――さて。鉄人兵団はいよいよ以って追い詰められていた。アナザーガンダム達の破壊活動で補給線を絶たれ、歴代のヒーロー達によって部隊を殲滅されていく現状は鉄人兵団にはどうにも出来なかった。辛うじて鹵獲したゴースト無人戦闘機と新装備で攪乱戦法を行うのが今の彼らにとっての数少ない有効な反撃手段であった。
―― ベルギー 兵団欧州方面軍本部
「閣下、地球連邦軍がいよいよルクセンブルクへ侵攻して来ました。我が軍の残存戦力ではもはや正面から止められません」
「フッ……見る影もなく衰えたものよ。これが一時は周辺諸国を恐れさせた我が軍とはな」
兵団欧州方面軍は一時は連邦軍を避けつけない防衛力を誇ったが、連邦側に歴代のスーパーヒーロー達が参戦したことでそれが一変し、逆に狩られる側へ変わったのだ。
「東南アジアは既に陥落し、北米もきな臭い。古今東西、孤立した軍隊に待っているのは死だ。最期に死に花を咲かせるしか方法はない」
「ええ、派手に咲かせましょう。我々の最後の意地です」
欧州方面軍は他の戦線や本国からの補給を絶たれ、人員の補充さえ出来ない状況に追い込まれていた。部隊の損耗率は加速度的に進行している。それでも闘いを止めないのは彼らなりの最後の意地かもしれなかった。
「シャールのところの状況は」
「ハッ、仮面ライダーストロンガーの一味と交戦中であります。しかしそう長くは持たんでしょうな」
「うむ……こちらに向かっているライダーはいるか?」
「ハッ、仮面ライダーアマゾン、それとライダーマンが向かって来ています」
「あとは彼らによる破壊をどれだけ食い止められるか、だな。総員戦闘配置につけ。ダブルライダーを何としても撃退せよ!」
鉄人兵団の黄昏は近い。歴代のスーパーヒーローによって戦線をズタズタにされ、補給線を絶たれた今、それに呼応した連邦軍の反撃に対応する力はないのだ。地獄への道連れは多い方がいいが、ダブルライダーを撃退しなければそれ以前の問題だ。そう決意した彼らは突撃してきたアマゾンとライダーマンを迎え撃った。
「ギャウウウウ!」
野獣のごとく雄叫びを挙げながら腕のアームカッターと足のフットカッターを駆使して鉄人兵団を蹴散らす仮面ライダーアマゾンこと、山本大介。彼はその本名を知らず、『アマゾン』と名乗っているので、他の仲間達もそう呼んでいる。野獣の如きそのファイトスタイルは全ヒーロー中でも異彩を放っており、必殺技の大切断はそれらを活用した技だ。
「マシンガンアーム!」
ライダーマンはカセットアームで最も戦闘用に適していると思われるマシンガンアームをここで初披露した。このカセットアームは彼が右腕を改造した当初から在ったものだが、色々な問題点があったので、眠りにつくまでは使わなかった。(そのためにデルザー軍団に捕虜にされる屈辱も味わったが)デルザー軍団との戦いが終わった後に彼個人が特訓し、ライダーキックを放てるようになったために使う機会が無かったためだ。しかし常に改良は怠っておらず、今回の使用となったのだ。
「アマゾン、俺達の目的はあくまで露払いだ。あまり深追いするな」
「分かった!」
ダブルライダーの中でも異色の組み合わせのこの両者は連邦軍のベルギー侵攻に際しての露払いを担う。なるべく敵の数を減らしておくのが今回のライダーマンとアマゾンの役目である。
「ライダーマンめ!完全な改造人間でも無いくせによくやる!」
ライダーマンと撃ちあう兵団の分隊長はそう毒づく。ライダーマンのマシンガンアームは改良を重ねたためか、形状的は1973年の開発当初と大幅に異なっていた。開発当初は60年代から70年代のSF漫画的な形状で、実用性に難ありな実験兵装の域を出ない性能に過ぎなかった。そのため結城自身も使うのは控えていたのだ。その後の改良で実銃に近いフォルムになっており、今回はその改良された性能を遺憾なく発揮、兵団兵士を蜂の巣にしていく。ライダーマンが完全な改造人間では無い故にたどり着いたのがアタッチメントアームの改良であった。それを知る彼等はそう毒づいたのだ。
(仮面ライダーの殆どは改造人間のはず。なのに何故、完全な改造人間でない奴がライダーの称号を得たのだ?)
そう。ライダーマンは完全な改造人間ではないのに栄光の7人ライダーの一角に名を連ねている。彼がどうやって仮面ライダー4号の称号を得たのか?それはその理由を知るクライシス帝国怪魔妖族大隊長のマリバロンでさえ首を傾げている事項。仮面ライダー達や地球人の美徳は異次元世界や宇宙人の理解を超えていると言うことだろう。
「パワーアーム!」
ライダーマンはアタッチメントを接近戦用のパワーアームに切り替えて突撃する。(彼が使うアタッチメントは彼がまだデストロンの科学者であった1973年当時にはマシンガンアーム、ロープアーム・スウィングアーム、パワーアーム・オペレーションアーム、ドリルアームにネットアームが完成しており、試作段階のマシンガンアームを除き、実戦で使用された。しかし彼が仮面ライダーとなった時点でも部下たちが更に複数のアタッチメントのアイデアを構想していた。デストロンがV3によって壊滅し、次のGOD機関へ移行する空白期間に脱走した科学者らがそれらを国連へ持ち込んだのが秘密戦隊ゴレンジャー結成のきっかけの一つとなっているという)
パワーアームは改造人間にもある程度通用するパワーを持っているため、兵団には十分な破壊力を発揮。兵団兵を強力な2本の爪で挟み、そのまま破壊する。
「アマゾン、ここは俺が引き受けた。お前は基地に潜り込んで状況を探れ!」
アマゾンは指示に従い、兵士を蹴散らしつつも基地の入り口を探しに向かう。アマゾンを追う兵士達だが、陸戦の三次元機動でアマゾンに追いつけるものはないために容易く振り切られる。こうして仮面ライダーアマゾンは鉄人兵団の中心部に足を踏み入れた。
――ルクセンブルク
ここ、ルクセンブルクには歴代のスーパーヒーローの内、大戦隊ゴーグルファイブがいた。彼らはウィッチ世界の状況が一段落した段階で未来世界の戦いにも参戦し、戦線を一気に推し進めていた。
「よし、残るはアイツだ!ゴーグルシーザー、発進!」
ゴーグルファイブはこの地点で残ったザンダクロスタイプのロボットを討ち倒すため、母艦を呼び出す。彼らが未来世界でどこからゴーグルシーザーを発進させているかは明かしていないが、とにかくすぐに飛来した。いつ、どんな時も雷と共に飛来するので威圧感と勇壮さたっぷり。戦線の連邦軍兵士らからは歓声が上がるほどである。
「ゴーグルジェット、発進!」
ゴーグルシーザーの側面のコンテナからゴーグルジェットが発進する。(ゴーグルシーザーとは、大戦隊ゴーグルファイブが保有する巨大母艦である。3機の巨大メカを搭載し、戦闘能力も高い。建造は1982年。民間人がこれほどまでに高い戦闘力を持つ戦闘母艦を建造出来たのか?それには極秘裏に太陽戦隊やバトルフィーバー隊が資金供給や資材提供などの協力をゴーグルVの司令官の本郷秀樹博士に行なっていたとの事。)
「行くぞ!合体!」
「おう!」
「ゴーゴーチェンジ!!」
「チェンジ!!」
ゴーグルファイブの誇るスーパーロボット“ゴーグルロボ”は3人乗りである。これはこの時代のスーパー戦隊ロボに共通する設計で、まだ5人で乗り込み、それぞれが個別の役割を果たすまでに至っていない。もっともそれは異星人の超技術の割合が後年のロボに比べて多いことの表れでもある。後年のロボに5人で制御する場合が多くなった理由には、地球産テクノロジーの割合が増えたり、その時々の戦隊の事情によるものだ。
「ハンドミサイル、発射!」
合体したゴーグルロボはいきなり右拳をロケットパンチの要領で打ち出し、ザンダクロスタイプの工作兵を吹き飛ばす。しかも大威力のミサイルというおまけ付きだ。工作兵は大きく吹き飛ばされ、装甲にダメージを追う。しかも打ち出した右拳は即座に次弾装填の要領で元に戻っているからたまったものではない。
「おのれゴーグルファイブ!特注のレーザーだ、喰らえ!」
彼らには胸に工作用のレーザー砲が備え付けられている。その威力は1990年代当時の標準的な鉄筋コンクリート製のビルなら一撃で崩壊させられる威力で、今回の地球進攻のおりにはこれを兵器転用することで戦果をあげた。これが当たればMSにも中破の損害は負わせられるはずだが……。ゴーグルロボには通じなかった。
「ゴーグルロボ大竜巻!!」
ゴーグルレッドは機体を空中に浮かせ、高速回転させる。その勢いで竜巻を起こしてレーザーを弾く。そこからゴーグルレッドは必殺技を発動させる。操縦桿によるコマンドと音声入力で発動するので、レッドがコマンド入力と最初の音声入力を行う。
『地球剣・電子銀河斬り!』
『電子銀河斬り!」
『電子銀河斬り!』
レッド・ブルー・イエローの発声とともにゴーグルロボの取り出した剣が宇宙から集まった超エネルギーで青白く光る。そのエネルギーを纏った剣で敵を叩き斬るのが地球剣・電子銀河斬りである。これを防ぐのはほぼ不可能。瞬く間に敵を袈裟懸けに一刀両断し、この地域の兵団の駆逐を完了する。
『ゴーグルファイブへ。こちらビックワン。直ちにスイスへ侵入してライダー達の援護に入ってくれ。ついにデルザー軍団が動き出した』
『了解!!』
ゴーグルレッドはビッグワンからの使令を受け、直ちにゴーグルシーザーへマシーンを収容し、そのままメンバー全員でスイスへ向かった。スイスは今や正義と悪の対決の場となっていたのである。ゴーグルファイブの他に、超獣戦隊ライブマン、太陽戦隊サンバルカン、高速戦隊ターボレンジャー、科学戦隊ダイナマン、ジャッカー電撃隊、電撃戦隊チェンジマン、忍者戦隊カクレンジャー、そして新たに五星戦隊ダイレンジャーが加わり、スイスへ向かう途中で“連合軍”となり、デルザー軍団やクライシス帝国との戦いに向けて集結しつつある。それはライダー側も同様であり、日本から仮面ライダーZX=村雨良がスイスへ向かった。これで全仮面ライダーが有事のために日本を留守にした事になる。
――スイス郊外
『滝か。良もこっちに向かったって?」
『そうだ、本郷さん。村雨もバダンの目的がスイスという事を察して日本を後にした。これでちょっとしたヒーロー連合が出来上がるって訳だ。今回の作戦を叩き潰せば当分の間は奴らはおとなしくなるだろう』
『分かった。アカレンジャーにビッグワンにも伝えてくれ。俺は郊外のデルザー軍団を片づけてから一文字達に合流する』
彼が電話していた相手の『滝』とは、彼のかつての相棒の滝和也ではない。この時代における直系子孫(滝和也から数えて5代後の子孫)にあたる滝二郎だ。彼は図らずしも先祖の意志を継いで仮面ライダーの支援を行い、今や先祖同様のポジションにいた。
『OK。頼むぜ本郷さん♪』
滝二郎は先祖の滝和也に比べるとノリが軽いが、根本的には先祖と同じく、正義感溢れる青年だ。先祖とほぼ同じ職業に付いているなど先祖を思わせる面も多く、本郷や一文字から信頼を置かれている。霞のジョーと並んで、今の仮面ライダー達を支える重要人物である。本郷は電話を切ったその場で仮面ライダー一号(再改造で初期からは大きく姿を変えているので、正確には新一号というべきか)へ変身し、デルザー軍団と戦闘を開始。技の一号に相応しい無敵ぶりで戦闘員を蹴散らしていく。
「流石は伝説のダブルライダーの片割れ……よくやる」
「その声は……狼長官!貴様も生き返っていたのか」
一号はその声の主が誰であるか分かった。かつて超電子ダイナモを発動させたストロンガーをも大苦戦させた改造魔人“狼長官”で、彼が日本に赴く前に一度、デルザーと協力関係にあった暗黒大将軍という男との戦いで戦っていたからだ。
「そうだ。今回は生前の能力そのままで舞い戻ってきた。前回の再生怪人扱いとはひと味違うぞ」
彼はデルザー軍団壊滅直後にその暗黒大将軍によって不完全な再生を遂げ、逢えなく倒されている。その屈辱を晴らすかのごとく、生前の能力をそのまま保持しての再生である。能力的には歴代仮面ライダーと対等を誇るという事だ。
「ナニ……!すると他の奴らも!」
「そうだ。我々は他の奴らと違うのだよ、一号ライダー。大首領直属の軍団である我々は暗闇大使が魔方陣で再生した奴らと違い、生前の自我を保てるのだ」
狼長官はデルザー軍団が自我を持って再生し、しかも生前同様の能力を持っている事を意気揚々と自慢する。一号は改めて驚愕すると同時に闘志を燃やす。
「狼長官!お前たちデルザー軍団が何度蘇ろうとも、お前たちの野望は俺たち仮面ライダーが打ち砕く!」
啖呵を切る一号。たとえデルザー軍団が如何に生前そのままで甦っても、スカイライダーからBLACKRXを加えた11人ライダーが負けるはずはないし、以前のような何人も捕虜にされる轍は踏まないと考えているのだ。
「ふふふ。我輩達も以前のようには行かんぞ、一号ライダー。今はその時ではないが、お前たちと戦える日を楽しみにしているぞ」
狼長官は人狼そのままの姿とは裏腹の軍服姿という生前同様の姿で一号ライダーへ不敵な笑みを返し、部下とともに姿を消す。それはデルザー軍団の完全復活とライダーへの宣戦布告を暗に一号へ示しているのかもしれない。
――V3はまさかの苦戦を強いられていた。彼の電子頭脳が磁力に弱いところを突いた磁石団長のマグネットパワーの前に電子頭脳が悲鳴を上げ、のたうち回るV3。フェイトは自分の無力を改めて痛感した。
(……プラズマスマッシャー撃ってもあの時の二の舞になるだけ…サンダーレイジが通じるかどうか……でもアレを使う魔力ももう……!私は……私は何もできない……!くっ…くぅううう!)
フェイトは地面に拳を叩きつけて悔しさを露わにする。デバイスもなく、魔法を使ってもデルザー軍団の構成員の前には電気が通じず、強固な装甲の前にはダメージを与えられない。その事実にまたも激しく打ちのめされる。他のライダーはマシーン大元帥やヨロイ騎士の相手で精一杯で、V3の救援どころではない。万事休すか。
(こうなればアレを使うしか無い!先輩、アレを使います!)
(風見、アレはお前の全エネルギーを放出するんだ。三時間は変身不能になるぞ!)
(この状況を打開するには仕方がありません。行きます)
V3は状況の打開のため、ある技を使う決心をし、脳波通信で二号に伝える。その技とは逆ダブルタイフーン。V3の姿の維持に必要な全エネルギーを放出してしまう技であり、三時間に及ぶ変身不能時間が生じるというリスクが生じる諸刃の剣だ。しかしこの状況の打開のためにはやむを得ない。
「フェイトちゃん、この場を離れろ!」
「え、え!?でも!」
「早くするんだ!」
「は、はい!」
V3に言われるままにフェイトは空中へ逃れる。V3のこの行為に磁石団長は諦めたかと勝ち誇るが、V3の起死回生の一打に慄いた。
『逆ダブルタイフーゥゥン!!』
V3のベルトのダブルタイフーンが猛烈な勢いで逆回転を始め、烈風を起こす。それは巨大な竜巻となって磁石団長を包み込み、吹き飛ばす。小型の真空竜巻とも言うべきそれは中心部のV3を風見志郎へ引き戻すと同時に、周囲を大破壊する。空中にいるフェイトもその余波で吹き飛ばされそうになるほどの風速だ。
(っぅ、ぅ!飛行魔法を使ってるのに安定が保てないなんて……なんて技なの…!)
なのはやフェイトらの使う飛行魔法は基本的に強力な推進力を持つが、それでも態勢を崩して吹き飛ばされそうになるという事実にV3が起死回生のために発動させた大技の凄まじさを理解した。同時にXと二号も最大技を決め、マシーン大元帥とヨロイ騎士を吹き飛ばして逆ダブルタイフーンの奔流に飲み込ませる。やがて大爆発が起こり、3人の魔人の姿が消える。
「やった……!?」
「いや、奴らはあの程度で死ぬような輩じゃない。デルザーの連中は組織の一般的な大幹部級の力を持ってるからな」
戦闘を終え、変身が解除された風見志郎に肩をかしながらXが言う。彼等が一番、デルザー軍団の強大さをよく知っているからだ。事実、真空地獄車やライダー卍キックを当てても手応えが殆どなかったらしい。案の定、その三人の魔人の声が天から響く。
『フハハハ!我々は不死身だ!』
『この程度で我らに致命傷を与えるなど片腹痛いわ!』
『また会える日を楽しみにしているぞ、三人ライダー、それと時空管理局の小娘。お前のデバイスは我らが預かった事を伝えておこう』
「!」
――バルディッシュが完全に敵の手に渡ってしまった。これでフェイトは魔導師としての戦闘能力を削がれてしまったということになる。魔法の発動そのものにはデバイスは必ずしも必要としないが、フェイトはバルディッシュを用いての近接戦闘を得意としていたために持ち味の半分近くをこれで封じられた事になる。これはフェイトにとって重大事であった。しかし今更、泣き言を言ったところで状況が変わるわけではない。前向きに捉えることにしたらしく、意外に冷静だった。
「……すまん。君の相棒だが……取り返せなくて」
「大丈夫です。泣き言を言っても状況が変わるわけじゃないですから。たとえバルディッシュが無くても、私は戦って見せます。あなた達のように」
フェイトはバルディッシュを取り返せなかった事を詫びる二号ライダーに前向きに答えた。それはデバイスに頼りがちになっていた自らを戒める意味合いも込めての言葉だった。仮面ライダー達の戦いを目の当たりにした事で何かを決意したのだろう。この後、フェイトは自らを鍛え直すため、仮面ライダー達と共に行動する事を選択し、終戦まで鉄人兵団の他にバダン帝国、そしてクライシス帝国との戦いに身を投じていくのである。
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