さて、2200年を迎え、欧州戦線にも地球の勝利の兆しが見え始めていた。その要因の一つが、20世紀から21世紀ごろにかけて、地球を悪の魔の手から守っていた幾多のスーパーヒーロー達が本格的に参戦した事であった。
「レッツ・チェンジだ!!」
「おう!」
「OK!」
「チェンジマン!!」
このかけ声で変身する彼等は聖獣のパワーと地球のパワーを宿す彼等は1985年に結成された第9のスーパー戦隊、電撃戦隊チェンジマンである。歴代のスーパー戦隊は軍やそれに関係する防衛組織が結成した戦隊もいくつか存在しているが、チェンジマンは防衛組織が組織した例であった。これは太陽戦隊サンバルカン以来の事であり、初めて大技がバズーカ砲タイプの重火器である戦隊でもあった。彼等は1944年に派遣される事になる前には欧州戦線に関わっていたのである。
「チェンジソード!!」
チェンジマンの武器であるチェンジソードは銃と剣になる万能武器で、ソードという名とは裏腹に普段は銃で、銃身部分が剣となる。これはチェンジマンの前任者である超電子バイオマン(彼等は民間人の有志で結成されたスーパー戦隊であったが)の装備であったバイオソードの技術が地球側に与えられ、それを一年でモノにした結果である。彼等は兵団をその力で蹴散らす。スーパーヒーローだからと言えば当然であるが、彼等はスーパー戦隊の中ではむしろ少数派の軍人であったのも関係しており、その戦闘力は比較的高い部類であった。(むしろ、民間人である他の戦隊が異常であるのだが)
更にチェンジマンに付随する形で共に戦っているのはチェンジマンからおよそ4年後に結成された`高速戦隊ターボレンジャー`である。サンバルカン、ゴーグルVなどの第一陣に続く第二陣派遣でやって来た戦隊である。ちなみにターボレンジャーの面々は1989年当時で高校三年生であり、ある意味では史上初の高校生戦隊であった。
「コンビネーションアタック!!」
「アタック!!」
彼らはその圧倒的な力で奮戦し、戦線の主導権を握る。それは正しくスーパーヒーローそのものの所業であった。オーバーテクノロジーがもたらした技術で造られた装備とスーツの威力もあるが、彼等の身体的素養も多分に含まれており、その力は仮面ライダー達にも劣らない。そのため体格が地球人より圧倒的に大きいはずの鉄人兵団と言えども、超常的存在などと日夜激闘を繰り広げていた彼等に敵うはずなく、次々と蹴散らされていった。
この戦闘の模様は兵団の欧州戦線司令部に伝えられ、自軍の体たらくっぷりに憤慨する将校らが相次いだ。連邦軍の第二次攻勢に際し、通信妨害のため、増援要請をするために直接、本部へ出向いていたシャールも例外でなかった。
‐鉄人兵団欧州戦線・ベルギー第一本部
「ええい!!なんだあの様は!!たった10人相手に一個連隊がこの体たらくだと!!」
シャールは机をバンバン叩きながら怒鳴りまくる。何せスーパー戦隊はたった10人で連隊を圧倒しているのだからたまったものではない。しかもスーパー戦隊の銃は兵団兵士・将校のボディを薄紙のごとく貫けるため、たった一斉射で小隊が散り散りになってしまう有様であった。更に個人個人が必殺技を有している関係もあり、それらを使用されてはもうたまらない。
『ドラゴンサンダー!!』
『GTクラッシュ!!』
映像には2大戦隊のリーダーであるレッドがそれぞれの個人技で兵団連隊を討ち果たす様子が写しだされており、シャールはそれを炸裂する瞬間で映像を消す。ボタンを殴りつけるような、荒っぽい動作だ。
「くだらん!!」
「シャール閣下、少しは落ち着かれてはいかがですかな?」
「何だと!?貴様らは本部でぬくぬくとぬるま湯に浸かっているではないか!少しは前線での苦労というのを知ったら、どうなのだ?」
「ご冗談を……」
これは戦線の最前線で日夜戦う前線司令官と、後方から指示を飛ばすだけの司令部との温度差が大きいことの表れでもあった。戦線で兵士たちと苦楽を共にした司令官らはジオン軍の例を見ても明らかだが、兵たちの尊敬を集め、統率力も高い事が多い。しかし後方にいる者たちはどうしても反感を買う事が多い。
これは前線の様子を知らないのに、机上の空論で戦略を立ててモノを言い、それが否定され、崩壊すると前線兵士に責任転嫁する。それは負ける側の軍隊にはほぼ例外なく見られる現象であり、ドイツ軍を指揮していたアドルフ・ヒトラーもそうであったと言われる。
鉄人兵団にも今、この現象が起こっているのだ。
「本国からの補給物資はどうしたのだ!これではスイス領域はあと数週間もすれば敵に奪還されてしまうぞ!!」
「ククク……いいではありませんか。スイスなんぞ、所詮は元々小さい国だったのですよ?国の一つや2つ、いいではありませんか……」
「貴様!!」
「これは本国の将軍閣下のご意向なのですよ」
「何!!馬鹿な!?」
シャールはスイス領域を奪取時以来、その卓越した手腕で守り通してきた。だが、その彼も地球連邦軍がスーパーヒーロー達を前面に押し出して仕掛ける大規模ゲリラ攻撃の前にここ一、二ヶ月で急速に物資を消耗してしまい、本国と戦線司令部へ補給申請を出した。だが、本国は彼が守るスイスを捨石とした事がシャールを憐れむような態度をとる本国の秘書官から告げられたのである。なんとも哀れである。欧州戦線司令官はこの決定に激怒し、副官を本国に送り込んで猛抗議したが、本国の最高司令官(即ち国家元首)の決定は覆せなかった。本国は強固な牙城とした中国・ロシア戦線で起死回生を狙っており、`北京・モスクワ決戦`を声高らかに叫んでいる。彼はそのための捨石とされたのだ。
「昨日届いたあの爆弾がそうか……そういうことだったのか…フハハハ……ハハハ!!……」
シャールはこみ上げてくる虚しさからか、乾いた笑いをあげた。戦線司令部から昨日、届けられた地球側の鹵獲大量破壊兵器が意味するところは、要するに彼に`敵を道連れにしてスイスを消滅させよ`と暗示させるものだったのだ。
「これでお分かりになられましたか、閣下」
「ああ、十分にな……貴様らは馬鹿だよ、大馬鹿だよ。私を殺すとはな」
「智将と名高いあなたがやってくれれば国民の戦意高揚になりますよ」
「気楽なものだな」
「それが私達の役目ですから」
「将軍閣下に『クソッタレ』と伝えろ」
「はいはい」
シャールは秘書官をそう罵ったが、秘書官は至って気楽であった。これには理由があった。鉄人兵団は第三帝国時代のドイツよろしく、プロパガンダに長けていた。本国でレジスタンス運動が活発化していたもの、階級社会化したメカトピアではレジスタンス運動に自主的に参加するのは中間層である労働者階級が主であり、更に下級の階級の人々は、秘密警察や憲兵の拷問を恐れてレジスタンスに参加しない者も多かった。また、彼等は軍の兵士になる事で国から援助が入るのを魅力と感じている側面もあり、必ずしもメカトピアの全国民が現体制の打倒を望んではいない事の表れでもあった。これが国内が動揺しても、鉄人兵団がなお地球戦線を展開し続けられる理由であった。そして彼に`自決用`として与えられた鹵獲兵器の正体とは何であろうか……。
――オペレーション・ラグナロク。地球連邦軍の第二次反攻作戦の秘匿名である。今回の作戦名はドイツ系の将校が考えたのだが、いささか大仰にすぎるきらいがあり、レビル将軍らは苦笑を浮かべずにはいられず、思わず大げさではないかとそれぞれの副官に漏らしたという。だが、鉄人兵団という`巨人`を打ち倒すのだからあながち間違いではない。
既にその先峰となっているスーパー戦隊と仮面ライダー達は各地で戦線を撹乱し、開戦以来、鉄壁を誇ったスイスへの扉を少人数でこじ開けるという偉業を成し遂げた。だが、そんな彼等でもスイスにカラクリが仕込まれている事はこの時点では見抜けていなかった。
「おかしい……あれだけ頑強に抵抗していた奴らがこうも簡単に手放すはずはない」
仮面ライダーV3=風見志郎はスイス守備隊の行動がめっきりおとなしくなったのに疑問を持っていた。彼は日本からやって来た何人かの後輩とスーパー戦隊の戦士達を率いてスイスを強行偵察していたが、敵の抵抗は散発的であった。
「主力が別の戦線に回されたとか?」
「それはないぞ、洋。既に他地域との連絡路の殆どは連邦軍が包囲している。制空権もこちらの手の中にある…‥…しかし…」
V3はスカイライダーにそう言う。実際、スイスは湖はあるが、海はない地域であり、国家であった。陸の他地域の連絡路は機甲師団に、制空権も新鋭機を持ちいる精鋭部隊によって抑えられている以上は蟻の出る隙間すら無いはずだからだ。それを知っているV3はスカイライダーの言う可能性を否定したのだ。だが、スーパーヒーロー達も気づかぬ盲点があった。それは地下である。地下に通路を掘って補給線を確保すればいい。カモフラージュしながら。旧国境付近の湖などの地下にトンネルを掘り、それを連絡線として使っていた。地球連邦軍に地下を掘削可能な兵器は事実上、ゲッターロボだけであり、彼等はてんてこ舞いなのを考慮に入れた見事な策であった。
そしてスイスの旧首都のチューリッヒの地下にそれは運ばれていた。
「こいつが爆撃機から回収したっていう`大量破壊兵器`か……」
「ああ。鹵獲書類によればディメンション・イーター……核を超える新たな新兵器だそうだ。すぐ使える状態だったのはこの一発のみだが、あと一発は回収作業にもうじき入るそうだ。」
「いいのか?本国はこれで俺達を」
「言うな」
「へいへい。わかってるさ……俺達はどうせアレだ。最後にいっちょ派手にやってやるさ」
彼等もこの爆弾が意味するのを知っていた。
大量破壊兵器で以て最後に一花咲かせる事。ハワイでは未然に防がれたもの、ハワイでの敗北以降、決戦を目指すために少地域を捨石として持ちいる。既にニューギニア、シンガポールなどの地域ではこの手法が用いられ、峰連邦陸軍を一定時間引きつける事に成功していた。ハワイで初めて鹵獲に成功した大量破壊兵器に味をしめた鉄人兵団上層部は敵が大量破壊兵器を積む機体を発進させると最優先事項として、鹵獲を全力で行うようになった。無論、そうは問屋は卸さないのだが、今回に関しては兵団の思惑通りに事が運んだと言わざるを得ない。
「今頃、奴らは回収に躍起だろーな」
「ああ……まさか奴らも地下に爆撃機を隠したたぁ気づかんだろうよ」
「まったく愉快だぜ」
そう。地球連邦軍がサンダーボール作戦と銘打って回収に躍起となっているフォールド爆弾はその内の一発が鉄人兵団の手に渡っていた。しかも起爆可能状態で、だ。これは連邦軍にとっての暗雲となって前途に不安をもたらす重大要素となる…。
‐ラー・カイラム艦内 フリーディングルーム
「そうですか、あなたが黒江大尉の……」
「そういう事になるな……」
この日、なのはは箒と初めて面通しをしていた。互いに共通する師を持つが、中々こうして、正面から会話する機会は今回が初めてだ。
「これも時空を超えたおかげと、言うのだろうか……、変な話だが、私は君より『年下』になる。生年月日が2000年代の中頃くらいなんだ、私は」
「それじゃ箒さんはあたしより10歳くらいはゆうに下って事になっちゃいますね。生年月日を聞くと。あたしは1990年代の中頃から後半に入るくらいの生まれなんで」
「なんとも不思議な話だな……こうして本来の年齢差を無視した姿で話してるのだから」
「ドラえもん君のおかげってやつかなぁ。のび太くん達も本当なら、私の時代には大人になってるはずですしね」
「ややこしいタイムパラドックスだ……しかしいいのか、そんな事やって」
「政府自体が表立ってやってますからその辺は多分大丈夫ですよ。例えば……この人達なんて……」
「なぁにぃぃぃぃ!?これは、これは……」
なのはは箒に太陽戦隊サンバルカンや大戦隊ゴーグルファイブの写真を見せる。この世界ではこのようなヒーローが普通に存在し、本当に悪と戦っていた。政府がこれら過去にいたヒーローを呼び寄せているのだから、今更、この程度の事は気にされないのだとなのははいう。箒はサンバルカンやゴーグルファイブに、鳩が豆鉄砲食らったような顔をし、この世界に呆れと同時に、『夢がある』と言う。子供の頃に、姉がこういうヒーローものの特撮を見ていたことを追想する。
「懐かしいよ……。子供の頃、よく姉がこういうものを見てたからな」
「あたしだって似たようなもんですよ。年が離れたお兄ちゃんが見てたの覚えてますから」
「まぁ、考える事はみんな一緒ということか」
箒はいつになく饒舌であった。なのはの声に
かつての姉を思い出したのだろうか(なのはの声色は箒でさえ間違えそうになるほど束に似ている)、どことなく安心しているようにも見える。それを黒江はばったりと出くわしたアムロと共にそーっと見守っていた。
「楽しそうだな……箒ちゃんは」
「アイツの姉さんにすごく似てるみたいですよ、なのはの声は」
「不思議な話だな……黒江大尉、君のストライカーユニットの調整はいいのか?」
「ええ。自分のは整備終えてます。アイツのインフィニット・ストラトスは使ってみたいですが……あれ一機じゃなぁ」
「それは仕方がないな。今、政府が解析を進めているが……一年以上はかかるな」
「そうなったら試作機のテストパイロットに志願するつもりですよ。元々私は陸軍航空審査部にもいましたから」
「君は『魔のクロエ』だものな」
「いやあ、若気の至りですよ。本当なら23ですよ?」
「ハハ、そうだったね。しかし、君と僕は階級は同じなんだ、タメ口で構わないんだが」
「扶桑陸軍にいますから。クセなんですよ。むしろ、ブライト艦長とタメ口してるほうが驚きですよ」
「アイツとは一年戦争からの付き合いだからな……軍に残ったあの時のメンバーはブライトと俺くらいなもんだから自然と付き合いが多くなってね」
黒江は2200年1月現在は未来の栄養たっぷりな食事をモリモリ食べていたおかげで外見上の身長が身体検査の結果、160cmへ成長していた。本人にしてみればこれまでどこへ行っても子供に間違えられていたので、これでようやく雪辱を晴らせると意気込んでいる。だが、若返った時の外見年齢が若いのは如何ともし難く、顔に幼さがまだ残っている。その辺は智子や圭子に`からかいがいがある`とネタにされている。智子らは元々の大人びた姿を知っているだけに余計にそう思うのだろう。ちなみに黒江は現在はアムロに対し、敬語を使って接している。アムロがロンド・ベルの尉官では最先任であるからで、アムロは`普通に呼んでいい`と言っているが、黒江は扶桑陸軍の規律を陸軍航空士官学校で叩きこまれてきたためか、職業柄の癖として残っている。対するアムロはブライトと私生活でも苦楽を共にするようになったために、いつの間にかブライトにタメ口を聞くことが当たり前になった感がある。今では階級の差を超えた親友となったので、敬語を使っていた頃は遠い昔のこととして認識している。要は気質の違いである。
「君の戦友のあれはうまくいったかい」
「だめです。アイツ、意固地ですから。昔は機種にこだわるような奴じゃなかったんだがなぁ……」
「何せ、こちらでの『サムライ』と思われるからねぇ、その子は」
「アイツは巴戦を至上にしてる。だけどそれじゃもうだめなんだ!なのに……」
「旧・日本海軍の航空隊は零式の格闘能力がなまじっか世界最高だったからな……。開戦時の栄光を劣勢になっても忘れられなかった。それが多くの悲劇を生んだ。彼女も零式の格闘能力に取り憑かれてしまったんだろう……考えようによっては哀れだよ」
アムロは、扶桑皇国海軍航空隊のベテラン勢をそう評した。戦術が巴戦から編隊戦に変わる中、巴戦に固執するベテラン勢は急進的な若手からは『老害ども』と、はっきり侮蔑されている。実際、零式ストライカーユニットの後継機の烈風の開発遅延にはベテラン勢の声が大きいがために開発難易度が上がってしまったからだという噂がまことしやかに囁かれているし、実戦でジェット機の圧倒的スピードを見せつけられたウィッチからは、『ジェットを早く〜!』と、大いに嘆く声が多く出されている。そのためインフィニット・ストラトスを連邦が軍事利用も民間利用と同時に研究しているのはインフィニット・ストラトスのテクノロジーをストライカーユニットに応用できないかという考えがあるからだ。黒江は零式にに固執する坂本美緒をどうにかできないかと、電話で何度も坂本と話をしているが、他にも西沢義子や竹井醇子など、同じような考えを秘めていた者も協力してくれたので、どうにか海軍最新鋭の紫電改に機種転換させることを確約させたが……そのために電話代が物凄いことになってしまったと黒江はアムロに泣きつく。
「それは……うん。なんというかお疲れ様」
「電話代がぁ〜!タイム電話って、とびっきり高いのに……これじゃ釣り用品買えねぇ〜〜!!」
「ご愁傷様」
自身の趣味に注ぎ込める金の余裕が無くなったらしく、黒江は涙目だ。しかし所定の目的はなんとか達成したので、戦略的には勝利と言える。だが犠牲は大きかった(?)ようだ。そんな日常風景をよそに、事態はゆっくりと暗転していく。ロンド・ベルはチューリッヒにフォールド爆弾があることなど露知らずままにスイス方面への派遣指令を受けようとしていた。ロリアン軍港で待機中の出来事であった……。そしてV3らの調査結果が通達されたのはロンド・ベルが出港した後であった…まさに時、既に遅しであった。
ミノフスキー粒子の関係で通信状態は最悪、そのため、急ぎ、ジャッカー電撃隊の行動隊長のビックワンがロンド・ベルを追い、更にV3の命を受けた仮面ライダースーパー1もビックワンの護衛する形で同行した。ヒーロー達は間に合うのであろうか。
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