ウルトラマンティガ。
超古代の地球に現れ、人々を闇から救いあげた『光の巨人』。
役目を終え、ティガは自身を石像に変え、魂は宇宙へと帰った。
しかし彼の“光”は超古代の神器『スパークレンス』に宿っており、対怪奇事件特殊部隊『
BULLET』の隊員・間宮信護が授かった。
以降、彼はウルトラマンとして、過酷な戦いへと身を投じるのであった。
―第2話:剛力の赤―
BULLETの本部にて、全員が指令室に集まる。
モニターに映る画面には、一体の怪獣が街で暴れ回っていた。
鱗状の体表に頭部の角、そして両手には鋭い爪。
怪獣の名はゴメス。
『古代怪獣』の異名を持ち、新生代第三紀に生息していたと言われている。
因みに学名は『ゴメテウス』である。
学会では当時、ゴメスの身長は約10メートルと発表されたが、今回現れた個体はそれ以上の巨体だ。
「ゴメスが地中から現れ、魂郷町北部の街で暴れています。 すぐに現場に向かい、神薙隊員は私と共に住人の避難誘導を! 間宮隊員と青樹隊員は、白沢副隊長と共にゴメスの注意を市民から逸らして下さい」
「「「「了解!」」」」
雀の指示を受け、BULLETはすぐさま現場へ急行した。
「グオォォォォォォ!」
咆哮を上げながら、街を破壊するゴメス。
身長は40メートル以上で、体重は約4万トン。
口を火や光線を放つという能力は備わっていない。
その代わり、怪力を利用した攻撃を得意とする。
「こっちです! 急いでください!」
避難誘導を行う雫と雀。
信護達もハンドガンやマシンガンを構え、背後からゴメスを狙撃する。
だがそれでも、ゴメスの進撃は止まらない。
「だめだ、全然効いてない」
「くそっ、こうなったら! 俺は屋上から狙い撃つ。 青樹と間宮は足元を撃ってくれ」
「「了解!」」
虎吉がビルへと駆ける姿を見届け、信護と龍也は頷き合う。
「じゃあ、行ってくる」
「気を付けろよ」
信護が走り出すと、スパークレンスを手に取り、
「ティガ、キミの力を貸してくれ」
ウルトラマンティガへと変身したのだった。
突如ティガが現れ、ゴメスは視線を向ける。
「ウルトラマンティガ……」
雀が呟き、龍也や雫が安堵する。
「デュワ!」
飛び上がったティガは、ゴメスに拳を叩きこむ。
この攻撃に対し、ゴメスも流石に怯んでしまう。
更に右ストレートを放つティガ。
しかしゴメスは、それを片手で受け止めてしまう。
そして先程のお返しなのか、ティガを豪快に投げ飛ばした。
「ぐっ……!」
背中を強く打ちつけたティガは、痛みを堪えながらも立ち上がり、
「ハァ………」
ゼペリオン光線を放とうとする。
しかしゴメスは尻尾を豪快に振るい、ティガに叩き付けた。
「ぐあ!」
吹き飛ばされたティガは、その場でうつ伏せに倒れてしまう。
コレを見て、ゴメスは歩み寄り、何度も背中を踏みつけた。
何度も踏みつけられ、ティガは窮地に追いやられる。
更に胸部にあるランプ状の器官が、青から赤へと変わっていく。
信護と一体化しているため、その巨体を約3分間しか維持できないティガ。
そして制限時間が僅かに迫ると、胸のカラータイマーが点滅してしまうのである。
暫くして満足したのか、ゴメスは地面を掘りじ始めた。
「させるか!」
コレを見た龍也は、発信器付きの弾丸を撃ち込んだ。
発信器が撃ち込まれた事も気付かぬまま、ゴメスは地面に潜って逃走したのである。
本部に戻ると、BULLETは作戦会議を始める。
「発信器によると、ゴメスは地中を掘りながら現在、魂郷町北部にある森林地帯に向かってるわね」
「既に自衛隊が迎撃の準備を整えています。 私達も現場に向かいますよ」
「「「「了解!」」」」
現場に向かう為、隊員達は武装の準備を始める。
そんな中、信護は内心で不安を感じる。
「(あのパワー……どうやって対抗すれば……)」
ゴメスの怪力に対し、どのように立ち向かえば良いかが分からなかったのだ。
「信護さん、行きますよ」
「あ、ああ。 すぐ行くよ」
だが雫に声をかけられ、すぐに現場へと向かうのであった。
現場の森林地帯に着くと、対策本部のテントへと向かった雀。
「どうですか?」
「もうすぐ来ますね」
現場指揮官がパソコンを見せ、ゴメスの現在地を伝える。
「もうすぐって事ね」
まさにその時であった。
突如として、凄まじい地響きが起こったのだ。
「お出ましね!」
雀が呟くと同時に、地中からゴメスが現れたのである。
「ぐおおおおおおおおお!」
咆哮を上げ、ゴメスは再び進撃する。
「撃てぇ!!」
指揮官の叫びで、軍人達が重火器を発射させた。
ハンドガンやマシンガン、さらにバズーカまでもが火を噴いた。
しかしゴメスには全く通用しない。
そんな彼等の目を盗み、信護は近くの芝生へと隠れる。
懐からスパークレンスを取ると、大きく深呼吸をした。
「どうやって倒せば……」
だが先の戦闘で、一度は逃がしてしまっている。
再び不安を感じたが、まさにその時だ。
「!?」
突如として彼の脳裏に、何かの
幻影が流れ込んだのだ。
「……まさか…これが、キミの
能力なのか…ティガ」
一度は戸惑った信護だが、再びウルトラマンティガへと変身したのだった。
再び現れたティガに、誰もが安堵する。
そんな中で彼は、額のクリスタルに交差した腕をかざし、
「はっ!」
腕を下ろすと同時に、その姿が変わったのである。
赤と紫の二色だった模様が、赤一色へと変わったのだ。
これこそが、ウルトラマンティガの特殊能力。
相手の戦い方に応じ、姿と戦法を変える『タイプチェンジ』だ。
そしてこの姿は、パワー重視の攻撃を得意とする剛力形態・パワータイプである。
「色が変わった!?」
誰もが驚く中、ティガとゴメスの戦いが始まった。
一度は掴み合う二人であったが、ティガはゴメスを投げ飛ばす。
そして馬乗りになると、そのまま拳の連打をを叩きこむ。
しかしゴメスは払い除け、すぐさま立ち上がる。
「シャァァァァァ!」
その場で尻尾を豪快に振るったゴメスだが、ティガはそれを受け止め、
「フン!」
ジャイアントスイングの要領で、豪快に投げ飛ばしたのだ。
基本形態のマルティタイプよりスピードが落ちてしまうパワータイプ。
だが名の通り、豪快なパワーを活かした肉弾戦を得意とするのである。
再び立ち上がるゴメスであったが、ティガはパンチの連打を叩きこむ。
そして最後の一撃を叩きこみ、ゴメスは吹き飛ばされてしまう。
「フン! ハァ………」
そして斜め下に伸ばした両腕をゆっくり上げ、オレンジ色に煌めくエネルギーを掴み、
「ハァ!」
そして伸ばした右手から光線を放ったのだ。
必殺技の『デラシウム光流』を喰らい、ゴメスはその場で爆散したのだった。
その光景に誰もが安堵し、そして喜びを分かち合う。
こうして、地球の平和はこれからも、ウルトラマンと防衛軍の手で護られるのである。