なのはと優人の活躍で、ジュエルシードの一つを無事封印する事ができた。
その後二人は、ユーノを連れて高町家に帰っていた。
もちろん、ユーノさフェレットの姿で。
「可愛い〜♪」
「キ、キュ〜・・・」
現在ユーノは、美由紀にもみくちゃされていた。
優人は『野犬に襲われている所を助けた』と話した。理由は―――。
『ジュエルシードの事はなるべく秘密にしておきたいんだ。それに、“野犬に襲われている所を助けた”にしておけば、俺の格好を誤魔化せるし』
優人は、ボロボロになった制服を見せて言った。
そこでユーノはある疑問を浮かべた。
(なぜ、彼はバリアジャケットを展開しなかったんだろう)
通常、魔導師は戦闘中にバリアジャケットを展開させるのが基本。
デバイス無しでも展開できる。しかし、彼はそれを行わず戦闘していた。
(それに、彼の魔法は少し変だ。まるであの老人見たいに――。)
魔法陣の展開無しで強力な治療魔法を使った事に、ユーノは老人の魔法を連想した。
(優人とその事で話してみよう。もしかしたら、あの老人について何かわかるかも)
ユーノはもみくちゃにされながらも、その事を考えていた。
美由紀に解放されたユーノを連れて、優人は部屋に戻って来た。
するとユーノが質問した。
「ねぇ優人、ちょっと聞きたい事があるんだけど」
「ん?なに?」
「優人は、どうしてバリアジャケットを展開しなかったの?」
その質問に優人は首を傾げた。
「・・・・・それなに?」
バリアジャケットの事を知らない事に、ユーノ思わず声を上げた。
「ええ!?バリアジャケット知らないの!?あの時なのはが着ていた物だよ!」
「そう言えば、コスプレみたいな格好だったな」
「コスプレって・・・・・本当に知らないの?一応基本魔法の1つだけど・・・・・」
「知らない。そもそも、俺が使ったのは魔法じゃない」
「魔法じゃない?」
「魔術だ―――」
その後ユーノは、優人に魔術の事を聞いた。
魔力を使って起こす事のは魔法と同じだが、違う点があった。
魔術回路である。
ユーノは優人のリンカーコアを調べた。すると、驚愕の事実が分かった。
(これは、普通じゃない!?)
コアから管の様なものが体全身に伸びてた。
ユーノはこれ程奇怪なリンカーコアを初めて見た。
ユーノはいくつか仮説を建てた。
一、魔術の使用に適した形に進化した。
二、魔術の使用に適した形にコアを改造した。
三、リンカーコアが突然変異をした。
この三つだ。
しかし、魔法文明の無いことを考えると三しか無いのだが、それだと魔術を使える事に説明が付かない。
「優人は誰に魔術を教わったの?」
「覚えていない、気付いたら使えてた」
「え?それはどういう―――」
「士郎さんに引き取られる以前の事は覚えていないんだ」
優人は高町家に引き取られた経緯をユーノに話した。
「ご、ごめん・・・・・少し無神経だったよ」
「いいって、あまり気にしていないから」
優人は微笑みながら答えた。
すると、何かを思い出したように言った。
「あ・・・・・もしかしてアイツかな?」
「誰の事?」
「夢で出てくる時があるんだ」
優人は夢の中出てくる人間の事を話した。
皮肉屋でお人好しの赤い外装を着た男の事を。
「―――で、そいつに貰ったお守りがこれだ」
優人は少し嬉しそうに赤い宝石のペンダントをユーノに見せた。
「魔力が込められているね」
「ああ、だから魔力切れになりそうになったら、これから魔力を補充するんだ。魔力が少ない俺には重宝しているんだ」
その後、優人は断片的だがその男性について話し続けた。
(その人が、優人に魔術を教たのかな?)
ユーノはそう思いながらも、優人の話に耳を傾けた。
翌日、優人となのははいつも通りに学校に登校していた。
「ユーノくん、1人で大丈夫かな?」
「仕方がないよ。学校に連れて行くわけにも行かないし、いざっていう時は念話をすれば良いんだし」
「念話?優くん、念話って?」
「ん、ああ、昨日ユーノに教えて貰った魔法の1つだよ」
優人は昨日の話をなのはに話した。
するとなのはは、頬を膨らませて―――。
「優くんずるい!私も教えて欲しかったのに!」
――と、愛らしく怒った。
「そんなに怒るなよ。それに、念話は魔力を持っている人なら誰でも使えるって言っていた」
「そうなの?じゃあやってみる!レイジングハート、手伝って!」
【わかりました。マスター】
なのははレイジングハートの助けを得て、ユーノに念話をする。
《もしもしユーノくん?聞こえてる?》
《聞こえてるよ。どうしたのなのは?》
《優くんから念話の事を聞いて、試してみたの。なんか不思議な感じがするね》
《そのうち慣れるよ。とりあえず、何かあったら念話で連絡するように》
《うん!わかったよ》
そう言って、なのはは念話を終えた。
「どうだった?」
「うん!凄いね魔法って!」
「でも、遠くの人と連絡するなら携帯でもできるよね」
なのははおおはしゃぎをしていたが、優人の一言で一気にテンションが落ちた。
「・・・・・優くん。夢のないことは言わないの」
そんなやり取りをしながら、二人はバス停に向かった。
「ところで、ユーノくんはどうしているの?」
屋上でお弁当を食べていると、すずかがユーノの様子を聞いてきた。
「今は家で療養中だ。本人いわく、1日休めばそれなりに魔力は回復するって」
「魔力って、そんなんで回復するの?」
「普通なら何日もかかるけど、俺の魔力を少し分けたから二、三日も休めばある程度回復すると思う」
昨夜、優人はユーノにmp healを施した結果。ユーノの魔力はある程度回復した。
しかし、元々魔力の総量あまり無い優人なので、僅かしか回復できなかった。
それでも、優人の処置のおかげでユーノの魔力回復が早まった。
「へぇ〜魔術って、そんな事もできるんだ」
「まぁ、それでも出来る事は限られているけどね」
そんなやり取りをしていると、アリサがある話を思い出し、皆に話始めた。
「迷子の犬?」
「ええ、ちょっと知り合いの人の犬が行方知らずになっているのよ。もし、見つけたら教えて欲しいですって」
そう言ってアリサは一枚の写真を見せた。
そこには飼い主と子犬の姿が写し出されていた。
(あれ?確かこれって神社で・・・・・)
優人はこの子犬の姿に見覚えがあった。
以前、神社で見かけた犬に酷似していたのだった。
優人はその事を話すと―――。
「でかしたわよ優人!じゃあ早速、聖洋新聞部出動よ!」
「「「おーー!」」」
こうして放課後、優人達は神社に行く事になった。
放課後、四人は子犬が目撃を目撃したという神社に来ていた。
しかし、境内に入った瞬間。巨大な魔力の流れを二人は感じとった。
「優くん!」
「ああ、もしかすると・・・・・」
「何よ?二人ともどうしたの?」
「なのはちゃん?優人くん?」
アリサとすずかの二人には魔力を感じとる事が出来ないため、優人となのはが立ち止まった事を不思議がっていた。
「アリサ、すずか。もしかしたらここにジュエルシードがあるかも知れない」
「え!?」
「それって・・・・・」
優人の言葉で、ようやく事態をのみ込めた二人は周囲を見渡す。
境内は不気味な静けさだった。
「なのは、ユーノに念話を」
「わかったよ」
なのはは急いでユーノに念話をし、状況を知らせた。
「ユーノくんも、こっちに向かっているって!」
「わかった―――!?」
鋭い敵意を感じた優人はその方角に眼を向けると、そこには異形な怪物がいた。
昨日戦った怪物とは違い。しっかりとした実体を持ってたたずんでいた。
「グルルル・・・・・」
「また怪物!?」
「アリサとすずかは逃げろ!」
「で、でも・・・・・」
「いいから早く!」
優人が叫ぶと、二人は急いで境内の外に向かって走って行った。
「行くよなのは!」
「うん!レイジングハート、セットアップ!」
【了解、バリアジャケット展開―――】
レイジングハートがそう発言するとなのは服装が変わる。
制服をモデルにしたようなトリコロールカラーのドレス。その姿は天使を連想する。
(・・・・・は!?いけない、集中しないと――)
昨日はよく見ていなかったなのはのバリアジャケット姿に。優人は見惚れるていたが、すぐに気持ちを切り替えた。
「行くよ、レイジングハート!」
【わかりましたマスター】
なのはは昨日と同じように怪物に向かって魔法を放つ。
「ディバィンシューター!」
4つ魔力弾が怪物に迫る。
しかし、怪物の脅威の俊敏力でかわされてしまった。
「shock!」
優人も魔術を放つが、先程と同様にかわされてしまった。
(速い―――!?)
そして怪物は優人目掛けて突進してきた。
「くっ、move speed!」
優人は移動速度強化の魔術で素早くかわし、再び魔術で攻撃を仕掛ける。
「shock!」
しかし、相手の反応速度が速いため。魔術が当たらなかった。
「ディバィンシューター!」
なのはも攻撃を仕掛けるが、放った魔力弾は空を切る。
そして怪物は、なのはに迫った。
「レイジングハート、お願い!」
【プロテクション、展開】
なのはは昨日の防壁魔法を発動するが、防壁にヒビが入った。
「なのは!gain mag!」
優人はなのはのプロテクションに魔術を掛けた。
するとヒビが無くなり、先程より協力な物になった。
「グルァ――!?」
強化されたプロテクションに吹き飛ばされる怪物。
そこにユーノが駆けつけてくれた。
「なのは!優人!大丈夫!?」
「ユーノくん!」
「ユーノ。来てくれたか」
優人は怪物について簡潔に話した。
「なるほど、動きが速くて攻撃が当たらないんだね」
「ああ、動きを止められればいいんだけど。俺の魔術は当たらないと効果が発揮しないから・・・・・」
「それなら僕に任せて!」
「どうするの?」
「まずはね―――」
こうしてユーノは二人に作戦を話した。
「そんな魔法があるんだ!」
「確かに、その魔法ならあいつを捕まえられる」
「それじゃ、さっそくやるよ!二人とも準備はいい?」
「OKだよ!」
「大丈夫だ!」
まずは、なのはが怪物に攻撃を仕掛ける。
「ディバィンシューター!」
魔力弾が怪物に迫る。怪物は先程と同じようにかわした。
「shock!」
続けざまに優人が魔術を放つ。
息があったコンビネーション攻撃に怪物は少し体勢を崩しながらも、攻撃をかわした。
「今だ!チェーンバインド!」
体勢を崩したところを、ユーノの魔力の鎖が怪物を捕らえる。しかし――。
(駄目だ!思った以上に力が―――)
ここでユーノは誤算をした。
魔力が完全に戻っていないため、魔法の精度が落ちていた事と怪物の力が予想以上だった事だ。
怪物を捕らえていた魔力鎖にヒビが入る。
(このままじゃ―――)
このままじゃ鎖をほどかれてしまう。そう思った瞬間優人は―――。
「gain mag!」
ユーノの魔法に魔力強化の魔術を掛けた。
すると、先程のなのはプロテクション同様。ユーノのチェーンバインドも強固な物になった。
「今だなのは!」
「わかった!ディバィンシューター!」
なのはの魔法が怪物に直撃し、怪物はそのまま倒れ伏せた。
ジュエルシードを封印すると。怪物は小さな子犬になった。
「この子がジュエルシードに取りつかれたんだね」
「どうしてこんな子犬が、あんな怪物になったのよ?」
境内に戻って来たアリサが、ユーノに尋ねた。
「ジュエルシードは持ち主の願いを叶える力があるんだ。だからあの姿はこの子が望んだ姿なんだ」
「この子は何で、あんな怪物になる事を望んだんだろう・・・・・」
すずかは子犬の頭を撫でながら、不安そうに呟いた。
すると優人は立ち上がりながら言った。
「もしかしたら、誰かを守りたかったんじゃないのかな?」
「それってどういう事?」
「大切な誰かを守りたかった。例えば飼い主とか、その結果があの姿なんだと思う」
誰かを守るなら、強くなるしかない。その結果があの姿なんだと優人は思った。
「それって本当なの?」
「本当かどうかはわからないよ。だけど、自分ならそう願う。大切な人達を守れる力を――ってね」
優人は力強く言った。
大切な人達を守れる力を――と。
(大切な人達を守れる力か・・・・・)
なのはは優人の言葉に何か思ったのか、夕暮れの空を見続けた。