂は四聖剣を率いて新しい愛機へと向かうのだった。
数日後、ナリタ連山の周囲には山全体を囲むようにコーネリア軍が布陣し、既に100機近いナイトメアが輸送列車や軍用トレーラーに待機している。また、後方では数十機のVTOLがサザーランドを搭載し、出撃の合図を待っている。
「全部隊の配置はほぼ完了。後は総督の合図を待って、一気に日本解放戦線を殲滅します」
ダールトンが卓上の電子スクリーンを指しながら大まかな作戦内容を説明していく。
実戦を見てみたいと言って作戦会議に参加したユーフェミアにも分かり易い様に説明するが、内容は至って単純で少数勢力を圧倒的な物量で押し潰すという、正に大国ならではの戦術である。
開始と同時に周辺の道路を封鎖し、豊富な予備戦力も備えているため、もし敵の援軍が来ても十分に対処可能だ。
「あら? おねえ――総督、この後方の部隊はなんでしょうか?」
ユーフェミアは示したのは軍の司令塔でもあるG−1ベースの後方、主戦場となるであろう場所から離れた位置に数機のナイトメアの反応がある。
自分の護衛部隊である純血派とスザクの所属する特派は救護班の車両の傍に待機しているため、それとは別のようだが……。
「あぁ、それは私が個人的に呼んだ援軍だ。まぁ彼奴等の力を借りずとも、終わらせることができるだろうがな」
そう言って軽く笑みを浮かべるコーネリア。
その笑みには、信頼とも取れる感情が覗いていた。
「各員の配置は終わったか?」
「あぁ、P8までの配置は完了。NグループはN3を除いて全て待機している」
「玉城のグループか……時間はまだあるが急がせろ」
黒の騎士団は既にナリタ連山に到着し、各地に兵を配置させて戦闘準備を整えつつあった。
まだ戦闘前ということもあり、無線封鎖をしているため通信機を使うことができないが、事前に自軍だけでなく日本解放戦線にも大まかな作戦を伝えてあるため、後は開始を待つばかりとなる。
扇に準備を急がせるよう言い渡し、一人になって周囲に誰もいないことを確認すると仮面を取り、ルルーシュはナリタ連山の地図とラピスによって纏められた資料に目を通し、作戦を煮詰めていた。
既に団員達にはコーネリアと戦うことは伝えてある。予想通り、いくらかの反発はあったが、日本解放戦線と協力することや、事前情報を揃えてあるため十分に勝機があることを言うと、なんとか納得した。
そして、ふと待機していた監視小屋から外を覗くと、見慣れた白い拘束服と長い緑髪を目にしてギョッとするルルーシュ。
そこにいたのは、灰色の雲をぼうっと眺めるC.C.だった。
顰め面をしながら、小屋を出るとC.C.の元へと向かう。
「おいC.C.……こんな所で何をしている? お前のわがままにつきあってわざわざ連れてきてやったんだから、せめて指示には従え」
「雪見くらいは大目に見ろ。お前の懐の深さが知れるぞ?」
そうして顔を戻すと再び降り注ぐ雪を見上げる。
そしてC.C.は暫し雪を見上げていたが、ポツリと呟いた。
「ルルーシュ、お前は何故ルルーシュなのだ?」
「シチュエーションとしては悪くないかもしれんが、ここで歌劇をやる必要は無い」
いずれにせよ、彼女の我侭や気紛れに付き合う時間すらないのだ。
そうしてC.C.をどこかに移動させようとするが、それを気にするでもなく彼女は言葉を続ける。
「家の名はランペルージ。だがルルーシュという個人の名は残した……甘さだな、過去を捨てきれない」
その言葉に密かに唸るルルーシュ。
確かに最近の自分は甘いところがあるように自覚してた。だが、それで他者に対して一方的な隔意を持ち、冷徹に人を殺し使い潰せるようになれるかと考え……やっぱり自分はそんなことはできそうにないと、改めて思った。
だからルルーシュはC.C.の指摘に対してこう返す。
「過去を捨てることなんて不可能さ。過去を捨てるということは、その時の喜びや悲しみ、更には憎しみを含めた全てを捨てるということだ……それは過去から逃げている事と等しい」
振り向いてルルーシュと相対するC.C.。
正面から見たルルーシュの瞳には、全てを受け入れ前に進む――そんな力強さを感じさせる強い光が宿っているように見えた。
「俺はあの屈辱の時を決して忘れはしない。過去あってこその現在、現在あってこその未来だ。そのためにも、ルルーシュという名は『俺』という存在を確立させる唯一不変のもの。捨てることなんてありえない」
「そうか……そうだな」
(やはり親子だな、その考え方はあの時のマリアンヌにそっくりだ)
テンカワ・アキトと触れ合い、他者を顧みるようになったマリアンヌ。
あの時から彼女は、同じ女性の自分から見てもとても魅力的に映ったものだ。
穿った見方をすれば、新しい男ができたからだとか、環境が人を変えたからだとかいうのだろう。だが彼女の奥底の本質は変わらずそのままに、マリアンヌは他者を顧みるという余裕を持つようになった。
過去を受け入れ、それを乗り越え糧にするということは、人をこんなにも変えるものなのか、とC.C.はそんなマリアンヌがとても羨ましかった。
(だがな、ルルーシュ……私にはもう、その過去すら思い出せないんだよ)
C.C.はルルーシュの視線から逸らすように顔を上げると、再び雪を見上げる。
自分の過去と同じように真っ白な雪を、C.C.は差し迫る時間が来るまでずっと眺めていた。
『殿下、時間です。各部隊の準備も既に完了しております』
「よし、作戦開始! 日本解放戦線を殲滅せよ!!」
コーネリアの号令と共に、今まで潜んでいたナイトメアが一斉に起動し、整然とした陣形を保ちながらナリタ連山を目指して進撃する。
その数はあっという間に膨れ上り、更には後方から来たVTOLからも次々とナイトメアが降ろされていく。
事前に敵の規模を知っていた日本解放戦線も黒の騎士団も、間近に見る余りにも強大な大軍団に完全に萎縮していた。
「じょ……冗談じゃねぇぞ、ゼロ! あんな大軍団とまともに戦りあうってぇのかよっ!!」
「言ったはずだぞ。相手はコーネリアだとな」
恐怖を打ち消すようにわめく玉城を切って捨て、眼前に広がる敵の布陣を冷静に観察するルルーシュ。
山の全周囲を覆うようにコーネリア軍は大規模な軍団を効率よく、そして理に適った戦法で押し進めてくる。
(まずは作戦の第一段階……さて、日本解放戦線は指示通り動いてくれるかな?)
戦端が開かれ、既に先遣の部隊が敵ナイトメアとの戦闘に入り、数分もしない内にシグナルが消失してしまう。
地の利を生かして、高い位置に陣取り山肌に隠れながら銃撃を加えるが、僅か3・4機の無頼で10機近いナイトメアを相手にするにはやはり無理があり、じわじわと防衛線が食い破られていく。
戦況スクリーンに映るあまりにも不利な状況に、下士官の一人がたまらず声を挙げた。
「少将閣下、本当に黒の騎士団の指揮下に入って大丈夫なのですか!? 今からでも脱出のために中央突破を仕掛けた方が……」
「馬鹿者!! 既に賽は投げられた。今更作戦の変更等できるわけがない! 諸君らも生き残りたければ、作戦通りに事を進めるのだ!」
「ハ、ハッ――!」
そう返事をして己の仕事に戻る下士官。
片瀬はスクリーンに目を戻し、無理もないと声には出さずに内心で呻いた。これほどの絶望的な状況下で正気を保てというのが無理な相談だ。
それはともかく、仕方なしにゼロの指揮下に入ったが、本当にこれで大丈夫なのかと片瀬自身も不安に感じていた。
尤も、それを表情に出すような愚は犯さないが。
(ゼロの指示では、分散した戦力で時間までに敵を指定したポイントに誘えとあるが……奇襲を仕掛けて押し返すつもりか? しかしここまで押し込まれればいくらなんでも挽回は不可能だぞ!?)
解放戦線の本拠地近くまで押し込まれれば、いくらなんでも情勢を引っ繰り返すのは無茶にも程がある。
周囲は包囲されているため、後ろから回りこんでG−1ベースを強襲するという事も不可能だ。
片瀬にしてもゼロの作戦は全く読めず、もしや我々を囮に逃げ出すつもりではないかとも思ったが、既に状況は動き出しているため、後に動くであろう黒の騎士団の力を信じるしかない。
(ゼロを信じることはできん……しかし、藤堂が信頼する黒騎士が言うならば、まだ信用はできる。願わくば先に散った者達の魂が報われることを願うばかりだ)
「どうした! 日本解放戦線よ!! 貴様等の力はこんなものなのかっ!!」
主戦場の左翼において先陣を切るのは、純白のマントを戦場の風にたなびかせたコーネリア専用のグロースターだ。
グロースターは黄金色の大型ランスを巧みに操り、次々と無頼を蹴散らしていく。
3機の無頼による一斉射撃も、持ち前のスピードとコーネリア自身の卓越した腕前により掠りもせず、あっという間に無頼との間合いを詰めるとランスを横になぎ払い、吹き飛ばされた無頼のコックピット部に雷光の如き速さでランスを突き出し、厚い装甲を穿ち貫いた。
直後起こった無頼の爆発を気にした様子も無く、マントを使って煙を振り払うと次の目標へ向かい、ランドスピナーを唸らせる。
取りこぼした敵機は、自身で確認する必要も無い。何故なら後ろから付いてくる配下の者が、当然討ち取っているであろうからだ。
「フンッ、脆弱過ぎる……!」
あまりにもか弱い敵の反撃に、物足りないと不平を零すコーネリア。
敵もこちらの進撃を防ごうと待ち伏せやトラップ等様々な策を弄しているが、どれも取るに足らないものばかりだ。
心のどこかでゼロや黒騎士のような好敵手が現れないかと期待するも、出てくるのは下らない雑兵だけ。
そうして被害らしい被害も出ず、山の6合目あたりまで進撃した所で、随伴していたギルフォードから声がかかった。
『閣下、アレを』
ギルフォードの乗るグロースターがランスで指し示す方向は、中央を挟んで反対側の地点だ。
そこから尾を引くように上がった光球が弾け、黄色い閃光が僅かに空を照らした。
敵の本拠地を発見したことを伝える信号弾だ。
「あの方向は……ダールトンの部隊か?」
信号弾が上がったのはダールトン率いる部隊が展開する戦場の右翼、ようはここから反対側の地点だ。
『どうやら敵本拠地はあちらのようでしたね。如何いたします?』
「構わん、このままこちらの敵を無力化するぞ」
『よろしいので?』
「部下の手柄を奪う趣味は無いさ。ダールトンの所に予備部隊を廻せ」
部下の手柄は部下のもの。
当たり前のことかもしれないが、貴族の間では平気で部下の手柄を横取りする輩も大勢いるため、コーネリアのような人物はブリタニアにおいては珍しい部類に入るかもしれない。
だがその潔癖な心根こそが、厳つい軍人達の心を動かすのもまた事実である。
それはともかくとして、敵本拠地を見つけたとなると、この戦もほぼ終わりが見えたといっていいだろう。
余りにも呆気ない戦闘に、若干の物足りなさを感じるが仕事が早く終わることに越したことは無い。
(結局ゼロも黒騎士も姿を現さなかったか……まぁいい、これでエリア11の反政府勢力もおしまい――)
――ドオオオォォォンンン だが、物憂げに耽るコーネリアの耳に、突如腹の底に響くような轟音が飛び込んできた。
その音は瞬く間に近づいてくると、土色の濁流となってコーネリアのすぐ傍を通りすぎた。
時間は僅かに遡る。
「ゼロッ! このままじゃ日本解放戦線が……!!」
「分かっている。しかし流石は片瀬少将だ。少ない戦力でもきっちりと仕事をこなしている」
山頂で事の経緯を静かに見守っているゼロと、敵の苛烈な攻勢にあせる扇。
レーダーに映る日本解放戦線の機影は残り僅かとなっており、このままでは部隊の全滅は時間の問題だろう。
――そう、今出撃している部隊は。
「頃合だな……全部隊に告げる――時は来た! これより我々黒の騎士団は、ブリタニア軍に対し、奇襲を敢行する!!」
そのゼロの言葉と同時に、周囲に展開していた無頼に火が入り、歩兵も銃やランチャーを担いですぐさま動ける体勢に入る。
そしてその集団から一歩踏み出し、現れたのは真紅のカラーリングと禍々しい右腕がとにかく目を引く新型のナイトメア。
「先陣を切り、突破口を開くのは紅蓮弐式! カレン、用意はいいか!?」
「ハイッ!!」
カレンは勢いよく返事をすると、ゼロの指示によりいくつかある掘削機の先端を巨大な右腕――輻射波動機構を備えた右腕で掴み準備する。
輻射波動によって発せられた高周波は掘削機の先端を伝わり、岩盤の先に流れる水脈を刺戟して盛大な山崩れを引き起こすだろう。
カレンは清廉な山をめちゃめちゃにすることに忌避感を覚えたが、これも日本を救うためだと割り切っている。
「改めて作戦を伝えるぞ。敵主戦力が展開する中央と右翼の部隊が総崩れになった隙を突いて、日本解放戦線と協力し、コーネリアを捕獲する! 敵の居場所は上空から私が目を光らし、諸君らに伝える。思う存分に戦いたまえ!!」
ゼロ――ルルーシュが搭乗するのは無頼ではない。
黒のカラーリングをベースにイエローのラインが入った巨大な機影。背中には今までのナイトメアにはなかった、巨大なエンジンが備え付けられている。そしてそのシルエットは黒騎士の乗るエステバリスによく似ていた。
――エステバリス空戦型。
ナイトメアには未だない空の翼と高い情報収集能力を備えたこの機体は、IFSを気に入ったルルーシュにとって非常に相性のいい機体だろう。
そうしてコックピット内ではIFSの光を煌かせながらルルーシュはレーダー画面に目を走らせ、作戦時間が経過したのを確認し、カレンに命令を下した。
「いまだっ、カレン!!」
「ハイッ、外周伝達っ!!」
操縦桿のスイッチを押し込み、輻射波動を掘削機に向けて放射する紅蓮弐式。
特徴的な赤い色を撒き散らしながら高周波が地の底へと放たれた後、暫し辺りを静寂が支配するが、直後彼らの耳に何かが崩れるような音が飛び込んでくると、辺りから地響きが巻き起こる。
刺戟された地下水脈が地表に溢れ出ると同時に、水流によって砕かれた岩盤が浮き上がり、それは巨大な土砂へと変化すると物凄い勢いで山を下っていった。
その行き先には、戦場の中心を進軍していたブリタニア軍の部隊とダールトンが率いる右翼の部隊が展開しており、あっという間にそれらを飲み込んでしまうのだった。
「くそっ……被害状況は!?」
ようやく土砂崩れが収まり、土塗れになったグロースターをなんとかぬかるんだ地面から引き離し、状況を確認するため司令部と連絡を取るダールトン。
『コーネリア総督はご無事ですが……味方のシグナルは20%を切っていますっ!』
「なんということだ……!!」
近代戦において、20%の戦力というのは最早全滅にも等しい被害だ。
数だけならいまだ日本解放戦線の戦力よりも多いだろうが、これだけの将兵を失ったとあれば指揮系統は成り立たないだろう。
かくいうダールトンも、先程の土砂崩れで味方のほとんどを失い、残っている配下の兵は僅かに10機程度しかいない。
なんとかして他の部隊と合流しなければ……そう考えるダールトンに、生き残った部下の一人が息せき切ったように声をあげる。
『ダ、ダールトン将軍! 敵がどんどん現れてきます!』
レーダーに目をやると、此方を囲むように敵ナイトメアが動き出しており、それに連動するように要塞内の砲が息を吹き返し、砲撃を浴びせてくる。
しかしなによりダールトンが驚いたのは、敵のナイトメアが当初の戦闘より増えているだけではなく、それらが土砂崩れの被害を受けていないポイントから現れたことだ。
「こいつら……まさか、この土砂崩れも作戦の内だったというのかっ!?」
そんな馬鹿なと思いつつも、それに思考を取られる時間はない。
恐らく敵はこちらの混乱を突いて攻勢に出るはずだ。その時真っ先に狙われるのはコーネリア姫であろうことは疑いない。
なんとしてもこの窮地を脱し、姫様の元へと馳せ参じなければ……。
ダールトンは肩に担いだキャノン砲を敵に向け、決死の思いで引き金を引いた。
『な、なんだコイツラは!?』
『動きがやたら鋭いっ――』
生き残ったブリタニア軍のナイトメアを襲ったのは、黒の騎士団のカラーリングである黒に塗りつぶされた無頼だった。
彼らは土砂崩れが収まった直後に一斉に山を降り、右往左往するブリタニアのナイトメア達を一気に殲滅していく。
ブリタニア軍はそれに必死に抵抗するも、これまでの抵抗勢力のような覚束ない動きではなく、正規の兵と見紛うような動きでナイトメアを操縦し、此方に襲い掛かってくるのだ。
ただでさえ疲弊し連携もボロボロになったブリタニア軍がこれを支えられるはずも無く、次々と無頼に落とされていくサザーランド。
今までの戦いとは違う手応えに、黒の騎士団の士気は高揚していた。
「ヘヘ、スゲエな! このIFSってのはっ!」
「おおよっ、まさかあの格闘訓練がこんな所で役に立つとはな!!」
黒の騎士団のナイトメアには、既に量産型のIFS操縦桿が備え付けられており、団員達はこれまでとは違う操作方法に戸惑いながらも、すぐにそれが有用なものであると理解し、これまでの訓練の成果を見せ付けるように奮戦していた。
「これなら、ブリキの正規兵相手でもやれるってもんだ。ゼロの指示通り、敵を撹乱するぞっ!!」
『おおおっっ!!』
一方、コーネリアを含んだ左翼に展開していた部隊は土砂崩れの被害をほとんど受けることはなかったが、より多くのナイトメアに囲まれ、熾烈な攻撃を受けていた。
「ええいっ! 待ち伏せとは味な真似をしてくれるっ!!」
ダールトンの元に現れた部隊と同じように地表内に作られた格納区に潜み、時期を見計らって現れた無頼の数は30機相当。
コーネリアの元には、ギルフォードを含めた親衛隊の5機と一般兵の10機に、自機を含んだ合計16機のナイトメアが控えている。
数の比率は1対2と日本解放戦線が上回っているが、それだけで倒れるほどブリタニアの兵は甘くない。
現に、コーネリアを中心とした密集陣形で固まりつつ日本解放戦線の攻撃を凌いでいるが、脱落した機は最初の奇襲の時の僅かに2機。
その後徐々に陣形を広げて相手を押し返し、あと少しで包囲網を抜けると思った矢先――ヤツラは現れた。
「コイツら……できるっ!」
戦場に新たに参入したのは、5機の無頼。
だがこれまでの無頼とはカラーリングが異なり、後ろに伸びる昆虫の触覚のようなアンテナが目を引いた。
『無頼・改』――コピー量産機、無頼に更に改良を施した日本解放戦線の切り札となるナイトメアだ。
単純な見た目だけでなく、出力もアップしているためブリタニアの新型機であるグロースターとも互角に渡り合えているが、これはパイロットの腕に因る所も大きいだろう。
武装はチェーンソー状の日本刀、『廻転刃刀』を装備しており、僅かに受けただけでも装甲をズタズタにされてしまうだろう。
そしてもう一つ、全ての無頼・改が装備しているわけではないが、ブリタニア側にとって非常に厄介な装備を彼らは持っていた。
『このっ――イレブン無勢が!』
グロースターの1機が無頼・改に狙いを定め、大型のランスを突き出した。
それを相手は左腕に備えた『盾』で弾き飛ばし――否、盾の傾斜を利用して打点をずらし、グロースターの姿勢を大きく崩した。
そしてその隙を逃さず、盾で相手の視界を晦ましながら、無防備な胴体に向けて廻転刃刀を叩き込み、親衛隊の一角を切り伏せる。
「くっ……厄介な!」
無頼・改のもう一つの装備――それは、ブリタニアのナイトメアが持つ大型ランスに対抗して作られた『衝角徹甲盾』である。
菱形の形をしたそれは平坦な盾ではなく、衝角の名がつくように横から見ると中央が飛び出した形をしている。
四角錘の盾、といえば分かり易いだろうか。
その特徴的な形状は正面からの銃撃を受け止め、あるいは弾き飛ばし、強力なランスの突進も容易く受け流す事ができる優秀な装備だ。
指揮官機を除く4機の無頼・改の内、四聖剣の仙波と卜部がその盾を装備し、千葉と朝比奈が2機の背後を守るように位置して敵にプレッシャーをかけていく。
そんな無頼・改が戦場に参戦したことで、コーネリア達の脱出は益々困難になってしまった。
「使えますね、無頼・改とこの衝角徹甲盾は!」
「気を抜くなよ、相手はコーネリアだ」
「ブリタニアめっ……七年前の借りをここでっ!」
「どうします藤堂さん。俺達だけでコーネリアの首を獲りますかっ!?」
四聖剣は高揚したようにナイトメアを動かして相手を追い詰めていき、調子に乗った朝比奈がそんなことを提案する。
だが藤堂は戦場を冷静に見渡すと、それを却下した。
「いや、我々だけでは決定打にはならない。我々は作戦通り相手を此処に釘付けし、黒の騎士団の応援を待つ!」
ゼロから彼らに言い渡された指令は一つだけ――時間までにコーネリアを釘付けにすること――それさえ果たせば必ず勝機はあるということだ。
最初はその手腕を疑った藤堂だが、ここまでゼロの思惑通りに事が運んでいる。
ならば万全を期すためにも、此処はあの男を信じてみるのも一興!
「時間までになんとしても相手を此処に閉じ込めるぞ。『旋回活殺自在陣』で相手を切り伏せる!!」
「「「「承知!!」」」」
「コーネリア総督はっ!?」
『現在ポイント7で敵のナイトメアと交戦中……ここから2キロ先です!』
ランドスピナーを唸らせ、全速でコーネリアの元へ支援に向かうジェレミアら純血派。
救護班の護衛についていた彼等だが、使える戦力は最大限に活用すると、ユーフェミアが直々に彼らに救援に向かうよう命令したのだ。
スザクのランスロットは、当初のコーネリアの命令で待機状態のままでいたため、先行してジェレミアらが現場に向かっていた。
ジェレミアは今度こそ皇室の方々を守って見せると息巻いており、後に続く部下だけでなく自分にも言い聞かせるように声を挙げた。
「ここで我ら純血派が動かねばなんとするっ! 急いでコーネリア様の元へ――」
『いかせないよっ!!』
だがそこに突如赤い影が立ちはだかった。
「ヌオッ!?」
進むのを遮るように撃たれた銃撃に驚く間もなく、眼前に凶悪な銀の煌きが迫り、慌ててその場から飛び後退る。
回避は完全には間に合わず、手にしたライフルが弾き飛ばされたため、両腕のスタントンファを展開し、相手と対峙するジェレミア。
其処にいたのはこれまで見たことのない機影だった。
無頼のようなコピー機ではなく、エステバリスのように大きくもない。だがその真紅のカラーリングと怪物然としたフォルム。そしてなにより目を引くのは、鈍い光を放つ禍々しいまでの右腕だ。
ブリタニアのナイトメアとは設計思想の全く異なる機影――紅蓮弐式の姿にジェレミアは戸惑いを隠せなかった。
(このナイトメアは……まさかイレブンが作った!?)
余計な事に思考を奪われそうになり、頭をふるってすべきことを考える。
今は殿下の元に向かうこと。相手の正体はともかく邪魔立てするなら容赦はしない!
「囲んで潰せっ!!」
わざわざ一対一で遣り合う必要は無い。
部下にそう命ずると、後ろにいた数機が即座に散会しライフルを向けて発砲する。
しかし紅蓮弐式はそれを眼で追うのも難しいスピードで回避すると、左腕に備え付けられた速射砲を撃ち返して即座に沈黙させられる。
「おのれっ! こしゃくなイレブンがっ!!」
「待て、キューエル! 迂闊に近づくなっ!!」
あっさりと味方がやられたことに激昂したキューエルが、ジェレミアの静止も聞かずスタントンファを振りかぶって、紅蓮弐式に踊りかかる。
だが相手はそれを左腕に持ったナイフで打ち払うと、禍々しい右腕を叩き付ける様にサザーランドのコックピットブロックに振り下ろし、厚く施されたはずの装甲をザックリと引き裂いた。
更に返す腕で右腕の爪を振り上げ、キューエルのサザーランドは二度の爪牙によってコックピットをズタズタにされてしまう。
「ギャアアアアァァァーーーッッ!!!」 バラバラにされた機器はキューエルを容赦なく襲い、破片は体だけでなく顔面にも飛び散り多大な傷を負わせ、モニターや機器の破片に混じり、飛び散る鮮血がモニターを汚した。
致命的なダメージを受けたサザーランドは即座にコックピットを排出し、なんとか爆発を逃れたがあれだけのダメージを負っては、戦場の復帰は勿論搭乗者の生死も危ぶまれるかもしれない。
「キューエルーーーーッッ!! 貴様……よくもっ!!」
戦友をやられて激怒するジェレミアだが、これまでのナイトメアとは違う規格外の相手の動きに迂闊に近づくことができない。
恐らく相手はあのランスロット並みの能力を持っていると考え、同時に先程の動きを見る限りでは接近戦では勝ち目がないと判断。
既に地に伏した友軍機のライフルを引っ掴み、銃口を紅蓮弐式に向ける。そして同時に相手は何故か離れた場所から右腕を振りかぶり――その巨大な腕を此方に向けて切り離した。
「なにいぃっっ!?」
突如飛翔した右腕に頭を掴まれ、繋がっていたワイヤーが巻き取られると相手方に引き寄せられるサザーランド。
そして再び切り離された腕が装着され、次いでそのギミックから発せられたのは、全身が沸騰したのかと勘違いするような高周波の嵐。
ジェレミアの視界が赤く染まり、同時にサザーランドの内部機構と装甲がボコボコと沸騰したように沸き立っていく。
「そんなっ……ここまで来てっ! 私は、またっ……!!」
高周波によって発生する熱に意識が朦朧とするジェレミア。既に機体は動くことすら儘ならず、最早木偶の如く成り下がる。
激しい無力感に苛まれ、そして皇族の危機にまた駆けつけることができなかった失意に涙を浮かべ、最後にモニターに映る『IJECT MODE』を目にして、ジェレミアの意識は闇に落ちた。
爆発したサザーランドの炎に照らされ、より一層真紅の色を煌かせる紅蓮弐式。
純血派のトップ二人をあっという間に倒され、炎に照らされる異形のナイトメアを前に呆然とする一人残されたヴィレッタ。
その赤いナイトメアの双眼が此方を向き、真っ直ぐヴィレッタを貫いた。
「ひっ……」
先程やられた二人の最後を目にしていたため、眼前の敵が自分の腕では勿論、ナイトメアの性能も比べ物にならない。
明確な「死」のビジョンを脳裏に描き身を竦ませるヴィレッタ。
そして相手がそれを見逃すはずも無く、巨大な右腕を振りかぶってヴィレッタのサザ−ランドに向かってくる。
「……っっ!!」
自身に降りかかる死神の手に、思わず目を瞑るヴィレッタ。
だが、その後に起こったのは機体の衝撃ではなく、巨大な金属音のぶつかる音だった。
おそるおそる目を開けると、そこにいたのは輝くような白い色を持つ機体――
『ヴィレッタ中尉! 大丈夫ですかっ!!』
「枢木准尉!?」
枢木スザクの乗るランスロットが二機の間に割り入り、せめぎ合いを繰り広げていた。
相手の巨大な右腕をMVSで受け止め暫し睨みあうが、突如紅蓮弐式は大きくその場から後ろに跳躍し、距離をとって対峙する。
『ヴィレッタ中尉! ジェレミア卿とキューエル卿は!?』
「ソイツの手によって二方とも既に……」
『くっ……!』
最初は遅い出撃に文句を言おうともしていたが、命を助けてもらった手前で強くは出れない。
寧ろ彼がいなければこの部隊は全滅していた可能性もあるだろう。
『こいつは僕が相手をします! 中尉達は早く総督の下へ!』
MVSとヴァリスを手にして構えるランスロット。
確かにこの赤いナイトメアを総督の元へ連れて行くと、厄介な事態が更に深刻化するだろう。ならば枢木准尉にはコイツを抑えておいてもらい、我々はこのまま総督の救出へ向かうのがベストだろう。
残った部隊員を率いてこの場をランスロットに任せ、副総督の下へと駆け出そうとするヴィレッタ。
「よし、頼んだぞっ枢木准尉!! 残った機は私に続け! 急いでコーネリア総督の元へ――っ!!?」
『残念だがそうはさせない』
しかし、そんな彼女の行く手を遮るように現れたのは左手にライフル、そして右手には大振りのブレードを握り締めた黒い影。
「く……黒騎士!?」
いつの間にか、其処にはブリタニアに死をもたらす黒い死神が立ちはだかっていた。
「カレン、足止めご苦労だったな」
『いえ、私もそう長い時間いたわけじゃありませんでしたから』
「そうでもない。この白騎士を抑えていたということは、ゼロの作戦がほぼクリアしたという事だからな」
アキトは紅蓮弐式に乗るカレンにそう労いの言葉をかける。
ゼロの立てた作戦は土砂崩れによる逆落としをベースとし、土砂で相手方の陣形が崩れた所を要塞内に配置していたナイトメアで強襲すると言うものだ。
だがこの土砂の流れについては、ラピスのシミュレーションである程度の範囲が予想できるとはいえ、自然災害を無理やりに引き起こそうとするのだからどうしても予想外の事が起こり得る。
そこでゼロは最強の手札となるカレンの紅蓮弐式と、アキトのエステバリスを分散して配置し、コーネリアもしくは白騎士のどちらかを抑えるよう伝えていた。
今は幸い日本解放戦線の藤堂等がコーネリアを抑えてはいるが、それも危ういバランスで成り立っている。
この戦いを終わらせるにはなんとしてもコーネリアを抑えなければならない。
「後は作戦通り、コーネリアを抑えるだけだ。此処は俺に任せて君は行け!」
『ハイ、師匠!!』
カレンは踵を返すと、コーネリアと藤堂が戦っているポイントへと向かっていく。
紅蓮弐式のスピードならばポイントにつくまでにそう時間はかからないだろう。
『ま、待てっ!』
「行かせないと言った筈だ」
ランスロットがそれを止めようとライフルを向けるが、割り込んだエステバリスが銃身を弾き飛ばして射線をずらす。
同時にサザーランドに対してもライフルを撃って牽制し、敵の動向を抑える。
『くっ……黒騎士!!』
「ここで決着をつけるのも吝かではないが……暫く俺とつきあってもらうぞ」
そうしてアキトはニヤリと笑ってランスロットと対峙し、ブレードを突きつけるのだった。
確実に消耗していくブリタニア軍に対し、黒の騎士団と日本解放戦線は着実に敵を切り崩しつつあった。
それはやはり、ゼロからもたらされる『空の眼』による恩恵が大きいだろう。
「『P4』、7秒後に正面にむけて一斉射。『N2』は迂回して左から回りこみ、N7を援護」
空戦型エステバリスとIFSによる高度な情報収集能力、そして自身の情報処理能力を如何なく発揮し、錯綜するコーネリア軍を容赦なく追い詰めるルルーシュ。
そしてそれは、黒の騎士団だけでなく日本解放戦線にももたらされている。
「『歩6』は攻撃しつつポイント4まで後退。『飛車2』は追ってきた敵グループの側面から攻撃」
黒の騎士団と区別するために同じようなチェスの頭文字ではなく、日本の卓上遊戯である将棋の駒をコードネームにかけて指令を伝えていくルルーシュ。
彼にとってはあまり馴染みのない呼び方だが、日本人としては受け入れやすい呼び名なのだろうか。旧日本軍人達からの反発も思ったよりなく皆進んで指令に従っている。
「よし、『N5』と『飛車3』は合流後そのまま前進。敵を押し潰せ!」
即席の連携もゼロの指示のおかげか上手く機能しており、各地の戦闘で有利に動いている。
そして目下最優先のターゲットがいるポイントに目を向けると、日本解放戦線が奮戦し、コーネリアとギルフォードを釘づけにしている。
さらにそのポイントにはカレンの紅蓮弐式が向かっており、彼女が参戦すればほぼ勝敗は決したと言っていいだろう。
最早戦況は決したも同然だ。
「コーネリアーーーーッッ!!」
『なっ……新型か!?』
そしてコーネリアとギルフォードのいるポイントへと到達し、楔を打つようにして切り込む紅蓮弐式。
それを遮ろうと数機のサザーランドとグロースターが立ちはだかるが、黒騎士直々の格闘戦能力と高いスペックを持つカレンの前には障害にもならない。
『くっ……コーネリア殿下!!』
『いかせるものかっ!!』
ギルフォードが援護に駆けつけようとするも、藤堂がそれを許さない。
四聖剣も紅蓮弐式の突入を援護するために、次々とブリタニア軍に襲い掛かる。
そしてついに、紅蓮弐式がコーネリアのグロースターに接触する!
『下種の分際で!!』
神速の速さで突き出したランスの一撃。
だがこれまで数々の敵を屠ったこの攻撃をカレンは容易く回避し、逆に引き戻そうとするランスの穂先を掴むと輻射波動を放射。
コーネリアは膨張するランスと右腕を目にして咄嗟に切り離し、なんとか本体を守るが戦闘能力の半分を失ってしまった。
残った左腕でライフルを抜き一斉射するも悉くかわされ、スラッシュハーケンもナイフに弾かれるどころか、二又の根元に挟み取られてしまうのを目にし、本能で感じ取ってしまった。
(性能差が違いすぎる……これでは勝てない!!)
加えて配下の兵も半分以上がやられ、最早押し込まれるのも時間の問題だ。
空からその様子を見守っていたルルーシュは、冷静にレーダーに目を走らせ周囲の様子を警戒するのも怠らない。
だがコーネリアはほとんど経戦能力を失い、最大の懸念だった白騎士もアキトが抑えている。そこに援軍が現れる様子も無い。
「これで……チェックだ!」
ルルーシュは勝利を確信しその言葉を口にし――
――――キュンッ!! そしてその直後、エステバリスの背部ユニットを何かが通り過ぎ、一瞬後通り過ぎたその跡から火を吹き出した。
アサルトピット内に一斉に警報が鳴り響き、動揺するルルーシュ。
「狙撃だとっ! どこから撃ってきた!?」
とにかく今は自分の身を守ることを優先しなければならない。
推進ユニットの片方がまだ生きているが、それもいつ炎に包まれるか分からない。
ルルーシュは、徐々に高度を下げるエステバリスを懸命に操作し、なんとか着陸に成功すると使い物にならなくなった推進ユニットを切り離した。
その直後にユニットが爆発し炎に照らされるが幸いにもダメージは無し。正に危機一髪だった。
『ゼロ!? ゼロ、大丈夫ですかっ!?』
「私は大丈夫だ。エンジン部をやられたが、機体そのものは無傷だ」
こちらの通信を聞いたのだろうか。心配そうに声をかけるカレンに対し、気丈に返事をするルルーシュ。
大分戦場から流されてしまっただけでなく、正確な情報が得られなくなってしまったが、まだ情勢が此方に有利なのは間違いない。
「カレンはそのままコーネリアをやれ! 黒騎士はそのまま敵を引き付けて――」
『へぇ……小うるさい蠅を撃ち落したと思ったら、敵の御大将だったとはね』
突如割り込んだ全域に響き渡る外部通信に、背を寒くするルルーシュ。
声の方向にゆっくりと振り向くと、ソイツはいた。
右腕には銃身下部に刃を備えた細長いライフルに、左腕には全身の半分を覆うような巨大な盾。
さらに背中にはミサイルポッドらしきものと細長い銃身が覗いている。
そしてまるで西洋の騎士のようなフォルムは今まで何度も目にしたものだ。
「白騎士……? いや違う!」
目の前のナイトメアは白と金という派手なカラーリングではなく、若干落ち付いた白と青のカラーリングで塗装されている。
そして決定的な違いは、額にこしらえた巨大な角だ。
だが物々しい兵装と姿からだけではない。このプレッシャーは、白騎士やアキトから発せられるものと同等のもの……つまりは腕利きのパイロットが乗っている!
『コーネリア総督には悪いが……ゼロ、貴様の首はこのドロテア・エルンストの『モノケロス』が貰い受ける!!』 そう吠えたのは、とある世界でナイト・オブ・フォーの地位にいたビスマルクに並ぶと言われる豪傑、ドロテア・エルンスト。
そして彼女の乗機は、これまたとある世界で名をはせたランスロットの予備パーツで作られた、ランスロット・クラブ、改め「モノケロス」。
時と場所、そして運命すら変遷したこの世界で、彼女は戦地に立つのだった。
※オリジナル兵器説明
『無頼・改(乙式・甲式)』
改良を施した無頼に、更にアキト達が改良を加えた量産コピー機。
全体的な出力と反応速度が向上しているが、一番の変更点は兵装である。
ナイトメアの防御力の弱さを指摘したアキトとラピスは、今後の量産機の生存率を向上させるためにディストーションフィールドの変わりに『衝角徹甲盾』を装備。
『廻転刃刀』と併せて使用することで、高い防御力と突破力を備えもった機体となるが、衝角徹甲盾の重量はかなりのものであるため、スピードは遅くなる。
なお、盾を持たない方を「乙式」、盾を持った方を「甲式」と暫定的に呼称している。
武装――スタントンファ×2
スラッシュハーケン×2
廻転刃刀×1
衝角徹甲盾×1(甲式限定)
※5/30 誤字訂正しました。