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運命戦記リリカルEXTRA.AC改  A'S編3、星と雷の敗北
作者:起源くん   2012/10/28(日) 16:19公開   ID:L0gu7.dO5Yw
アースラの執務官室で、クロノは考えていた。
これまでの襲撃犯の出現ポイントに、違和感を感じていたからだ。

(レイヴンがもたらしたコーテックス商会の情報と、管理局の情報を照らし合わせてみると―――)

襲撃犯が出現した世界の次元座標を繋ぎ合わせることによって、彼女達がどの世界を拠点にしているのか、導きだそうとしていた。
座標から座標へと結ぶと、ある世界が円の中心にあると分かった。

「これは・・・・・不味い!」

クロノは慌てて、部屋を出ていった。
座標図に書かれた円の中心には、“第九十七管理外世界 地球”と書かれていたのであった。




一方優人達は、少女と交戦をしていた。

「フェイトはスピードを生かして、ヒットアンドウェイ! なのははあの子がだしてくる鉄球を全て叩き落として、飛び道具を封じてくれ! 絶対に接近戦に持ち込ませるな!」

「分かった!」

「オッケー!」

二人は優人の指示の元動いていた。
フェイトはスピードを生かして、全方位から攻撃を開始した。

「ブリッツラッシュ!」

目にも止まらぬ早さで、少女に切りかかる。
一回切りつける度に、少女の間合いを離脱する。

「この! シュワルベフリーゲン!」

少女が撃ち出した鉄球だが、なのはのディバインシューターに砕かれてしまった。

「くそっ、うっ!」

フェイトの一撃を防ぐが、直ぐ様離れてしまう為、なかなか攻撃が当たらなかった。

(くそっ、何かやりづれぇぞ?)

先程から少女の攻撃は全て完封されていたのであった。
これも全て優人のスキル、ラプラスの眼によって、少女の戦闘スタイルを看破し、それを元に戦闘パターンの一部を解析された為である。

「コメットフリーゲン!」

少女は今度は巨大な鉄球を放った。
ディバインシューターでは破壊出来ないと判断したなのはは、ディバインバスターを放った。

「ディバインバスター!」

巨大な鉄球は砕かれたが、鉄球の影に少女が隠れていた。

「貰った!」

少女はハンマーを降り下ろす。
なのはは砲撃を放った反動で、数秒間動けなかったが、彼女の表情には焦りはなかった。

「add invalid!」

優人が展開した絶対障壁は、少女の一撃を見事に受け止めた。

「何ぃ!?」

まさか自分の一撃を受け止められるとは、露にも思わなかった為、少女は大きな隙を見せてしまった。
それをフェイトは見逃さなかった。

「ハァァァァ!」

「くっ!」

少女は間一髪フェイトの攻撃をシールドで防ぐが、それだけでは終わらなかった。

「ブラッシュインパクト!」

今度はなのはの近接攻撃が少女に迫る。
通常なら、近接素人のなのは攻撃をいなせる少女だったが、フェイトの攻撃を防いでいるため片手が塞がれている状態だった。
少女はやむを得ず、ハンマーでなのはの攻撃を防ぐ。

「このぉ・・・・・調子に乗るなぁ!」

少女は腕に力を込めながら、なのはの攻撃を強引に押し返そうとする。
力が弱いなのはでは、少女の力に太刀打ち出来ないが――――。

「gain str!」

優人の筋力強化の魔術によって、なのはの筋力は強化され、少女に勝るとは言えないが、それなりに力が拮抗するようになった。

(何だ!? こいつ急に力が――――)

そんな疑問を持つ少女だったが、更に追い討ちを掛けるように、優人は魔術を使った。

「gain mgi!」

今度はフェイトの魔力刃を強化した。
魔力刃は一際でかくなり、少女のシールドにヒビを入れる。

(不味い!?)

一瞬気をとられてしまい、その隙をなのはが付く。

「いっけぇぇぇぇ!」

なのはは力の限りレイジングハートを振り、少女にフラッシュインパクトを叩き付けた。

「がはぁ!」

少女はビルに叩きつけられ、更にフェイトのライトニングバインドにより拘束されてしまった。

「色々君に聞きたい事がある。大人しくして貰おう」

フェイトがそう言うが、少女は強引にバインドを砕こうとした。

「gain mgi!」

ヒビが入ったバインドに、優人が魔力強化の魔術を掛け、より一層強固な物になった。

「こうなったら、余程の事じゃバインドを破壊出来ない。教えて貰おうか、何故こんな事をしたのか?」

「・・・・・」

少女は絶対に“喋らねぇ”という表情を作っていた。
優人はタメ息をつきながら、フェイトに管理局を呼ぶように頼んだ。

「フェイト、時空管理局に連絡してくれないか?」

「え? 良いけど、何日か掛かると思うよ」

「え? そうなのか?」

「うん、ここは本局から離れているからね」

「そうしたら、この子どうするの?」

「う〜ん、どうしょうか・・・・・」

このままにしておく訳にはいかないが、監禁するのも気が引ける。
優人達は、少女の処遇に考えていると、突如、剣を持っている女性と屈強な肉体の男が襲い掛かって来た。

「ハァァァァ!」

「ウオォォォォォ!」

「なのは! フェイト! 一旦引くぞ!」

「わ、分かった!」

「了解!」

三人は攻撃をかわし、距離を置く、その間に女性は少女に掛けられたバインドを切り、少女の拘束を解除する。

「大丈夫かヴィータ? 随分苦戦しているみたいだったが?」

「う、うるせぇよ! これから逆転するつもりだったんだ! 余計な事すんなよなシグナム!」

「敵を侮り過ぎだヴィータ。この敵は今までの奴等とは違う。特にあの少年―――」

男はじっと優人を見た。

「あの少年が、あの二人に指示を与え、力を与えている。逆にあの少年を抑えれば、我らの勝利は確実だ」

「ならば、私はあの黒い少女をやろう。ヴィータは白い方を、ザフィーラは少年の方を」

「言われるまでもねぇ。一対一なら、ベルカの騎士に負けはねぇんだからな」

「多少気が引けるが、我らの主の為だ。やむおえん」

そう言って、三人はそれぞれの相手に向かって行った。
ザフィーラは優人一直線に向かって来た。
それをなのはとフェイトが阻もうとするが――――。

「お前たちの相手は―――」

「あたし達だ!」

そう言って、シグナムはフェイトに切りかかり、ヴィータはなのはにハンマーを振り下ろした。
二人は攻撃を防ぐが、その隙をついてザフィーラが二人を突破する。

「しまった!?」

「優くん! 逃げて!」

フェイトとなのはは叫ぶが、空戦が苦手な優人が逃げたとしても、逃げきれる筈がない。
そこで優人は逃げるより、防御を選択した。

「gain com!」

体全身では無く、腕の耐久力を上げ、ザフィーラが攻撃する箇所を予測し、そこを防御した。

「ハァァァァ!」

ザフィーラの拳を見事防ぐが、威力のあまり吹き飛ばされ、ビルに叩きつけられた。

「がはぁ!」

「ほう、今のを防ぐか・・・・・だが―――」

ザフィーラは独特な構えをとる。

「今の一撃で分かった。お前は前線で戦うタイプでは無く、シャマルのような後方支援型、つまり―――」

ザフィーラは優人目掛けて、飛び掛かった。

「直接戦闘力が低いという事だ!」

拳が再び優人に迫る。

「くっ、add invalid!」

優人は絶対障壁で拳を防ぐが、ザフィーラが蹴りを繰り出す時には既に消失してしまい、蹴りをモロに喰らう。

「良い楯だが、その程度では自分も仲間も守れんぞ!」

ザフィーラは両腕を降り下ろし、そのまま優人を地面に叩き付けた。

「優くん!」

「優人!」

なのはとフェイトは、優人を助けに行きたかったが、ヴィータとシグナムの相手で精一杯の状態だった。

「これで止めだ! 牙獣走破!」

ザフィーラが繰り出す飛び蹴りが優人に迫る。
止められない、誰もがそう思った瞬間、一人の女性がザフィーラの蹴りを受け止めた。

「ぬぅ!?」

「ドオリャァァァァ!」

彼女はそのままザフィーラの足を掴み、ジャイアントスイングで投げ飛ばした。

「大丈夫かい優人? あたしが来たからには、アンタには指一本触れさせないよ」

「ア、アルフ?」

優人を助けてくれたのは、フェイトの使い魔のアルフであった。

「ザフィーラ!?」

シグナムとヴィータは、投げられたザフィーラの元に向かい、なのはとフェイトはその隙に優人の元に向かった。

「アルフ、来てくれたんだ」

「でもどうやって? 結界が張られているのに・・・・・」

「ああ、この結界は相手を閉じ込めるタイプの奴だから、外からは簡単に入れるんだ。最も―――」

アルフは相手側を睨む、投げ飛ばされたザフィーラは瓦礫を退かしながら立ち上がり、すぐ側にはシグナムとザフィーラが立っていた。

「アイツらを倒さないと出られないんだけどね」

「なら、やる事は一つだ」

優人はボロボロの体を起こしながら、立ち上がった。

「優くん!? 無茶だよ! そんなボロボロの体で―――」

「無茶でも何でも、皆の力を合わせないと、彼女達には勝てない。俺だけ休んでいる訳にいかない!」

「でも・・・・・」

「なのは。悔しいけど、相手の力量は私達より上だよ。優人の補助が無ければ、あの人達には勝てない」

「大丈夫だって、あたしがいる限り、優人に指一本も触れさせないよ」

「うん・・・・・わかった」

なのはは少し不安そうな表情をしたが、現状では優人の力が必要不可欠だったので、渋々承諾した。
一方、シグナム達も集まっていた。

「ザフィーラ、大丈夫か?」

「ああ、油断したが、次はこうはいかん」

「あたりめぇだ、このまま引き下がる訳にいかねぇ!」

三人はそれぞれの構えをとった。
それに呼応するように、優人達四人も身構えた。
そして、シグナム達が動き出したのと同時に優人はバリアジャケットを解除し、三人に強化魔術を掛けた。

「gain str! gain com! gain mgi! move speed!」

筋力、耐久、魔力、素早さ、全てに強化を施した。
優人がバリアジャケットを解除したのは、残り少ない魔力を全てなのは達の補助に当てる為であった。

「なぁ!?」

「コイツら! 急に動きが―――!?」

「くっ、」

突然相手の動きが早く、しかも動作のキレが良くなった事に、シグナム達は驚愕していた。

「ハァァァァ!」

「舐めるな!」

フェイトの素早い猛攻に、シグナムは得意の剣術で全ていなした。

(スピードはこちらの方が上だけど、近接戦闘はこの人の方が上だ!)

(これ程速い敵は初めてだ! だが負けん!)

フェイトは目にも止まらない速さで打ち込みが、シグナムの正確な剣裁きで、全て防がれてしまった。
接近戦ではやはり分が悪いとふんだフェイトは、距離を置き、砲撃で仕留めようとした。

「サンダー・・・・・スマッシャー!」

一方シグナムは、剣を連結刃形態にし、技を放つ。

「飛竜一閃!」

二つの魔法はぶつかり合い、互いを相殺した。
するとシグナムは、ニヤリと笑った。

「何がおかしい?」

「いや、嬉しいのだよ。これ程の強敵に出会えた事に。名は何という?」

「フェイト。フェイト・テスタロッサだ」

「テスタロッサか、私はヴォルケンリッターの一人、剣の騎士シグナムだ。いざ、尋常に勝負!」

そう叫びながら、シグナムはフェイトに切りかかっていった。




優人達とシグナム達が交戦している最中、その様子を見ていた女性がいた。
湖の騎士シャマルである。

(思った以上に、シグナム達が苦戦しているわ・・・・・)

これまでの戦いを見てみると、力量はこちらの方が上だが、彼女達は攻めきれずにいた。その理由はもちろん―――。
(この少年が、バックスとして上手く機能しているからだわ)

同じ後方支援から見ても、優人のサポートは見事なものであった。
彼のおかげで、こうしてシグナム達と渡り合えている。逆に言うと―――。

(彼のサポートが無ければ、あの子達はシグナム達と渡り合えない・・・・・。それにあの子達は、自分達が追い詰められている事に気づいていない・・・・・)

シャマルの考えている通り、優人の魔力は底を尽きそうになっていた。
仮に、彼の魔力が底を尽きれば、優人の強化魔術に頼りきっているなのは達は、敗北を喫するだろう

(このままいけば、私達の勝ちだけど・・・・・)

しかしそうはいかなかった。
シグナム達がいる結界に、三人の魔導師が接近しているのを確認したからだ。

(いくらシグナム達でも、七人は厳し過ぎる。ここは・・・・・)

「クラールヴィント」

シャマルはクラールヴィントを出し、ある魔法を使おうとした。




戦いは膠着状態に陥っていた。
互いが互いに攻めきれずにいるという状態だったが、シグナム達は少し焦りを見せていた。

「このぉ! ラケーテンハンマー!」

ヴィータのハンマーがなのはに迫るが、魔力強化と耐久力強化を施されたなのはは、プロテクションで防ぐ。

「ウオォォォォォ!」

「ウオリャァァァ!」

ザフィーラとアルフの拳がぶつかり合う。
しかし、筋力強化を施されたアルフの力が勝り、ザフィーラの拳ごと吹き飛ばす。

(くっ、やはりあの少年の魔法によって強化されているか・・・・・)

「どうしたんだい? もうそれでお仕舞いかい?」

「盾の守護獣を舐めるなぁ!」

ザフィーラは再び、アルフに向かって拳を振るう。

「ハァ!」

「フン!」

フェイトとシグナムは、高速の打ち合いを続けていた。
視認が難しい程の速さであったが、ややシグナムの方が有利だった。

「貰った!」

「くうぅ!」

シグナムの剣がフェイトを切りつける。
本来ならこれで勝負がつくのだが――――。

「heel!」

優人の治癒魔術によって、ダメージを瞬く間に回復されてしまった。
これがシグナム達が焦っていた理由だった。

(くっ、これでは埒があかん!)

魔力蒐集の為には、相手の生存は絶対の為、殺傷設定は出来ない。
かといって、多少のダメージでは、直ぐに回復されてしまう。
しかし、焦っていたのは優人も一緒であった。

(不味い・・・・・魔力が・・・・・持って五分だ・・・・・)

優人の魔力も底をつきかけていた。
今は、ペンダントの魔力を補助に使っているが、それもつきかけていた。
それでも優人は、強化と治癒の魔術を送り続けていた。
魔術が一瞬でも途切れてしまえば、瞬く間に畳み掛けられてしまうからである。
しかし、この膠着状態は突如終止符を打たれた。
優人の胸から、女性の腕が飛び出し、何かを掴んだのである。

「があぁぁぁぁぁ!」

優人の体に激痛が走る。
リンカーコアの魔力を抜かれた事により、魔術回路が暴走したためである。
優人は血を吐き、そのまま地面に倒れ伏せる。
優人が倒れた事により、なのは達に掛けられていた強化魔術は解除されてしまった。

「優人!?」

「隙を見せたな!」

優人に気をとられたアルフに、攻撃を仕掛けるザフィーラ。
アルフはザフィーラの拳を受け止めるが、強化されていない体では受け止められず。そのまま後方に吹き飛ばされた。

「くうぅぅ・・・・・このぉ!」

どうにか踏みとどまり、反撃をしようとするが、打ち込んだ拳は捌かれ、蹴りをいなされ、逆にカウンターを喰らう。

「どうした!? 先程の動きはマグレか!?」

(くそ! 明らかに体術負けしている! このままじゃ・・・・・)

優人の強化魔術が無くなった今、古代ベルカ武術を会得しているザフィーラと、格闘術を少しかじった程度のアルフでは勝負にはなり得なかった。
一方フェイトでも、同じ様な事が起きていた。

「どうしたテスタロッサ!? 動きが鈍いぞ!」

「くっ!」

能力が通常状態に戻った瞬間、フェイトはシグナムの剣捌きについていけず、防戦一方になっていた。

(このままじゃ不味い! 距離を――――)

しかし、シグナムに隙は無く、一瞬でも目を離せば、切り伏せられると感じる程である。

「これで決める! 紫電一閃!」

「!? サイズスラッシュ!」

シグナムの炎の剣とフェイトの雷の鎌がぶつかり合う。
しかし、カートリッジによる水増ししたシグナムの一撃に耐えきれず、バルディシュの先端部は粉々に粉砕されてしまった。

「バルディシュ!? 大丈夫!?」

【イ、イエス、マイマスター・・・・・】

バルディシュは強がって言ったが、先端部が破壊されているため、もう魔力刃を出す事が出来なくなっている状態だった。
一方なのはも――――。

「シュワルベフリーゲン!」

「っ! ディバインシューター!」

こちらも押されぎみであった。
優人の教え通り、接近戦に持ち込まれないように逃げ回りながら戦っているが、かなり厳しい状態であった。

「ちょこまかと逃げてんじゃねぇよ! ラケーテンハンマー!」

move speedの効果が無くなった今、ヴィータを振り切る事が難しくなっていた。

「レイジングハート!」

【プロテクション】

ヴィータの一撃を受け止めようと、防御魔法を展開させた。しかし、それは完全な悪手。
優人の魔力強化によって、ようやく防げる一撃なのだから、それが無い今では――――。

「ぶち抜けぇーー!」

防げる筈も無く、なのはのプロテクションをぶち割り、ラケーテンハンマーはなのはに直撃。そのままビルに叩き込まれ、壁を貫通し、ビルの一室に吹き飛ばされた。

「くうぅぅ・・・・・」

「さて、もう動けねぇみてぇだから、貰うもんは貰っていくぞ」

そう言ってヴィータは、なのはに近寄り、彼女の胸に手をやり、リンカーコアの魔力を蒐集し始めた。

「アァァァァ!!」

なのはの体中に痛みが走り、彼女は気絶してしまった。

「へへ、一丁あが―――」

「スティンガーレイ!」

突如後ろから数発の魔力弾が迫って来た。
ヴィータはそれらを全て弾くと、撃って来た魔導師―――クロノを見据える。

「君達が、魔導師襲撃事件の犯人だな?」

「あぁん? それがどうしたってんだ?」

「時空管理局の執務官として、見逃せない!」

クロノはS2Uを構えながら言い放った。

「今回は大漁だ―――」

《一旦引くぞヴィータ》

突如、シグナムからの念話が飛んで来た。その内容は、ヴィータにとって納得いかないものだった。

《何でだよ!? このまま一気にこいつらの魔力を―――》

《新手が来たうえに、我々は今狙撃を受けている。距離からして、結界外だろう。それに、カートリッジの残数も心もとない。手練れと戦うなら、万全を期した方がいい》

シグナムの指摘も最もだった。ヴィータが持ってカートリッジの数も、残り数発程度しか無かったのだ。

《りょーかい。そんじゃ、結界を解除した後、バラバラ逃げていつもの場所に集合だな》

《ああ、それで構わない。ザフィーラ、そして、居るのだろうシャマル?》

《・・・・・》

《シャマル? 聞こえているのか?》

《・・・・・ええ、大丈夫よ。いつもみたいに、別の次元世界を経緯すればいいのね》

《ああ、その通りだが・・・・・》

シャマルの様子がおかしいと感じたシグナムだったが、今は離脱を最優先にする事にした。

《そんじゃ、結界を解くぞ》

ヴィータがそう伝えると、結界は音を立てて崩れた。

「結界が!? どうして!?」

「隙あり!」

「しまっ――」

相手が結界を解除した事に驚いてしまったクロノは、ヴィータの一撃に対応出来ずに、吹き飛ばされてしまった。
その隙にヴィータはビルから外に出て、次元転移魔法で、その場を離脱。他の三人も、同様に離脱をしたのであった。




結界設置地点から数km離れたビルの屋上に、狙撃形態のホワイトグリントを持ったレイヴンがいた。

《クロノ、アップル、レジーナ。状況は?》

《すまないレイヴン。取り逃がした》

《こちらも同じです》

《以下同文。まったく、厄介な奴等だよ》

《エイミィ、奴等の足取りは?》

《ごめん。彼女達しっかりジャミングを張っていて、追跡出来なかった》

《そうか・・・・・》

完全に取り逃がしたが、これでクロノの推理通り、彼女達が地球を拠点にしている可能性が高くなったうえに、相手の残りメンバーも確認出来た。
今回はそれだけでも十分な収穫だった。

《ところでクロノ。フェイト達は無事か?》

《ああ、バルディシュは破損していていたが、フェイトとアルフは無事だ―――》

それを聞いたレイヴンは少し安堵した。
元々フェイト達を地球に来させた理由は、休暇という意味もあるが、辺境世界なら魔導師襲撃事件の犯人に遭遇せずに済むだろうと、考えた結果である。
最も今回は完全に裏目に出てしまった。

(こんな事なら、事件の事を話して置くべきだったな・・・・・)

そんな事を思いながら、クロノの報告に耳を傾ける。

《二人は無事だったが、なのはは魔力を奪われて気絶している。優人は意識不明の重体だ。二人ともアースラに収容した》

《重体? それほど酷いのか?》

《外傷は酷いが、それが直接の原因じゃないと思う》

《どういう意味だ?》

《分からない。ただバイタルが異常に低くなっているうえに、血も吐いている。これから緊急処置と精密検査を行う事になった》

《・・・・・分かった。俺達はこれからどうする?》

《一旦アースラに戻って、作戦会議だ》

《了解》

レイヴンは念話を終えると、アースラに転移した。




一方ヴォルケンリッター達は、他世界を経緯し、合流地点に集まっていた。

「そんじゃ、早速白い奴の魔力を蒐集するぞ」

そう言ってヴィータは、なのはから奪った魔力を闇の書に与える。すると、白紙のページが数ページ埋まっていく。

「おお! こりゃスゲェ!」

「やはりただ者では無かったようだな」

「多少苦戦はしたが、見返りは十分だったな」

今までは良くて半ページ、悪い時には数行しか埋まらなかったが、今回の蒐集で一気に完成に近づいたのであった。
すると、メンバーの最後であるシャマルがやって来た。

「おせぇーぞシャマル。何やってんだよ」

「本来は主を一人にした事を責めるのだが、今回はお前には助けられた。おかげで蒐集も―――」

そこでシグナム達は気づく、彼女の右腕に血が付着している事に―――。

「おい!? 怪我してんのか!?」

「落ち着けヴィータ。これはシャマルの血ではない。匂いからして、あの少年の物だ」

「シャマル。一体何があったんだ?」

シグナムの問に、シャマルはぽつぽつ答え始める。
シグナム達が苦戦をしている理由は、少年の補助魔法によるものと看破したシャマルは、旅の鏡という魔法で彼の魔力を抜こうした。そこまでは良かった。

「今までとは違う感触を感じたけど、強引魔力を抜いたら・・・・・あの子、血を吐いたのよ」

シャマルの表情は青く染まっていた。

「そんなバカな! リンカーコアの魔力を抜かれても気絶するだけで、血を吐くような事はない筈だ!」

「でも現に、あの子の血がこの手に着いているのよ!」

シャマルの腕に付着している血が、事実を物語っていた。

「それであの子、倒れてまま、ピクリとも動かなくなったのよ・・・・・」

その言葉を聞いて、誰もが最悪の事態を想像してしまった。
それをシャマルは代弁した。

「どうしょうシグナム・・・・・私、あの子を殺しちゃったかも知れない!」

その言葉に、誰もが黙ってしまった。


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■作者からのメッセージ
今回の戦闘如何ででしたか?
今回の戦闘でも、スターライトブレイカーでませんでした・・・・・・・・・・・。
スターライトブレイカーはなのはの代名詞なので、いつか出したいと思います。
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