夜の学校、なのは達はそこにいた。
なのははレイジングハートを掲げ―――。
「レイジングハート!」
【ジュエルシードシリアル20、封印】
四つ目のジュエルシードを封印に成功した。
「お疲れなのは」
「今回は簡単だったね」
ユーノはなのはを労い、
優人は魔術を使ってなのはの疲労を癒していた。
「終わったんなら、さっさと帰るわよ」
「夜の学校は、不気味だもんね。」
「う、うん。さっきの見たら怖いもんね。」
三人が怖がるのも無理はない。
ただでさえ怖いのに、先程戦ったジュエルシードの暴走体を見たら、他にも何かいると思ってしまう。
「大丈夫だって、ここには何も無いって」
優人は自信満々に言った事に、四人は不思議そうに思った。
「なんで、そう思うの?」
ユーノが尋ねると、優人は当たり前のように答えた。
「だって―――見えるから――」
その言葉に四人は固まった。
そう、優人は幽霊を視認する事ができるのだ。
「と、とりあえず帰るわよ!」
アリサの号令と共にその場を後にする五人。
最後に優人は、誰もいない校庭に手を振ってから、四人の後を追った。
家に戻った優人達は、なのはの部屋でこれまでの成果を確めていた。
「ジュエルシード。これで四つだね」
「そうだね。ジュエルシードは全部で21個だから、後17個だね」
「まだ3分の1か・・・・・」
まだまだ先の長さに、三人はため息をつく。
「話は変わるけど、明日のサッカーの試合どうする?アリサ達は取材に行くみたいだけど・・・・・」
明日は高町士郎が監督しているサッカーチームの試合があり。新聞部はその試合を記事にする予定があるのだ。
しかし、立て続けの魔法の使用でなのはは疲労を感じている。
優人の魔術は傷は治せるが、疲労の回復には限度あり。なのはの体に疲労が溜まっているのは明白。優人は心配そうになのはに聞いた。するとなのは笑顔で―――。
「大丈夫!私は平気だよ!」
そう言うが、なのはが強がっているのは目に見えていた。そこで優人は――。
「取材が終わったら、どこかに遊びに行かない?」
「え?・・・・・取材が終わったら?」
「ああ、最近遊んでないし。少しは気分転換も必要だと思う」
「でも・・・・・」
「良いんじゃないかな。たまには息抜きも必要だよ」
なのははしばらく考えた。
ジュエルシードの事を考えれば、明日も探した方が良い。しかし、ユーノが以前言っていた事を、なのはは思い出した。
『ジュエルシードは発動しないとただの石同然なんだ。だから発動前に探す事はほぼ不可能に近い。後手に回るかも知れないけど、発動後に封印が一番確実なんだ』
その事を思い出したなのはは、不謹慎ながらも少し休んでも良いかなと思った。
「・・・・・そうだね。少しくらい休んでもバチはあたらないよね」
「そうと決まれば、アリサ達も誘おう。大勢の方が楽しいし」
「うん!」
「それじゃ、おやすみなのは」
「おやすみ!優くん、ユーノくん」
優人とユーノはなのはの部屋を出ていき。なのはは明日に備えて、早めに寝ることにした。
次の日、優人達は士郎が監督している翠屋JFCの試合を見ていた。
結果は1対0で翠屋JFCの勝利に終わり。勝利祝いとして士郎は、翠屋でケーキをご馳走している。
もちろん新聞部も一緒にご馳走になっている。
「う〜ん♪このケーキ美味しいわね」
「これはね、翠屋の新作ケーキなんだ」
「え?食べちゃってよかったの?」
「今回は祝いと試食を兼ねているから大丈夫」
「よし!また新聞に書くネタが増えたわ!」
そう言うとアリサは、新作ケーキの味を細かく書いていた。
「・・・・・アリサって、ジャーナリストの才能あるよね」
「・・・・・うん、何でも記事にしちゃうもんね」
アリサのジャーナリズムに感心する側、なのはだけが浮かない顔をしていた。
「・・・・・」
「なのは?」
「にゃあ!?ど、どうしたの優くん?」
「どうしたの、じゃないよ。さっきから浮かない顔をしているけど・・・・・」
「え?・・・・・な、何でもないよ」
「何でもない訳ないでしょ。気になる事があるならさっさと言う!」
アリサの気迫に怖じけついたなのはは口を開こうとしたが、また紡ぎ。
「たぶん私の気のせいだと思うから、気にしないで」
「そう?それならいいけど・・・・・」
彼女がそう言うなら、本当に気のせいだろうと、アリサはそれ以上の詮索をやめた。
「それじゃあケーキを・・・・・ああぁーー!」
なのはは叫ぶ。何故なら自分のケーキが無くなっていたのだ。
その犯人は目の前に座っている―――。
「優くん!なんで私のケーキ食べてるの!」
「ん?」
優人は呑気に、なのはのケーキを一口ほうばっていた。
「だって・・・・・なのは一口も食べていないから、要らないんじゃないかと・・・・・」
「ちょっと考え事しただけだよ!もう、返してよ!」
なのはは一口食べられたケーキを奪い返し、そのままケーキを一口食べた。
そこで彼女は気づく。これは優人が口にしたケーキだと。
(・・・・・こ、これって、か、間接キスになるのかな?で、でも・・・・・)
一人悶々していると、優人はケーキの方を見て―――。
「要らないんなら頂戴」
「あげないよ!」
なのははやけくそに、ケーキを食べた。
ケーキを食べ終えた優人達は、約束通りに街に遊びに行った。
「へぇ〜魔法文化が無いのにすごいな」
人間姿のユーノは感心しながら、街を見回っている。
「そんなにすごい事なの?」
「僕達の世界、ミッドチルダは魔法で発展した世界だから、魔法無しは考えられないなよ」
ユーノは、ミッドチルダは魔法と科学で発展した世界なのだと。四人に詳しく話した。
「みんな魔法が使えるの?」
「いや、使えない人もいるよ。他にも、この世界の出身の人もいるんだ」
「え!?そうなの!」
「うん。スズキとかサトウっていう名字の人がいるから、恐らく先祖がこの日本の出身だったんだと思う」
「そんな昔から・・・・・」
「うん、本によると。およそ140年前に何かあったらしく。しばらく観測指定になったのが切っ掛けだと思う」
「観測指定?」
「うん。管理外世界の次元に何かあった場合に一時的に監視するんだ。けど、結局とりごし苦労だったらしいよ」
その時、管理局の人間が現地の人と交流した結果。ミッドチルダに移住する人が居たとユーノは言う。
「へ〜意外とこの世界の事を知られているんだ」
「うん、この世界の食文化もミッドにはあるから」
「もしかして日本の料理も?」
「うん、あるよ。板前がいるからね」
優人達はお互いの世界の話をしながら街を歩いてた。
その時―――。
「「「!」」」
「ちょっと!急に立ち止まんないでよ!」
「どうしたの?」
アリサとすずかは感じ取れなかったが、3人は感じ取れた。
ジュエルシードの発動時と同じ感覚である
「ユーノ!」
「間違いないよ。ジュエルシードが発動したんだ」
「何ですって!?」
「こんな街中に・・・・・」
今までのジュエルシードは人気の無い場所だったが。今回は街中、しかも休日日なので人通りは多い。
「アリサとすずかは急いで避難してくれ!行くぞ!二人とも!」
「うん!」
「わかった!」
アリサとすずかをその場に残し。優人達はジュエルシードの元に向かった。
「何これ―――!?」
現場に到着した彼等が見た物は、樹が街を飲み込んでいる光景だった。
「今までと桁ちがいすぎる!!」
優人もこの事態に驚いていた。
今までのジュエルシードの暴走体は、せいぜい中型動物の大きさにしかならなかったが。今回は街を飲み込む程の大きさになっていた。
「多分これ、人が発動したんだと思う」
「どういう事だ?」
「願いっていう物は人の方が強い。ジュエルシードは願いが強ければ強いほど強力な物になるロストロギアなんだ」
「そうか・・・・・とりあえず現状を把握したい。近くのビルの屋上に行こう」
「それなら任せて、僕の飛行魔法で行けばすぐだよ」
「頼む。それじゃ行くよなのは」
優人に声を掛けられたなのはビクッとしてから、優人の方に振り返った。
「え!?あ、何?」
「何?じゃないよ。ユーノの飛行魔法でビルの屋上に行くんだよ」
「あ、うん。わかった・・・・・」
なのはは浮かない顔をしながら、ユーノの元に向かった。
(どうしたんだなのは・・・・・)
そんななのはの様子を心配しながらも、優人はなのはとともに抱えられ、ビルの屋上に向かった。
ビルの屋上についた3人だが、その光景は酷いものだった。
樹が街すべてを喰らい尽くすが如く巨大になっていた。
ユーノが結界を張ったお陰で被害は広がっていないが、それでも大惨事に違いはなかった。
「多分、この樹の何処かにジュエルシードと発動させた人がいる。その近くにジュエルシードがあるはず」
「その人を探せばいいんだね?レイジングハート!セットアップ――!」
なのはは待機モードのレイジングハートをデバイスモードにし、バリアジャケットを展開した。
「探せる?レイジングハート」
【やってみます。エリアサーチ】
レイジングハートは魔力で出来た桜色の光球を放ち、樹の周りを飛び回せた。しかし――。
【周辺の魔力値が非常に大きい為、発見は困難です。申し訳ありません】
「そんな!!」
「エリアサーチが駄目だと打つ手がない・・・・・」
打つ手が無いと、ユーノが呟いていると優人が―――。
「それを探し出せばいいんのか?」
「そうだけど・・・・・サーチが使えないとどうしょうも・・・・・」
「任せてくれ」
そう言うと優人は、樹を観察し始めた。
(断片的な情報から割り出す―――)
優人はラプラスの眼を使った。
この眼は優人がかつて聖杯戦争に勝つために培った観察眼。
この眼で見た物の情報を瞬時に分析する事が出来る。
余談だが、これを使えばテストをオール100点はとれるが、カンニングみたいなものなので、優人は使わないようにしている。
「わかった!」
「え!?本当に!?」
「ああ、だけど距離が思った以上にある。封印魔法が届くかどうか・・・・・」
「それなら大丈夫。なのは、レイジングハートをデバイスモードからシューティングモードに!」
「う、うん!レイジングハート、シューティングモード!」
【シューティングモード以降】
するとレイジングハートは形状を変化し、先端部分が音叉状に変化した。
「これなら魔法距離がぐんと上がるよ。だけどこれだけじゃ、あの樹を突破して封印は出来ない。どうするの?」
「足りない威力は俺が補う!なのは、レイジングハートを―――」
優人はなのはと一緒にレイジングハートを持った。
「俺が狙いをつける。なのはは封印に専念してくれ」
「わかった!」
優人はレイジングハートの向きを微調整しながら狙いを付け―――。
「行くぞなのは!gain mag!」
優人の魔力強化により、レイジングハートから出ている羽根がより大きくなった。
「レイジングハート!」
【ジュエルシード、シリアル10封印】
レイジングハートが放った封印魔法は、樹の中心を貫いた。
ジュエルシードが封印されると、街を飲み込んでいた樹は消滅し、その中心には少年と少女が横たわっていた。
少年の姿を見たなのはは、浮かない表情を浮かべた。
「あの子・・・・・やっぱり・・・・・」
「どうしたのなのは?」
「さっきサッカーの試合に出ていた子だよ」
「どれどれ・・・・・あ、確かに出ていた。けど、どうしてジュエルシードを持っているんだ?」
「たぶん、試合が終わった時に拾ったんだと思う・・・・・私、見たから・・・・・」
なのはは告げた。
サッカーの試合後、あの少年がジュエルシードらしき石を拾っていた事を。しかし、確証も出来ず。そのままにしてしまった事を二人に話した。
「私のせいだ・・・・・」
「なのはのせいじゃないよ。ジュエルシードは発動しない限り、石同然なんだ。わからないのはしょうがないよ」
「全ての出来事を未然に防ぐ事は出来ない。だから、俺達は出来る事をするんだ。それが被害を少なくする方法だと、俺は思う」
「出来る事をする・・・・・」
優人の言葉に何かを思ったのか、なのははユーノにある頼みをする事にした。
「ねぇユーノくん。お願いがあるんだけど」
「何?なのは?」
なのはは決意の眼差しをしながら伝えた。
「魔法の上手な使い方。教えて欲しいの!」