結界内では、六人が空を飛び交いながら戦っていた。
ヴィータにはなのはとフェイトが、ザフィーラにはアルフとリニスが戦っていた。
「シュワルベフリーゲン!」
「アクセルシューター!」
なのはのアクセルシューターがヴィータの鉄球を容易に打ち砕く。
次にフェイトのハーケンスラッシュがヴィータに迫る。
「ハアァァァァ!」
「調子にのってんじゃねぇ!」
ヴィータのラケーテンハンマーとぶつかり合う。
本来なら、力だけならヴィータが勝つのだが、デバイスの性能差があった為、相殺に終わってしまった。
(コイツら以前とは段違いだ。あたし達と同じカートリッジシステムを―――)
ヴィータは舌打ちをしながらも、なのはのアクセルシューターを防ぐ。
一方ザフィーラは、リニスとアルフの二人と戦っていた。
「セイバースラッシュ!」
リニスの魔力刃が、ザフィーラに迫る。
しかしザフィーラはかわそうとせず、拳を構える。
「なんの!」
ザフィーラの拳と蹴りにより、セイバースラッシュは打ち砕かれた。
「隙あり!」
それを狙ったのかように、アルフは飛び蹴りを放つが、ザフィーラ両腕に阻まれた。
「甘いわ!」
ザフィーラの拳がアルフに迫るが、彼女はレイヴンの教えを思い出す。
『いいかアルフ。大抵の古流武術ってのは、地面を強く踏みしめて放つ技が多い。だから奴らは空中で技を出す時、必ず魔法陣を足元に展開させ、足場にする。だから―――』
(相手の足を―――払う!)
アルフはザフィーラの足の動きに合わせるように、足を払いをした。
「何!」
ザフィーラは体勢崩し、その隙にアルフは、ボディブローをザフィーラの体に放った。
「がはっ!」
「ウオリャァァァァ!」
そのままラッシュを決める。
フック、アッパー、ストレート。次々と決めるが、ザフィーラの体は思った以上に堅く、なかなかダメージが通らなかった。
「ウオォォォ!」
「しまっ―――」
深追いし過ぎてしまい、ザフィーラの肘鉄がアルフの胸を打つ。
「ぐはぁ!」
ザフィーラは追い打ちを掛けようとしたが、リニスのフォトンランサーに阻まれた。
「ちぃ」
「アルフ! 大丈夫ですか!?」
「ああ・・・・・助かったよリニス・・・・・」
アルフは息を整え、再び戦闘体勢をとる。
「・・・・・この間までは、格闘の素人だったと思ったが、よく短期間でそこまでの格闘技術を身に付けたな」
「あったり前だ! アンタに勝つために、血ヘドを吐きながらもう特訓したんだから!」
(本当に血ヘドを吐いてましたね・・・・・レイヴンは手加減しませんでしたし・・・・・)
「なるほど、それなりの修練を積んだようだな・・・・・我はザフィーラ。ヴォルケンリッターの一人、盾の守護獣ザフィーラだ。お前達の名は?」
「あたしはフェイトの使い魔のアルフ」
「私はプレシア・テスタロッサの使い魔リニスです」
「アルフにリニスか・・・・・互いの主の為、雌雄を決しようではないか!」
ザフィーラがそう言うと同時に、アルフとリニスに飛び掛かっていった。
ヴィータは追い詰められていた。
元々ベルカの騎士は多人数を相手するのはあまり得意では無い。その為、余程の力量差が無いと苦戦をしてしまう事が多い。
(くっそ! 一対一なら負けねぇのに!)
そう思っていると、なのはが声を掛けて来た。
「どうして貴女達は、闇の書を完成させようとするの!」
「うるせぇ! おめぇには関係ねぇだろう!」
「大有りだよ! 貴女達が優くんの魔力を奪ったせいで・・・・・優くんが死にかけたんだよ!」
「!?」
その言葉に、ヴィータは動揺してしまった。
「う、うるせぇ! それでもあたし達はやらなきゃいけねぇんだよ! コメットフリーゲン!」
「ディバインバスター!」
ヴィータのコメットフリーゲンとなのはのディバインバスターがぶつかり合い相殺された。
「もらった!」
「しまっ――」
ヴィータの僅かな隙を狙い、フェイトのハーケンスラッシュが迫る。その時―――。
「シュランゲバイゼン!」
「!?」
シグナムの蛇剣がフェイトを狙う。フェイトは辛うじてその攻撃をかわす。
「ヴィータ、大丈夫か?」
「シグナム!? どうしてここに!?」
「シャマルから連絡があった。お前達が閉じ込められていると」
そう言って、なのは達を見据える。
「私はテスタロッサをやる。お前は白い魔導師の方を―――」
「・・・・・」
「ヴィータ?」
「わかってる。一対一なら遅れをとられねぇよ」
そう言って、ヴィータはなのはに向かっていった。
それを見たシグナムは、ザフィーラ方を見る。
二対一の状況でも、彼は上手く立ち回れている事を確認すると、再びフェイトを見据える。
「久しいなテスタロッサ。どうやら、デバイス共々強くなったようだな?」
「もちろん、貴女に勝つために!」
フェイトのバルディシュとシグナムのレヴァンティンがぶつかり合った。
結界の外のビルの上では、どうにか壊せないかと、結界を調べているシャマルがいた。
(結構頑丈に作られているわ・・・・・ヴィータのギガントシュラークじゃないと無理かも知れない・・・・・)
しかし、ヴィータは結界内で交戦中である。ヴィータの力を当てに出来ないのなら、自分の力で何とかしなければならない。
しかし、シャマルにはそんな力はなかった。
(方法はある・・・・・だけど、これを使ってしまったら・・・・・)
その方法は、闇の書の力を限定的に使う事である。
しかし、力の大きさによって、今まで蒐収したページが白紙に戻ってしまうリスクもある。
シャマルが迷っていると、突如バインドを掛けられてしまった。
「!? しまった!」
すると、三人の魔導師――クロノ達がシャマルを取り囲んだ。
「こちらは時空管理局。君を魔導師襲撃事件の容疑者として、逮捕する」
「くっ、」
「抵抗は無意味ですよ。貴女が後方支援タイプなのは、前回の戦闘でわかっていますから」
「大人しくしていた方が身のためだよ」
そう言われてしまい。シャマルは項垂れてしまった。
相手は三人、しかも手練れ。こちらは一人のうえに、戦闘向きでは無い。どう考えても、逃げれる自信はなかった。
(こんなところで・・・・・終わってしまうの・・・・・?)
シャマルが諦めていると、一つの影がクロノ達に迫って来た。
「エイミィ、彼女を拘束した。アースラに転そ・・・・・」
「クロノ執務官! 危ない!」
アップルの叫び声で、クロノが気づく、フードを被った男が迫っていることに―――。
「!?」
「失せろ」
男の鋭い蹴りが、クロノの頭を狙う。
クロノは咄嗟にS2Uで防ぐが、叩き折られてしまい、そのままクロノの頭に直撃した。
「があ!」
クロノのはそのまま隣のビルに叩きつけられ、そのまま落下してしまった。
「執務官!」
アップルは急いで落下しているクロノを受け止め、安否を確認した。
どうやら上手く蹴りの衝撃を逃がせたようで、頭に血を流しているが、気絶しているだけだった。
レジーナはというと、謎の襲撃者と交戦していた。
「ふっ!」
「この!」
高速で放つナイフと四方八方から襲いかかるチャクラムに翻弄されるレジーナ。
先程から防戦一方になっていた。
(これじゃ拉致が開かない! 一か八か!)
レジーナがとった行動はダメージ覚悟の特攻だった。
「ウオォォ!」
レジーナはナイフやチャクラムに切り刻まれても怯まず、男に迫って行った。
そして、エキドナが届く距離まで近づいた。
「もらった!」
エキドナは男の体を切りさ――――かず、空を切った。
「――――え?」
レジーナは自身の目を疑った。何故なら、男はエキドナの剣先に立っていたのだから。
「惜しいな小娘」
そう言って、男は左手の魔手を出した。
それを見てレジーナは――。
(ああ、あたし・・・・・死ぬんだな)
渾身の一撃はかわされ、体は満足に動け無いほどにボロボロ、しかも相手は必殺の一撃を放とうとしている。
死を覚悟した瞬間。男は急に飛び退いた。
レイヴンからの狙撃である。
「チィ、狙撃手か」
男はレイヴンの狙撃によって、レジーナから離れて行った。
「レジーナ捕まれ!」
「アップル!」
その隙に、クロノを抱えたアップルがレジーナの手を掴み、そのままアースラに転移した。
レイヴンはそのまま男を狙撃しているが、思いの外素早く、レイヴンの攻撃をかわしていた。
「湖の騎士。結界を破るなら早くしろ」
そう言って、男はシャマルを縛っているバインドを破壊する。
「あ、貴方は一体・・・・・何故私達を助けるんですか?」
「利害が一致しただけだ。他意は無い。それよりも早くしろ。長くは持たんぞ」
男にそう言われ、狙撃手がいる事を思い出すシャマル。
選択の余地はない、彼女は闇の書を開く。
「闇の書よ、湖の騎士シャマルが命じます! 全てを打ち砕く破壊の雷を!」
シャマルがそう唱えると、結界の頭上から巨大な雷が落ち、結界を破壊した。
すかさずシャマルは、仲間に念話をした。
《皆、私が隙を作るから、この場を離脱して!》
そう伝えると、シャマルは目眩ましの魔法を、シグナム達の交戦空域に放った。
「クラールゲホイル!」
「キャア!」
「しまった!」
「眩しっ――!」
「目眩ましですか!」
なのは達は突然の閃光に目が眩んでしまった。
その隙に、ヴォルケンリッターは離脱してしまった。
しかし、フェイトに迫る影があった。クロノを襲った男である。
男はレイヴンの狙撃をかいぐくり、フェイトに近づいた。
《フェイト逃げろ!》
「え?」
レイヴンからの念話に驚いたフェイトだったが、既に男の射程距離に入っていた。
「貴様の魔力を奪わせて貰う」
そう言って、男の魔手がフェイトの胸に押し当てられ、そして―――。
「ドレイン!」
「アアァァァァァ!!」
フェイトの魔力を吸い上げた。
フェイトは魔力を奪われたショックで気絶し、そのまま落下を始めた。
「フェイトちゃん!?」
なのはは急いでフェイトを受け止め、辺りを見回すが、既に男の姿はなかった。
戦闘が終わり、レイヴンは状況把握を勤めていた。
《エイミィ! 状況は!?》
《ヴォルケンリッターの人達は完全にロストしちゃった。クロノくん、レジーナさんは怪我を負って治療中、フェイトちゃんは魔力を奪われて気絶してるけど、怪我は無いよ》
《そうか・・・・・あの男は?》
《ごめん、完全に見失った。そもそも、こっちのレーダーには何にも映ってないんだ》
《ステルスか?》
《たぶんそうだと思う》
レイヴンは内心舌打ちをした。
アースラのレーダーに引っ掛からなければ、探し出す事はほぼ不可能だろう。
(雲行きが怪しくなったな・・・・・)
何はともあれ、作戦は見事に失敗。こうなると、長期戦になってしまう。
(闇の書が完成するまでに、奴等を捕まえないとな)
レイヴンはホワイトグリントをしまい。ビルの屋上を後にした。