アーチャーが目を覚ますと、そこは遥か上空にいた。
「へ? ウオォォォォ!?」
そのまま重力に従い、落下を始めた。
空の上なので、アーチャーになすすべ無く、一軒の家に落下をした。
「くっ、一体何がどうなっているんだ・・・・・・・・・・優人?」
アーチャーそこで気づいた。自分のマスターである衛宮優人がいない事に―――。
(優人がいない!? まさかセラフに・・・・・いや、私がこうして存在しているのだから、彼は生きている筈―――)
アーチャーは再び周囲を見渡すと、車椅子に座っている少女と目があった。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
しばしの沈黙、アーチャーは少し焦っていた。
空から降ってきた上に、時代錯誤の格好をしているのだから、どう見ても不振人物である。
(不味い・・・・・非常に不味い。どうにかごまかさないと・・・・・・・・・・)
アーチャーが必死に言い訳を考えていると、少女が口を開いた。
「おじさんもしかして、サンタさん?」
「サ、サンタ?」
「あれ? ちゃうの? 赤い格好に白髪やから、てっきりサンタやと・・・・・・・・・・」
「すまないが、私はサンタでは無い。それに、今は三月だ。とっくにクリスマスは過ぎ去っているぞ?」
アーチャーは立て掛けてあったカレンダーを指差した。確かにそこには三月と書かれていた。
「そうやね・・・・・今さらサンタさんが来る筈・・・・・無いんや・・・・・」
少女は落胆してしまった。それを見たアーチャーは、罪悪感を覚えた。
「と、所で親御さんは何処だ? 一応、家を壊してしまった謝罪がしたいのだが?」
「いないんよ・・・・・」
「何?」
「お父さんとお母さん、三ヶ月前に事故で無くなったんよ・・・・・私も、その事故で足を・・・・・」
そう言って、自分の足を擦りながら答えた。
その顔はとても悲しそうな表情をしていた。
「身寄りはいないのか? 親戚とかは?」
「一応いるにはいるんやけど、どうも世界中を飛び回っおるんや。だから家にはおらへん。たまに手紙が来るだけや・・・・・」
「なら君は―――」
「うん・・・・・ずっと一人で住んでいるんや・・・・・」
それを聞いて、アーチャーは怒りを覚えた。
こんな幼い、しかも不自由な体の少女を一人にさせている事に―――。
「・・・・・所で君は、サンタさんに会いたかったみたいだが、何を頼むつもりだったんだ」
「あんな・・・・・一緒に暮らしてくれる家族が欲しいんよ・・・・・もう一人は嫌や・・・・・」
少女はポロポロと涙を流しながら言った。
されを見たアーチャーは、ある決断をする。
「所で、君の名を教えてくれないか?」
「え・・・・・私は、八神はやてや・・・・・」
「じゃあはやて、提案があるのだが、私が君の家族になってあげよう」
「え? ええの?おじさん?」
「ああ、だからもう泣くな。子供は笑顔でいるのが一番だからな」
アーチャーにそう言われ、はやては涙を拭き、笑顔を見せた。
「おじさん、ホンマおおきに!」
「それと、おじさんは止めてくれ、私の事はアーチャーと呼んでくれ」
「ありがと、アーチャー」
こうしてアーチャーとはやては家族になった。
奇しくもその日は、衛宮優人と高町士郎が出会った日でもあった。
その次の日から、アーチャーは行動を開始していた。
家の修復は昨夜こっそり魔術で直したが、慣れない魔術だったので、一晩掛かってしまった。
先ずは最初にやる事は、衣類の調達である。
アーチャーは体が大きい為、はやての父親の服ではサイズが合わなかった。そこで、洋服屋に行く事にした。
アーチャーは赤い外装を外して、その上からロングコートを羽織って街に繰り出した。
「そんで、そこを右に曲がった所が、デパートなんよ」
「記憶力はいいんだな・・・・・」
はやてのナビゲートのおかげで、迷わずデパートに着く事が出来たのであった。
そして洋服屋で、服選びを始める。
「どれがええんやろ・・・・・」
「はやて、先ずは値段で決める物だ」
「そうなんか?」
「ああ、こう見えても倹約は得意なんだ。任せたまえ」
そう言って、アーチャーは次々と安売りをしている服を片っ端から手に取り、それをレジに持っていくと、会計を済ました。
「これだけあれば、しばらくは大丈夫だろう」
「ほなら、次は何処へ行くん?」
「次は食材の調達だな」
そう言って、デパートの地下にあるスーパーマーケットに向かうのであった。
一通り買い物を終えたアーチャー達は、家路に着くのであった。
家に戻ると、アーチャーは直ぐ様買ってきた食材を持ってキッチンに向かった。
「はやて、少し待っていたまえ。今料理を作る」
そう言って、アーチャーは買ってきた赤いエプロン装着し、手際よく料理を作っていき、それらをテーブルに乗せていった。
「わ〜〜凄い豪華やな〜」
「今日は、私達が家族になったお祝いだからな、今回くらいは贅沢しても構わんだろう」
アーチャーがそう言うと、はやての表情は綻びた。
彼女が欲しかった一緒に暮らしてくれる家族が、目の前にいるのだから―――。
食事をしている最中に、はやてはある疑問が浮かんだ。
「なぁ? アーチャーは何をしとる人なんや?」
そう聞くと、アーチャーは一瞬困った顔をしたが、直ぐ様笑顔で答えた。
「そうだな・・・・・私は正義の味方なんだよ」
「正義の味方って・・・・・じゃあアーチャーは今も悪い人と戦ってるん?」
「ふむ・・・・・どうだろうな? 少なくとも、周囲には悪い人間はいなさそうだからな・・・・・今は、困っているはやてを助ける事が、仕事だな」
アーチャーがそう言うと、再びはやての表情が暗くなってしまった。
それを見て、アーチャーは少し慌てた。
「は、はやて!? どうした!? ま、まさか、料理が口に合わなかったとか!?」
アーチャーにとって、久々の料理だったので、多少腕が落ちているのは覚悟の上だったが、まさか口に合わなかと、本気で心配したが、はやては首を横に振った。
「ううん、料理はホンマにおしいんよ。だけど・・・・・・・・・・」
はやてはしばらく口を紡ぎ、そして、話始めた。
「なぁ、もし私が困らなくなったら、一緒に暮らしてくれる家族が出来たら、アーチャーは家を出て行ってしまうん?」
その言葉を聞いて、アーチャーは理解した。
彼女は自分が困らなくなったら、一人じゃなくなったら、アーチャーは出て行ってしまうんじゃないかと、不安になっていたのだ。
それを知ったアーチャーは、笑顔で答えた。
「・・・・・出ていかない。少なくとも、君がちゃんと独り立ち出来るまでは、君の側にいよう」
「独り立ちって・・・・・いつまで?」
「そうだな・・・・・君が成人・・・・・二十歳になるまでだ。それまで、居なくなったりしないと誓おう」
「ホンマに! それなら指切りや!」
そう言って、はやては小さな小指を出し、アーチャーの小指に絡ませる。
「指切りゲンマン♪ 嘘ついたら針千本の〜ます♪ 指切った♪」
はやては嬉しそうに歌い、最後にアーチャーの指を離した。
こうして、家族が出来た二日目の夜は過ぎ去った。
そんな彼らの様子を、不気味に観察している人物がいた。
その人物は、顔をフードで隠しているが、男だと分かる。
「・・・・・・・・・・マスターに報告だ」
そう言って、男は闇に消えた。
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キャラステータス
クラス名 アーチャー
真名 無銘(エミヤ)
使用魔術 古代魔術
得意魔術 投影
ステータス
筋力 D
耐久 D
俊敏 D
魔力 C
幸運 E
スキル
対抗魔力(D)
魔術ランクDまたは魔法ランクBからCまでを無効または軽減する。
単独行動(×)
本来はアーチャーのクラスに付くスキルだが、魂の改竄によって失われている。
魂の改竄(EX-)
マスターの魂と繋がり能力を上げ、一部のスキルを共有することができる。しかし、上げすぎると魂が癒着し離れなくなる。現在は上手く機能していない。
心眼・真(B)
修行、鍛錬で修得した戦術論理。
千里眼(C)
視力の良さ、遠方の標的の捕捉、動体視力の向上
宝具
無限の剣製・改(E+〜A+++)
固有結界を展開し、記録されている投影宝具を全て出すことができる。
通常はワンランクさがるが、展開時は全ての宝具に+が付く。
現在は使用不可能。
衛宮優人がこの世界に来たと同時に、八神はやての家に落ちて来た。
衛宮優人との繋がりが不安定の為、居場所が特定出来ないうえ、能力が大幅に下がっている。
現在は、はやてと共に暮らしながら、優人の居場所を探している。