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運命戦記リリカルEXTRA.AC改 EPアーチャー編2 、雲の騎士達
作者:起源くん   2012/10/14(日) 21:42公開   ID:L0gu7.dO5Yw
それから数年後の六月、アーチャー達は何事もなく過ごしていた。
人柄が良いアーチャーは、直ぐに近所と親しくなった。
それどころか、町内の有名人になっている。
ある子供は、迷子の猫を探しだしてもらい。ある老婆は、荷物を家まで持ってもらい。ある女性は、悪漢から助けてもらい。ある男性は、掻っ払いから荷物を取り返してもらったりと、アーチャーは片っ端から人助けをしていたのだ。その結果―――。

「おはようアーチャーさん」

「おや、今日は何処に行くんだいアーチャー」

「おじさん! おはよう!」

「アーチャーさん、おはようございます。もし良ければこれから・・・・・・・・・・」

―――と、このように町内で、アーチャーの事を知らない者はいない程になった。
それでもアーチャーは、優人の捜索を続けていた。
繋がりは感じてはいるのだが、その繋がりはとても弱く、肝心な場所の特定までは出来なかった。
その上、アーチャーが探しているのは十六から十七の少年なので、まさか彼がが小学生をやっているなんて夢にも思っていなかった。
そのせいで、アーチャーは優人を見つけ出せずに数年が経ってしまった。
今日も、とある探偵事務所を訪ねていた。

「取り合えず、今月の収穫はこれだけです」

そう言って探偵は、数枚の写真を見せる。
全て男性で、十六から二十歳の学生や大学生の写真が写っていた。
それを見たアーチャーは、首を横に振った。

「残念ながら、どれもハズレだ」

「そうですか・・・・・アーチャーさん、何か手掛かりは無いんですか? 流石に名前と年齢だけじゃあ、これ以上は無理ですよ。せめて写真だけでも・・・・・・・・・・」

「うっ、すまない。写真はあったのだが・・・・・今は無い」

アーチャーは過去に一度だけ、優人と一緒に写真を撮っていたのだが、それはムーセル内にあるマイルームに置いていた為、回収は不可能になっている。

「すみませんが、これ以上の捜索は無理です」

「そうか・・・・・すまないな、何年も無理を言って、これが依頼料だ」

そう言って、探偵に依頼料を渡すと、アーチャーは探偵事務所を出た。
アーチャーはタメ息をついた。。

(やはり、自分の力で探すしかないか・・・・・)

戸籍が無いアーチャーでは、捜索願いが使えないうえに、先程のやり取りのように写真も無い。
頼りのパスだって不安定のうえ、あまり家を開ける事も出来ない。
優人を探し出せるのはいつの日になるやらと、再びタメ息をついた。

(むっ、いかんいかん。今日ははやての誕生日なのだから、こんな顔を見せる訳にはいかん)

今日は、はやての誕生日である。今年で九歳になるのであった。

(とりあえず、買い物をして帰ろう。プレゼントは何がいいか・・・・・)

そんな事を考えながら、アーチャーはデパートに向かった。




アーチャーが帰って来ると、はやては手紙を読んでいた。どうやら件の親戚からの手紙らしい。

「ただいま」

「あ、お帰りアーチャー」

「それは例の?」

「うん、レスターおじさんからや。手紙と一緒にプレゼントも一緒に来たんや」

そう言って一冊の、鎖に巻かれた本をアーチャーに見せた。
それを見たアーチャーの表情は、真剣な物になった。

(僅かながら魔力を感じる・・・・・・・・・・)

「アーチャー? どうしたん?」

「いや、何でもない。この本は?」

「うん、何でも元々家にあったもんらしいんや。そんで、九歳の誕生日に渡して欲しいんと、私の両親に言われたらしいんよ」

「それは本当か?」

「う、うん・・・・・そう手紙に書いとった」

アーチャーは考えた。
この数年間、レスターという人物はどうにも信用出来なかった。
はやてのやり取りは手紙のみで、一度も顔を見せてはいない。その上、財政管理はかなり杜撰で、アーチャーが居なければ十歳の頃には、財政は破綻していただろう。
しかし、家族を大事にしたいはやてには、レスターの悪意を感じてはおらず。また、幼い彼女に真実を告げるのは酷だと、アーチャーも黙っていた。

「そうか・・・・・所で何の本なんだ?」

「う〜〜ん・・・・・手紙には何も書いとらへん」

本に関する手かがりは無し、アーチャーはますます不審になった。

(こういう手合いの物は、捨てるに限るな)

頃合いを見て捨てる事にしたアーチャーは、早速誕生日会の準備に取り掛かるのだった。




誕生日会をすました二人はいつも通り就寝するのだが、この日は違っていた。

「あんなアーチャー、お願いがあるんやけど・・・・・」

「ん? 珍しいな、はやてがお願いするなんて。それでお願いとは?」

「うん・・・・・本を読んでくれへん?」

「別に構わんが、どんな本だ?」

「これなんやけど・・・・・」

はやてが持っていたのは指輪物語であった。
それを見たアーチャーは―――。

(子供が読む物では無いだろう・・・・・)

―――と、内心思ったが、本好きなはやてならではのチョイスだと、納得もしていた。

「・・・・・駄目なん?」

はやては少し不安そうに聞いて来た。
どうやら黙っていた事が、拒否と受け取ってしまったらしい。

「いや、私は別にいいのだが、その本でいいのか?」
「うん!」

よほど嬉しかったのか、はやては笑顔満面で答えた。

「了解した。それでは部屋に行くとしよう」

アーチャーは、はやての車椅子を押しながら、はやての部屋に向かった。




深夜十一時五十五分。はやては眠りについたのを確認すると、アーチャーは本を閉じた。
ふと、窓の外を見ると、そこには満月が浮かんでいた。
アーチャーはそれを懐かしむようにじっと見ていた。

(ジイさんと最後に見た月も、こんな満月だったな・・・・・)

かつて父の代わりに正義の味方になると誓うと決めたから、彼は彼なりに頑張った。しかし、理想は彼を裏切った。
当初は自分を酷く憎んだ。殺したい程だった・・・・・優人と出会うまでは―――。

(・・・・・優人も、この月を何処かで見ているだろうか?)

今行方知れずのマスターの事を思うアーチャー。
今まで色んな物を切り捨てた彼だったが、優人だけは切り捨てたくないと思えた。
その理由は今も分からないが、彼のおかげで、忘れかけて気持ちを思い出せた。諦めていた夢をもう一度抱く事が出来た。

(だから、今度は俺が優人に返す番だ)

かつて自分が捨てた物を拾ってくれたように、今度は優人が望んだ日常を贈ろう。アーチャーは密かに抱いていた。

(さて、俺も寝るとしよう)

アーチャーは自室に戻ろうとした時、十二時丁度になった。

(!? 何だ一体!?)

突然目の前に現れた一冊の本、それはレスターから送られた鎖に巻かれた本であった。
本から異様な光と膨大な魔力を放っていた。

(何か不味い! 逃げなくては!)

「はやて! 起きろ!」

「ん〜〜何やアーチャー・・・・・」

「逃げるぞ!」

「え? キャア!?」

アーチャーは、はやてを抱きかかえると、窓をぶち破って外へと逃げたのであった。




外に逃げたアーチャーは、家の屋根から屋根へと飛び移っていた。

「ど、どないしたん?」

はやては未だに状況を飲み込めていなかった。
アーチャーは、移動しながら答えた。

「あの本から異様な魔力を感じた。あれがどういう物なのかは知らんが、あの場に留まるのは危険だと判断したまでだ」

そう言って、公園に降り立つ。深夜なので、周囲には人影はいなかった。

「魔力? そんなファンタジーじゃないやから、アーチャー寝ぼけてんちゃう?」

はやてに寝ぼけていると一蹴されてしまったが、魔術を携えているアーチャーにとって、あの本が危険な物だと直感していた。

(こんな事なら、さっさと棄ててしまえばよかった)

そう思った矢先、目の前にあの本が現れた。
先程見た時は鎖が巻かれてあったが、今は存在していなかった。

「うわ!? ビックリしたわ!」

「くっ!」

アーチャーは左手ではやてを抱え、右手に干将を投影した。
突然現れた剣に、はやては驚いていたが、アーチャーは気にも止めなかった。

(この状態で戦えるのだろうか―――)

アーチャーの本来の戦闘スタイルは二刀流。しかし、片手は塞がっている上に、能力は大幅に下がっている状態なのだ。
それでも、アーチャーは引くわけにはいかなかった。
そして、本が一層光輝くと、二人の女性と小柄な少女と獣耳と尻尾が着いている男性が現れた。

「闇の書の起動を確認しました」

「我ら、闇の書の蒐収を行い、主を守る守護騎士でございます」

「主に集いし雲―――」

「ヴォルケンリッター、何なりとご命令を―――」

四人は、はやての前に跪ついた。
これが、雲の騎士―――ヴォルケンリッターとの出会いであった。


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■作者からのメッセージ
ヴォルンケンリッター登場です。
今回は短めになりました。
ステータスは次の話に乗せるつもりです。
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