-ゲッターロボG。その並行時空の可能性の一つを地球連邦軍はダブルマジンガーが破壊したモノから
数体分の残骸を回収、日本からオリジナルの予備パーツを取り寄せ、それを用いて残骸から比較的無事だったゲットマシンを選出して修理、
改修する形で一つのゲッターロボとして再組み上げしていた。そのためオリジナルと修理前の中間程度のガッチリしたフォルムを持つシルエット、
オリジナル同様の塗装と武装(追加武装も含め)を持つ機体として再生していた。

「真ゲッターの予備機扱いか……シャインスパークもついてたっていうし……違いは無いのかしら」

このゲッタードラゴンを見学しているのは加東圭子。写真などで見たオリジナルと比べると、
体つきがガッチリとしているこのドラゴンはまた違った印象を与えるようである。またオリジナルでは追加武装であったはずの「シャインスパーク」
が最初から機能として組み込まれていた、ライガー形態での武装が異なるなどの点からオリジナルとは「別の」機体である事がわかる。
ゲッター炉は復元の際に新早乙女研究所から運び込まれた試作炉心(真ゲッターとは別の次世代型ゲッターロボに用いられるはずのものの試作型。
オリジナルのゲッター線増幅炉や真ゲッターの炉心より安定性とエネルギー効率が高い)を載せてあるという。

「あの真ゲッターに比べればまだこのゲッターGは`常識で図れる`スペックなんだろうが……どうすんだよ、これ。アイツら以外に乗れるのかよ」
「一応、隼人`さん`の話じゃ操縦性はオリジナルより上がってるって話だけど、ゲッターチーム以外に性能をフルに発揮出来るのはいないからなぁ」

シャーリーは常軌を逸したスペックを持つ真ゲッター、それを私服で乗り回せる、
ゲッターチーム(竜馬、隼人、弁慶)の超人ぶりに開いた口がふさがらないようである。
ネウロイすら一撃のもとに粉砕出来る武装、慣性の法則完全無視な動き……、
それら機体性能をほぼ生身で制御出来るゲッターチームの身体的頑強さはウィッチが完全に霞んでしまうほどだ。
因みに圭子が隼人を`さん`付きで呼んでいるのは、激戦を経た隼人の風格から、
出会った当初は年上と勘違いしてしまっていたからである。
(最も若返っている今の肉体年齢から見れば、20代に突入間近のゲッターチームは完全に`年上`であるが)

因みに竜馬曰く、「俺たちゃこう見えてもまだ19なんだよ」との事。この言葉が圭子達を驚愕させたのは言うまでもない。
シャーリーはその時、「あんたらの顔はどう若く見積もっても23歳以下には見えない」とゲッターチームに告げ、彼等を落ち込ませたとか。
(彼等のファッション、特に竜馬の私服が実にワイルドなのが要因だが)

「コイツといい、ガンダムといい、VFといい……常人には乗れない`エース専用のワンオフ機`が流行ってるのかな?」
「状況が状況だからね。一騎当千の機体が求められてるのよ。絶対的エースに専用高性能機を与えるのはこの時代だと常識なのよ。
絶対的エースが戦場にいればそれだけで場を支配できる。`円卓の騎士`みたいだけど、
特にモビルスーツとかはその傾向が強い。まあ戦争の形態も一回りして戻ってるからね。嬉しくもあり、寂しくもあるわ」

圭子は人型兵器が跳梁跋扈するようになった時勢ではエースの存在は大きく、大昔の個人の強さが物を言った頃のように、
一騎当千の存在が戦局さえ左右するようになった事には複雑な心境なようだ。
最初に個々の質より平均的強さの兵士たちの数がモノを言うようになっていく時代の人間としては、「回帰した」と言われても不思議では無い
この風潮には複雑な気持ちである。現役時代の自分や智子の「個人技」は進化を重ねたネウロイには通じない場合が多くなり、
自然とチームプレーが多くなり空戦の様相も「一撃離脱戦法」が主流になっていったからだ。
この世界ではミノフスキー粒子などが発見されてレーダーがあまりアテにならなくなり、空戦も巴戦主体に回帰した。
無論、完全にというわけではなく、空中指揮管制も生き残ってはいる。が、以前ほど重要な要素ではなくなり、個人技が最後はモノを言う
傾向が強い。圭子はこれらが複雑に絡んだこの時代の空戦に対しては複雑な想いを抱いているのである。

「さあて今日もテストと洒落込むか」
「少佐は今日は何のテストだよ」
「半分趣味なんだけど、スタームルガー・ブラックホークのバリエーションの`スーパーブラックホーク`とS&W M686。
仲間の子なんかスーパーブラックホークで私以上の速さで早撃ちしたし……」
「ま、マジかよ……」

無論、それはのび太の事である。のび太は西部劇映画などに傾倒しているためと`オートマはジャムると危険`と考えており、
リボルバーを信頼している。そのため天賦の才能に加え、努力でリロード技術を鍛えており、その速度は達人級の早さ。
銃の腕には自信のある圭子ものび太のクイックリロード術には目を見張った。ドラえもんの道具によるサポートも
入っているとは言え、(グレードアップ液などで大型拳銃の反動に耐えられるようにしてある)最低限の弾薬で
敵を倒すその腕は実戦を経験した者でもそうそういない「手練」である。のび太は「有事じゃないと役に立たない」
とその能力の日本での有用性を嘆いていたが、実際はオリンピックで存分に振るえば、金メダルも夢ではない。
しかもわずか普段は小学生にすぎない身でのあの命中率はルッキーニやマルセイユに匹敵するほどだ。

2人は射撃場に赴き、それらを試し撃ちしてみる。鈍い銃声とともに標的に弾が命中していく。圭子が撃った標的の中央部には、
装填数分のうちの7割が当たっているが、2割ほどが中心ずれている。現役の頃は百発百中を誇り、自負してもいたのだが、
実戦離れの5年のブランク(圭子は実年齢が25歳なので、20歳の時に一旦退役している。復帰後も空中勤務者としてではないので、
若返る前までの最近は地上での執務に専念していた(魔力量の減少もある)のでここ一年ほどはウィッチとして銃を撃ったことは
無い。そのため現在は現役の頃の感覚を取り戻すべく必死なのだ。圭子が戦友の智子に差を付けられている点はここであった。

「5発中の3発命中……か。昔は百発百中だったんだけどなぁ、5年のブランクは大きいか」

圭子は体が全盛期に戻ったのとは裏腹にブランクの大きさをも同時に自覚していた。つい最近まで本当に現役だった智子、
実戦から引退してもなお空を飛び続けていた黒江は`実戦の匂いや感覚`を取り戻すのは容易であった。
だが、引退から既に5年以上の歳月を経たうえ、この数年はストライカーユニットをつけて飛ぶ事も少なくなった
今の自分は「体がデスクワークに慣れきっていた」せいもあって取り戻した`超視力`を上手く制御できているとは言いがたい。

「私より命中率いいじゃないですか。それでブランクあるって嘘でしょ」
「いいや本当なんだな、これが。現役の頃は百発百中で、一応トップエースだったんだけどなぁ」

シャーリーには圭子は謙遜しているように見えるが、実際はその言葉の通りであった。

‐圭子は現役時代は黒江や智子以上のスコアを誇る撃墜王であった。その射撃の腕は当時の同僚らからも
絶大な信頼を持たれるほどで、その時のメンバーであった智子、黒江も未だに宛にしていると圭子との再会の際に言っている。
しかし、今の彼女はその時の感覚を取り戻したとは言いがたい。現役の頃の名声を知っている面々の手前、
打ち明けるわけにもいかず、(戦友だから言えないこともあるのだ)「どうやってブランクを埋めるか」と密かに悩んでいた。
その様子をのび太に気づかれ、「智子には言わないで」との条件で相談を持ちかけた。その結果、のび太は圭子の相談に
快く乗ってくれ、銃の撃つ時のタイミングの測り方、感覚をレクチャーし、圭子の自信を取り戻すのに
一役買っていた。

その時の様子を少し記そう。

 

『いいですか少佐、銃を撃つ時には勇気が必要です。ぼくなんか普段はジャイアンに泣かされてますけど、
銃を持てば勇気を持てます。相手がどんな相手でも負けない』

のび太は一度銃を持てば如何なる相手でも負けない勇気を持てると自負する。実際、彼は西部開拓時代にタイムマシンで
出向いた際には同時代の名銃「ピースメーカー」で当時のならず者たち相手に優位に立てる程の腕前を見せ、
実際に人を撃ち殺す(のび太曰く、6、7人くらい)経験もし、宇宙有数(のび太の時代での)の殺し屋「ギラーミン」と
一対一の決闘の末に打ち勝っている。その経験が現在ののび太の自信の源となっている。

実際、のび太の射撃は「水爆のコードを銃で断ち切れる」ほどの精度である事は圭子もにわかには信じ難かった。
だが、実際に見てみるとのび太の射撃はマルセイユと同レベルとも思える冴え。
マグナム弾、それも44マグナム、50AE弾と言った1940年代には無かった大口径弾で、遠く離れた空き缶に全弾命中させる
(俗に言うワンホールショット)芸当を見せた。ただしオートマチックは好みではないらしく、
「オートマはアテにしない」とまで言い切っている。

「リボルバーのいいところはジャムがないところですよ。ジャムったら一巻の終わりですから」

のび太はリボルバーへのこだわりを見せると、標的へ銃を撃つ。無論、全弾命中である。
その照準は一寸たりとも狂いがなく、実戦を見てきた圭子をも唸らせるほどに正確だった。

(標的に全弾を集中的に当ててる……この子、只者じゃないわ……これで普通の小学生だって!?)

そう。のび太は小学生である。成績は悪く、先生から中学校以後の生活を心配されるほどに0点記録を樹立しているし、
優しく、純粋さを持つどこにでもいそうな少年だが、非常時には隠された非凡さを発揮する。
その姿で見せる「射撃の腕」。クイックドローの速さは実戦経験者である智子や圭子を凌ぎ、命中率も高い。
それ故、圭子はのび太を「小学生」と侮らないで、敬意を払って対等に接しているのである。

圭子は「どんな銃でも変わらぬ命中率と早打ちが出来る」秘訣を思い切って聞いてみたが、
のび太は「特に秘訣はありませんよ、どんな銃でも撃てば同じですから」と告げ、納得させられた。

‐逆に勉強させられたっけ。本当に凄いんだから、あの子……。

いかなる銃火器にも適応できるのび太の才能を羨ましく思い、こうしてテストを行なっている。
技能としては既に可変MSの操縦を身に着けているが、錆びついた腕を取り戻したい気持ちは大きい。
なので、のび太に師事してもらう機会は多く、今では親しい間柄だ。

 

圭子はシャーリーと共にスーパーブラックホークを撃ってみる。44マグナム弾は1940年代に流通している
どの銃弾より威力も反動も大きい。通常時では特有の射撃体勢を取らないと反動に耐えられない。

「威力は十分、拳銃としてはパワーがある部位に入るわね」
「私たちの時代にはこんな拳銃無かったもんなぁ。リロードが難しいけど、お守リにはなるぜ」

和気藹々と会話を楽しむが、そこへ敵襲警報が鳴り響く。全くもって突然だ。

『敵襲!!敵はゲッター軍団である。中心市街地には既に真ゲッターが迎撃に向かっているが、
別働隊がこちらへ向かっている。至急、迎撃態勢を整えよ』

「先手を打たれたか!!」
「どうすんだよ、相手がゲッターロボじゃモビルスーツじゃ火力不足なんだろ?」
「方法はある。`目には目を、ゲッターにはゲッターを`よ」
「お、おいまさかあたし達で……」
「なせばなる!行くわよ〜!!」

……と、圭子は「目には目を歯には歯を」の論理で半分無理やりゲッターGに乗り込んだ。
(乗り方はオリジナル同様にシート着脱式なので、`シートセッティングゴー`の号令で直接送り込まれる)で
組み合わせは圭子がドラゴン号、シャーリーがライガー号、ルッキーニがポセイドン号である。

「少佐、レバーは音声入力になってますから気を付けて!」
「了解!」

整備員からの通信に答える圭子。その表情はノリノリだ。

「って……なんであたしがポセイドン号なの〜!?」
「しゃーないわよ。こういう時は年の功よ♪」
「うじゅ……ドラゴンに乗りたかったなぁ、赤いし」
「まっ、あたしは速ければどれでもいいけど」

3号機(ポセイドン)に乗せられたことを愚痴るルッキーニと、「ストームウィッチーズ」隊長の特権と権限で、
1号機(ドラゴン)に意気揚々と乗り込んで浮かれる圭子。
それを割りと冷静に見つめるライガーのシャーリー。ちなみに初代ゲッターの頃と違って、
真ゲッターが完成している現在はG緩和装置なども成熟しているので、生身でも戦闘行動が取れるとの事なので、
ゲッターチームのパイロットスーツはどうもダサいため、3人ともウィッチとしての力を発動させた状態で、
おなじみの格好で乗り込んでいる。(ちなみにドラゴンには圭子の趣向に合わせ、「ゲッタービームランチャー」
(ゲッターレーザーキャノンの強化改良版武器。オリジナルより出力があるので装備可能となった)が装備されている。

『んじゃ行くわよ!ドラゴン、発進!!』
『ライガー、発進!!』
『ポセイドン、はっし〜ん!』

駐屯地の駐機場から滑走路へタキシングを行い、短距離で離陸する。ド素人の3人が乗ってもちゃんと操縦できるあたりは
操作性の改良が見てとれる。

『シャーリー、ルッキーニ!合体するわよ!』
『`ハジをかくなよ`?』
『うん』
『わかってる、行くわよ!!』

シャーリーが言った『ハジをかく』とはゲッターチームが使っているゲッター戦闘用語。恥の意味は`死`。
合体に失敗すれば死を意味する。シャーリーはゲッターチームからその言葉と意味を聞いていたので、使ったのだ。
圭子達はゲッターロボでは毎度おなじみの光景であるフォーメーションを取り、空戦形態かつ基本形態へ合体する。

『チェェェンジ!!ドラゴンッ!スィッチオン!!』

ドラゴンとライガーが最初に合体し、上半身を形成する。その際に操縦席が有視界戦闘を可能とするように向きが変る。
最後にポセイドンがドッキングし、下半身が形成される。最後にドラゴン号のチークガードが展開され、頭部と脚部の展開が
終わると合体が完了する。

『マッハウィング!』

ドラゴンのウィングはゲッター1と違ってマント状の翼である。肩のアーマーの下部分に展開されるため、
ゲッター1よりアーマーと一体化している印象を受ける。展開し、飛翔する。こうなれば航空機同様の感覚で操縦可能だ。

いざ、ゲッター軍団を迎え撃つために即席チームは戦場へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

‐竜馬、隼人、弁慶の本家ゲッターチームはというと……。

『ゲッタートマホーゥク!!』

真ゲッターロボを駆り、量産型ゲッターGの集団を蹴散らす。竜馬達の技量は「目をつぶっても合体可能」なほどであるので、
AI操縦の無人機では到底及ばない次元の強さである。ましてや今や真ゲッターを得た竜馬達の前には敵無し。
百鬼帝国が来ようが、ミケーネ帝国が来ようが、真ゲッターロボの前には雑魚も同然なのだから。

「ふ、ふふふ」

その光景を見つめるあしゅら男爵は真ゲッターの圧倒的な強さを目の当たりにしても尚も余裕を崩さず、悠然と構えている。

「流石は真ゲッター。お見事だと言っておこう」
『ふん。今回はやけに余裕ぶってるじゃねえか。いつもはそろそろ`ドクターヘルに会わせる顔が〜`とか言ってるくせによ』
「なあに、すぐにわかる」

あしゅらは竜馬の挑発にも乗らず、あしゅらはその態度を崩さない。やがて彼はある一つの合図を発する。
この場にいるすべてのゲッターGに向けて。
すると、全てのドラゴン、ライガー、ポセイドンがゲットマシンへ分離し、一つの渦のような形の大編隊で無限合体していく。
それはまるで一つの`化物`へ合体していくような様相を呈し、いくつものゲットマシンが一列に並んで合体していく様は
歴戦の猛者たるゲッターチームをも唖然とさせる。

『こ、これはゲッターチェンジ……!?ば、馬鹿な!?これだけの数が……!?何をしやがった!?」
「言ったろ、すぐに分かると」

あしゅらは恐悦至極とも言える顔で竜馬に答える。以前、彼がブライ大帝に言った言葉は真であったのだ。
これぞゲッター軍団の真の姿にて、並行時空に置けるゲッタードラゴンの可能性の一つ。その名も。

『見よ!これが貴様らに破滅をもたらすゲッターロボ……その名も!!`ゲッター真ドラゴン`!!」
『ゲッター真ドラゴンだと!?』
「そうだ。ゲッタードラゴンの並行時空の可能性の一つよ。今は赤子同然だがな」

そう。そのゲッターはまるでかつてのデビルガンダムを思わせる姿であるが、ゲッタードラゴンらしい意匠も多分に残っている。
上半身だけであるが、ゲッタードラゴンが集合した姿だと思わせる顔をしている。全身が茶色なのは『赤子同然』だからだろうか。
ゲッター線を求めるように天に向けて両手を広げるその姿はゲッターロボとは思えぬ異形の化物でしかない。

『ゲッター真ドラゴン……あれがドラゴンの可能性の一つだというのか!?」
「そうだ、神隼人。アレが並行時空の早乙女が心血を注いで研究していた`究極のゲッター`の一端だ。あれを手に入れるのは
正直、骨が折れたがな」

隼人の言葉にすぐさま返すあしゅら。これが真ゲッターに対する彼の切り札だと言わんばかりに。
不気味に炉心の鼓動を響かせるゲッター真ドラゴンだが、それに呼応するかのように日本でもこの世界のオリジナルゲッタードラゴンにも変化が生じていた。

 

 

‐日本 新早乙女研究所 ドラゴン増幅器室

ここ、新早乙女研究所ではゲッタードラゴンは真ゲッターへのエネルギー増幅器として使用されていた。
ゲッター線増幅炉の実験も行われているが、その最中である。急速にゲッター線の度数が高まり、ドラゴンの目に瞳が出現する。
同時にゲッター線増幅炉のエネルギー数値が臨界へ近づく。

「は、博士!!」
「うろたえるな!ドラゴンの様子は
どうだ?」
「は、はい。目に瞳が
出現し、エネルギー数値が炉心臨界に達しつつあります」
「……そうか」

この時、早乙女博士は気づいていた。ゲッタードラゴンは何らかの意思、そう。例えるならゲッター線の意思に導かれるように進化を始めたのだと。
原因は欧州に出現した巨大なゲッター線反応だろう。真ゲッターをも遥かに凌ぐ巨大なゲッターエネルギー反応。それにドラゴンは反応しているのだと。
真ゲッターのように目に瞳が出現した状態のドラゴンは人類にそう言っているかのように炉心を唸らせていた。

「ドラゴン、お前は何を見ている」

早乙女はドラゴンにそう語りかける。ドラゴンはそれに答えるかのように瞳を動かし、早乙女を見つめる。
その瞬間、早乙女は何かのビジョンを垣間見る。そのビジョンとは何なのか。意思を得たゲッタードラゴンが目指すのは何なのか。
謎は深まっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

‐日本 呉軍港内建造ドック

 
2200年の呉では扶桑海軍から委託される形で超大和型戦艦の建造に取り掛かっていた。呉に大打撃を受けた扶桑皇国本土には、
もはや大和型戦艦などの大型戦闘艦艇を建造・整備出来る軍工廠は横須賀しか残っておらず、民間ドックのある長崎などは損傷艦の修理で手一杯である。
折しも横須賀が大和型戦艦5番艦の建造中かつ、損傷艦の受け入れで満杯であった事、
南洋島はティターンズの通商破壊と戦略爆撃の標的となり、最前線化した事で扶桑海軍は地球連邦軍に艦艇建造を委託する事になった。

地球連邦軍には
大和型戦艦とその後継艦の超大和型戦艦の三面図があるので、欠点の洗いなおしと搭載火砲を56cm砲へランクアップさせるための

研究が扶桑海軍艦政本部と共同で行われていた。基本設計は大和型戦艦を強化発展させるものだが、集中防御思想を改めるべきか、継続すべきかで造船官らの意見は割れた。

「集中防御は艦隊決戦だけを考えた時代遅れの思想である。重量犠牲を払ってでも全体防御にすべきである」
「しかし集中防御は重量削減可能であり、復元力確保に繋がる」
「貴様らのその安易な考えが太平洋戦争で多くの艦艇を無駄死にさせたのだ。その元凶である貴様らが言えた事か!!
そもそも`H中将`の独走を許したのは貴様らの怠慢であり……」

地球連邦軍側から罵詈雑言でひたすら罵られる艦政本部の人間達。これは扶桑海軍旧式艦が、かの平賀譲氏の設計であった事、
大和型戦艦一番艦の「大和」の設計に起因する。ビーム兵器が飛び交う時勢にも関わらず、史実に毛が生えた程度の防水隔壁しか有していない
(無論、基礎防御力は鋼材加工技術、ダメージコントロール術の違いで史実より遥かに良好だが)事が、
先祖がソロモン沖の激戦で戦死しているために、日本海軍の「防御軽視」思想を嫌う連邦軍側担当官の怒りに火をつけたのである。
これには艦政本部側は反論できなかった。地球連邦にダメージコントロール研究を怠っていた事を面と向かって批判されては、
紀伊型戦艦建造時にようやくカールスラントの最新研究と思想を取り入れた扶桑海軍は反論の余地がない。
烈火のごとく怒り狂う造船責任者をなだめるのに必死な部下たち。これに1944年冬から艦政本部長に着任した「渋谷隆太郎」中将

ただただ頭を下げる
事しかできなかった。

こうした事もあったが、なんとか超大和型戦艦の性能仕様はディスカッションの結果、この通りになった。
全長は計画より延長されて400m、基準排水量で100000トン以上、
幅も56cm砲の(未来技術で作るのでショックカノン)
反動に耐えるために
、広がった。防御力重視で副砲は搭載せず、その代わりに
対空対艦ミサイル、アスロックの搭載で副砲を補い、対潜攻撃能力を得るということになった。速力は32ノット程度で落ち着き、
対空火器はCIWSとパルスレーザーを組み合わせ、連邦海軍が導入を進めている新型イージスシステムを導入。(塔楼は大和型戦艦のデザインそのままであるが、
CIC導入がなされている)未来技術てんこ盛りではあるもの、所々に大和型戦艦らしさが残るデザインなので、
連邦軍側は`もし、大和が戦後も健在なら行われただろう`とも言われる近代化を、後継艦の超大和型戦艦をベースに行なった事になる。
連邦海軍には過去に米軍が行ったアイオワ級戦艦への改修の成功と失敗のデータがあるので、1940年代の機関では重量増加に伴って
速力低下する事は分かっているので、それを計算に入れて地球連邦海軍が戦艦用に出力に余裕がある機関を用意し、
アイオワ級やモンタナ級より高速の32ノット(1990年代の最終時のアイオワ級は30ノット程度。ティターンズの改修したモノも31ノット程度)
を確保する見込みである。

未来の呉で建造されるこの艦の名は今のところ、扶桑海軍(日本海軍)の命名規則に則り、旧国名及び山名が決定している。
候補は「播磨」、「越後」、「三笠」、「遠江」、「飛騨」などとの事。
建造予算は第五次海軍軍備充実計画内の戦艦建造枠の予算で計上され、地球連邦へ資金が送られた。
この他にも扶桑海軍は新造艦建造を一部、不本意ながら地球連邦へ委託しており、B65型超甲型巡洋艦、
阿賀野型の後継型かつ、防空型の815号型軽巡洋艦などが地球連邦の手で建造されることになっている。
これは扶桑海軍が空母整備に全力を注ぎ、なおかつ損傷艦の整備、駆逐艦の緊急生産でドックが手一杯である事が
原因で、水上戦闘艦の整備がおざなりにならないようの処置であり、連邦軍の扶桑への援助の一環であった。

 

 

‐1944年 呉

「こっちにクレーン車を回してくれ……そうだ。鉄くずが多くて……」

1944年の冬においての呉は地球連邦の援助による復興支援が始まっており、呉軍港の施設の立て直し、放棄されたり着底した艦の解体作業も
進んでいた。民間企業などもかなり参加しての作業が進んでいた。
その中に加藤武子がいた。

「中尉、風翔の船室からこれが……」
「!!」

横転、着底して放棄されていた風翔が浮揚され、ドックに運ばれて解体作業が始まったの
だが、艦内調査で見つかったウィッチ候補生達の
遺品が回収され、教官だった武子へ手渡される。その中には集合写真もあり、ウィッチ候補生達のあどけない笑顔が写っている。
彼女たちを守れず、死なせてしまった事への悔恨。間に合わなかった。自分への怒り。それらが入り交じった感情が抑えきれなくなり、
その場に崩れ落ち、人目もはばからず、慟哭した。

「あ、ああ……あああああ――っ……私の、私のせいだ……もっと、もっと早く……」
「ち、中尉……」

周りにいる連邦軍の兵士たちもただただ、泣き崩れる武子をどうする事もできなかった。
遺品の数々は武子に何かを語りかけているように思えた。

 

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