遥か昔、人々は厄災を起こす魔獣に苦しめられた。
そんな魔獣達から、人々を護った存在がいた。
たった一人で魔獣を封印し、その身体は光となって消える。
人々は、尊敬と崇拝の象徴として、“彼”の事をこう呼んでいた。
“光の巨人”と――。
―第1話:光を授かったもの―
東京の何処かにある街、その名は『
魂郷町』。
この街には、政府公認の地球防衛組織が存在する。
組織の名は『
怪奇異変特別捜査局』、通称『怪異特捜局』。
そして局長の厳選で集められた部隊が、『
BULLET』。
“放たれた弾丸の如く、迅速に事件を解決する部隊”という意味が込められている。
彼等の仕事は、科学では解明できない怪奇現象や怪異を調べ、その正体を突きとめる事だ。
これは、そんな彼等の物語なのである。
バレットは5人一組のチームで構成されている。
それが以下のチームである。
隊長:
朱羽雀。
副隊長:
白沢虎吉。
現場調査員:
間宮信護、
青樹龍也、
神薙雫朱羽雀は、長い赤髪を後ろに束ねた女性で、年齢は27歳。
常に冷静沈着で、その洞察力を買われて勧誘された。
白沢虎吉は、白い髪と虎の様な鋭い眼光が特徴的な男性で、年齢は33歳。
実は元極道という経歴を持ち、『魂郷町の白虎』と呼ばれていた。
青樹龍也は、青い髪が特徴的な22歳の青年。
射撃の腕は高く、僅かな隙間からも捉える事が出来る。
神薙雫は、黒のポニーテールが特徴的な少女で、年齢は19歳。
実家は武道家で、自身も体得している。
間宮信護は21歳の青年で、実家は骨董品店。
看護師資格を習得しており、的確な人命救助に長けている。
以上が、怪異特捜隊のメンバーである。
指令室に集まり、何かの会議を行う一同。
「昨夜の龍頭湖に、青い球体の様なものが潜ったという目撃情報がありました」
モニター画面には、青い球体が湖に入る光景が映っている。
「この映像は?」
「龍頭湖付近のキャンプ場に来ていた学生が撮ったものです」
「キャンプ場の方は?」
「住民は避難させてあるそうです。 我々も、すぐ現場に向かいます。 白沢副隊長はここに残ってください」
「「「了解」」」
こうして彼等は、すぐさま現場へと向かったのだった。
魂郷町の西部にある湖、その名は『
龍頭湖』。
この湖のある洞窟は、遥か古代の人々が存在した痕跡が遺されている。
しかし洞窟内を荒らす者達が多くなっているため、現在は侵入禁止の区域となっている。
「御苦労さまです」
「おう」
自衛隊の隊員に軽い挨拶を交わし、一同は現場を目にする。
「それで、例の球体はどうなですか?」
「それが、未だに動きがありません」
「そうですか……」
目立った動きがなく、自衛隊も困惑。
これには雀も頭を抱えてしまう。
しかし、その時だった。
「アレを見て下さい!」
自衛隊員の叫びと共に、一同は湖の方へと視線を向ける。
湖の真ん中が、不自然に膨らみ、
「グオオオオオオオオオオオオオ!」
そこから、一体の巨大怪獣が顔を出したのだ。
「何!?」
雀を始め、誰もが驚愕を隠しきれなかった。
辺りを見渡した怪獣は、一つの洞窟に目を向け、再び水中に身を潜めたのである。
「何だったの?」
時刻は現在、午後20時30分。
対策本部のテントにて、一行は作戦会議を初めていた。
「先程の巨大生物は湖に潜っており、現在は音沙汰無しのようです」
「一体どうなってるのかしら?」
誰もが頭を抱える中、信護がこんな事を言った。
「あの……もしかするとですけど、例の青い球体と関係あるのでは?」
それを聞いた一行は、妙に納得してしまう。
「確かに、考えられるわね」
「アイツ、洞窟に視線を向けてましたけど、何かあるんでしょうか?」
「行ってみる価値は、ありそうね」
一度深呼吸をすると、雀は隊員達に命じた。
「青樹隊員、間宮隊員、神薙隊員は、洞窟の捜索を。 私はここに残って、湖の様子を窺います」
「「「了解」」」
こうして、今後の方針が決まったのだった。
翌朝、一同はすぐさま行動を開始した。
信護・龍也・雫の三人は、すぐさま洞窟へと突入。
「凄いな、ここが洞窟の中か」
「やっぱ、広いね」
「まずは、奥の方を調べるぞ」
「「了解」」
龍也をリーダーに、彼等は奥へと進んでいく。
一方で雀は、湖の方へと視線を向ける。
「怪獣の様子は?」
「未だに、動きは全くありません」
「そうですか……ん?」
しかし彼女は、不審な人物を見つけた。
全身が黒いローブに包まれ、顔が良く見えない。
ローブの人物は、不敵な笑みを見せながら叫ぶ。
「目覚めろ、ベムラー!」
まさにその時だった。
ゴゴゴゴゴ――という轟音が響き、件の怪獣が雄叫びを上げる。
「グオオオオオオオオオオオ!」
宇宙怪獣にして“宇宙の平和を乱す悪魔”、ベムラーが本格的に動き出したのだ。
ベムラーは口から、青白い熱戦を吐き、
「伏せろ!」
雀や自衛隊員達が、地面へと伏せる。
熱線は洞窟に命中し、出入り口を瓦礫で塞いだ。
「しまった!」
凄まじい轟音が響き、信護達は出入り口へと走り出す。
だが時は既に遅く、瓦礫で洞窟が塞がってしまった。
「えっ!?」
「そんな!?」
「マズイ!」
苦い顔になった三人であったが、互いに頷き合い、
「………行くしかない」
「了解…」
「ええ」
最後まで奥へと進む事を決意した。
最奥へと向かうと、そこで三人は驚愕する。
「何これ!?」
「………」
「…巨人の……石像?」
そこには人型の石像が立っていた。
その大きさは、約50メートル以上。
更に足元には、祠の様なものが立っていた。
「まさか、こんなモノがあったなんて……」
「コレには、何が入ってるんだ?」
祠を開けると、そこには小さな棒状のものが置かれていた。
「何これ?」
「恐らく、御神体だろうな」
「でも、どうしてこんなモノが……」
雫は手に取った後、龍也の手元へと渡る。
「怪獣が洞窟に目を向けてたのは、コイツが原因か?」
「だとしたら、コレを狙う理由って――」
そして信護の手に渡った瞬間、まさにその時だ。
御神体がまるで、反応するように強く光ったのである。
「え!?」
「どういうこと!?」
「信護に反応した?」
雫や龍也は驚愕するが、信護の脳裏に何かが流れ込む。
それは古代の人々を守るように、石像の巨人が立ち上がる姿が映る。
そして最後に、女性の声が響いた。
『“光”に選ばれし者よ、今こそ立ち向かうのです。 己の運命に』
この“声”を聞き、彼は御神体を強く握る。
「………二人とも」
「?」
「何だ?」
「今から僕がする事、内緒にして欲しいんだ」
信護の言っている事に首を傾げたが、雫も龍也も頷き合い、
「分かった」
「気にしないで」
彼の意思を尊重する事にした。
「ありがとう」
二人に感謝を述べ、信護は御神体を持った手を掲げる。
御神体『スパークレンス』の先端部が光り、彼の体は眩い光に包まれた。
同時に、石像の中へと吸い込まれたのだ。
石像は強い光を放ち、雫と龍也と共に消えたのだった。
一方、外の方では、
「グオオオオオオオオオオオオオオオ!」
雄叫びを上げるベムラーに、自衛隊は苦戦を強いられていた。
「ダメだ、ビクともしない!」
「ヒィィィ〜」
ある者は奥歯を噛み締め、あるモノは怯えている。
「くっ、こんな事って……」
雀は拳を握り締めるが、まさにその時だった。
ドガッ!と、何かがベムラーを吹き飛ばしたのだ。
「えっ!?」
雀は驚きを隠せないが、着地した“それ”は地面へとしゃがむ。
両手に乗せた雫と龍也を地面へと降ろすと、困惑した二人が呟く。
「信護さん……なんだよね、アレ?」
「あ、ああ。 そうみたいだ」
姿が変わった信護を目にし、それ以外の言葉が見つからなかった。
身長は約53メートル、体重は4万4千トン。
銀色の体に赤と紫の模様、額に光るクリスタルと白く光る両目。
胸部にはプロテクターと、青く光るランプ状の器官。
彼の姿は現在、石像だった巨人になっていた。
超古代の神器『スパークレンス』の所有者に選ばれた信護。
彼と一つになった事により、巨人は長き眠りから目覚めたのである。
その名はティガ、光の巨人――ウルトラマンティガ!
ゆっくりと立ち上がったティガは、ベムラーへと視線を向ける。
そして地面を蹴り、ベムラーへと走り出した。
コレを見たベムラーは、口から熱線を吐きだす。
しかしティガはコレを見て、その場で跳び上がる。
「ハッ!」
そのまま蹴りを放ち、ベムラーの顔面に叩きこむ。
これに怯んだベムラーに、ティガはすぐさま攻撃を仕掛けた。
手刀を首筋に打ち込み、アッパーカットで顎を打ち抜く。
「ギャアアアアアアアアアアアアアス!」
ベムラーは体を回転させ、その遠心力で尻尾を振るう。
ティガの右脇腹に叩きこまれたが、彼はそれを両腕で掴むと、
「デュワ!」
持ち上げると共に、そのまま投げ飛ばした。
飛んだ先は、湖の方角。
ザパーン!と、ベムラーの体が水面に叩きこまれた。
そしてそのまま、ゆっくりと沈んでいったのである。
「……終わったの?」
雀が呟くが、まさにその時だった。
水面から、青く光る球体が出現したのだ。
「まさか、あの球体!?」
そう、湖に沈んだ青い球体。
正体は、ベムラーの飛行形態だったのだ。
勿論、コレを見たティガは見逃さない。
手前に伸ばした両腕を交差させ、ゆっくりと真横に伸ばした直後、
「ハッ!」
Lの字に組んだ両腕から、光線が放ったのだ。
ティガの必殺技『ゼペリオン光線』を喰らい、ベムラーは完全に爆散したのである。
そして戦いが終わり、ティガは空へと高く飛び去った。
飛び去ったティガを見届けた雀であったが、
「隊長ぉ〜!」
自分を呼ぶ雫や龍也が、ゆっくりと歩み寄って来た。
彼女も二人の元へと足を運ぶが、信護がいない事に気付く。
「あれ、間宮隊員は?」
「あ…えっと……」
「そ、その……」
口ごもる二人であったが、再び声が聞こえた。
「隊長!」
そこには、元気に駆け寄る信護の姿があったのだ。
「よく無事だったわね。 何があったの!?」
「実は、さっきの巨人が助けてくれたんです」
「ただ、信護は一番最後に助けられたんで、バラバラにはぐれてしまって」
「そ、そうなんです」
「そう…。 でも、無事で何よりね。 それにしてもあの巨人、何者なのかしら……」
雀がティガの事で疑問を抱くと、信護が咄嗟に答えた。
「てぃ、ティガ。 ウルトラマンティガです。 あの洞窟の遺跡に、名前が掘られていたんです」
「そう。 それじゃ、撤収するわよ」
「「「了解!」」」
先頭を歩く雀の後ろで、信護が雫と龍也に呟く。
「二人とも、頼みがあるんだけど……」
「「ん?」」
「僕がウルトラマンティガだって言うのは、三人だけの秘密にして欲いしんだけど……」
コレを聞いた二人は、小さくサムズアップを見せる。
「勿論」
「安心しろ。 俺も仲間の機密情報は、自分から漏らさなねぇよ」
「ありがとう、助かるよ」
古の時代から目覚めた光の巨人・ウルトラマンティガ。
その“光”を継承した青年・間宮信護。
彼は知らなかった。
この戦いが、全ての
序盤であることを――。