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Fate/ZERO―イレギュラーズ―
第8話:暗殺者のお節介と水銀の蛇の説教
(Fate/ZERO×銀魂×境界線上のホライゾン×神咒神威神楽×灼眼のシャナ×11eyes×戦国BASARA×龍が如く×ジョジョの奇妙な冒険×装甲悪鬼村正×Dies irae)
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切嗣が変質者と遭遇していた頃、斜向かいのビルにて、ケイネスらを監視していた舞弥は、爆破と共に崩れ落ちる冬木ハイアットホテルを見届けていた。

「そんな馬鹿な…」

だが、舞弥の表情は、いつもの冷静な彼女らしからぬ、困惑と驚愕に満ちたものだった。
今、冬木ハイアットホテルで起こった爆発は、明らかに、舞弥が仕掛けた爆薬の位置とはずれているし、爆発の規模も残骸をまき散らすほどすさまじいモノだった。
何が起こっているのか、切嗣はどうしたのか―――すぐさま、切嗣と合流しようとした舞弥であったが、不意に立ち止まった。
何かがいる―――兵士として過ごした舞弥の直感がそう告げていた。

「―――察しがいいな、女」

そして、立ち止まった舞弥の背後に、冷やかな男の声が聞こえてきた。
次の瞬間、舞弥は迷うことなく、声の主を敵と判断し、振り向くと同時に、銃を構えた。

「ふん、それに覚悟もいいか」
「言峰、綺礼」

そこにいたのは、夜の闇に溶け込むような僧衣に身を包んだ、言い知れぬ威圧感を放つ長身の男がいた。
言峰綺礼―――切嗣がもっとも警戒していたマスターだった。
小馬鹿にしたような含み笑いを加えながら喋る長身の男の名前を、舞弥は思わずくちばしてしまった。

「ほう、君とは初対面のはずだが…それとも私を知るだけの理由があったのか? ならば、君の素性にも…」

自分の名前を知っていた舞弥にさして驚く事もなく、語り続ける綺礼に対し、舞弥は即座に銃を撃った。
だが、銃弾は言峰に命中することなく、コンクリートの壁にめり込んだだけだった。
舞弥が照準を合わせて、引き金の引くまでの間に、言峰は、すぐさま弾道を見切り、銃弾を回避したのだ。
それはもはや、常人の域ではなく、魔術師や死徒と戦い、歴戦の代行者として高い実力を誇る綺礼だからこそなし得る芸当だった。

「動きは悪くない。相当仕込まれているようだが…」
「くっ…」

そして、付け加えるなら、言峰は、反撃として投げつけた、柄が極端に短い細剣―――聖堂教会に属する代行者の使用する投躑武器<黒鍵>によって、舞弥の左手を浅く割き、銃を落とさせていた。
もはや丸腰同然となった舞弥に、攻守逆転した言峰はゆっくりと近づいて行った。
言峰としては、ここで舞矢を始末するつもりなどなかった。
あくまで、綺礼の目的は、切嗣の居場所を知る事だった。
そのため、綺礼は、舞矢を質問に答えられる程度に生かして捕らえるつもりだった―――まぁ、口さえ利ければいいので、手足を斬り落とす程度のことは考えていたが。
勝敗は決したと思っていた綺礼であったが、それ故に気付くのに遅れてしまった。

「むっ…何…!? 」
「…」

すでに、この場に第三者―――顔を防毒マスクで隠した忍び装束の小柄な男が背後から切りかかってきた事に!!
とここで、こちらに向かってくる影に気付いた言峰が、すぐさま、後ろに向かって、手にしていた黒鍵で斬り払った。
辺りに金属がぶつかり合う音が響くと同時に、忍び装束の男は空中を一回転すると、舞弥を庇うように、立ちはだかった。

「…逃げろ」
「あなたは…」
「なに…あんた達のファンだよ」

ここからの逃亡を促す忍び装束の男に対し、予期していなかった増援に戸惑った舞弥は思いがけず尋ねた。
だが、忍び装束の男は、はぐらかす様に答えを返すと同時に、あらかじめ男が身体に仕込んでおいた軍用発煙筒から大量の煙幕が噴き出してきた。
言峰が気付いた時には、この階層一帯が煙幕に覆われ、舞弥と忍び装束の男の姿を完全に隠してしまった。
やがて、煙が薄くなった頃、すでに舞弥と忍び装束の男はすでに逃げ出していた。

「…逃げられたか」

舞弥と忍び装束の男がいなくなっている事を知った綺礼は、さしたる感情のないまま、事実だけを呟いた。
衛宮切嗣に関わっているであろう女―――舞弥に逃げられたのは残念だったが、綺礼にしてみれば、切嗣に縁のある者がいた事がわかっただけでも十分な収穫だった。

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