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運命戦記リリカルEXTRA.AC改 無印編2、出会い
作者:起源くん   2012/07/28(土) 06:17公開   ID:ACn/HtNdYIQ
午前中の授業が終わり。
優人たち四人は学校の屋上で、お弁当を食べていた。

「ところで、皆はアンケートに何て書いたの?」

突然アリサが尋ねた。
午前中の授業に将来の夢についてアンケートをとったのだ。

「アリサは?」

「それがね・・・・ちょっと迷っているのよ・・・・」

いつもは自身満々に言うアリサが、迷っていた。

「なんか珍しいね。アリサが迷うなんて。いつもなら即決するのに・・・・」

「あたしだって迷う時はあるわよ!・・・・以前だったら、親の会社を継ぐって言ったんだけど。今は別の事に興味を持ったのよ」

「別の事って?」

そのことを追及されたアリサは照れ臭そうに、その職業を告げた。

「・・・・ジャーナリストよ・・・・」

「ジャーナリスト?・・・・あ、もしかして・・・・」

「ええ、そうよ。新聞部をやってたら興味がわいたのよ」


聖洋新聞部。それは優人が設立したクラブである。
と言っても非公式で、優人達が勝手にやっているのだが、思いの外好評である。
ちなみに、部長は何故かアリサになっているが、優人はあまり気にしていない。

「まぁ、まだ時間はあるし、これから決めればいいと思うよ」

「ええ、そのつもりよ・・・・あんた達は?」

アリサは、すずかとなのはに尋ねた。

「私は工学系の仕事ができればいいと思っているの。将来はロボットを作れたらいいなって」

すずかは照れくさそうに答えた。
ロボットを作る。それが小さいころから抱いていたすずかの夢である。

「えっと・・・・・私は・・・・・」

なのはは口ごもり、オズオズと答えた。

「何も・・・・・ないかな・・・・・」

「・・・・・」

しばしの沈黙、そしてアリサが・・・・・

「何もないですって!」

「にゃ!?」

怒鳴り声を上げた。将来の夢が無いと言うなのはに激怒した。

「アリサちゃん、落ち着いて。」

すずかは、怒り狂うアリサをなだめようとしたが、それでもアリサの怒りは収まらなかった

「でも、私、何にも取り柄ないから・・・・・」

なのははイマイチ自分に自身を持てないようだ。
それを見かねた優人が、

「取り柄が無くてもいいんじゃないのか?」

「え?」

「取り柄が無いなら、取り柄をつくればいい。今は見つからなくても見つけようと思えば、取り柄や夢は見つかると思う」

空っぽを恥じることはない、空っぽなら注げばいい。
過去に思った事を。優人はなのはに伝えた。

「なのはにも、いつかきっと見つかるよ」

「優くん・・・・・」

そうして、なのはと優人は見つめ合う。

「はいはい、そこイチャイチャしないの」

アリサの言葉に、優人となのはは顔を真っ赤にして。

「い、イチャついてなんかしてないぞ!」

「う、うん!違うもん!」

大声で否定した為。周りの人が優人となのはを凝視した。
二人は更に恥ずかしさのあまり顔を伏せてしまった。

「アリサちゃん。あまり二人をいじめちゃダメだよ」

「別にいじめてはいないわよ。からかっているだけ」

「同じようなものだと思うけど・・・・・」

「うっさいわね・・・・・あ!そうだ。皆は例の噂聞いた?」

「「「噂?」」」

「実はね。聖洋小学校の近くの森にお化けが出たらしいわよ」

アリサの話によると。数日前から、森に黒い影のようなお化けが出て来るらしい。
目撃者も結構いるみたいだ。

「なるほど、記事のネタにはいいと思う」

「でしょ?早速放課後に調べるわよ」

「でも・・・危なくないかな?」

「ここで引いたら。我ら新聞部がの名がすたるわよ!そう言う訳で!早速調査よ!」

「「おー!」」

「大丈夫かな・・・・・」

すずかの心配を尻目に、新聞部は調査をすることになった。




放課後。優人達は噂の森に差し掛かる。

「それじゃ、行くわよみんな!」

アリサが張りきって行こうとしたが、

「待ってくれアリサ」

と優人に呼び止められた。

「何よ?」

「本当にお化けが出たら大変だ。俺が先頭に行く」

「むぅ・・・・わかったわよ」

アリサは渋々優人に先頭を譲った。

「優人くん。魔術でお化けを追い払えるの?」

すずかは疑問を優人に問いかけた。すると優人は首を横に振り。

「やってみないと何とも言えないけど。怯ませるくらいは出来ると思う」

「なんか不安になって来たわ・・・・・」


そして彼らは森に入って行く。




しばらく森の中を歩いて行くが、未だにお化けに会わずにいた。
ふと、アリサが思い出したように優人に聞いてきた。

「ねぇ、そういえばあんたのアンケートについて聞いてなかったわね」

「俺の?」

「そうよ。皆は言ったのに優人だけ言わないのは不公平よ」

「それもそうだな」

「やっぱりジャーナリスト?」

すずかの答えに優人は首を振った。

「あれ?そうなの?」

「新聞部を作ったのは何となく。でもなってみたいのは他にあるんだ」

「それは何?」

優人は少し恥ずかしいそうに答えた。

「正義の味方になりたいんだ」

「「「・・・・・」」」

優人の言葉に、三人は黙ってしまった。

「まぁ、そんな反応をすると思ったよ・・・・・」

優人は少しため息を吐いた。

「あんた正義の味方になりたいの?」

アリサの言葉に優人は少し頷いた。

「なりたいって言うか、なれたらいいなって良いなって思っているだけ」

まるで自分はなれないように言った。
なのはその事が気になり、優人を追求した。

「それどういう事なの?」

「正義の味方ってのは、大勢の人を救うんだ。でも、全ての人間を救えないから必ず犠牲が出る。だから十を救う為に一を見捨てるなんて事もある。でも、俺は誰かを見捨てるなんて出来ない。そのせいで大勢の人が死ぬとしても・・・・・」

優人は真剣な眼差しで答えた。
全ての人間は救えない。しかし、誰かを見捨てる事はしたくない。

それを聞いたアリサはいつもの口調で優人に言った。

「あんた馬鹿じゃない?」

「「アリサちゃん!?」」
なのはとすずかは驚いたが、アリサは気にせず続けた。

「誰かを見捨てる事が正義な訳ないでしょ。むしろ、最後まで諦めないあんたの方がよっぽど正義の味方だわ」

アリサはそう宣言した。犠牲を前提の正義は間違っていると。しかし優人は、

「カルネアデスの板って知っている?」

「え?・・・・・知っているわよ」

カルネアデスの板。
ある船が嵐で沈没してしまい、二人の人間が嵐の海に投げ出される。
荒れ狂う海に一枚の板があるが、二人一緒にしがみついてしまうと沈んでしまい、どちらかしか生き残れない話である。

「正義の味方は自分を犠牲にしても他人を助けるけど、俺はそこまで出来ない。だから・・・・・」

優人は立ち止まり、三人の方を見て。

「だから憧れる。ああいう風に他人の為になにかをやれる人を」

優人は赤い外装の男の事を思い浮かべながら言った。
いつかあの背中に追い付きたいと、その思いは今も変わらず抱き続けていた。




四人はしばらく森を散策するが、肝心なお化けは現れず日が暮れようとしていた。

「やっぱりガセだったみたいだ」

「う〜スクープになると思ったのに〜」

アリサは悔しそうに足踏みをしていた。

「そろそろ帰ろうよ。もう日がくれちゃうし」

すずかは少し不安そうに呟いた。
日はだんだんと沈み、辺りは暗くなっていた。

「そうだね・・・なんだか不気味・・・・・」

なのはも不安そうにしていたが、アリサだけは諦めていなかった。

「何言ってんの!こういう時に出るものよ!調査は続行よ!」

「「えーーーー!」」

アリサの調査続行宣言に、二人は抗議の声を出したがアリサに却下されてしまった。
そこで優人はアリサを説得する事にした。

「アリサ、夜の森は意外と危ないんだ。それに目撃されたのは昼頃だって言っていたし。無理をするより、後日に再調査した方が安全だ」

優人の正論に、アリサはぐぬぬと唸りながら、

「わかったわよ・・・・・それじゃ今日の調査はここ――」

アリサが言い終わる前に異変が起きた。

《た・・・す・・・・・》

「「!?」」

何処からともなく声が聞こえる。
ここには優人、なのは、アリサ、すずかの四人しかいないはずだが、その声は四人誰のものではない。

《だ・・・・れか・・・・たすけ・・・》

再び声が聞こえた。いや、聞こえたというより頭に響いているかんじだ。

「優人くん?なのはちゃん?」

「どうしたのアンタ達?」

どうやらアリサとすずかには聞こえてはいないらしい。

「みんな、この声聞こえないの?」

なのはの問いに、二人は首を横に振るが優人だけは頷いた。

「俺となのはだけ聞こえるみたいだ・・・・・」

「え?それどういう事よ!?」

「まさか・・・・・噂のお化け!?」

二人は気が動転していた。
そして再び声が響く。

《誰か・・・・・助けて・・・・・》

「こっちから聞こえるの!」

なのはは声に導かれるように走った。

「なのはちゃん!?」

「アンタどこ行くのよ!」

すずかとアリサは叫ぶが、なのははそのまま森の奥に行ってしまった。

「後を追いかけよう!」

優人の言葉に二人は頷き、急いでなのはの後を追った。




しばらく走ると、なのはが何かを見つけたようにしゃがみ込んだ。
後から三人も追いついて来た。


「もう!一人で行くんじゃないわよ!」

「何を見つけたの?」

「うん・・・・・これ――」

なのはは手にもっている物を三人に見せた。
そこには傷だらけのフィレットがいた。

「野犬にでも襲われたのかしら?」

「優くん。治せる?」

なのはは不安そうに優人に尋ねた。優人は笑顔で答えた。

「これくらいなら治せる」

そう言って、優人はフィレットに手をかざす。

「接続開始(アクセス・オン)」

優人の掌に魔力が集まり、フィレットを包み込む。

「heal」

そう呟くと、フィレットの傷が瞬く間に塞がり無傷の状態になった。
するとフィレットは起き上がり、優人達の方を向いて。

「助けてくれてありがとう」

喋ったのだった。

「「「「・・・・・」」」」

四人は呆気にとられてしまい。しばらく経ってから、

「「「「喋ったーーー!?」」」」

と、大声で叫んだ。

「え?なんでそんなに驚いているの?」

フェレットも、四人の反応に戸惑っていた。

「すご〜い。優くん、このフェレット喋っているよ!」

「・・・・・」

「物凄いスクープキター!!」

「アリサちゃん落ち着いて!」

なのはは珍しそうにフィレットを監察し、優人は何かを考えていた。
アリサは我を忘れて持っていたカメラでフィレットを撮影し、すずかはアリサを落ち着かせようとしていた。

「僕はフェレットじゃない!」

そうフィレットは主張するが、どこからどう見てもフィレットの姿だ。
どうやらこのフェレットは、自分の姿がフェレットだという事に気付いていないらしい。
優人は持っていた手鏡をフィレットに見せた。

「なんじゃこりゃあーーーー!」

フィレットの叫びが木霊する。
これが異世界の来訪者。ユーノ・スクライアとの出会いだった

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