快晴の空。
太陽の光が眩しさ物語っている。
だが、そんな空から、何かが飛来してきた。
急降下し、地上に現れたのは怪獣。
白い羽毛に爪先の鋭い手足、背中には大きな翼。
その姿は、猛禽類そのものだ。
「キシャァァァァァ!」
『猛禽怪獣グエバッサー』が、空に響くほどの咆哮を上げたのだった。
―第3話:高速の紫―
自衛隊が戦闘機で近付き、ミサイルを放つ。
攻撃は命中したが、グエバッサーに効いた様子はない。
BULLETもバズーカを放つが、全く効いてはいない。
「キシャァァァァァ!」
更にグエバッサーは、背中の翼を大きく羽ばたかせる。
その勢いは凄まじく、突風そのものだった。
「ぐあああああああ!」
「きゃぁぁぁぁぁ!」
これには隊員達も、その場から吹き飛ばされてしまう。
そして雀は壁、虎吉は電柱にぶつかって気絶。
龍也と雫も、転倒してしまう。
「(まずい! このままじゃ!)」
この光景に信護は、すぐさまウルトラマンティガへと変身した。
変身直後に飛び蹴りを放ったティガ。
「ハァ!」
攻撃は命中し、グエバッサーは転倒する。
突風が止み、龍也と雫は立ち上がった。
雫は雀の、龍也は虎吉の元へと駆け寄る。
「隊長! 大丈夫ですか!?」
「副隊長、しっかり!」
ティガも彼等の様子を確認する。
「ここは任せろ!」
「アナタは、アナタの戦いに集中して!!」
彼等の叫びに頷き、ティガはグエバッサーに挑むのだった。
立ち上がったグエバッサーに対し、ティガは右ストレートを叩きこむ。
胸部に撃ち込むと、そのまま左フックを打ち込む。
三発目の攻撃を撃とうとした瞬間、グエバッサーは空へと飛び上がる。
上昇した直後、急降下で襲いかかる。
凄まじい体当たりを喰らい、ティガは吹き飛ばされてしまう。
「(まずい! ここは――)」
立ち上がったティガは、すぐさまパワータイプにチェンジする。
突進してきたグエバッサー目にし、ティガはその頭部を受け止めた。
しかし突進の勢いは止まらず、そのまま背後の高層ビルにぶつかってしまう。
相当なダメージを負ってしまったのか、カラータイマーが青から赤へと点滅する。
後ろへ後退したグエバッサーに、ティガはすぐさま立ち上がる。
すぐに駆けだし、渾身の一撃を打ち込む。
しかし、再びグエバッサーが飛び上がる。
コレを見たティガも、すぐさま飛び上がった。
パワーが上がる半面、スピードが低下してしまうのがパワータイプの欠点。
それ故、グエバッサーのような身軽さを重視した怪獣とは相性が悪い。
追い付こうとしたティガであったが、まさにその時だった。
「キシャァァァァァァ!」
グエバッサーの翼から、羽の弾丸が射出されたのだ。
咄嗟に防御したが、直前で着弾してしまう。
その瞬間、ボカァン!という炸裂音が響く。
実はグエバッサーの翼には、起爆性のある羽根が備わっており、『バサフェザーシュート』と呼ばれる技を放つ事が出来のだ。
これにはティガも太刀打ちできず、そのまま上空から落下。
そのまま地面へと墜落してしまった。
「キシャァァァァァァ!」
この光景を目にしたグエバッサーは、勝利の咆哮と共に飛び上がったのだった。
グエバッサーの襲撃から暫く経ち、雀と虎吉は医務室で眠っている。
正確には、気絶から未だに目を開けていないのだ。
一方で信護は、上半身に包帯を巻くほどの負傷を追っている。
ティガとして戦うため、受けたダメージが自身に返って来るのだ。
ベッドから立ち上がろうとした信護であったが、まさにその時だった。
「!?」
再び脳裏に、ヴィジョンが視えたのである。
その姿は、紫色のティガ。
「今のは……」
すると扉から、一人の人物が現れる。
「間宮信護隊員……で、良いかな?」
赤い髪に青いスーツ姿、容姿は妖艶という言葉が似合う美しさを持つ女性。
「局長!?」
彼女の名は、ルージュ・ガーネット。
怪奇異変特別捜査局の局長を務める人物だ。
「負傷を負ったとは聞いているが、平気かい?」
「あ、はい。 大丈夫です」
「なら…申し訳ないんだが、すぐ指令室に来てくれ」
それだけ言うと、彼女はその場を後にした。
「?」
指令室に入ると、龍也と雫も来ていた。
「二人とも、怪我は?」
「軽い擦り傷程度ですよ」
「まあ、お前や隊長達よりは、無傷みたいなもんだ」
「そっか。 ……で、何で局長が?」
二人の安否に安堵するも、既にいたルージュに視線を向ける。
「朱羽隊長、白沢副隊長が事実上の再起不能の為、私が指揮を取らせて貰う。 それと、自衛隊から連絡があって、グエバッサーを追跡しているそうだ」
「それで、奴は何処に!?」
「現在グエバッサーは、魂郷町西部の上空を飛び、港町へと向かっている」
「もしかして、餌を探してる?」
「もしくは、巣を作るための材料捜し?」
「いずれにせよ。 奴を野放しにするワケにはいかない。 キミ達三人は、現場指揮官の指示の元、グエバッサーの迎撃を行ってくれ。 私も現場に出て、住人の避難誘導を行う。 では行くぞ!」
「「「了解!」」」
こうしてBULLETは、現場へと向かったのであった。
魂郷町西部の港町。
BULLETが到着した時には、地上に降りたグエバッサーが街を襲撃していた。
逃げ惑う人々に対し、すぐさまルージュは避難誘導を行う。
「急いでください! 早く!!」
信護達も銃器を構え、グエバッサーを攻撃する。
だがその巨体には、あまり効いてはいなかった。
「ここは僕が! 二人は逃げ遅れた人がいないか調べて」
「分かった」
「お前も気を付けろよ」
「うん」
三人は二手に分かれ、信護は人の気配のない場へと移動。
そしてスパークレンスを構え、ウルトラマンティガへと変身した。
「ハッ!」
変身完了と共に、グエバッサーに殴りかかる。
一撃目を喰らわせるも、左からのジャブを打ち込む。
更に脇腹に回し蹴りを打ち込んだ。
グエバッサーも腕を振り下し、その爪で切り裂こうとする。
コレを見たティガも、咄嗟に避ける。
しかしグエバッサーは、再び上空へと飛び上がった。
コレを見たティガは、額のクリスタルに交差した腕をかざす。
「ハァ!」
その瞬間、体の模様が紫一色へと変わる。
身軽さを活かしたテクニック、そして空中戦に優れた俊敏形態『スカイタイプ』へとチェンジしたのだ。
姿が変わると共に、ティガはすぐさま上空へと飛び上がる。
コレを見たグエバッサーは、バサフェザーシュートを放つ。
しかしティガは、それを紙一重で回避する。
そしてこのまま、激しい空中戦が繰り広げられた。
グエバッサーは爪を使い、容赦なく襲いかかる。
だがティガも、捌きながら反撃に出る。互いに隙を見せない攻防戦。
まさにこの瞬間だった。
ティガは空中で前転すると、そのまま踵落としを叩きこむ。
これが直撃し、グエバッサーは下へと落下していく。
地面に激突したグエバッサーと同じタイミングで、ティガも地上へと着地。
すかさず両腕を胸の前で交差させたあと、瞬時に左右に伸ばしてから上にあげてエネルギーを集約。
そして両手を左腰に置いてから、手裏剣を投げるように素早く光弾を放った。
必殺技の『ランバルト光弾』が発射され、立ち上がったグエバッサーの腹部に命中。
「キシャァァァァァァァ!」
コレを喰らったグエバッサーは、その場で爆散したのだった。
事件が解決し、自衛隊が撤収作業を行う。
彼等の姿を眺めながら、ルージュは愛用の煙管を一服する。
そして空を眺めながら、小さな笑みを浮かべる。
「ウルトラマンティガ……キミとは、長い付き合いになりそうだ」
最後は既に立ち去ったティガに対し、そう呟くのだった。