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黒の異邦人は龍の保護者
# 22 “Love is over ―― 洋紅色の氷花が咲くとき ―― ”『死神の涙』編 S+@
(TIGER&BUNNY × DARKER THAN BLACK)
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    ◇

 後の世にネットや学校の至る所で語り継がれる都市伝説――『パンドラ事件』が生まれた夜。

 それは2つの勢力がたった1人の極東の少女を救う為に戦った、1時間に満たない出来事。

 シュテルンビルトを襲った20分の停電から事件は始まった。

 黒の死神はHERO達をすり抜けて製薬会社パンドラの中へと侵入した事より事件は本格的に動き出す。

 唯の製薬会社の中には大量の銃の所持と覚醒兵の存在がHERO TVによって世に知らされる。

 各HERO達がパンドラ内へと入り、契約者たちを撃破していく。

 バーナビー・ブルックス・Jrは神隠しにあった天文学者のニックを救い出す事に成功する。

 黒の死神と接敵していたワイルドタイガーは救出対象の“牧宮蘇芳”を救い出すことに成功する。

 次にドラゴンキッドと折紙サイクロンにより契約者“鎮目弦馬”確保。

 蘇芳を救い出そうとも、事件も都市伝説もまだ終わりには至っていない。


    ◇




 カリーナ・ライルは混乱に包まれてしまった。

 氷の女王のヒーローコスチュームに身を包み、気の強い女性に見える。

 自信満々に導いてきたハヴォックが突如として人体発火し、それを消化するために自身を真空領域へと飲み込んだ。

 ガリガリの身体にボロボロのワンピースを着た赤毛の女性ハヴォックの体中に包帯を巻いているが赤く染まっている。

 発火は鎮火したが、真空領域へと入った事でハヴォックは気を失っている。

 コツン、コツン。とゆっくりと近づいてくる足音。

 カリーナへはそれが死へのカウントダウンであるかのように重く響く。

「おいねーちゃん。“飛ぶ”ぜ?」

 後ろからの突然の声に振り向く間もなく、カリーナの視界は闇に包まれる。

 闇が晴れると、先程までいた通路ではなく監獄の中に変わっていた。

 辺りを見回してみると、床には力なくハヴォックが倒れている。

 急いで駆け寄ると、息も薄く、半分死んでいるかのように体は冷たい。

 カリーナは咄嗟にハヴォックの肩を揺らして生死を確認する。

「ねぇ! ねぇ! ねぇってば! ハヴォック!!」

 何度揺らそうと、ハヴォックは反応を示すことはない。

「揺らすな、そして静かにしろよ、ねーちゃん。

 今かあ……ハヴォックに起きられると面倒になる」

 パニックになりかけるカリーナの後ろから少しきつめの女の子の声が飛んでくる。

 カリーナが振り向くと、脇腹を抑えた黒髪の少女が立っていた。

 少女が来ている白いコートは、手で押さえた所を中心に赤く染まっている。

 少女の息が荒いのに気づいたカリーナは、少女が撃たれた事という事実に気づく。

「あなた……撃たれてるの?」

「ニヒヒ……! 正解だからさ、凍らしてくれね?」

 ニヒヒと笑いながら脇腹から手を放すと、ドポッと赤い液体が床に落ちる。

 カリーナは急いでパーセルの脇腹を凍らせる。

 応急処置としてはさほどいいものではないが、地を流し続けるよりかはマシだろうと、カリーナは丁寧に施す。

 カリーナはこの少女に見覚えがあった。

 トレーニングセンターを襲撃した1人、パーセルである。

「あなた、トレーニングセンターを襲ったわよね?」

「ニヒヒ、昔の事さ。糞パンドラの命令でな……」

「命令って、何のために!?」

「ああ……“記憶”なくしてんだったな……」

 パーセルは自身が動いた事でおきた結果を目の当たりにし、カリーナの顔を見れずに視線を落とす。

 脇腹を突き抜ける痛みより、心に突き刺さる痛みにパーセルの表情は曇る。

「わりい、こっちの話だ。ちょっちあそこの出来事終わらせてくら」

 脇腹が凍ったのを確認したパーセルは、立ち上がり独房の入口へと向かい歩き始める。

 混乱したカリーナは何も問いかける事もできず、パーセルの背中を見るしかできない。

 そんなカリーナの膝に、脚に、全身に音としてではなく小さな小刻みな振動が伝わってくる。

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