何も見えない真っ黒な世界。手を伸ばせば底には壁があり、天井がある。小さな箱の中、私はギュッと身体を丸める。
私は何故、こんなところにいるのだろう? 暗く、冷たい無機質な世界でその身を震わせる。
「寒い……」
目が覚めたら私はここにいた。どこかに運ばれているのだろうか? ガタガタと何かの乗せられ動いている様子が中からも感じ取れる。
――ガタンッ!!
大きな衝撃、箱が頑丈なのか、地面が柔らかかったせいかわからないが、私を入れた箱は壊れず、どこかに放り出された。
何もわからない。何も感じ取れない。自分がこれからどうなるのかも、そしてどうすればいいのかも……。
紅蓮と黒い王子 第25話「半分個しましょう」
193作
「うおおおおっ!!!」
シモンの咆哮が谷間に轟く、グレンラガンのドリルが獣人のガンメンの頭部を貫き、爆散させる。
「シモン、こっちもカタ付いたぜっ!」
『お疲れ様、みなさん。後片付けはバッタ達に任せて帰還して下さい』
「いや、オレも手伝うよ。その方が早く終わるだろ」
「そうそう、嬢ちゃん艦の運転や周囲の警戒なんかで疲れてんだろ? 休んで、俺達に任せておきな」
ラピスの身を気遣い、早々と先程倒したガンメンをばらして回収していくシモンとキタン。
「そう言えば、アキトとカミナの奴はどうなんだ?」
『リーロンの見立てでは、アキトは全治一ヶ月、カミナも全治三週間だそうです。
休むように言っても聞かないので、監視をつけて括りつけてます』
前の戦いでアキト、カミナ共に酷い怪我を負っていた。
アキトはビャコウに貫かれた傷がひどく、サレナの修復があと少し遅かったら命が危なかったと言われ、あのラピスに泣き付かれた。
それが堪えたのか、現在はヨーコとキヤルの監視(看病?)の下、病室に括りつけられ大人しくしていた。
カミナもアディーネとの戦いでかなりの傷を負っていたとかで、今はアキトと同じ監視体制の下、病室に縛られている。
「ま、言ってもあの二人は無茶ばかりして聞きやがらねえからな。丁度いい薬なんじゃねえか?」
「兄ちゃんだって、あんまり変わらないじゃないか、旅先で相当無茶ばかりやってたって聞いたぜ」
「む……キヨウだな。んなこと言ったのは……」
ユーチャリスから手伝いに降りてきたキヤルに痛いところをつかれ、黙るキタン。
「まあ、男ってのはいざって時にはやらない……」
「また、そんなことい……」
兄妹でいつもの口喧嘩をしていた最中、先程倒したはずの一体が起き上がり、グレンラガンの背後に迫る。
「シモン――っ!!」
「なっ!!」
突然のことで対応が遅れ、背中をとられるグレンラガン。そのままもつれる様に倒れこみ、ゴロゴロと崖に向かって転がっていく。
「くそっ!!」
――ドゴンッ!!
崖に放り出された瞬間、取り付いていたガンメンをひっぺ返し弾き飛ばすが、その瞬間、敵のガンメンも爆発し、その衝撃でグレンラガンもろともシモンは崖に落ちていく。
「うわああああぁぁぁ――っ!!」
「シモ――ンっ!!」
キヤルとキタンの叫びも空しく、落下していくグレンラガンの姿がそこにあった。
「すまねえ……オレがついていながら……」
「キタンのせいじゃないさ。敵の生存確認をおこたったのは私たちも同じだ」
拳を握り締め自分を責めるキタンに、その金髪の女性はキーボードを打ちながら冷静に対策を考えていく。
彼女はの名はレイテ。キタンが旅の途中で出会った凄腕のメカニックである。
白衣につなぎと言う女性らしからぬ色気も何もない格好のレイテだが、これでもリーロンと変わらぬほどの腕を持つ、天才的なメカニックだったりする。ことガンメンや動力機関などの実質的な整備、運用を任せればその腕はリーロン以上とも言えた。
あの後、ユーチャリス、ダイガンザン、ダイガンカイの三隻に実質的な戦力を拡大した大グレン団は、ユーチャリスには今までどおりリットナーを中心としたメンバーを置き、ダイガンザンにはキタンを中心とした反螺旋王レジスタンス、ダイガンカイにはアディーネを中心とした獣人達の主戦力を置いていた。
そんな中、レイテと呼ばれた女性は、ダイガンザン、ダイガンカイの主機関及び、実質的なガンメンの運用整備に関わっている大グレン団の重要幹部だ。
「ダメだね。相当に深い谷底みたいだね。ここからじゃ確認のしようがないよ」
「てことは降りていくしかないってことか」
「それでも空を飛べるユーチャリスや、水を操って移動できるダイガンカイでも、こんな狭いとこはさすがに入っていけないよ。
やはり、バッタ達を連れて谷底に降りて、ガンメンで回収するのが一番早いだろうね」
「なら、オレがいくぜ」
「ダメよ。あんたは大グレン団の副リーダーでしょうが……
カミナが動けない以上、実質的な責任者はアンタなんだから大人しくしときなさい」
「ヨーコっ! というか副リーダーとか言うなら実質的にはアキトの方が妥当だろうが……」
「そのアキトも絶対安静。それに、アキトは……まあ、アンタが副リーダーなのは皆もアキトも認めたことなんだから、諦めてここは大人しくしときなさい。グレンラガンとシモンの回収は私が行って来るわ」
大グレン団発足の折り、カミナは実質的なリーダーをアキトに譲ろうとした、だがアキトは自分がこの世界の人間ではないことからそれを拒否していた。アキトにしてみれば、余所者の自分が引っ張っていくよりも、この世界の住人であるカミナやキタンが引っ張っていった方がよいと思ったからなのだが、周囲からするとその人間や獣人にまで知れ渡る知名度や、ここまで戦ってこれたのはアキトが居たからだと思っているだけに今回のことはキタンも含め、余り納得がいってなかった。
しかし、ヨーコはアキトの事情も知っているだけにさすがに何も言えない。皆に言ってしまえばそれで一応は納得させてしまえるのだろうが、それもアキトやラピスに黙ってするわけにしかないし、カミナやキタン辺りはそんなことを聞いたら「余所者だっ!? まだ、そんなことを言ってやがるのか!!」と怒り出してしまいそうだ。
アキトの中にある闇――アキトの事情も知っているだけに、軽はずみにその事を言えず、周囲との板ばさみで胃を痛くするヨーコの姿がそこにあった。
「大丈夫。私の方がバッタ達の扱いに長けてるしね。それに私ならラピスの力を借りなくてもバッタをコントロールできるし、今はあの子も休ませてあげないと……」
「うぅ……そうだな」
ラピスのことを出されると弱いキタン。
親心と言うべきか、それとも単なるロリコン親父なのか? キタンはラピスに甘いと言うのが周囲の見解だった。
「じゃあ、行って来るわ」
数体のバッタを連れて、愛用のバッタバイクに乗り飛び出すヨーコ。
そこに居たメンバーは皆、シモンの無事を祈り、その後姿を見送った。
「ううぅ……ここは……」
崖の底、地面に落下した衝撃でグレンラガンから放り出されたシモンは、冷たい風が吹き込む薄暗い谷底で目を覚ました。
「随分、落ちちゃったみたいだな……グレンラガンでも……さすがに上れないか」
地面に身体の半分を埋め、泥まみれで倒れこんでいるグレンラガンを見て思わず溜息をもらすシモン。
ブラックサレナのように飛行能力の無いグレンラガンではこの崖を駆け上がることは難しいと判断し、その場に座り込む。
「やっぱり、助けが来るのを待たないとダメなんだろうな……はあ……やっぱり兄貴みたいに行かないな……」
先程の戦いを思い出し、自分を叱責するシモン。
カミナやアキトならもっと上手くやれたのだろうと思うだけに、目標にする人物がまだずっと遠いところにいるのだと思わせられる。
シモンは確かに戦う決意を決めた。だが、まだ自分の力が十分だとは思えなかった。
もっと皆を守れる力を、カミナの横に立てるだけの力をとシモンは望む。
今のままではカミナとの誓いも守れない。シモンはそう考え、自分から率先して戦いに戦いにへと身を置いて行く。
どうすれば、カミナと誓い合ったその先に行けるのか? グレンラガンを誰よりも上手く扱えるようになれば?
アキトのように強くなれば? 沢山の敵を倒せれば?
それは今のシモンには分からなかった。
大の字に地面に横たわり、片方の手をそっと空に向けて伸ばす。
その手の中にはラガンの始動キーであり、掘り出したあの時から、ずっとシモンの宝物であるコアドリルがそこにあった。
光沢のある不思議な輝きを放つ小さな金色のドリル。
シモンはそれを見つめ、物思いにふける。
「こんなにゆっくりしたのって、久しぶりだな……」
誰も居ない。何もないこの場所で、静かに一人横たわりながらシモンはそんなことを口にしていた。
あの日、ジーナ村にガンメンが落ちて来て、ヨーコやアキトと出会って、本当に色々なことがあった。
辛い事や嬉しい事、死にかけるほど大変なこともあったけど、本当に楽しい毎日だったと思える。
でも、その騒がしい毎日が途絶えることはなかった。いつも誰かが傍にいて、いつも誰かが笑っていた。
だからこそ、この静寂さは寂しくもあり、色々と考える機会を与えてくれるそんな気がする。
――ドゴォォ――ン!!
「なんだ!?」
良い気分で、横になっていたシモンの耳に何かが落ちてきたような、物凄い音が響く。
慌てて、音のした方向に走り出すシモン。するとその目の前に、大きく開けた広場が姿を現した。
少し小高い丘に上がり、周囲を見渡すシモン。
そこには沢山の箱が無造作に転がされていて、まるで墓場のような異様さを放っていた。
「これは……」
崖の上には先程、箱を投げ入れたであろうガンメンの姿があった。
ガンメンは箱が谷底に落ちた事を確認すると、踵を翻し、来た道を戻っていく。
シモンはガンメンが行ったことを確認すると、先程、ガンメンが投げ入れたであろう箱に駆け足で近づいた。
「でっかい箱だな……」
鉄製の無機質な箱がそこにはあった。装飾はなされているようだが、それでも宝箱と言うような煌びやかなイメージはその箱から受けない。
シモンは意を決して、その箱に手をかける。
「うぬぬぬぬ……!!?」
力を込めて箱を抉じ開けようとするが、シモンの力ではびくともしない。
顔を真っ赤にして、肩で息をするシモン。
「ダメだ……鍵でもかかってるのかな……」
そうして、じっくりと箱の様子を探るシモン。すると、箱の真ん中に小さな穴を発見する。
「穴……? でも、これって……」
よく見慣れた大きさの穴。それはラガンにある、コアドリルを差し込む穴と瓜二つだった。
疑問に思いながらもシモンはそっと、持っていたコアドリルを箱の穴に差込み、そのネジを回す。
――ガチャッ!
何かが噛み合った音がすると、ギギギ……と音を立てながら眩い光を放ち、先程までびくともしなかったその重い蓋が開き始める。
シモンは、完全に箱が開いた事を確認すると、そっと手をかけ、箱の中を覗き込んだ。
だが、その瞬間――
「…………!?」
箱からぴょこっと顔を出した少女に驚き、箱から手を離し、後ろに転がってしまう。
「いてて……」
「……大丈夫ですか?」
箱に手をかけ、こちらを見る少女。
クルクルとした金髪に、清楚なワンピース、人形のような白い肌をしたその少女に、思わずシモンは顔を赤くして見とれてしまう。
「あの……」
「え、なに!?」
「ごきげんよう。あなたは、どなた?」
「ご……ごきげんよう?」
予想外に丁寧な言葉で話す少女に、思わず素っ頓狂な声をあげるシモン。
すると、空からいつの間にかポツポツと小降りになっていた雨を少女は手で受ける。
「これは……雨? ここは外なのですね」
「うん、外だけど、それより、君は……?」
少女のその一言で、この少女も地上にでたばかりなのだろうか? シモンは単純にそう思った。
だが、何故、こんな箱に入っていたのだろう? 先程のガンメンは一体?
シモンの疑問は尽きなかった。
だが、そんなシモンに考え込む隙を与えないかのように、少女は箱から外に飛び出し、シモンの顔に手を当てると、ムニュムニュとその頬を触りだす。
「な……なに!?」
突然の少女の行動に顔を真っ赤にして後ろにとびのくシモン。
「やわらかい……牙もないし、鱗もない……あなたは私と同じなの?」
少女の意味不明な質問にシモンはポカンと呆気に取られながらも答えた。
「そりゃ、そうだよ。同じ人間だもの」
「ニンゲン……?」
「そうだよ、人間、人だよ、ヒト!」
「ヒト……ヒトって一体なんですか?」
「ええええぇぇっ〜〜〜!!!」
シモンは少女の不思議な質問に頭をひねった。生まれてこの方、ヒトとは何かなど質問された事がない。
また、そんな生物学的な話をされても、シモンには答えるだけの知識も博識もない。
「ええと、その、人ってのは手足があって、頭があって……」
自分で口にしておいて、何を言っているのか分からないシモンは、思わず頭を抱えてその場に屈んでしまう。
「じゃあ、あれもヒトなんですか?」
そうして、少女が指差す先、シモンがそっと振り向いた先にはメズーとよばれる種類の巨大な馬面のガンメンが立っていた。
「うわっ!!」
慌てて少女の手を取り、箱からコアドリルを抜き取ると逃げるように走り出すシモン。
「あれもヒト?」
「違うよ!? あれはガンメンだよっ!!」
後ろから追ってくるメズーから逃げながらグレンラガンに向けて走るシモン。
だが、少女を連れながら巨大なガンメンから逃げられるはずもなく、徐々に追いつかれていく。
「まずい、このままじゃ……」
「……あっ!」
足をもつれさせ、その場に倒れる少女。
そんな少女を捕まえようと、メズーの手が伸びる。
「くそっ!!」
素手でラガンもない自分に何かが出来るとは思えなかった。だが、目の前の少女を助けないと、そう思った瞬間、シモンの身体は少女とメズーの間に入り、コアドリルを手にした拳をメズー目掛けて振りぬいていた。
――ドゴォォン!!
目映い閃光を放ち、メズーを吹き飛ばすシモン。その衝撃でシモンも後方に吹き飛ばされるが、雨で柔らかくなった泥に助けられ、大したダメージもなく立ち上がる。
「ヌウ……ナンデ人間ガ……」
「これ、オレがやったのか……」
手の中で光るコアドリルを見て、シモンは放心する。
だが、自分を心配して駆けつけてくれた少女に気が付くと、それをチャンスとばかりに少女の手を取り、グレンラガンに向けて走り出した。
「逃げようっ! 君はオレが守るっ!!」
「ヨクモヤッテクレタナ!! 逃ガサンゾ!!!」
手にロケットランチャーを構え、グレンラガンに迫るメズー。
シモンは素早く少女をラガンのコクピットに引き込むと、コアドリルを差込みねじる。
グレンラガンに狙いを定め、発射されるメズーのミサイル。その瞬間、グレンラガンの瞳に命の火が輝いた。
――ドゴオオォォォ――ッン!!
「ヤッタカ!?」
爆発を確認して、勝利を確信するメズー。だが、その爆煙の中から、全くの無傷のグレンラガンが姿を現す。
「ナ、ナンダト!?」
「許さない……」
シモンの顔には怒りが浮かんでいた。何も持たない少女を追い掛け回した事、危険に晒した事、人間を人間と思わずただ狩りのように追い掛け回すこの獣人に、憤りを感じていた。
ドン――ッ! 大きな音と共に、グレンラガンがメズーに勢いよく迫る。
メズーがそれに気付いた瞬間。勝負は決していた。
グレンラガンの右拳から放たれたドリルがメズーを貫き、その巨体を持ち上げる。
「うわああああぁぁぁっ!!!」
シモンが雄たけびを上げた瞬間、メズーはそのドリルの回転に引き込まれるようにその身を中心に向けて捻じれだし、そして爆散した。
肩で息をしながら、額から沢山の汗を流すシモン。いつも以上に身体が疲れているのは、怒りに任せて思った以上のエネルギーを引き出した結果だったのだが、シモンはメズーを倒して少女を守ったというのに、少しも嬉しそうな顔をしていなかった。
そんなシモンを見て、少女は表情を曇らせる。
「……何故、そんなに悲しそうな顔をしているのですか?」
「え……」
シモンをそっと抱き寄せる少女。その行動に思わずシモンは身を固くしてしまう。
「怖いのですか? だったら怖いと叫べばいい。悲しいのですか? だったら泣いてください。戦うのが辛いのなら逃げればいい。あなたが一人でそうして悩んでいたとしても、自分に嘘をついていたとしても、それでは誰も喜びません」
少女の言葉にまるで自分の心を見透かされているように感じ、思わずシモンは少女を引き離し、俯きながら答えを返す。
「わからない……わからないんだ。確かに怖い、辛い、逃げ出したい。でも兄貴と約束して、みんなも守りたくて、そしてオレには戦える力があって、でも憎いと思ってた獣人達にも良い奴もいて、家族もいて、仲間もいて……でも、君が危険に晒されて本気で相手を憎んで、怒りに任せて殺した自分がいて……」
シモンは人一倍優しすぎた。獣人は敵であると言う単純な図式で戦えたのなら、それは今のシモンにとって難しい事ではなかった。
だが、アキトとチミルフを見て、アディーネや獣人達と触れ合い、獣人にも仲間が命があるという事に改めて目を向ける事になった。
アキトはその手がすでに血にまみれている事を知って、その上でラピスを家族を守る為に戦う、カミナは目的の為ならどんな事があっても歩みを止めない、キタン達も獣人達への憎しみはある物の、仲間を守るためならどこまでも戦い続けるだろう。
だが、シモンにはそれが無い。兄貴との約束。兄貴を信じているからこそ、今の自分を信じられる。
そうしたシモンの心には他の皆にあるような、自分だけの願いと言うものがなかった。
借り物の願い、借り物の想い、それが悪いと言う事ではないだろう。
カミナの志に同調して集まった者達にも、そうした者達はいる。だが、シモンはそれだけで戦い続けられるほど強くはなかった。
命を奪っていると知った時から、自分の手が汚れていると知った時から、シモンの心には迷いが生まれていた。
「私はニア。あなたの名前を聞かせていただけますか?」
「シモン……」
「シモン……あなたは優しいのですね」
優しくなんか無い。オレは獣人とは言っても沢山の命を奪ってきた。
そんな自分が優しいわけ無いと、シモンは思う。
だが、ニアは優しく微笑み返すと、シモンの手を取り言葉を続ける。
「半分個しましょう」
「……半分個?」
「悲しみも苦しみも、喜びも嬉しさも、全部分け合いましょう」
「……どうして?」
あったばかりの自分にどうして、ニアがそんな事を言うのか、シモンには分からなかった。
この少女は自分のことを本当に想ってくれている、それが伝わってくるだけに、その真意がわからない。
「シモンは私を守ると言ってくれました。だから、シモンは私が守ります」
たったそれだけの事……気が付けば、ニアの言葉にシモンは溜まっていた何かを吐き出すかのように、ニアの胸で泣き叫んでいた。
……TO BE CONTINUED
あとがき
193です。
無事、退院しました。とは言っても、このまま一人暮らしは認められず実家に強制連行での退院です……;
とりあえず復帰は果たしたので、定期連載も再開したします。
1ヶ月近くの休載の分の遅れは、少し余分に出していくことで補うつもりですのでご了承下さい。
木曜日の定期連載を除き、その他の更新に関してはしばらく、月曜日と決めずに適当に入れていきます。
仕事と通院も考えたら、出来る日と出来ない日がでてくるので、そこは臨機応変にと言うことで。
今回の挿絵はりゅうきさんに頂きました。可愛いニアを書いてくださり、ありがとうございました☆
あと、すでに半月以上たちますが、第二部の扉絵は時量師さんに頂きました。
よろしければ、お二人にも拍手の方、よろしくお願いします。
次回は、シモンが出会った少女、その正体はお姫様だった。シモンは自分の戦う理由をもう一度考える、それはもう一つの約束。
紅蓮と黒い王子は定期連載物です。毎週木曜日の夜定期配信です。
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