2.
「行ってきます」
「ブイッ」
そういった後、並んで学校まで行く。昨日、強盗を逮捕したイトマルたちは木の上で休息を取っている。まるで警察官みたいだな...そんな事を考えながら学校についた。
最初に入学式が行われ、その後に最初の授業が待っている。
私がこれから通うことになるであろう学校は、第一バトルアカデミーという中学校だ。名前のとおり、バトルにものすごく力を入れた教育をしている学校。考えるだけで面白そうだ。
「入学生の皆さんとパートナーはこちらへどうぞー!」
入口で叫んでいるのは生物担当のミズホ先生。やんわりとした、接しやすそうな先生だが、バトルになると人が変わるらしい。
「入学、おめでとうございます。第一バトルアカデミー校長の、イコールです」
その挨拶で始まった、数十分の入学式が終わった後、クラスごとに別のバトルコートに案内された。
「A組担任の、ミズホですー。早速ですが、仲を深めるのに一番なのは、ポケモンバトル!皆さんにはシングルバトルで、交流してもらいます。バトルの成績だけじゃなくて、中身も重要な評価ポイントですので、パートナーと息を合わせてがんばってくださいねー」
ミズホ先生が言い終わるが早いが、皆全身で喜びを表現している。
「じゃあ、最初は...。」
それぞれ戦う人を2人ずつ呼んでいく。
「フシギダネ、はっぱカッター!」
「かわせ、ゼニガメ!よし、そこでこうそくスピン!」
「避けてからつるのムチだ!」
トレーナーとポケモンたちの動きが次々と噛み合っていく。皆の軽やかな戦略、立ち回りに見入っていると、私の名前が呼ばれた。
「次は、エリさんと、ヒカルさんですねー。さ、コートに入って...」
「イーブイ、頑張ろうね!」
「ブブイッ!」
イーブイも、私もやる気は十分。準備は整った。
「バトル、スタート!」
「いけっ、イーブイ!」
「いけっ、フォッコ!」
相手は、フォッコを出してきた。まずは様子見で変化技かな...。
「イーブイ、しっぽをふる!」
まず避けられない技。防御を下げることができるので、でんこうせっかで与えられるダメージが増えるはず。
「くっ。いきなり変化技...。先に倒すしかない!ひのこ!」
やけど狙いかな。なら、当てられないように攻撃すればいい。
「下をかいくぐって、でんこうせっか!」
よし、まずは先制してダメージを与えることができた。後は...。
「素早くひのこ!連発するよ!」
「フォッ、フォッ、フォッ!」
どうやら、たくさんのひのこで攻撃することで、ダメージを与えようとしているらしい。
「スピードスターで防いで!」
「ブイッ!、ブイッ⁉️」
イーブイが軽く飛ばされる。さすがに、すべてのたまを防ぐことはできなかったようだ。
「イーブイ、大丈夫?」
「ブイッ!」
幸い、急所には当たっていなかったようだった。おまけに、やけど状態にもなっていない。
「いい調子!続けるよ、フォッコ!」
これはまずい。ずっと続けられると、これ以上のダメージを与えられないまま負けてしまう。
「スピードスターを連発して!」
こちらも連発すれば、何発かは当たるだろう。ひのこは一回に一発だが、スピードスターなら、一回に3,4発出すことができる。可能性は格段に上がる。
「フォッ!」
「ブイッ!」
「イーブイ、スピードスターしながら、回り込んで!」
「フォッコ!避け...」
私はその時、あの日と同じような情景を見た。スピードスターにフォッコが目を取られている隙に、でんこうせっかでとどめをさす。
「ナイスバトル!イーブイ」
「ブイッ」
そう言うと、イーブイはどこか得意げな表情を浮かべる。
「バトル、ありがとう」
そういってきたヒカルにこちらもありがとうと返す。どうやらバトルをすることで仲良くなるのは本当らしく、あっという間に打ち解けた。
「ところで...そのイーブイが入っている、ボール!ムーンボールじゃん!どこで手に入れたの?」
「え?ボール?ヒカルのと同じ、モンスターボール...じゃない ⁉️ 」
だが、私も家族もそんなボールは持っていない。ん?待てよ...そういえば、イーブイは私のリュックから、このボールを出した。だけれど、私はそんなものを持っていた記憶はない。ということは、イーブイが、あたかも私のリュックから出したように見せかけて、もともと持っていたこのボールを私に渡したのか?確かに、あのときに私の家族は一瞬驚いた様子だった。そう考えれば辻褄が合う。
「もしかして...イーブイ?」
「ブイ...」
バツが悪そうにイーブイはそっぽを向く。ほとんど確実なようだ。
「あー、別に、怒るつもりはなくって...ただ、気になっただけだから」
今度は目を輝かせる。全然構わない。そんな気持ちを前向きに伝える。
「どんなボールに入っていても、イーブイは私の相棒だよ!」
「...ブイッ!」
抱きついてくるイーブイを少しの間抱きしめ、そっと降ろす。
「それでは皆さん、バトルは楽しめたー?」
「はーいッ!」
私も含め、皆一斉に答える。
「それじゃあ、今日の授業はここまで。気をつけて帰ってくださいね」
既に暗くなっている中、帰路に着く。
ムーンボールにある月の模様と同じような月が空で輝いていた。