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運命戦記リリカルEXTRA.AC改 A'S編10、recover
作者:起源くん   2012/11/10(土) 23:15公開   ID:L0gu7.dO5Yw
はやてが病院に担ぎ込まれてから、ヴォルケンリッター達は担当医から話を聞いていた。

「麻痺が思った以上に進行しています。このまま行けば、一ヶ月には心臓まで進行します」

「そんな・・・・・」

「何とか! 何とかならねぇのか!?」

「我々も色々手を尽くします。だから、希望は捨てないで下さい」

担当医から話を聞き終わったヴォルケンリッター達は、病院を出た。

「急がねぇとはやてが!」

「そうだな、最早手段を選んでいる時間は無い」

「魔力を持ったものを片っ端から蒐集するのね・・・・・」

「多少危険だが、やむおえん。このままペースでは間に合わん」

「どっちだって良い! はやてを救うんだ!」

ヴォルケンリッターは、闇の書を完成させるため、次元転移をした。
すべては、はやてを救うため、彼女達は阿修羅となった。




傷が癒えたクロノは、自分の部屋で、最近目撃情報が増えているヴォルケンリッター達の情報を整理していた。
今週だけで、三十件の目撃と襲撃があった。
魔力を持った原生生物や管理局員、更にはミグラントも次々と襲っていた。

(今までの彼女達とは違う・・・・・何かあったのか?)

彼女達の行動に疑問があったが、問題はそこではなかった。

(派手に動き過ぎる・・・・・このままじゃ・・・・・)

フライトナーズが動き出すかも知れないし、コーテックス商会が本腰を入れるかも知れない。
どちらにしても、ただではすまない。

(出来れば、そうなる前に確保したいが・・・・・)

そう考えていると、ミグラントのコミュニティーで、情報収集をしていたレイヴンから通信が入った。

《クロノ、不味いぞ》

「どうした?」

《コーテックス商会が、ヴォルケンリッターの賞金を上げた。額は一人辺り三千万だ》

「三千万だって!?」

《これ程の懸賞金を出すって事は、奴ら本気でヴォルケンリッターを潰すつもりだ》

「彼女達の居場所は!?」
《わからない。情報料もはね上がっていて、弱小や貧乏ミグラントじゃ買えん程だ》

「わかった。金なら何とかするから、どうにか情報を手に入れてくれ」

《了解、後で泣きつくなよ》

そう言ってレイヴンは通信を切った。
クロノも、管理局からの新情報が無いか調べ始めた。




とある管理外世界では、ヴィータが原生生物と戦っていた。

「ギカントシュラーク!」

ヴィータの一撃が、原生生物を打ちのめす。
動かなくなったのを確認すると、彼女は魔力を取り出すが――――。

「こんなんじゃ全然足りねぇよ!」

取り出した魔力結晶は、半ページも満たなかった。

(くそっ! このままじゃはやてが――――)

そう考えていると、突如魔力弾がヴィータに迫る。

「!?」

ヴィータはグラーフアイゼンでそれを弾き、周囲を見回す。
そこには二十人近くのミグラントが取り囲んでいた。

「見つけたぜ、賞金首!」

「何なんだテメーらは!」

「俺達はコーテックス商会傘下のミグラントだ! 知らないだろうが、お前に懸賞金が掛かっている」

そう言って、男が見せた手配書の額は何と、三千万を超えていた。

「お前達全員捕まえりゃ、一億は軽く超える。だから大人しく―――」

リーダー核の男が手を降り下ろす。

「捕まりな!」

それを合図に、ミグラント達は一斉にヴィータに襲い掛かった。

「やれるもんなら・・・・・やってみな!」

ヴィータは受けて立つと言わんばかりに、真正面からミグラント達とぶつかり合った。




ヴィータが来なくなってからも、優人は毎日のように公園で待ち続けた。
もしかしたら、もう来ないかも知れない。それでも優人は待ち続けた。
すると、目の前に魔力反応を感知する。

(これは・・・・・転移魔法?)

すると現れたのは、ボロボロになったヴィータだった。

「ヴィータ!」

優人は急いで駆けつけた。
傷を見ると、切り傷や火傷、それに銃創まであった。
五体満足であるのが不思議であるくらい、傷ついていた。

「急いで病院に――――」

病院に連絡しようとすると、気がついたヴィータに止められた。

「余計な事・・・・・すんじゃねぇ・・・・・」

「でも・・・・・」

「あたしなら・・・・・大丈夫だ・・・・・」

そう言って立ち上がり、また何処かに行こうとするが、フラフラとしていた。
優人は、ヴィータの手を掴む。

「そんな体で何処に行くんだ?」

「オメェには・・・・・関係ねぇ・・・・・」

優人の手を振りほどこうとするが、ヴィータの力は、彼の手を振りほどけない程弱っていた。

「関係ある。このままじゃ、君が死んでしまう」

「だったら・・・・・どうすりゃいいんだよ!」

ヴィータは泣きながら叫んだ。

「このままじゃ、はやては一ヶ月後には死んじまう! それなのに、完成まで何十ページもあるんだよ!」
「・・・・・・・・・・」

優人の胸を弱々しく何度も何度も叩きながら、ヴィータはこれまでの不安と弱音を吐いた。

「はやてが・・・・・はやてが死んじゃうなんて・・・・・あたし嫌だよ!」

やがて叩くの止め、優人の胸ですすり泣きを始めた。

(そうか・・・・・この人達は大切な人の為に―――)

優人は、彼女達が蒐集を理由を、おぼろげながら理解した。
大切な人を助けたい一心で、闇の書の完成を願ったのだろう。

(それなら、やる事は一つだ)

優人は、ヴィータの肩に手をやると、治癒魔術を使った。

「recover」

するとヴィータは光に包まれ、傷だらけの体が瞬く間に治っていった。

「!? 傷が―――」

「ヴィータ、俺を君の主に会わせてくれないか?」

「えっ―――?」

「俺のrecoverは、対象の傷や麻痺や呪い等を治す事が出来る。病は無理だけど、免疫力を強化する事によって病気だって治せるかも知れない」

「・・・・・」

ヴィータは考えた。
優人をはやてに会わせる事は、シグナム達を裏切るも同然。しかし、優人の治癒能力はシャマルを軽く凌駕していた。
通常の魔法による治癒は、生きている細胞組織しか治癒、回復出来ない。切断や壊死、火傷を治すには、それを補う物が必要になる。しかし優人は、それを使わずに、ヴィータの体を直したのだ。

(もしかしたら・・・・・コイツならはやてを―――)

ヴィータは一大決心をした。

「なあ! はやてを助ける事が出来るだよな!?」

「治す事に関しては、自信がある」

「わかった。全部話す」

ヴィータは闇の書の事や、自分達ヴォルケンリッターの事、はやての麻痺が進行している事を全て話した。

「なるほど、だから君達ははやてって子の麻痺を治す為に、闇の書を完成させようとしたのか・・・・・」

「ああ、はやての麻痺は、闇の書が未完成のせいだ。だから、完成させちまえば麻痺が治る筈なんだ」

「・・・・・・・・・・」

優人はある疑問を感じた。
闇の書が何故蒐集を行わなかっただけで、持ち主であるはやての命を蝕むのだろうか、まるでそれでは――――。

(何かが、はやての命を貪っているみたいだ・・・・・)

「なぁ・・・・・やっぱ無理なのか?」

ヴィータは不安そうに言った。
優人が黙っている事に、不安を感じさせてしまったのだろう。
優人はそんな彼女を安心させようと、笑顔で答えた。

「あ、違う違う、少し考え事をしてただけ」

「本当か?」

「うん、麻痺なら治せるかも知れない。今日は面会時間は終わっているから、明日にしよう。明日なら学校も休みだし」

「わかった、明日だな。待ち合わせはここでいいんだな?」

「ああ、それでいい」

二人は、明日はやての病院に行く事を約束し、帰る事にした。
最後にヴィータが―――。

「また明日な!・・・・・ユウ!」

そう言って、ヴィータは照れくさそうに走り出した。

「また明日、ヴィータ」

聞こえるかどうかはわからなかったが、優人は返事をして、明日に備えるのだった。




ヴィータは未だに街を走り続けていた。
先程のやり取りの恥ずかしさと、はやてが助かるかも知れない嬉しさがあった為である。

(これで、これではやてが――――)

「ヴィータ」

その声を聞いて、ヴィータの心臓ドクンと跳ね上がった。
後ろを振り返ると、そこにはヴォルケンリッターの三人がいた。

(まさか・・・・・バレた?)

ヴィータの鼓動がドクドク早くなる。
シグナムが口を開き―――。

「敵に囲まれたと聞いたが・・・・・無事なようだな」

「お、おうよ! あんな雑魚、何人いようがあたしの敵じゃねぇ!」

どうやら気づかれていないようだった。その事にヴィータは安堵した。

「それで蒐集結果は?」

「ほらこれだ。雑魚だったけど、数が多かったから結構集まった」

そう言って、内心複雑な思いをしながら、集めた魔力結晶をシャマルに渡した。
シャマルが闇の書に蒐集している間。ヴィータはシグナムにこう言った。

「なぁシグナム。あたし少し疲れちまったから、しばらく休む」

「・・・・・・・・・・ああ、そうだな。ヴィータは少し張り切り過ぎている。たまには休みは必要だろう」

「ああ、そんじゃ後は頼んだ」

仲間に嘘をつく罪悪感に苛まれながら、ヴィータは家路につくのだった。
一方シグナム達は――――。

「シャマル、しばらくヴィータを監視してくれ」

「シグナムも思った?」

「ああ、普段のアイツなら、主が死にそうなのに休む何て事はまず言わん」

「そうね・・・・・あまりやりたく無いけど、もしもの事があるかも知れないわ・・・・・」

「頼む。行くぞザフィーラ、ヴィータのおかげで完成まで44ページ。この調子なら、今月中に完成するだろう」

「心得た」

シグナムとザフィーラ、シャマルはそれぞれ歩き出した。
闇の書の完成まで後44ページ。

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■作者からのメッセージ
実は13話まで書き終わっています。
こういうのって、一気に投稿した方が良いんでしょうか?
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