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黒の異邦人は龍の保護者
# 23 “battle finished. family will start. ―― 死神が見る夢は黒よりも暗い暗闇か ―― ”『死神の涙』編S+A
(TIGER&BUNNY × DARKER THAN BLACK)
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    ◇

 後の世にネットや学校の至る所で語り継がれる都市伝説――『パンドラ事件』が生まれた夜。

 それは2つの勢力がたった1人の極東の少女を救う為に戦った、1時間に満たない出来事。

 シュテルンビルトを襲った20分の停電から事件は始まった。

 黒の死神はHERO達をすり抜けて製薬会社パンドラの中へと侵入した事より事件は本格的に動き出す。

 唯の製薬会社の中には大量の銃の所持と覚醒兵の存在がHERO TVによって世に知らされる。

 各HERO達がパンドラ内へと入り、契約者たちを撃破していく。

 バーナビー・ブルックス.・Jrは神隠しにあった天文学者の“ニック”を救い出す事に成功する。

 黒の死神と接敵していたワイルドタイガーは救出対象の“牧宮蘇芳”を救い出すことに成功する。

 次にドラゴンキッドと折紙サイクロンにより契約者“鎮目弦馬”確保。

 時を同じくして、黒の死神がハーヴェストを発剄により撃破する。

 “パンドラ事件”は神様さえも語らぬ都市伝説の最後の1ページに突入したのだ。


    ◇




 静寂に包まれる室内。

 大量の血液を吐き出しつつ崩れ落ちるエリック西島の肉体。

 肉体には大量の穴が開き、どうやっても助からないのがわかるほど穴が開いている。

 黒はこの殺し方に覚えがあった。

 『契約者』魏 志軍《ウェイ チェージュン》の能力による殺し方だ。

「魏……志軍」

「ええ、よくここまでたどり着きましたね。BK-201.

 おめでとうの言葉と共に伝えましょう」

「お前が殺したのか……」

「まぁ、『トカゲの尻尾切り』したと言い換えておきましょうか。

 そういえば……あなたとは決着が着いていませんでしたね」

 物陰から現れた魏は不敵な笑みを浮かべている。

 スラッとした体形に吊り目のアジア人。

 黒髪を逆立てて好戦的な印象を与える。

 何よりも戦闘に生きていた証であるかのように、顔の半分に火傷の跡が残っている。

 魏は手首が切れた右手に力を入れる。

 ブシュっと鮮血が飛び出し、魏は右手を振りかぶる。

 魏の戦闘体制を見ても、黒は動くことが出来ずにいる。

 代わりに黒を支える黄が黒を庇うように半歩前を出る。

 魏は嘲笑い、右腕を下ろす。

「姫に守られる騎士に興味はありませんよ」

 不敵な笑みをこぼす魏はポケットから包帯とナイフを取り出し、血を流す手首に包帯を巻く。

 魏の血が着いたナイフを黒達へと放物線を描くように緩やかに放り投げる。

 お互いの中間地点に来た瞬間に、魏は能力を開放してナイフを破砕する。

「いずれ私達はまた殺し合えますよ。

 その時にはお互いに万全の状態でやりたいものです。

 ――ブリタ」

 魏の言葉に反応して、魏の横にランセルノプト放射光が灯り、金髪の美女が素っ裸で出現する。

 美女は黒と黄へと軽く『ハーイ』と挨拶し、魏と濃厚なキスを交わす。

 キスに反応し、黄は顔を真っ赤にし、『あわあわわ』と冷静さを失う。

 ブリタも何も見せびらかせようとしているわけではなく、これが彼女の対価なのである。

 能力は『人体の空間転移』。対価はキスをする事。

 キスを終えたブリタは、妖艶に魏の身体に絡みつき、視線を黒へと向ける。

 その視線に気づいた黄はムスッとブリタを睨む。

 そんな女性達の視線を無視し、黒と魏は反らす事無く視線を固定している。

 ブリタは黄の視線に気づき、薄らと笑みを浮かべ、魏を転送し始める。

『それではBK-201、いずれ……ああ。

 この奥にいる【時を操る魔女】は差し上げましょう。

 この戦いに勝利したご褒美です』

 言葉が終わると同時に魏は消え去り、ブリタもランセルノプト放射光となりその場を後にした。

 魏とブリタの2人が消えた部屋には、黒と黄のみが残った。

 その静寂の中、黒の視線の先には大きな水槽があった。

「黒……終わったんだよね?

 これでボクの所に帰ってきてくれるんだよね!?」

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