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幻想光巨人 第1話:光を授かったもの
作者:亀鳥虎龍   2023/07/08(土) 20:58公開   ID:5OJ6yzoy51A
 遥か昔、人々は厄災を起こす魔獣に苦しめられた。

そんな魔獣達から、人々を護った存在がいた。

たった一人で魔獣を封印し、その身体は光となって消える。

人々は、尊敬と崇拝の象徴として、“彼”の事をこう呼んでいた。

“光の巨人”と――。








―第1話:光を授かったもの―







 東京の何処かにある街、その名は『魂郷町こんごうちょう』。

この街には、政府公認の地球防衛組織が存在する。

組織の名は『怪奇異変特別捜査局かいきいへんとくべつそうさきょく』、通称『怪異特捜局』。

そして局長の厳選で集められた部隊が、『BULLETバレット』。

“放たれた弾丸の如く、迅速に事件を解決する部隊”という意味が込められている。

彼等の仕事は、科学では解明できない怪奇現象や怪異を調べ、その正体を突きとめる事だ。

これは、そんな彼等の物語なのである。










 バレットは5人一組のチームで構成されている。

それが以下のチームである。

隊長:朱羽あかはねスズメ

副隊長:白沢しらさわ虎吉トラキチ

現場調査員:間宮まみや信護シンゴ青樹あおき龍也タツヤ神薙かみなぎシズク

朱羽雀は、長い赤髪を後ろに束ねた女性で、年齢は27歳。

常に冷静沈着で、その洞察力を買われて勧誘された。

白沢虎吉は、白い髪と虎の様な鋭い眼光が特徴的な男性で、年齢は33歳。

実は元極道という経歴を持ち、『魂郷町の白虎』と呼ばれていた。

青樹龍也は、青い髪が特徴的な22歳の青年。

射撃の腕は高く、僅かな隙間からも捉える事が出来る。

神薙雫は、黒のポニーテールが特徴的な少女で、年齢は19歳。

実家は武道家で、自身も体得している。

間宮信護は21歳の青年で、実家は骨董品店。

看護師資格を習得しており、的確な人命救助に長けている。

以上が、怪異特捜隊のメンバーである。








 指令室に集まり、何かの会議を行う一同。

「昨夜の龍頭湖に、青い球体の様なものが潜ったという目撃情報がありました」

モニター画面には、青い球体が湖に入る光景が映っている。

「この映像は?」

「龍頭湖付近のキャンプ場に来ていた学生が撮ったものです」

「キャンプ場の方は?」

「住民は避難させてあるそうです。 我々も、すぐ現場に向かいます。 白沢副隊長はここに残ってください」

「「「了解」」」

こうして彼等は、すぐさま現場へと向かったのだった。









 魂郷町の西部にある湖、その名は『龍頭湖りゅうとうこ』。

この湖のある洞窟は、遥か古代の人々が存在した痕跡が遺されている。

しかし洞窟内を荒らす者達が多くなっているため、現在は侵入禁止の区域となっている。

「御苦労さまです」

「おう」

自衛隊の隊員に軽い挨拶を交わし、一同は現場を目にする。

「それで、例の球体はどうなですか?」

「それが、未だに動きがありません」

「そうですか……」

目立った動きがなく、自衛隊も困惑。

これには雀も頭を抱えてしまう。

しかし、その時だった。

「アレを見て下さい!」

自衛隊員の叫びと共に、一同は湖の方へと視線を向ける。

湖の真ん中が、不自然に膨らみ、

「グオオオオオオオオオオオオオ!」

そこから、一体の巨大怪獣が顔を出したのだ。

「何!?」

雀を始め、誰もが驚愕を隠しきれなかった。

辺りを見渡した怪獣は、一つの洞窟に目を向け、再び水中に身を潜めたのである。

「何だったの?」










 時刻は現在、午後20時30分。

対策本部のテントにて、一行は作戦会議を初めていた。

「先程の巨大生物は湖に潜っており、現在は音沙汰無しのようです」

「一体どうなってるのかしら?」

誰もが頭を抱える中、信護がこんな事を言った。

「あの……もしかするとですけど、例の青い球体と関係あるのでは?」

それを聞いた一行は、妙に納得してしまう。

「確かに、考えられるわね」

「アイツ、洞窟に視線を向けてましたけど、何かあるんでしょうか?」

「行ってみる価値は、ありそうね」

一度深呼吸をすると、雀は隊員達に命じた。

「青樹隊員、間宮隊員、神薙隊員は、洞窟の捜索を。 私はここに残って、湖の様子を窺います」

「「「了解」」」

こうして、今後の方針が決まったのだった。









 翌朝、一同はすぐさま行動を開始した。

信護・龍也・雫の三人は、すぐさま洞窟へと突入。

「凄いな、ここが洞窟の中か」

「やっぱ、広いね」

「まずは、奥の方を調べるぞ」

「「了解」」

龍也をリーダーに、彼等は奥へと進んでいく。

一方で雀は、湖の方へと視線を向ける。

「怪獣の様子は?」

「未だに、動きは全くありません」

「そうですか……ん?」

しかし彼女は、不審な人物を見つけた。

全身が黒いローブに包まれ、顔が良く見えない。

ローブの人物は、不敵な笑みを見せながら叫ぶ。

「目覚めろ、ベムラー!」

まさにその時だった。

ゴゴゴゴゴ――という轟音が響き、件の怪獣が雄叫びを上げる。

「グオオオオオオオオオオオ!」

宇宙怪獣にして“宇宙の平和を乱す悪魔”、ベムラーが本格的に動き出したのだ。

ベムラーは口から、青白い熱戦を吐き、

「伏せろ!」

雀や自衛隊員達が、地面へと伏せる。

熱線は洞窟に命中し、出入り口を瓦礫で塞いだ。

「しまった!」














 凄まじい轟音が響き、信護達は出入り口へと走り出す。

だが時は既に遅く、瓦礫で洞窟が塞がってしまった。

「えっ!?」

「そんな!?」

「マズイ!」

苦い顔になった三人であったが、互いに頷き合い、

「………行くしかない」

「了解…」

「ええ」

最後まで奥へと進む事を決意した。









 最奥へと向かうと、そこで三人は驚愕する。

「何これ!?」

「………」

「…巨人の……石像?」

そこには人型の石像が立っていた。

その大きさは、約50メートル以上。

更に足元には、祠の様なものが立っていた。

「まさか、こんなモノがあったなんて……」

「コレには、何が入ってるんだ?」

祠を開けると、そこには小さな棒状のものが置かれていた。

「何これ?」

「恐らく、御神体だろうな」

「でも、どうしてこんなモノが……」

雫は手に取った後、龍也の手元へと渡る。

「怪獣が洞窟に目を向けてたのは、コイツが原因か?」

「だとしたら、コレを狙う理由って――」

そして信護の手に渡った瞬間、まさにその時だ。

御神体がまるで、反応するように強く光ったのである。

「え!?」

「どういうこと!?」

「信護に反応した?」

雫や龍也は驚愕するが、信護の脳裏に何かが流れ込む。

それは古代の人々を守るように、石像の巨人が立ち上がる姿が映る。

そして最後に、女性の声が響いた。

『“光”に選ばれし者よ、今こそ立ち向かうのです。 己の運命に』

この“声”を聞き、彼は御神体を強く握る。

「………二人とも」

「?」

「何だ?」

「今から僕がする事、内緒にして欲しいんだ」

信護の言っている事に首を傾げたが、雫も龍也も頷き合い、

「分かった」

「気にしないで」

彼の意思を尊重する事にした。

「ありがとう」

二人に感謝を述べ、信護は御神体を持った手を掲げる。

御神体『スパークレンス』の先端部が光り、彼の体は眩い光に包まれた。

同時に、石像の中へと吸い込まれたのだ。

石像は強い光を放ち、雫と龍也と共に消えたのだった。










 一方、外の方では、

「グオオオオオオオオオオオオオオオ!」

雄叫びを上げるベムラーに、自衛隊は苦戦を強いられていた。

「ダメだ、ビクともしない!」

「ヒィィィ〜」

ある者は奥歯を噛み締め、あるモノは怯えている。

「くっ、こんな事って……」

雀は拳を握り締めるが、まさにその時だった。

ドガッ!と、何かがベムラーを吹き飛ばしたのだ。

「えっ!?」

雀は驚きを隠せないが、着地した“それ”は地面へとしゃがむ。

両手に乗せた雫と龍也を地面へと降ろすと、困惑した二人が呟く。

「信護さん……なんだよね、アレ?」

「あ、ああ。 そうみたいだ」

姿が変わった信護を目にし、それ以外の言葉が見つからなかった。

身長は約53メートル、体重は4万4千トン。

銀色の体に赤と紫の模様、額に光るクリスタルと白く光る両目。

胸部にはプロテクターと、青く光るランプ状の器官。

彼の姿は現在、石像だった巨人になっていた。

超古代の神器『スパークレンス』の所有者に選ばれた信護。

彼と一つになった事により、巨人は長き眠りから目覚めたのである。

その名はティガ、光の巨人――ウルトラマンティガ!








 ゆっくりと立ち上がったティガは、ベムラーへと視線を向ける。

そして地面を蹴り、ベムラーへと走り出した。

コレを見たベムラーは、口から熱線を吐きだす。

しかしティガはコレを見て、その場で跳び上がる。

「ハッ!」

そのまま蹴りを放ち、ベムラーの顔面に叩きこむ。

これに怯んだベムラーに、ティガはすぐさま攻撃を仕掛けた。

手刀を首筋に打ち込み、アッパーカットで顎を打ち抜く。

「ギャアアアアアアアアアアアアアス!」

ベムラーは体を回転させ、その遠心力で尻尾を振るう。

ティガの右脇腹に叩きこまれたが、彼はそれを両腕で掴むと、

「デュワ!」

持ち上げると共に、そのまま投げ飛ばした。

飛んだ先は、湖の方角。

ザパーン!と、ベムラーの体が水面に叩きこまれた。

そしてそのまま、ゆっくりと沈んでいったのである。











「……終わったの?」

雀が呟くが、まさにその時だった。

水面から、青く光る球体が出現したのだ。

「まさか、あの球体!?」

そう、湖に沈んだ青い球体。

正体は、ベムラーの飛行形態だったのだ。

勿論、コレを見たティガは見逃さない。

手前に伸ばした両腕を交差させ、ゆっくりと真横に伸ばした直後、

「ハッ!」

Lの字に組んだ両腕から、光線が放ったのだ。

ティガの必殺技『ゼペリオン光線』を喰らい、ベムラーは完全に爆散したのである。

そして戦いが終わり、ティガは空へと高く飛び去った。











 飛び去ったティガを見届けた雀であったが、

「隊長ぉ〜!」

自分を呼ぶ雫や龍也が、ゆっくりと歩み寄って来た。

彼女も二人の元へと足を運ぶが、信護がいない事に気付く。

「あれ、間宮隊員は?」

「あ…えっと……」

「そ、その……」

口ごもる二人であったが、再び声が聞こえた。

「隊長!」

そこには、元気に駆け寄る信護の姿があったのだ。

「よく無事だったわね。 何があったの!?」

「実は、さっきの巨人が助けてくれたんです」

「ただ、信護は一番最後に助けられたんで、バラバラにはぐれてしまって」

「そ、そうなんです」

「そう…。 でも、無事で何よりね。 それにしてもあの巨人、何者なのかしら……」

雀がティガの事で疑問を抱くと、信護が咄嗟に答えた。

「てぃ、ティガ。 ウルトラマンティガです。 あの洞窟の遺跡に、名前が掘られていたんです」

「そう。 それじゃ、撤収するわよ」

「「「了解!」」」

先頭を歩く雀の後ろで、信護が雫と龍也に呟く。

「二人とも、頼みがあるんだけど……」

「「ん?」」

「僕がウルトラマンティガだって言うのは、三人だけの秘密にして欲いしんだけど……」

コレを聞いた二人は、小さくサムズアップを見せる。

「勿論」

「安心しろ。 俺も仲間の機密情報は、自分から漏らさなねぇよ」

「ありがとう、助かるよ」

古の時代から目覚めた光の巨人・ウルトラマンティガ。

その“光”を継承した青年・間宮信護。

彼は知らなかった。

この戦いが、全ての序盤はじまりであることを――。


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作者「ウルトラマンが好きだったので、書いてみました」
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