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感情喪失のエリート 第一章 掛け離れた存在
作者:高峰 南   2024/08/11(日) 19:55公開   ID:8xQ9MWiAZZQ
回想.幼稚園児の頃

「うわああーん!」
「大丈夫よ。お空で元気に過ごしているから。」
泣きじゃくるみんなと、それをなだめる先生。私は一人、なぜウサギが死んだくらいで泣くのか理解できずにいた。
「なんで泣かないの?悲しくないの?」
「死んだものはどうしようもないじゃん。なんで泣いているの?」
みんなと先生が一斉に振り向く。先程の言葉が問題発言とみなされ、みんなから距離を置かれるようになった。

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私は中学1年生、紺崎汐莉。一匹狼みたいにいつも一人だ。まだ物心ない頃から親から突き放され、今に至る。今日は数学の小テスト返しの日なのだが...。
「おーい汐莉ー。どーせ頭悪いんだろー。」
はあ。馬鹿は一人はいるものだ。こいつは山口苺果。やることないし話しかける人はほとんどいないしでひたすら数学の問題を解いていたところ、頭が悪いと勘違いされたようだ。
「人の頭を気にする暇があるんなら勉強したら?」
こっちはそう言ってやったにも関わらず、毎日からかってくる。
「ずっと勉強しているもんねー流石に50はいけるよねー。」
「苺果は?そっちはいけるの?」
例に漏れず苺果は全然勉強できないのにからかってきているのだ。こういっておけば少しの間静かになる。
「うっ。こ、こっちは?まあそこそこ?勉強できるから?そ、それじゃあね!」
苺果が教室を離れると笑いが広がる。こういうときだけ、私に注目される。
「さすが汐莉さんは強いね...。」
そんな事をよく言われるが、相手が理由のわからないことを言っているだけだ。
「強くない。こんな人なら世界にまだいるよ。」
「そ、そっか...。(やっぱり話しづらいな。)」
なにか言ってはいけないようなことでも言ってしまったのだろうか。いつもこうして距離を置かれる。まあ、一人でいたほうが気が楽でいいんだが。
キーンコーンカーンコーン...チャイムが鳴り、数学担当の森下透先生が入ってくる。森下先生は私のクラスの担任でもある。
「えー。じゃあ、今日はテスト返しということで、えー、はい、返していきたいと思います。出席番号順に前に取りに来てください。」
本人は気づいていないようだが、口癖である『えー』に多くの人が笑う。
最後に席から立ち、前に取りに行く。その際、よく頑張りましたね。と言われた。私は特に頑張った覚えもないのだが。
「じゃあ、解説の前にそれぞれの点数を...。」
その時、公開されるなんて聞いていない!という声が多数上がった。
「入学したときに渡したしおりに書いてある。」
こうなるとみんなは反論できなくなり、押し黙った。
「えー、満点は、紺崎。一人だけだな。」
だから何だと言うんだ。教室のほとんどの人は、なぜ私が喜ぶ素振りを見せないのかと言った表情をしている。
「他は...。」
森下先生が次々名前を並べていく。なんと最後に呼ばれたのは、苺果だった。
「山口!10点とはどういうことだ?ちゃんと授業の内容が理解できていれば、50点は取れる問題だぞ?」
そのとおり。大体の人が難しいといいそうな問題は1,2問しかなかったし、他は簡単な選択、計算問題だ。
「放課後、教室に残るように。」
「はい...。」
これでしつこいからかいから開放されたと思った休み時間、また苺果が話しかけてきた。
「こっ今度こそは負けないから!」
「好きにすれば?後、勝手にライバル意識持たないでくれる?はっきり言って迷惑。」
「はあ?」
ちょっとした言い合いになりそうだったところに、いつもは目立たない水原美夢が口を挟んだ。
「あのっ!山口さん、えっと、紺崎さんの言うとおり...だと思うよ。」
びっくりした。今まで私の味方をしてくれる人なんてたまに夢に出てくる両親くらいだったからだ。
「はあ?何なのよもう!」
「山口!ちょっと来い。」
結局最後は森下先生がお話(説教)に連れ出して終わってしまった。
「えっと、紺崎さん。」
「何?」
話しかけてきたのは美夢だった。
「友達に...なってくれませんか!?あの、いつも意見をはっきりいうところがすごいと思ってて、えと、その...。」
どうやら人と話すのが苦手なようだったが、言いたいことは分かったので、否定する必要はない。
「いいよ。私も、そう言ってくれる人がいて嬉しい。こんな私で良かったら。」
「...ありがとう!」
その時何かに亀裂が走るような音を聞いた気がした。多少気になるが、美夢と友達と呼べそうな関係を築く一歩になったのが少し嬉しかった。

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■作者からのメッセージ
紺崎には私が普段抱いている世界観、感情を乗せています。
感情に振り回されず、正論で相手の動きを封じる...。ぜひ、この世界観を楽しんでください。
(注)中2につき、理由のわからない部分があるかもしれません。
   ご指摘いただけると嬉しいです。
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