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はぐれ勇者の鬼畜美学〜はぐれ勇者と魔弾の射手〜
第三話『ファーストコンタクト』
(はぐれ勇者の鬼畜美学×PARADISE LOST(一部設定))
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東京湾の一部を埋め立てて創られた人工島――――特別自治区。
その中央に存在するのは巨大な大学キャンパスのような施設。
異世界から帰還した子供たちが通うその学校を人々はバベルと呼ぶ。

「ん〜〜〜〜♪」

そんな場所で修二は上機嫌に鼻歌を歌いながら長い廊下を歩いていた。
帰還した翌日、修二の予想通り屋敷にバベルへの入学案内所が届いていた。
この事は家族全員に知れ渡り、数時間後には家族会議が行われることとなった。
家族、といっても自分、兄、父、の三人のみであったが。
その家族会議で色々とぶっ飛んだ事をしでかした修二はそして数日後、わざわざ自治区まで引っ越し、ワイシャツにジーパンというラフな格好でバベルの門をくぐっていた。
今いるのはJPNバベルの入学検査が行われる第三闘技場。その何処かである。
そう、何処か。
修二は現在、世間一般的に言う迷子というやつなのであった。



―〇●〇―

「いやはや、本当に広い」

全部で四つある検査の内、最初のメディカルチェックが終わった後に散歩がてらにブラブラしたのが間違いだった。
予想以上に闘技場は広く、思わず冒険心をくすぐられた修二はあちこち移動するうちに元来た道をすっかり忘れてしまっていたのだ。
二、三の試験はともかく、四つ目の試験、クラスを決める実技試験が始まる前に何としても待合室まで行かねばならないというのに、修二に焦りは一切見られない。
――――別に遅刻したところで入学は確定しているしな。
たとえ最低のEクラスからでも試験しだいによってはいきなりAクラスになることが可能なのは知っている。
それ故、修二にとってスタート地点となるクラス分けについてはどうでもいいのだ。
――――――それにもう一つ。

「さてと、そろそろだと思うんだけどな」

そう言いながら適当に曲がった通路の先、修二の目に闘技場の控え室の扉が映りこんだ。

「――――ビンゴ」

修二が呟くように言う。
なんとなくであるが、そろそろ目的地に着きそうな感じがしていたのだ《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》。
あくまで勘。だが修二の勘は自覚する限り今まで一度も外れたことがない。
これもまた修二がソドムで生き抜くことが出来た理由の一つであった。

「さてと、それじゃあ――――っ!」

ドアの前に立った瞬間、その外れた事のない勘が警報を鳴らした。
ソドムでもそうお目にかかる事のなかった強者の気配。
実力的に言って自分と同等、あるいはそれ以上の。
思わず修二の顔に笑みが浮かぶ。
・・・・どうやら退屈せずに済みそうだ。
修二は一瞬のためらいも無く部屋へと入る。
いたのは二人の男女だった。
片方は椅子に座った黒いボサボサの髪をした精悍な顔立ちの男。
もう片方はどこかそわそわしているピンク色のツインテールの美少女。
即座に分析。
少女の方はおそらく魔法タイプ。
武器は使えない事はなさそうだが接近戦は苦手と見える。
しかし、何より目が行くのはその肉体。
ある意味《・・・・》強烈で凶悪な武器を持っているらしい。
男の方は明らかに戦士タイプ。
凄まじく鍛え抜かれた肉体の持ち主であるのが一目で分かった。
同時にこちらが先ほど感じた気配の持ち主だと理解する。

「あ〜、こんにちわ。控え室ってここで合ってるかい?」

ひとます、普通に挨拶する。

「ああ、ここで合ってるぜ」

返答してきたのは男の方。
修二は近寄り左手を差し出す。
ただし、拳の形で、それも超高速で《・・・・・・・・・・・・・・・》。
衝撃音が部屋に響く。

「オレは佐渡修二。ここで会ったのも何かの縁だヨロシク」

「――――俺は鳳沢暁月だ。にしても、随分と乱暴な自己紹介じゃねーか」

暁月は平然と言う。
修二の拳を右手で受け止めながら。

「悪いね。最近こういう挨拶がマイブームなんだ」

修二はすぐに両手を上げ後ろへと下がる。

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