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学園黙示録Highschool OF THE DEAD ifストーリー 第六話 「始まらない終わり」
作者:黒猫のK   2012/10/28(日) 02:06公開   ID:1O5SYEG7UKU
僕らの世界が終わった日がふたたび訪れようとしていた。
 
昨日はあまり眠れなかったな…
僕は目覚まし時計が鳴る前に目を覚ました。今日は僕と冴子がつい最近まで生きていた世界では奴らが現れた日だ。

僕は麗と永が付き合いだし、全てが面倒になっていた。
僕が五限の授業をサボっていた時校門に奴らが現れ、手始めに教師たちを襲い僕の学校は奴らで溢れかえった。街のあちこちから火が上がり、パニック状態になっていた。
そう、僕らの世界はあの日から終わり始めたのだ。

学校に行く支度をして、カバンの中に先日用意しておいた非常食などをつめる。
武器はあらかじめ学校に隠しておいた。まぁ武器といってももちろん銃などは用意することはできず、バットや鉄パイプを集めておいただけだが…

外に出て麗が来るのを待つ、そういえば前のときの今日は麗は永と付き合っていたし、僕とは気まずくなっていたから麗と一緒に学校に行くなんてまずありえなかったな…
そんなことをぼんやりと考えていると麗の姿が見えた。
「おはよう麗。」
「おはよう孝。今日はどうしたの?孝が早起きしてるなんて珍しいじゃん。」
「たまたま早く目が覚めてさ。」
麗と一緒に学校へ行く。麗はまったく普段と変わらない様子だ。確かにあの時の僕も今日という日をいつもと変わらない平凡な日だと考えていた。
麗の顔をじっと見つめる。麗のことを守らなければ…僕は心の底からそう思っていた。
「どうしたの孝?私のことじっと見て。」
「あぁごめん。なんでもないよ。」
「もう、そんなにじっと見られたら恥ずかしいじゃない…」
顔を赤くして俯く麗。僕の日常はまだ壊れてはいないようだ。

教室に入ると永がすでに登校していた。
永、僕は前の時は奴らとなった君を殺した。もうそんなことは絶対に繰り返さない。
僕は親友の姿を見てそう誓う。
「おはよう永。」
「よう、孝。今日は早いじゃないか。」
「今朝は目覚めがよくてな。」
「珍しいことがあったもんだな。雪でも降るんじゃないか。」
親友との他愛ない会話、賑やかなクラス、そして窓から見える平和そのものな世界。
それが今日全て終わってしまうのだろうか?いまだに信じられない。

五限の授業が始まる前に僕と冴子は授業をサボって非常階段から校門を見張る約束をしている。刻一刻とその時が迫ろうとしている。授業なんて一つも頭に入ってこない。
昼休みが終わり、四限の授業も終わった。僕は1人でひっそりと非常階段へと向かう僕が非常階段への扉を開けると、すでに冴子の姿があった。
「やぁ孝。」
「街はどんな様子だ冴子。」
「いやまだどこも変わった様子はないよ。奴らはまだ現れていないようだ。」
「そうか。」
確かあの時奴らが現れたのは授業の中頃だったはずだ。時間にしたらあと20分ほどといったところか。
冴子が僕の横にスッと立つ。肩が触れ合うくらいの距離だ。
「孝は今の日常が永遠に続けばと思っているかい?」
「ええ、そりゃまぁ…」
「私もねそう願っているよ。だけどね、私の中で再び奴らが現れ奴らを殺めることで力に酔いたいと望んでいるのもまた事実なんだ…」
「冴子…」
「ふふ、軽蔑してくれて構わないよ…でも孝にだけは伝えておきたかったんだ。」
俯く冴子、その姿は儚く今にも壊れそうで美しかった。
「冴子!」
僕は冴子の体を引き寄せ抱きしめる。そして冴子に告げる。
「前にも言ったはずだ、僕はどんなにおまえが汚れていようと憧れ続けると、おまえを最高の女だと信じぬくと。」
「孝…」
冴子は強く美しい。しかし彼女の中にも闇と弱さがありそんな彼女だからこそ僕は惹かれているのかもしれない。
2人の視線が交わる、冴子の頬は上気し瞳は潤んでいる。
ヤバいこれ以上は止められなくなる。僕はそっと冴子のことを離す。名残惜しさを感じるが、それを断ち切るために視線を街の方へと向ける。そこにはいつもと変わらない光景があった。
「まだ、奴らは現れていないみたいだな。」
時間的にはそろそろ現れてもおかしくはないのだが…

その後冴子と2人で見張りを続ける。しかし、一向に奴らの現れる気配はない。
「おかしい。いくら何でも遅すぎる!あの時は今頃校門に奴らが現れて教師たちを襲ったはずだ。」
「確かに多少の時間のズレがあると考えてもこれはおかしい…」
街も全く変わった様子もないし、車は道路を走り人々も道を歩いている。
どういうことだ?日付を勘違いしたか、いやそれはない。間違いなくあの時は今日奴らが現れた。
携帯を開き時間を確認する。もうすぐ五限が終わろうとしている。
「奴らは現れないのか?」
「わからない。しかし、奴らが現れた様子はどこからも確認できないね。」
僕と冴子はタイムスリップしたわけではないのか?それとも何か過去の出来事に変化があったのだろうか?
五限の終わりを告げるチャイムが鳴る。
「冴子このままここにいても仕方ない。とりあえず街へ行こう。」
「そうだな、行こうか。」
僕と冴子は学校をあとにした。

街へと向かう道中も僕たち2人は周りに気を配りながら進んだ。まだ、奴らが現れないと決まったわけではない。
「特に変わった様子はないですね。」
「そうだね、平穏そのものだ。逆に奇妙に思えてくるな。」
確かに奇妙だ。あの時は今僕らが歩く道には奴らが溢れかえり人々は逃げ惑っていたはずだ。電気屋の店頭でテレビが点いているのに気付く。僕はテレビに駆け寄り画面を見る。あの時はテレビでは緊急報道が行われていたがテレビに映っているのは普通の夕方のワイドショーだ。チャンネルを回して見てもどの局も奴らに関する報道など一切ない。
「本当に奴らは現れていないみたいだな。」
僕の心の中に少し安堵が広がる。
「しかし、気を緩めるべきではないな。まだ完全に奴らが現れないと決まったわけではないよ。」
「確かにそうですね。」
気を引き締めつつも僕の心の中には奴らが現れないことへの期待が高まりだしていた。

冴子を家の近くまで送る。冴子の家は僕の寮からは遠いものの、僕の実家からは歩いて30分くらいのところだ。
「わざわざすまないな孝、こんなところまで。」
「いえいえ、全然大丈夫ですよ。」
「そういえば孝と一緒に帰るのは初めてだね。」
「そうですね。僕と冴子は奴らが現れた後で会いましたからね。」
「でも私は孝とこうして一緒に日常を過ごすことがとても嬉しいよ。」
極上の笑顔を浮かべる冴子。
「僕もとても楽しかったですよ。」
僕も笑顔で返した。
こうして平凡な日常のなかで冴子と過ごすのは初めてのことだった。本来なら僕と冴子には接点などない。しかし、運命のいたずらか何かはわからないが冴子と一緒に過ごすことができている。
「そうだ、いざという時の待ち合わせ場所を決めておいた方がいいだろう。」
「確かに、携帯はすぐに連絡を取れなくなりますからね。」
「何かいいところはないだろうか?」
「待ち合わせ場所か…そうだ!あの時の神社はどうですか?」
「私と孝が一夜明かした神社か。確かに待ち合わせ場所として最適かもしれないね。」
「よし、学校の外で何かあったら神社に集合。」
「わかったよ孝。あと今日はなるべく警戒を怠らないようにしたほうがいいね。」
「そうですね。じゃあまた明日冴子。」
「また明日孝。」

僕は冴子と別れて寮に着くまでの間今日のことについて考えていた。現れるはずだった奴らは現れなかった。僕たちは単純にタイムスリップしたはずではないのか?
謎は深まるばかりではあるが僕の心にはこのまま僕たちの日常は続くのかもしれないという期待を持ち始めた。
寮につき荷物を置きもう一度考えを練り直そうとする。その時携帯がメールを受信した。差出人は麗だった。
「なんで今日の五限サボってるのよ!帰りも先帰ってるし。明日みっちり事情を聞かせてもらうから。」
僕の悩みの種がまた一つ増えた気がする。




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■作者からのメッセージ
今回は投稿が少し遅くなりました。すみません>_<

今回の作品は悩んだ末に奴らは出さないで日常での人間ドラマという観点でH.O.T.Dのifストーリーを書くことに決めました。
やはりシリアスさでは原作に比べてかなりの駄作になってしまうのであえてキャラが日常ではどんな風に振る舞うのか考えながら書いていきたいと思っています。

最後にいつも読んでくれる方わざわざ感想まで書いてくれる方本当に感謝してます。
これからも拙い文章ですが頑張っていきたいですo(^▽^)o
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