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運命戦記リリカルEXTRA.AC改 A'S編8、ターニングポイント
作者:起源くん   2012/11/08(木) 20:29公開   ID:L0gu7.dO5Yw
優人は一人公園のベンチに座っていた。
本来なら真っ直ぐ帰るべきなのだが、どうにもそんな気分になれず、こうして公園にいたのだが―――。

(・・・・・何やっているんだろうな俺・・・・・)

今もこうしている間、なのは達は戦っている。しかし、今の自分が行っても足手まといになるのも理解している。
なのは達の手助けしたい気持ちと、行っても足手まといだという理性が、優人の頭の中で渦巻いていた。

(・・・・・帰ろう)

あまりいると、また通り魔に襲われるかも知れない。
そう考えた優人は、ベンチから腰を上げた。気がつけばすっかり夜になっていた。

「・・・・・・・・・・ん?」

ふと、誰かが空から降りて来た。
一瞬、なのはか? と思った優人だったが、降りて来たのは、赤い衣装を纏った少女だった。

「!?」

優人はその少女を知っている。数週間前、自分を襲って来た少女だったのだから―――。

「とりあえず、ここまでくれ――――」

少女と完全に目が合ってしまった。

(不味い・・・・・こんな事ならさっさと家に帰れば良かった)

魔術が使えない状態では、優人は普通の小学生と変わらない。仮に魔術が使えても、なのは達がいない現状では、目の前の少女には手も足も出ないのだから。

「お、おめぇ!?」

少女は優人に急ぎ足で歩み寄った。
万事休す。優人はそう思ったが、少女は意外な行動をとった。

「おめぇ生きてたのか!? 血とか吐いたって聞いたぞ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

少女は優人を襲うどころか、逆に優人の体をペタペタと触り、安否を気遣った。
優人は戸惑いながらも、少女の問いに答えた。

「と、とりあえず死にかけたけど、生きているよ」

「やっぱ死にかけたのか・・・・・」

死にかけた、とう言葉を聞いて、少女の表情は暗くなってしまった。

「え、えっと・・・・・とりあえず俺は大丈夫だから、そんなに心配しなくても―――」

「心配するってんだ! もし殺しちまったら―――」

それを聞いた優人は、この子が魔導師を襲っているのは、何か理由があるんじゃないかと考えた。

「なぁ、少し話をしないか?」

「何を?」

「君の事。何でもいいから」

「あたしの事?」

「先ずは名前から、俺は衛宮優人。聖洋小学三年生で、新聞部の部員」

「あたしは―――」

少女も自己紹介をしようとしたが、目の前の少年が敵だと思い出し、慌ててハンマーを構えた。

「て、敵とは馴れ合わねぇ!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺は戦う気はない! 君と話がしたいだけだ!」

「信じられるか! ベルカのことわざには、和平の使者は武器を・・・・・持ってねぇな」

少女の目には、優人がデバイスや武器を持っているように見えなかった。
しかし、中にはデバイス無しでも魔法が使える人間もいるので、少女は警戒を緩めなかった。

「そ、それでも! 魔法とか使えるだろ! 信用出来ねぇ!」

「使えないよ。使おうとすると―――」

優人は魔術回路を起動させた。すると、まだ修復されていないせいか、体中に激痛が走る。

「うぐっ!」

「お、おい! 大丈夫か!?」

倒れそうになった優人を少女は支え、ベンチに座らせた。

「うん・・・・・大丈夫。しばらくすれば良くなるから」

「・・・・・・・・・・」

「? どうした?」

「・・・・・すまねぇ」

少女は小さく消えそうな声で、優人に謝罪した。

「謝らなくていい。何か理由があるんだね?」

「そ、それは・・・・・」

「言いたくなかったら、言わなくていい。そのかわり、君の話を聞きたい」

「・・・・・・・・・・ちょっとだけなら」

そう言って、少女は話始めた。
この街に来たのは、今年の六月。シグナム、シャマル、ザフィーラと共に、ある家に厄介になっているらしい。
最初は暮らしに戸惑ったが、それなりに楽しく過ごせたらしい。
その過程で、ゲートボールにはまったと、少女は楽しく話した。

「それで―――って、もうこんな時間!? アイツら心配する!」

時計を見て、少女は慌ててベンチから立ち上がる。そして、何処かに行こうとした。

「待って! 君の名前は―――」

「あたしは鉄槌の騎士ヴィータだ! じゃあな、衛宮ナンとか!」

「優人だよ! 衛宮優人!」

聞こえたがどうかわからないが、優人はヴィータに向かって叫んだ。




アースラでは、なのは達が今回の被害と今後の方針について、ミーティングルームでリンディと話し合っていた。

「クロノ怪我は軽傷よ。フェイトちゃんも、魔力を抜かれた事以外は外傷がなかったから、二、三日すれば回復するわ」

それを聞いた一同はホッと一安心した。しかし―――。

「だけど、レジーナは思った以上に傷が深くて、しばらくは戦線に復帰出来ないわ」

レジーナの体には無数のナイフと、一部の腱が切られてしまっていた。
実質上、レジーナはここでリタイヤとなってしまった。

「そうか・・・・・それでコイツの正体はわかったか?」

レイヴンがフードの男を指した。
突然現れ、クロノを襲撃、レジーナに重傷を負わせ、更にはフェイトの魔力を奪い逃走。
もはや見事としか言えない手際の良さである。

「現在調査中よ。恐らくは、闇の書の主と関わり合いがあると思うわ」

「ところでさ、今に思うんだけど、何でザフィーラ達は闇の書を完成させようとするんだい?」

「それは闇の書の主の命令じゃ―――」

「いえ、それだけでは説明がつかないんです。上手く言えないんですが・・・・・自分の意思で蒐集をしているような・・・・・・・・・・」

アルフとリニスは、ザフィーラとの戦いで、何かを感じ取ったらしく、ヴォルケンリッター独自の思惑があると考えた。

「どちらにしても、奴らを捕まえて吐かせればいいだけの事だ」

「何か案は有るのかしら?」

「無い。今回の作戦はもう使う無いだろうし、妙案が生まれるまで、しばらく待機だな」

そう言って、レイヴンは扉の方に向かって行った。

「レイヴンさん? 何処に?」

「フェイトの見舞い。ついでにクロノもだ」

「それなら、私達も行きます」

「あたしも!」

「私も!」

「それなら全員で行くか―――リンディ、お前はどうする?」

「・・・・・少し考えたいから、一人にしてもらえないかしら?」

「・・・・・わかった。行くぞお前ら」

そう言って、レイヴンは三人を引き連れて、フェイトとクロノがいる医務室に向かって行った。
リンディは、誰もいないミーティングルームで、ある可能性を考えていた。

(もしかして・・・・・彼女達に自我芽生えている?)

昔なら、プログラムに意思なんて宿らない。そう考えていたが、優人という前例がいるため、完全に否定出来ずにいた。

(だからと言っても、それが蒐集をする理由に繋がるのかしら・・・・・)

しばらく考え、ある場所に連絡をした。

「ユーノくん。調べて貰いたい事があるんだけど―――」




シグナム、シャマル、ザフィーラは、誰もいない路地裏にて、フードの男と出合っていた。

「貴様は何者だ? 目的は一体何だ?」

シグナムは剣先を男に向けて言い放った。すると男は、フェイトから抜いた魔力結晶を差し出した。

「黒い少女から抜いた物だ。これで消費分は賄える」

「それはありがたいが、貴様の目的がわからん以上、それは受けとれん」

「目的なら、お前達と一緒だ」

「なに?」

「闇の書の完成。それが目的だ」

「それなら、お前の目論みは既に破綻している。闇の書は、闇の書が選んだロードにしか扱えん。大方、闇の書の力を手にしようとしたのだろう? 残念だが、宛が外れたな」

シグナムは、男に皮肉を言いながら、男から魔力結晶を奪い取るようにすると、直ぐ様闇の書に蒐集した。すると、いつの間にか男の姿が消えていた。

「・・・・・シャマル。家の結界を強化しておいてくれ。念のためだ」

「わかったわ。それよりも、ヴィータ遅いわね? 探した方がいいかしら?」

「子供扱いすると怒るぞ。それに心配無用だ」

シグナムが指した方向には、走って来たヴィータの姿が見えた。

「オーイ! 良い知らせだ」

良い知らせと言うことに、シグナム達は首を傾げた。

「この前、シャマルが魔力を抜いたアイツ、生きていたぞ」

「本当ヴィータ!?」

「ああ! この目で見たんだから、間違いねぇって!」

その言葉に、シャマルは安堵していた。
ずっと気かがりだった事が解決したのだからである。
死なせていなかった。その事に、ヴォルケンリッター達は喜んだ・・・・・シグナムを覗いて。

「・・・・・・・・・・そんな事か」

「シグナム?」

「いや、何でもないザフィーラ。シャマルの気かがりが消えた事だ。心置きなく蒐集が出来るな」

「えっ――――」

「どうしたヴィータ?」

「な、何でもねぇ! きょ、今日は疲れたから、家に帰ろう!」

「そうね。明日から張り切って行きましょう!」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

家路につく四人。
この時から、ヴォルケンリッターの間で僅かな亀裂が生じていた。
相手の殺害を視野に入れてしまっているシグナム。
蒐集に、後ろめたい感情を抱いてしまったヴィータ。
この二人の騎士の感情が、後の対立を生む事になるのだった。
闇の書の完成まで、後128ページ。

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何か最近、書く内容がポンポン出ます。
この調子なら、今月中にA'S編を完結出来ると思います。
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