――孤軍奮闘するなのはと箒だが、やはり大軍団を誇る鉄人兵団の前にジリ貧に陥っていった。

「数が多すぎる……!ドラえもん君達が破れかぶれになったのが分かるなぁ」

「関心している場合か!このままではジリ貧だぞ!お前のカートリッジの残りは?」

「あと三セットだけです。カートリッジなくても撃てますけど、威力は落ちます」

「そうか……私は機体は大丈夫だが、体力が持たん。こんなことならもっと鍛えておけば……!」

箒は自身の体力が長期戦に耐えられない事に歯噛みする。それは覆しようのない事実だからだ。なのはの援護を受けつつ退避せざるを得ない。






――彼女たちのもとへ急行する一団があった。仮面ライダー一号を筆頭とするヒーロー軍団であった。途中でいくつかのスーパー戦隊が合流し、隊列を成していた。仮面ライダー一号を先頭に、ドラえもんたちといるストロンガーを除くスカイライダーまでの歴代ライダー、ジャッカー電撃隊、太陽戦隊サンバルカン、電撃戦隊チェンジマン、超獣戦隊ライブマン、高速戦隊ターボレンジャーの5大スーパー戦隊である。これは欧州に滞在していたヒーローたちの内、手隙だった者達を動員した結果であった。

「あの、一号さん。いいんですか、こんなに呼んじゃって」

「手が空いてたヒーローたちを呼び寄せてあるから大丈夫さ。それにここにいる者達が全員ではないよ」


「これで全員じゃないと?」

「そうさ。俺たち仮面ライダーだけで11人、スーパー戦隊に至っては少なくとも20近くは確認されているからね。呼べない者もいるがね」

スーパー戦隊のいくつかは現役時代から呼び寄せるしか方法がない。例えば、1986年頃に地球を守っていた『超新星フラッシュマン』は『反フラッシュ現象』と呼ばれるショック現象が彼らの身に起こったので、本来は地球人類でありながら。地球を去っていった。他には1992年の恐竜戦隊ジュウレンジャーはいずこなく去っていったなどの事例がある。1991年の鳥人戦隊ジェットマンはブラックコンドル=結城凱が1994年頃に死去しており、呼び寄せるには1991年から93年までの間を狙わないと駄目である。スーパー戦隊を全員動員するのは、アカレンジャーも諦めている節がある。一号はそうフェイトに言う。



「呼べないとは?」

「現役を終えたスーパー戦隊の多くは元の市井の生活に戻っていくか、どこかへ去っていく。だから、彼らがヒーローとして現役の時代から連れてきた者たちが多い。高校生や一般人が作った戦隊も数多くあるからね」

一号もこの時は知らなかったが、後々であるが、スーパー戦隊以外にも様々なヒーローが地球を守護していた事が判明する。そして日本警察が極秘裏に宇宙刑事や自分達の技術を使っていた事、そしてその計画で生み出されたヒーローのボディが紆余曲折を経て、連邦政府に回収されていた事を。





――それはそれとして、戦場につくと、仮面ライダー一号と二号が指揮を取る形で戦闘を開始した。

「よし!一文字、行くぞ!」

『おう!』

戦場に先陣を切って現れたのは仮面ライダー一号と二号。兵士を蹴散らし、なのは達のもとに向かう。

「ヘッドクラッシャ―!」

兵団の兵士をダブルライダーの頭突きで撃破し、その勢いで敵を蹴散らしてなのは達のもとへたどり着く。


「一号さんに二号さん!助けに来てくれたんですか!?」

「助けを呼ぶ声があれば、俺達はどこでも駆けつけるさ。それに今回は頼もしい援軍もいる」

「援軍?」

なのはと箒はキョトンとなるが、すぐにわかった。建物の屋根の上に歴代スーパー戦隊がずらりと勢揃いしていたからだ。姿から言って、1970年代風の者もいれば1980年代以降の雰囲気を纏う者もいる。それぞれ名乗りをあげる。そもそもこの『名乗りをあげる』文化自体、大昔の名残で、近代には廃れたもの。箒からみても『大真面目に何をしているのだ?』と言いたくなるほどだ。一方、既に歴代仮面ライダーと出会っているなのはは大喜びで、『来たああああ!これで勝てる!』とガッツポーズをするほどだ。

『スペードエース!』

『ダイヤジャック!』

『ハートクィーン!』

『クローバーキング!』

『我ら、ジャッカー電撃隊!!』

――それぞれ決めポーズを取りながら堂々と第一陣を切ったのは、この中にいるスーパー戦隊では最古参の『ジャッカー電撃隊』。彼らは秘密戦隊ゴレンジャーが日本を去った数年後に結成された。彼らは仮面ライダーのように改造人間で、正義の為に改造人間となった。記録上ではゴレンジャーが日本を去った後に犯罪捜査「クライム」と戦ったとされている。彼らの後の戦隊は強化スーツ技術が上がったためと、倫理上の問題でサイボーグ計画が破棄されたため、後にも先にも彼らが唯一無二のサイボーグ戦隊である。(ただし、初期メンバーの4人は改造時に国連の改造技術が組織のそれより未成熟であったため、自力変身はできない仕様となっている。因みにビックワンは自力変身が可能)


『バルイーグル!』

『バルシャーク!』

『バルパンサー!』

『輝け!!』

『太陽戦隊サンバルカン!!』

――お次は太陽戦隊サンバルカン。ゴレンジャーから数えて5番目のスーパー戦隊。彼らは電子戦隊デンジマンがベーダー一族を壊滅させて市井の生活へ戻っていった後を受けて、国連が結成した戦隊である。電子戦隊デンジマンが活動期間中に国連に提供したデンジ星の技術をバトルフィーバー隊で確立されていた既存の技術と組み合わせて装備が造られた戦隊で、電子戦隊デンジマンの影響が多分に見られる。三人で敵を退けたためか、歴代スーパー戦隊の中でも評価は高い。バルイーグルが途中で代替わりしている事は周知の事実。この場にいるのも当然ながら、二代目バルイーグルである飛羽高之である。彼は後発の戦隊の面々を抑えて『スーパー戦隊最高の剣の使い手』の称号を誇り、後輩のレッド達などに剣の扱い方の講座を開いているとの事。





『チェンジドラゴン!!』

『チェンジグリフォン!!』

『チェンジペガサス!!』

『チェンジマーメイド!!』

『チェンジフェニックス!!』

『電撃戦隊チェンジマン!!』

――電撃戦隊チェンジマンは大戦隊ゴーグルファイブから超電子バイオマンまで続いた民間人による戦隊の流れから逆行し、サンバルカン以来の軍人による戦隊として結成された。この頃には国連も学園都市による横槍を一笑に付す事ができる影響力は失いつつあったものの、『大星団ゴズマに抗う』のを大義名分にして結成に成功したという経緯がある。そして思惑通りに彼らは大星団ゴズマを退けたものの、その後の国連の影響力の縮小に伴い、彼らに続く『国際組織による戦隊』は鳥人戦隊ジェットマンまで待たねばならなかったがジェットマンはメンバーの大半が民間人となってしまったため、『全員が正規軍人』という条件に当てはまる戦隊は彼らが活躍した時代から10年の歳月が流れた1995年の『超力戦隊オーレンジャー』との事。チェンジマンは地球の持つ超エネルギー『アースフォース』と伝説の5つの聖獣の力を持っており、落雷や突風などを人為的に引き起こせる技を持っているため、対集団戦では他戦隊よりも高い攻撃力を持つ。(仮面ライダー一号が彼らを選抜したのはそのためもある)

『レッドファルコン!』

『ブラックバイソン!』

『グリーンサイ!』

『イエローライオン!」

『ブルードルフィン!』

『超獣戦隊ライブマン!!』

――超獣戦隊ライブマンは科学者の卵だった大学生が結成した戦隊。悪魔に魂を売った学友にそれぞれ親友を殺されたり、学び舎を破壊されたことを経て結成された。当初は三人だったが、途中から五人編成となった獣をモチーフにしたスーツを身に纏うことから、基本的にコードネームはその獣の名だが、グリーンサイのみは1988年当時はライノスという単語が一般的では無かったため、和名の「サイ」を用いている。そのため、かっこ良く決めてもどこか一人だけ浮いてる感は否めない。他のメンバーもその辺りは気を使ってるらしく、呼びかけるときは「グリーン」としているとの事。






『高速戦隊ターボレンジャー!!』

――高速戦隊ターボレンジャーは妖精とその存在を知る博士が高校生を巻き込む形で結成された。何気に巨大ロボ戦力は歴代最強で、要塞ロボを保有している。要塞ロボの戦績が無敗で、真に最強無敵と言う点はアカレンジャーも高く評価している。(彼らが呼ばれた時間軸では既に暴魔百族が全滅しているため、要塞であるターボビルダーも持ち込んだとの事)個人名乗りがないので、名のとおりに高速である。

『よし!みんな、行くぞ!』

『おうっ!』




――一号ライダーの号令とともにヒーロー達は一斉に行動を開始する。歴代仮面ライダー達を筆頭に、各戦士達は戦闘を開始。その圧倒的な力で鉄人兵団を倒していく。先陣を切って戦うのは、剣技に優れる4人。バルイーグル、チェンジドラゴン、レッドファルコン、レッドターボである。彼らの剣技はなのはは愚か、箒の目から見ても『超一流』であるとわかるほどの冴えであった。




「バルカンスティック!」

バルイーグルのバルカンスティックが日本刀へ変化し、彼お得意の剣戟が披露される。彼の剣術の腕は司令官達を除けば最高ランクに位置し、鮮やかな剣捌きを見せる。

「新・飛羽返し!」

――飛羽返し。それは彼、二代目バルイーグル=飛羽高之が得意とする技である。飛羽返しそのものは一部ウィッチに伝授されたが、彼が用いるのは強化版の新飛羽返し。威力が強化されており、鉄人兵団に最適な攻撃特性を発揮する。電気で思考回路を破壊された兵士はガラクタとなって崩れ落ちる。




「チェンジソード!」

チェンジドラゴンの持つ銃は分離し、剣と盾になる。彼はかつて、大星団ゴズマの副官ブーバと壮絶な一騎打ちを繰り広げたという経歴を持ち、何気に達人級である。チェンジソードで敵を切り裂きつつ、空中に飛び上がり、アースフォースを発動させる。

『ドラゴンサンダー!!』

空に地球の聖獣である龍の姿が浮かびあがると同時に、落雷が発生する。落雷による破壊エネルギーで兵団兵士を蹴散らしていく。


「ファルコンセイバー!」

レッドファルコンも個人武器であるファルコンセイバー(鍔がタカを思わせる形状の剣)を振るう。彼らスーパー戦隊の持つ『剣』は古来からの剣の通念からは外れていると言える。それは何故か?それは剣の発達史を説明する必要があるだろう

――剣は古来は狩猟の道具、人類が文明を持った後は戦争の道具として使われていた。西洋では主に丈夫さを主眼に発達し、東洋、とりわけ日本では切れ味の良さに特化していった。共通している点はメインウェポンである槍のサブウェポンとして使われたところか。時代を経て、宇宙からの侵略者から毎年恒例で攻撃された時代、国連はデンジ星から伝わったオーバーテクノロジーを用い、双方の性質を併せ持つ剣が制作された。その最初の事例が二代目バルイーグルに支給されたバルカンスティックに付加された機能としてであった。それが民間に流れ、その後のスーパー戦隊の礎となった。それ故に、彼らの『剣』は日本刀の切れ味と西洋剣の丈夫さを兼ね備えているのである。

「トウ!」

レッドファルコンもバルイーグルやチェンジドラゴンには一歩譲るものの、剣術には定評がある。ファルコンセイバーを縦横無尽に振るい、敵を討つ。


――箒はこうした歴代スーパー戦隊レッド達の活躍に切歯扼腕せずにはいられなかった。レッドターボが敵を倒しながら彼女の護衛についたのだが、これまたGTソードで敵を寄せ付けない強さを見せるため、箒は剣を扱う者として、彼らの持つ一騎当千の強さに羨望しつつも、自らの情けなさを嘆いた。顔にはっきりと浮き出るほどの悔しさのあまりか、自然と涙も流れていた。

(くそぉ……っ!!何という体たらくだ私は!!彼らに守られてばかりではないか!この赤椿をあの人にねだったのはわがままだったのか篠ノ之箒!)





――彼女が赤椿を束にねだったのは何のためであったか?それは『一夏の背中を守りたい』という幼き頃からの願望を叶えたいがためだった。専用機を持ち、背中を守るという、言わばわがままである。疎遠であった姉に図々しく頼み込んでまで得た赤椿だが、こうなると『宝の持ち腐れ』に等しい。最新最高のISを纏っていながらその真価を自分は発揮させられていない。なのはがフェイトから予備のカートリッジを受け取って、援護攻撃を行っている事も相なって、ますます惨めさを感じるのだろう。箒はこの時の経験から、後にバルイーグル=飛羽高之に教えを乞う事になる。




――スーパー戦隊の怒涛の攻勢は続く。


『グリフォンマグマギャラクティ!!』

チェンジグリフォンがアースフォースを用いて地割れを盛大に発生させ、マグマを噴出させて鉄人兵団を攻撃する。マグマの高熱に耐え切れないのか、兵士達は阿鼻叫喚の悲鳴を上げて倒れていく。地割れに呑み込まれるものも多数であった。

『ペガサスイナズマスパーク!!』

チェンジペガサスが追い打ちで雷光を発生させる。ここまで来ると聖獣パワーは関係無いような気がするが、超常現象を次々巻き起こす彼らに、なのはとフェイトも思わず目を見張る。

「ふぇぇ〜〜あれがあの人――スーパー戦隊――の力なの……?」

「仮面ライダーとはまた別の意味で凄いね………私達も負けていられないよなのは」

「うんっ!」

なのはは合流したフェイトからカートリッジを受け取り、援護攻撃を行う。フェイトはバルディッシュを持たない状態なのだが、手渡されていた電磁ナイフを片手に、魔法を発動する。ただし大規模魔法の負担は大きくなるのは難点であった。この時の体験がもとで、青年期以降に剣術(示現流や飛天御剣流)への傾倒が顕著となる。やがてそれは『天羽々斬』として結実し、彼女を『武士』へと変化させていくのだ。


「はぁっ!」

フェイトはバルディッシュが手元にない状態で、尚且つ小学生相当の身体でありながらも電磁ナイフの刀身を伸ばして『電磁ソード』として運用し、持ち前の性質と併せて攻撃する。だが、やはり小学生相当の体格なので兵団との体格差は否めない。そこで一号ライダーはレッドファルコンにフォローを指令した。

「トウ!」

――ファルコンセイバー一閃、フェイトの後ろを取ろうとした兵士を両断する。

「俺がフォローする。君は前だけを見るんだ!」

「は、はいっ」


レッドファルコン=天宮勇介の声に促され、フェイトはスピードを上げる。自身が見るべき『前』へ。フェイトはプラズマランサーを生成、撃ちこむ。こうした歴代の勇士らのフォローもあるが、彼らと共に『戦えている』というのは箒とは対照的であった。




――歴代のヒーロー達の活躍は地球連邦を歓喜させ、同時に兵団を恐怖に陥れた。少数に一騎当千の強さを発揮させられ、軍団がゴミクズのように消えるというのは士気にも係る重大事で、本部には次々と凶報が舞い込んでくる。

『イタリア方面軍、秘密戦隊ゴレンジャーによって壊滅!』

『スペイン方面、大戦隊ゴーグルファイブによって壊滅!』

『スウェーデン方面、光戦隊マスクマンによって…』





欧州に集結した歴代戦隊によって均衡状態を崩され、一気に残存勢力が失われた事に恐慌状態となる鉄人兵団。ベルギーの本部は対応に追われる。

『シャールのスイス方面はどうか」

『まだ持ちこたえています』

『アジア周辺の残存軍はロシアに迎うように通達せよ。壊滅した欧州方面の残存勢力はすべてスイスに向かうように下令!最後の決戦である!押し潰せ!』


鉄人兵団欧州方面軍はスイス方面を最後の決戦の地と決め、独断で戦力をかき集めていく。本国の『将軍』の人望はシャールに玉砕を指示した時点で失せた事が伺える。


『どのうちこの戦は負けが決まっている。戦後に生き残れば私はレジスタンスが打ち立てるであろう政権に『戦犯』として裁かれる……『ミシチェンコ』のように自決するのは柄ではない。戦って散るのがいい……』

欧州方面軍司令は『華々しく戦って散る』事を腹に決めていた。急激に兵団欧州方面軍の勢力が衰えていく中で導き出した答え。前線指揮で散る事。それが滅びいく軍隊の高級将校が求めるせめてもの『名誉』かもしれなかった。








――西暦2200年。戦争は急激に終局を迎えようとしていた。欧州で大暴れする歴代スーパーヒーロー達とダブルマジンガー。奮戦するドラえもん達と合流せんとするドラえもんズ。後にメカトピア戦争と呼ばれる戦いの最後の『一幕』の狼煙が上がろうとしていた。



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