指定された座標に着いたフェイトの目の前には、不気味な城が建っていた。
「ここが・・・・・アルバートの城・・・・・」
すると、城門が一人でに開いた。
まるで、フェイトを招くように。
「入れって事だね・・・・・」
フェイトはバルディシュを強く抱き締め。アルバートの城に入った。
灯りが道標の役割をしていたのか、辿って行くと奥の部屋に着き、扉を開くとそこには――――。
「ようこそ、我が城に」
アルバート・レスターが居た。
「母さんは何処だ!」
「その前にジュエルシードを渡して貰おう」
「その前に、母さんの安否を確認したい!」
「ふん」
アルバートが指を鳴らすと、貼り付けにされたプレシアが現れた。
「母さん!!」
フェイトが駆け寄ろうするが、彼女の足下に横一線の亀裂が走る。
「そこから先に入るな。入れば、プレシアの命は無いと思え」
「くっ!」
「さぁ、ジュエルシードを渡して貰おう」
アルバートがジュエルシードの催促をするが、フェイトは渡そうとしなかった。
何故なら、彼女の役割はもう一つあるからである。
(クロノ達が突入するまでら、話を出来るだけ引き延ばして、時間を稼がなきゃ)
「貴方は、何故こんな事をするんですか!? 貴方の目的は一体―――」
するとアルバートは、少しうんざりした表情で言った。
「・・・・・やれやれ、プレシアと同じ質問か」
「え?」
「お前達に言っても理解出来まい。さっさとジュエルシードを渡せ! さもないと・・・・・」
アルバートはプレシアに剣を突きつける。
これ以上時間を稼げないと判断したフェイトは、ジュエルシードを差し出そうとしたその時―――。
「そのプレシアさんは偽物だ!」
頼もしい味方がやって来たのであった。
フェイトがアルバートの城に入る少し前、クロノ率いる武装隊が城より少し離れた場所待機していた。
「駄目ですね。あちらこちらに探知魔法が仕掛けられていて、迂闊に動くとすぐアルバートにバレます」
「何とか解除出来ないか?」
クロノが隊員の一人に聞くが、隊員は首を横に降った。
「直ぐには無理です。少なくとも解除に数時間は掛かります」
(くそっ、そんなに時間が掛かれば掛かる程、フェイトが危険になるのに! どうすれば―――)
予想外の展開に、焦るクロノだった。
すると優人が、クロノにある申し出をした。
「クロノ、俺がやってみてもいい?」
「出来るのか?」
「分からないけど、何となく出来ると思う」
「素人に、これ程のセキュリティを解除するのは無理ですよ」
隊員の言う通り、優人は1ヶ月前まで魔法を知らない素人。
その彼が、アルバートが仕掛けた探知魔法を解除出来るとは思えないが、クロノは―――。
「やってみてくれ」
そう言うと、優人は隊員が操作している空間コンソールに触れ、一言呟く。
「access」
すると優人の体は光輝き、数分後には光も消え、何事もなかった言った。
「解除した。これで城まで行ける」
「そんなバカな・・・・・」
隊員は呆気に取られて居た。
優人の言葉通り、城までの探知魔法は消えていたのだから。
「・・・・・ともかく、城に行こう」
クロノは少し思う事があったが、今は作戦に集中する事にした。
城まで着くと、優人は外壁を触り、再び呪文を呟く。
「access」
今度は数十分掛かり、手を離してクロノに報告をする
「とりあえず警報装置は黙らせたけど、何か迎撃用兵器があるみたいだ」
「迎撃用・・・・・傀儡兵の事かな?」
「アルフ、プレシアの居場所は分かるか?」
アルフは鼻をクンクンと嗅ぎながら答えた。
「分かる。地下の方にいるみたいだよ」
「地下か・・・・・フェイトと逆の位置か・・・・・」
フェイトは今現在、上の階にいる事が追跡マーカーで分かっていた。
そこでクロノは、二手に別れる事を提案する。
「プレシアの救出とフェイトの援軍・・・・・俺はフェイトの方だ」
「私も! フェイトちゃんを助けに行きたいです!」
「あたしもフェイトの援軍に・・・・・」
「アルフ、お前はダメだ」
「何で!」
「君がいないと、プレシアの捜索に時間が掛かる。君は救出組だ」
クロノの言葉に、アルフ渋々救出組に入った。
「それじゃ、僕は救出組に入るよ。探索魔法は得意だから」
「僕は援軍組にする。アルバートとの戦闘になるかも知れない。戦力は多いに越したことは無いからね」
「それなら、俺の魔術が役に立つ筈。俺も行く」
こうして援軍組は、レイヴン、なのは、優人、クロノの四人。
救出組は、アルフ、ユーノ、武装隊になった。
「それじゃ行くぞ!」
二組はそれぞれ、動き始めた。
優人の声で、フェイトは磔にされていたプレシアの招待に気づく。
磔にされたプレシアは人形だったのだ。
「よくも騙したな!」
フェイトはアルバートを睨みつけるが、彼はそんな事は御構い無しだった。
「・・・・・よく、ここが分かったな?」
「フェイトにあらかじめ、追跡マーカーを着けていたのさ」
「なに?」
「お前がフェイトを脅して、ジュエルシードを持って越させようって魂胆は、最初から見破られて居たんだよ」
「ぬぅ・・・・・」
「ついでに、ここの警報システムも黙らせておいた」
クロノはデバイスをアルバートに向け、大きく叫んだ。
「さぁ、アルバート・レスター! 採掘所の襲撃! プレシアの誘拐! その他諸々でお前を逮捕する!」
「出来るかな? 貴様に?」
「ブレイズカノン!」
クロノは先手必勝とばかりに、アルバートに向けて魔法を放つ。
しかし、アルバートは片手で受け止める。
「何!?」
「この程度で笑わせる。私が手を下すまでも無い」
すると、アルバートは全長五メートルくらいある。四つ足のロボットを召喚した。
「行け、ディソーダー。奴らを排除しろ」
そう言ってアルバートは、隠し扉で部屋を出ていった。
「待て!」
クロノは後を追おうとしたが、ディソーダーと呼ばれる兵器に阻まれてしまった。
「くそっ!」
「先ずはコイツを排除するぞ!」
レイヴンは、ホワイトグリントをハンドガン形態にし、ディソーダーに目掛けて魔力弾を放つ。
しかし、ディソーダーの装甲に阻まれてしまった。
「くっ、これはかなり硬い装甲だな」
ディソーダはレイヴンに向けて、主砲を放つ。
それをかわしたレイヴンだが、主砲の威力は凄まじい物であった。
「主砲に当たるなよ! 消し炭になるぞ!」
「分かっている! 優人、魔術を!」
「分かった! gain mgi!」
クロノは優人の魔術を強化してもらい、その力で装甲をぶち抜こうとした。
「これならどうだ!」
強化されたブレイズカノンがディソーダに直撃。
しかし、多少傷をつける事には成功したが、装甲を抜く事は無かった。
「これでもダメか!」
ディソーダーは副砲でクロノと優人を攻撃した。
主砲と違って破壊力はそれほど無いが、連射が出来るようだった。
マシンガンのような攻撃が二人を襲う。
「ブリッツアクション!」
フェイトは高速移動で、二人を抱えながら攻撃をかわした。
「大丈夫二人とも?」
「ああ、助かった」
「すまないフェイト。しかし、あの装甲は厄介だな」
これまでの攻撃を全て阻まれてしまった。
少なくとも、先程撃った強化ブレイズカノン以上の攻撃でないと、あの装甲は撃ち破れないだろう。
そんな事を考えていると、ディソーダーはミサイルを数十発撃って来た。
「質量兵器まで搭載されているのか!?」
「数が多すぎる!」
「私に任せて! ディバインシューター!」
なのはは、ミサイルと同じ数のディバインシューターを放ち、ミサイルを全て撃ち落とした。
辺りは煙りに包まれる。
そして晴れると、そこには三十以上のフォトンスフィアがフェイトの周りに展開していた。
「フォトンランサー、ファランクスシフト・・・・・」
流石に不味いと判断したのか、ディソーダーはフェイトに主砲を向けた。その瞬間――――。
「邪魔は―――」
「―――させない!」
レイヴンは二つある内の一つを切り伏せ、クロノのはもう一つの発射口にスティンガースナイプを放ち、爆発させる。
主砲を失ったディソーダーは残りの副砲、十門以上を展開。フェイトに向けて放とうとする。
「させないよ!」
それを、なのはのディバインシューターが、全て破壊する。
全ての武装を破壊されてしまったディソーダーには、なすすべが無かった。
「gain mgi! これで決めろフェイト!」
「打ち砕け!」
優人の魔術で、フォトンランサーは更に巨大になり、ディソーダーに襲いかかった。
もし一発なら耐えられるのだが、強化フォトンランサーの集中放火には装甲は耐えきれず、ディソーダーは粉々に砕け散っていった。
「はぁ、はぁ、はぁ―――」
流石に疲れてしまったのか、息が荒いフェイト。
そのフェイトに、全員が労った。
「よくやったなフェイト」
「凄いよフェイトちゃん!あんな凄い魔法を隠し持っていたなんて!」
「ああ、今回の功労賞はフェイトだ」
「そ、そんな事無いよ! 皆がいたからこそだよ」
どうやら、大勢で褒められる事には馴れていないようで、フェイトは顔を真っ赤にしていた。
クロノは、誰かと通信していて、終わると朗報を伝えた。
「フェイト、プレシアを保護したという連絡が入った」
「本当!」
「ああ、一足早くアースラに収容された」
その言葉に、フェイトは涙を流し、プレシアの無事を喜んだ。
「良かったねフェイトちゃん」
「うん・・・・・うん・・・・・」
「安心するのはまだ早い、急いでアルバートの後を―――」
突然、地鳴りが聞こえて来た。すると天井が落ちてくる。
それで全員が気づく、城が崩れている事を。
「全員脱出だ!」
クロノ達は、アルバートの追跡を諦め、城から脱出をするのだった。
クロノ達が脱出をしようとした時には、すでにアルバートは、新しい根城にいた。
すると、フードを被った男。A・アサシンがアルバートの元にやって来た。
「首尾はどうだ?」
「首尾は上々です。今回の件、あのサーヴァントに悟られないように出来ました。そちらは?」
「失敗だ。ジュエルシードは半数くらいしか手に入らなかった」
「評議会に頼めば如何でしょうか?」
「あの脳味噌どもに? 下手をして勘繰られては敵わん。代用品を探すしかあるまい。お前は引き続き、闇の書の主とサーヴァントの監視を続けろ」
「御意」
A・アサシンは姿を消えた。
アルバートは次の目的に向かって行動を開始し始めた。