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はぐれ勇者の鬼畜美学〜はぐれ勇者と魔弾の射手〜
第二話『自室での出来事』
(はぐれ勇者の鬼畜美学×PARADISE LOST(一部設定))
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「・・・・仕方ありませんね」
掛布団をガシっと掴み、
「起きなさい修二様」
勢いよく引っ張る。
当然、そこには誰もいない。
「え―――――?」
驚いたような声。
長い間一緒にいた修二でさえめったに聞いたことがない。
それだけでもイタズラ成功と言えるが、もうひと押しと言わんばかりに、
「―――――よっ」
メイド少女の胸を後ろから鷲掴みにした。
「――――――ひゃうっ!」
今度聞こえてきた声は随分と女性らしい、というか女の子らしい声だった。
・・・・これは、なかなかのサイズだな。
普段はメイド服に隠れて分からなかったが、着やせするタイプだったらしい。
ものすごくナチュラルに胸の感触を楽しむ修二。
しかし、やられる方はたまったものではない。
「く、曲者!」
顔を真っ赤にしながら、メイド少女は修二の襟を掴みそのまま前へ投げる。
いわゆる裏投げである。
修二は受け身を取り、そのまま軽快にダンスを踊るように距離を取る。
「いや、相変わらず見事な腕だね瑞樹《みずき》」
瑞樹、と呼ばれたメイド少女は修二の言葉を無視し腰の部分に両手を伸ばす。
シャキン、という音と共に肉厚のナイフが両手に握られていた。
「誰ですか貴方は!? 修二様の姿をしてこ、こんな破廉恥な真似を!」
殺気を放ちながら瑞樹は声を張り上げる。
だが、顔が真っ赤になっているため怖さは半減している。
「おいおい、ガキの頃からの付き合いだってのに本物と偽物の区別さえつかないのか? オレは正真正銘100%本物の佐渡修二だよ」
「偽物は皆そう言うんです! 本物の修二様は常に無表情で無口で何考えてるのかさっぱり分からない、と思ったらいきなり変な事やりだすわでさんざんこっちに苦労を掛けるキ〇ガイな最低男で貴方のように笑わないしこんなに会話が成り立たないしそんなに筋肉質じゃないし、なによりセクハラなんてするほど性欲もありません!」
さりげなく自分がどう思われていたか知って落ち込む修二だが、かつての自分を知る人間からはっきりと違うと言われたことに思わず笑みが浮かぶ。
―――――オレはもう“人形”じゃない。
生まれつきの体質と環境のせいで心という物が無く、ゆえに人形同然だった佐渡修二という存在はもういない。
今ここにいるのは佐渡修二と言うれっきとした“人間”であると改めて認識する。
「変わったんだよ。ほら、男子三日会わざれば刮目して見よと言うじゃないか」
「変わりすぎです! それに三日どころか半日も経っていません!」
瑞樹はそうツッコムやいなや修二に向かって突っ込む。
「貴方を適度に半殺しにした後、ゆっくりと本物の修二様の居場所を吐いて貰います!」
「やれやれ、そういう過激な所も相変わらずだな」
修二はナイフによる斬撃を紙一重で避け続ける。
本気を出せば一瞬で終わるが、流石に怪我をさせるわけにはいかない。
よって修二は迫りくる二本のナイフをそれぞれ両手の人差し指と中指で挟んで受け止める。
「な―――――っ」
「真剣白刃取り、・・・・なんてね」
そのまま手首を捻る。
どのような理屈か、それだけでナイフが半ば程から折れた。
「っく、なら!」
瑞樹は折れたナイフを投げ捨て、メイド服の両袖から棒状の物体を取り出す。
その正体は大型の金属製トンファー。
瑞樹が最も得意とする武器であり、修二が召喚される前、彼の奇行でブチギレした時のみ使っていたものである。
当時感情が無かった修二でさえ、あのトンファーを見るたびに足が勝手に動いていた。
後にそれが恐怖という感情であると知ったのは良くも悪くもいい思い出になっている。
「はああああ!」
トンファーを用いた強烈な突き。
それは派手な音をさせて修二の鳩尾に突き刺さる。
しかし、下手をすれば内蔵を破裂させかねない一撃は、
「――――残念だね」
通用しなかった。
修二は突き出されたままの腕を取りそのまま床へと組み伏せる。
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