ここは、少年と老人が戦った発掘現場である。
あちらこちらで怪我人で溢れていて。それを救助、治療をしている集団がいた。
「被害状況は?」
見た目が10歳くらいの少年は、自分より年上の人物に聞いた。
どうやら、少年の部下らしい。
「は、負傷四十七名、重傷者十九名、死者は七名、そして行方不明が一名」
部下の報告を聞いた少年は舌打ちした。
救助要請を受け現場に駆け付けたが、すでに襲撃犯の姿はなく。
残っていたのは破壊された発掘所と怪我人だけだった。
「襲撃犯の手がかりは?」
「そ、それが、白いコートを着た老人・・・・・としかなく、顔はフードで隠れていたので人相はわかりませんでした」
襲撃犯の手がかりはゼロ。
続けて少年は行方不明者の事を聞いた。
「行方不明者は現場監督していたユーノ・スクライアです」
ユーノ・スクライア。とある魔法学院を最年少で卒業した秀才で、今回の発掘現場の指揮をしていた。
(彼が消えるとき大きな光が現れた・・・・・という証言があった。それと同時に大きな魔力の流れを観測した。おそらく何らかのロストロギアが発動したのだろう・・・・・)
発動させたか。あるいは発動してしまったか。
この場に手がかりはもうないと判断すると、少年は部下に指示を出す。
「とりあえず僕は今後の捜査方針を艦長と話す。引き続き救助活動をしてくれ」
「了解」
部下は敬礼をするとその場を走り去り。少年は艦長がいる艦、アースラに戻って行った。
優人達は喋るフィレット。ユーノ・スクライアの話を聞いていた。
話によると彼は別世界の人間らしい。
とある世界の発掘現場の監督をしていたら、謎の老人に襲撃された。
抵抗むなしく、老人が放った魔法にやられ動けなくなってしまったらしい。
「どうしてフィレットの姿に?」
「はい・・・・・どうやらジュエルシードのせいだと思います」
「ジュエルシード?」
「ロストロギアの一種です」
「ロストロギア?」
聞き慣れない単語に四人は?マークを浮かべていた。
そこでユーノは詳しく話始めた。
「ロストロギアは古代魔法文明が産み出した遺物で、物によって世界を1つ滅ぼせる事だってあります」
「世界を滅ぼせるですって!?」
アリサは驚いて声を上げた。無理もない、世界を滅ぼせるかもしれない物が海鳴市にあるというのだから。
「大丈夫です!僕が責任持って回収しますから!」
「それはちょっと無茶だ。傷は治っても、魔力は回復していないだろ?」
「そ、それは・・・・・」
ユーノは反論出来なかった。
傷は優人の魔術でほぼ完治したが、魔力の方までは回復できていない。
そこで優人はある提案した。
「俺が手伝う」
「え?」
優人の突然の提案に、四人は呆気にとられた。
「ちょっと優人!本気なの!」
アリサは優人に詰め寄る。
しかし優人は臆せず、真剣な眼差しで答えた。
「本気だよ」
「話しを聞いた限りかなり危ないわよ!。ここは・・・・・」
「大人達に任せられる事じゃない。対処できるのは、魔力を扱える人間だけだ」
「で、でも・・・・・」
「あの、ロストロギアの回収は結構危険ですよ。命の保証はありません」
「だったら尚更一人でやるより二人でやったほうがいいと思う」
「あ、あのどうしてそこまでしてくれるんですか?」
ユーノは尋ねた。
どうして見ず知らずの他人、ましては異世界の住人である自分を助けるのかと。
その質問に、優人は屈託の無い笑顔で答えた。
「友達を助けるのは当たり前だろ?俺達はもう友達だ。だから助けるんだ」
自分達はもう友達だ。
ユーノはその言葉にびっくりし。アリサ、すずか、なのはの三人は笑った。
「じゃあ、私達も手伝うわ」
「ええ!?さっき言いましたけど、もかなり危険ですよ!」
「うっさいわね、わかっているわよ。でも、探し物は人数が多いほうがいいわよ。ねぇ?なのは、すずか」
「うん!勿論だよ!」
「友達が困ったら、助けあうのが友達だもんね」
「みんな・・・・・ありがとう」
ユーノは涙を流しながら四人に感謝した。
「とりあえず、ユーノをどうする?」
「あたしの家には犬がいるから・・・・・」
「私は猫・・・・・」
「・・・・・士郎さんになんて言おう・・・・・」
結局、ユーノは優人となのはの二人が引き取る事になった。
「それじゃ今日はこの辺で――!」
優人はおぞましい気配を感じ、振り返った。
そこには黒い影の怪物がいた。
「グルルル・・・・・」
「な、何あれ・・・・・」
すずかが怯えながら呟いた。
アリサとなのはも気がつき、異形な怪物に恐怖した。
「あれは!ジュエルシードの暴走体!」
ユーノはいち早く気づいた。
あの怪物の正体はジュエルシードによって産み出されたのだと。
怪物は五人に向かって走り出し、なのはに飛びかかった。
「なのは!」
「え――」
アリサは叫ぶが、なのはは突然の事で反応出来なかった。
怪物の爪がなのはに向かって降り下ろされようとした瞬間。
「hack!」
優人の魔術が怪物に当たり、怪物は怯み出した。
その隙にアリサはなのはの手を引いて逃げ出した。
「なのは急いで!」
「う、うん!」
アリサ、すずか、なのは、ユーノの四人は逃げ出せたが、優人は怪物の標的にされてしまっていた。
「優くん!」
「こっちだ化け物!」
そう言って、優人は森の奥に走って行き、怪物はそのあとを追いかけた。
「アイツどこに行くのよ!?」
「早く追いかけよう!」
「待って!」
優人の後を追いかけようとした時、ユーノのが三人を呼び止めた。
「君達が行っても足手まといになるだけだ!」
「じゃあどうするのよ!優人を見捨てるの!?」
「・・・・・方法はあるよ」
ユーノは少し躊躇いながら、なのはの方を見た。
「なのは。君がこのレイジングハートを使うんだ」
そう言ってユーノは紅い宝玉をなのはに差し出した。
「え?・・・・・私?」
「うん、君は僕の念話を聞き取れた。魔導師しての素質はあると思うんだ」
「で、でも、私、魔術回路を持っていないよ?」
「魔術回路?よくわからないけど、魔法はリンカーコアがあれば使えるよ」
どうやら、ユーノがいう魔法は魔術と違う物らしい。
「ちょっとアンタ!なのはに危険な事させようとしてんのよ!」
「僕が助けに行ければいいけど、今の僕には魔力が殆んど無いんだ。それに、三人の中でリンカーコアを持っているのは彼女しかいない」
「だけど――」
「私・・・・・やるよ」
なのはの言葉に、すずかとアリサ
「なのはちゃん!?」
「ちょっとあんた本気なの!?」
「優くんを助けられるなら、私やるよ!」
なのはの眼には固い決意を秘めていた。
それを見たすずかは、
「・・・・・わかったよなのはちゃん」
「ちょっとすずか!あんた何言ってるのよ!?」
「こうなったなのはちゃんは、絶対に止められないもの」
すずかの言葉でアリサは思い出す。
なのはは一度決めたら絶対曲げない。かなり頑固者である事を。
「それはそうだけど・・・・・」
アリサはしばらく唸っていたが、なのはを説得できないと思い。彼女に向かって指を指しながら、
「わかった、もう止めない。だけど!ちゃんと二人で無事に戻ってきなさい!」
「うん!約束するよ!」
そしてなのははユーノの方に向き、彼から紅い宝玉レイジングハートを貰った。
「機動コードを言うから、僕の後に続いて」
「うん、わかった!」
ユーノは機動コードを言い始めた。なのはもその後を追うように呟く。
「風は空に――」
「風は空に――」
「星は天に――」
「星は天に――」
「不屈の心をこの胸に――!」
「不屈の心をこの胸に――!」
「この手に魔法を――!」
「この手に魔法を――!」
そしてなのはは大声で叫ぶ。
「レイジングハート!セーットアップ!」
【スタンバイ・レディ】
するとなのはは桜色の光に包まれる。
一方優人は森の奥で、ジュエルシードの怪物と交戦していた。
「shock!」
優人の魔術が怪物に直撃するが、優人の魔術は殆んどが牽制や補助、治癒などの支援を目的とした魔術しかないので、決定打を撃てずにいた。
(どうする?なにか、なにかないのか――)
優人は思考を止めずに、怪物の攻撃をかわす。
すると向こうから――。
「優くん!」
なのはの声が聞こえてきた。
(なのは!?どうして!?――)
優人が疑問を浮かべていると、怪物はなのはに向かって走り出した。
「逃げろ!、なのは!!。」
しかし遅かった。暴走体はなのはに向かって走り出した。
間に合わない。優人はそう思った。しかし―――。
【プロテクション。】
女性の声が聞こえと同時になのはの周りにバリアが張られ―――。
「グルァァァァァ!!」
怪物はバリアに弾かれ、逆にぶっ飛んだ。
その隙になのはと合流した。
「なのは!大丈夫!?」
「うん!、レイジングハートが守ってくれたから」
優人はなのはの持つ杖を見た。
外見状は杖の様だか、中身はハイテクの機械みたいだ。
なのははジュエルシードを封印するにはデバイスが必要で、魔力がある自分が使うことになった事を優人に話した。
「なのは、攻撃系の魔術は使える?」
「えっと・・・・・レイジングハート?」
なのははレイジングハートに聞いた。
するとレイジングハートは――。
【魔術はありませんが、魔法ならあります】
冷静な口調で答えた。
優人は魔法という単語に引っ掛かたが、些細な事だと思う事にした。
(なら―――)
優人は再び思考する。
(さっき、怪物の胸にshackを当てたら一際大きく怯んだ。もしかして―――)
優人は思考を止め、なのはに作戦を伝えた。
「なのは、やれる?」
「やってみせる!」
怪物は再び立ち上る。
なのはと優人は怪物を挟み込みように別れた。
怪物はなのはに手を出せないと思ったのか、再び優人に襲いかかった。
優人は怪物の爪をかわし、胸に目掛けて魔術を放つ。
「hack!」
怪物の体中に魔力が走り出し、怪物の動きを抑制した。
「ディバインシューター!!」
そして動けなくなった所を。なのはが怪物の胸に目掛けて魔法を放つ。そして――。
「グルァァァァァ!!!!」
怪物はなのはの魔法によって、粉々に飛び散った。
怪物が散った後には宝石が残った。
「レイジングハート!」
【了解、ジュエルシード、シリアル21封印】
なのはの呼び掛けに応えるようにレイジングハートがジュエルシードを封印をした。
海鳴市を見渡せる丘に、一人の白いコートを着た老人がいた。
「まったく、厄介な事になった。」
老人はため息をついた。
(よりによって、この世界のこの街にジュエルシードが現れるとは。管理局の奴らもいずれ来るだろう。それだけではない、あの小娘のそばにいるサーヴァントと管理局が接触すれば、全てが水の泡になる)
やる事が多い事に老人は憂鬱な気分になる。
(管理局に悟られず、尚且つジュエルシードを奪うのが当面の目的だな。)
困難だが、やらなくてはならない。自らの悲願のために。
老人はそのまま魔法陣の中に消えて行った。