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感情喪失のエリート 第4章 リインカーネーション
作者:高峰 南   2024/09/01(日) 11:56公開   ID:8xQ9MWiAZZQ


「失礼します。一年A組、紺崎汐莉です。山瀬颯斗先生に用があって来ました。」
気の抜けた返事が聞こえ、山瀬先生が見えた。
「実験、終わりましたか。」
相変わらず要点だけを話してくる。これでも気が合う先生だ。
「はい。レポートにまとめました。読んでもらったら分かります。」
教科書を見るときのように、さっと目を通している。肝心な核のようなもののところになった瞬間、山瀬先生は目を大きく見開いた。
「なんですか、これ!?」
「なんですかもなにも、実験結果です。酢酸オルセイン溶液には反応していないので、核ではないでしょう。」
山瀬先生は信じられないといった顔をした後、そういえば...と切り出した。
「紺崎さん、水原さんのこの実験結果は、過去にも事例があるものです。それは、転生してこの世界に来たと言っている、ある人物のものです。その人物は...」
後半になってからやや声が震えている。
「その人物は、闇界《ダークサイド》から来たと言っていました。」
なるほど、そう考えると辻褄が合う。
「つまり、今先生が言いたいのは私と美夢に起こったこの異変は、転生...リインカーネーションした人物にも現れた。その人物は、ダークサイダーの生息する闇界から来た。闇界のエネルギーに触れると、この異変が起こる可能性が高い。ということですね?」
「はい。」
「今から全校で同じ実験を行ってもいいですか?」
どうやら山瀬先生も同じようなことを考えていたらしい。すぐに賛成してくれた。
「もう一つ気になることがあって...。」
「なんですか?」
「美夢に会ったら、すぐに分かります。歩きながら話します。」
「はあ。」
なんとかして山瀬先生に謎の特殊能力について理解してもらわなければいけない。
「話の続きです。私も美夢も、特殊能力を使えるようになりました。」
「特殊能力?どんなものですか?」
その時私は、山瀬先生の目がネズミを狙うネコのように鋭く光ったのを見逃さなかった。乗っかってきたと確信した私は、話を続ける。
「私は、身体能力が異常なほど上昇しました。これならまだ分かるんですが...。」
「問題は水原さんですか。」
そのとおり。あのナイフの変形といい、ましてや波動攻撃となると...。
「はい。美夢は、ものを変形させたり、波動攻撃などの特殊攻撃ができるようになりました。」
「...!」
山瀬先生も驚きを隠せないようだった。
「明らかに人間にはできない芸当ですね、それは。」
「はい。人によって入手する能力が違うのではというのが今の私の考えです。」
「おっと。着きましたね。ところで、違和感を感じるのは僕だけですか?」
やはり山瀬先生も感じていたようだった。
「いいえ。私も感じています。じゃ、入りましょうか。」
山瀬先生が静かに頷いたのを見てからノックした。
「はい。」
「美夢、ちょっと入っていい?山瀬先生もいるんだけど。」
すぐに返事が聞こえた。
「いいよー。ドア開けるから。」
美夢がドアを開けた瞬間、あの違和感が増したように感じられた。それに気づいた美夢が、慌てて謝る。
「ごめん。あの...自分でコントロールできなくて...いつもこうなってるんだよね...。」
「大丈夫。私はもう慣れたから。山瀬先生、大丈夫ですか?」
少しいつもより元気がなかったが、大丈夫と答えた。
「美夢、あのナイフ、持ってきて。山瀬先生にみてもらうから。」
「すみません。やはり百聞は一見にしかずというものですから。」
「いえ。すぐ持ってきます。」
美夢が持ってきたナイフを見てから、より一層山瀬先生はびっくりしていた。
「美夢、これをもう一回変形させられる?」
「うん。」
美夢が少し力を入れると、一瞬で刀身が伸びた。
「どうなっているんですか!絶対に現代科学じゃ説明できないです!」
次は紙を波動で切ってもらうことにした。
「じゃあ、この紙を波動で切って。」
「うん。」
スパッといい音がして、紙は細切れになって床に落ちていた。またもや山瀬先生が驚く。
「なるほど。これは置いといて、美夢さん、ここじゃない世界にいた記憶はありますか?」
「ないですが。どうかしましたか?」
まあ、そうなるだろう。
「いえ。ならいいんですが。」
三人とも黙った部屋の中には、ずっと見えないエネルギーが渦巻いていた。

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■作者からのメッセージ
なんか中二病みたいな題名になってしまいました。もはや学園系になっていないことに気がついたものの、ほっといています。
では、次作お楽しみに。(楽しみにしていない人もいることは重々承知で)
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