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学園黙示録Highschool OF THE DEAD ifストーリー 第二話  「戸惑いの日常」
作者:黒猫のK   2012/10/18(木) 03:56公開   ID:E3oFvq20C1s
「よぉ、また同じクラスだな。」

そこには死んだはずの親友井豪永の姿があった。

「永!!」
僕は思わず叫んで永の肩をつかんでいた。
「おいおい、そんなにオレと同じクラスになれて嬉しいのか?ちょっとキモいぞ。」
「おぁ、悪い悪い。」
永は爽やかな笑顔を浮かべながら僕の肩を叩いてくる。

井豪永 僕の親友であり奴らが現れた時、麗をかばって奴らに噛まれ奴らと同じ動く死体になってしまった。
そして、奴らになってしまった永を、親友を僕はこの手で…
「どうしたんだ孝?目に涙浮かべて、そんなに痛かったか?」
「いや、目にゴミが入っただけだ。大丈夫だよ。」
「まぁ、また一年間よろしくな孝!」
「あぁ。」

急に永の顔から笑みが消え、小声で話かけてきた。
「いったい麗はどうしたんだ?留年なんておかしいだろ。」
「僕にも事情がわからないんだ。麗が話をしてくれるまで待とうと思う。」
「そうだな。孝の言う通りだ。」
そして永は廊下側の窓に目を向けながら続けた。
「麗もあぁいった興味本位の奴らがいて困っているはずだ、オレたちでなるべく支えてやろう。」
やっぱり永は気配りもできていい奴だな、僕の自慢の親友だよ。そんな永にあの時麗が惹かれたのは当然だったのかもな…

麗と永は僕がタイムスリップする前の奴らが現れた世界で付き合っていた。
麗の気持ちをわかってやれなかった僕は麗に振られたのだ。

そのことを思うと少し胸が痛み永に嫉妬した。

嫉妬か…やはり僕は麗のことが好きなのかな?席に座っている麗の方に目をやる。
しかし僕の心の中にはもう1人の女性の姿があった。
長い髪、凛としたただずまい、そして包み込むような柔らかな笑みを浮かべる
毒島冴子の姿が…

ふと視線を前に向けると席に座る平野の姿があった。

平野コータ 奴らの溢れかえる世界で共に生き延びていた仲間だ。
いわゆる軍オタというやつでやたらと銃などの武器に詳しく、あいつの射撃には何度も助けられたものだ。
僕は思わず平野に声をかけた。
「よぉ、平野。」
平野は弱々しい声で
「えっと、小室君だよね…?い、一年間よろしく…」
まるで初対面のような反応…どういうことだ…?
まさか!平野も麗と同じで奴らのことなど知らない…?
ということは…僕は髪をツインテールにした女の子に声をかけた。
「高城!」
「何よ小室うるさいわね。天才の私と同じクラスになれて光栄に思いなさい。」

高城沙耶 平野や麗と同様に共に生き延びていた仲間で僕の幼なじみ。少々高飛車なところもあるが、希里ありすちゃんの面倒をみたり、平野のことを気遣ったりと優しい心を持った女の子だ。そして、学園始まって以来の秀才とうたわれ僕たちの窮地をその頭脳で何度も救ってくれた。 
「なんでそうなるんだよ。一年間よろしくな。」
この感じだと高城も奴らのことを知らないようだ。
まさか、僕は本当にタイムスリップしてしまったのか!?
戸惑いを感じるとともに、僕は奴らのいる世界で培われた絆が無いことに悲しみを感じていた。

先生が来てホームルームが始まった。
新学期の心構えや注意点などを話しているよいだが、僕の頭にはまったく入ってこなかった。
僕は本当にタイムスリップをしたのか?
他の仲間たちも奴らのことを知らないのだろうか?

僕の頭の中に3人の人物が思い浮かぶ。

鞠川静香 僕が通う藤美学園の校医で僕たちのことを医師として、そして大人としてサポートしてくれていた。まぁ抜けているところも多く戸惑う場面も多かったが…
そしてあの体は健全な男子高校生には刺激が…いやいや、いかん。断じてそんなことは考えていない…はずだ。

希里ありす 目の前で父親が死に奴らに襲われそうなところを僕らが助けた少女だ。
ジークと一緒にいつも明るく笑顔を振りまいてくれ、その姿には励まされたものだ。それにありすちゃんは僕が平野とすれ違った時にアドバイスをくれた恩人だ。

毒島冴子 恐らく僕たちのなかで最も強く、戦いとなれば果敢に奴らに立ち向かっていく頼もしい先輩だ。剣の腕前は全国大会優勝、その容姿は美しく、性格も申し分もないという素晴らしい人だ。まぁ少々天然なところもあるが…
僕と彼女は一応名前で呼び合う関係であった。

彼女たちも確かめる必要があるな。
ありすちゃんは小学生だしな、どこの小学校だか、知らないしちょっと厳しいな。
なら冴子と静香先生を訪ねてみるか。よし、まずは冴子に会いに行こう。


ホームルーム終了後、始業式まで時間があるので僕は冴子のことを訪ねることにした。
三階に上がる。周りにいるのは上級生ばかりなので少し緊張する。冴子はどこにいるのだろう?

あっ!いた。間違いようがないあれは冴子だ。
しかしどうする、もしかしたら冴子も奴らのことを知らず僕のことを知らないかもしれない…
向こうもこちらに気づき目があった。
「孝!!」
冴子が駆け寄ってきて僕に抱きついてきた!
「よかった…よかったよ孝。君は、君はちゃんといるね。」
周りがどよめく。
「さ、冴子。落ち着こう。とりあえず場所を変えよう。」
僕は困惑しながらもなんとか声を絞り出した。
冴子はようやく周りの様子に気づき、顔を赤らめてハッと息を呑んだ。
僕は顔を赤らめて俯いたままの冴子の手を取り屋上へと向かった。
もしかしたら冴子は…そんな期待が僕の胸の中で膨らんでいった。

幸い屋上には誰もいなかった。
屋上に駆け込むと冴子はへにゃへにゃと座り込み涙を流していた。
「どうしたんだ!?冴子。」
冴子は少し泣いていたもののゆっくりと口を開いた。
「すまない。はしたないところを見せたな。」
「いえ、全然大丈夫です。あのえっと、その冴子は奴らのこと…」
「覚えている。覚えているさ。私たちは廃屋で野営していたはずだ、なのに朝目覚めたら私は1人で私の家にいた。」
「僕も同じです。日付もなぜか始業式の日で…麗たちは奴らのことなど知らない様子だし…」
「宮本君もか!?私も今朝とりあえず情報を集めるために学校に向かっている途中鞠川校医に出会ったのだ。奴らのことはおろか、まるで初対面のような反応をとられたよ。正直胸に来るものがあったよ…」
「そうですか…静香先生も…」
「ということは平野君や高城君も?」
「はい、何も知らないようでした。」
「そうか…」
2人の間に沈黙が流れる、この事実はかなり応えた。

「でもよかったよ。孝は忘れていなかった。奴らのことも私のことも、一目見てわかったよ。」
冴子の顔は安堵に満ちていた。
「僕も安心しましたよ。冴子が僕のことわかってくれて。」
これは本当に本当だ。僕も思わず涙が出そうだった。
「嬉しさのあまり、思わず抱きついてしまった。はしたない行動だった許してくれ。」
顔を真っ赤にしながら冴子が言ってきた。
「い、いえ…そんな…」

グハッ!これはヤバい。こんなの反則だ!なんだか急に抱きついてきた冴子の身体の感触を思い出してきた。
2人の間にさっきとは違った沈黙が流れる。

しばらく2人で座っていると冴子が質問してきた。
「孝はこの現象どう思う?」
僕は今現在起こっていることから推測できるのはタイムスリップではないかと話した。
「なるほど。一理あるな。」
冴子は頷くと少し考え込んだ。
「もし仮にだ。仮にタイムスリップしたとしよう。そうなると奴らが現れる日が再び訪れるのではないか?」
そうか!まったくその通りだそこまで考えが及ばなかった。
「確かに、そうかもしれません。」
僕は絶望的な気分になった。また僕は僕らの世界の終わりを見なければならないのか?
いや、今度こそはもっと上手くやらなくては…
「冴子、僕たちに何か大きなことができるとは思えない。けれど大切な人と生き延びられるよう備えをしておこう。」
「あぁそうだなリーダー。」
僕は覚悟を固めたやり直せるならもっと上手くやろう。今度は大切な人を失いたくない。
やり直せるなら僕は麗とのこともやり直せるのか?そんな考えが頭をよぎった。

「そろそろ時間だな。戻ろう孝。」
「あっ、ちょっと待ってくれ冴子。」
僕はポケットから携帯を取り出した。
「校則違反は感心しないぞ。」
「あはは、勘弁してください。はいこれ。」
「これは?」
「僕のケー番とアドレスだ。これからは奴らが来る時まで連絡を取る必要があるだろ?」
「そうだな。了解した。」
そういって冴子は嬉しそうに受け取った。
「なら、呼び方も気をつけたほうがいいな。人前では私は孝君と呼ぶから君も冴子さんと呼んでくれ、一応私は先輩だからな。」
「そうですね。わかりました。」
頷く僕に冴子は顔を近づけて耳元で
「もちろん2人きりの時は冴子でいいよ孝。」
と囁いた。
だからそういうの反則だって。
僕は顔を赤くして俯くことしかできなかった。



冴子とは別れ始業式へと向かった。
式は順調に進み今日の日程は終了した。

教室に帰ると僕は麗の席に向かった。そう、やり直しをするために…
虫がよすぎるかもしれない、でも、僕は、僕は…

「麗、今日一緒に2人で一緒に帰らないか?」
麗は少し驚いた後
「いいわよ。」
と笑顔で返してくれた。

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■作者からのメッセージ
第二話です。第一話を思っていた以上の人が見てくれてとてもうれしかったです(^^)
感想を書いてくださった方ありがとうございます。これからの投稿の参考にしたいと思います。今回の話もどんどん感想を書いてもらえると嬉しいです。
この話はifストーリーなので設定に無理なところめありますがあまりつっこまないでもらえると嬉しいです。この物語は原作ほどバイオレンスにしないで学園生活に重きを置こうと考えています。ラストはまだ未定なので皆さんの意見も参考にしたいです。
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