――メカトピア戦争が終戦が目に見えて近くなっていたこの時、グレートマジンガーの後継機として開発されていたのがゴッドマジンガーである。Zの基本フレームこそ流用したものの、素材を超合金Zから、そこから反陽子エネルギーを浴びせることで生まれた新合金になった。
――日本 地下秘密工場
「反陽子エネルギーの制御にさえ成功すれば完成は間近いのだが……」
弓弦之助博士はゴッドマジンガーを完成させることを半ば悲願としていた。兜剣造から聞かされた『デビルマジンガー』の脅威に対抗しうるマジンガーとして開発し、万が一、カイザーが今後に政治的事情で封印されてしまう時に備えて保有する事だ。
「博士、プリペンダーが欧州の某地で撮影した写真ですが……」
「こ、これは!やはり完成されていたか……悪魔め!」
その写真に写っていたのは紛れも無く悪魔と呼ぶに相応しい魔神であった。禍々しい生物的外観で、おおよそメカと呼ぶのは相応しくないが、頭部や胸の意匠からマジンガーであることが辛うじて判別できる。写真には、陸軍主力のヌーベルジムVやジェガン初期型などのモビルスーツをその強靭な爪で引き裂くバイオレンスな光景が克明に写しだされている。
「チタン合金セラミック複合材やガンダリウムを紙のように引き裂ける……奴らめ少なくとも超合金Z、あるいはニューZの製造技術を得たな……しかしどうやって……」
「未だボルテスやコンバトラーVの修理は50%しか到達しておらず、ダンクーガやダンガイオーはてんてこ舞い。ゴッドが催促されるのはそのためですか?」
「そうだ。そのためににも、このゴッドは必要なのだ」
弓博士はゴッドマジンガーの必要性を説く。デビルマジンガーに対抗するにはグレートマジンガーでは全ての性能で不足だという事を示唆した。カイザーは全てが未知数。だが、カイザー級のポテンシャルが無ければデビルマジンガーは倒せない。それを政治家の思惑に左右されない『安定性があるマシーン』で達成しようという思惑が見て取れた。建造途中のエンジン取り付け前のフレーム状態のそれは静かに格納庫で佇んでいた……。
――ドラえもん達は激闘を続けていた。銃弾をもう500発は消費したのだろうか。床には空になった弾倉や薬莢が散らばっている。ストロンガーもエレクトロファイヤーを撃ちまくっているが、それでも減らない敵に皆が呆れていた。
「くそぉ!あいつら何体いるんだよ、ゴキブリかよ、いい加減にしやがれ!」
持ち合わせのブローニングM1918自動小銃(正確に言えば、メーカー名は異なるが、だいたい同じモノは作られている)を乱射しながら叫ぶ。しかし撃ちまくったせいか、銃身が焼け付いて発砲不能に陥る。
「チィ、銃身が焼け付いた!ドラえもん、代わりのやつを!」
「それじゃこれで!『スプリングフィールドM14自動小銃〜!』
「ん?それガーランドに似てね?」
「後継ですよ、後継。50年代に制式採用されるアサルトライフルという機種です。フルオートで撃てるようになった改良型で、BARとは弾の規格が微妙に違うんです」
「7.62x51mm弾か……確かに微妙に違うな」
「これなら連邦のアサルトライフルとも互換性あるんで、いくらでも撃てますよ」
「OK!」
20世紀後半以降に軍隊で使用されている7.62x51mmNATO弾は地球連邦時代を迎えても生産が続行された。これは統合戦争などの数多の戦争で制圧力を重視する傾向が強まった事で退役が見送られたためだ。そのため連邦軍制式アサルトライフルは旧米軍製のそれの流れを汲むものが基本的に採用されている。シャーリーはドラえもんからM14を受け取り、弾を装填して撃ちまくる。
「ね〜ドラえもん〜あたしにはないの〜?」
「H&KのG3でも使って。カールスラント製だけど」
「うじゅ、ロマーニャ……もとい、イタリア製ないの〜?」
「ベレッタBM59とかがあるけど、あいにく品切れ中。イタ製の銃はのび太くんの好みじゃ無くてね、拳銃はあるんだけど」
「え〜〜、何それ〜!」
ドラえもんはルッキーニにG3アサルトライフルを渡す。ベレッタ社製のアサルトライフルはどうやらのび太が好みでは無いとルッキーニに示唆し、そのため四次元ポケットに入れていない事を告げる。ルッキーニはのび太が自国製兵器をいまいち信頼していない事にブーイングする。
「ドラえもん、ミコトの様子は?」
「相当疲労してます。当分は電撃を撃てないでしょう。疲労回復を早める道具は飲ませました」
「まー、あれだけ電気撃ってりゃスタミナ切れるわ。ルッキーニ、左は任せた!」
「OK!」
現在、ドラえもん達は総じて交代で敵にあたっていた。スタミナがあるストロンガーを主体に、代わりばんこでアサルトライフルなどを乱射して倒す方法を取っていた。美琴はそんなウィッチ達の戦いに、能力に頼った戦い方をする自分を自嘲する。
(ざまぁないわね……あたしはスタミナ切れで、あの人達は力を普通の武器の補助にして、スタミナの消耗を抑えてる……こんなんじゃあいつの助けになんて……)
美琴はこの戦いを生き残った然るべき後に上条当麻を『運命』から救うための行動を起こすと、心に決めていたが、今からこの様である。不安が大きくなり、自らのスタミナ不足を嘆くと同時に、ストロンガーが垣間見せる超電子エネルギーへの羨望をのぞかせる。超電子エネルギーならば自分の力が全く及ばない一方通行のベクトル操作も打ち破れる(超電子エネルギーは電気という認識を超えたエネルギーであり、その力はかの一方通行のベクトル操作であっても干渉しきれない領域にある)だろうと。つまりは美琴の時代の学園都市のテクノロジーは仮面ライダーを作れた歴代組織には流石に及ばないのだ。美琴は自身の超能力が人為的に覚醒させた『作り物』である事を自覚する。しかし歴代仮面ライダー達は作られた能力の限界を越えていく。どこに差があるのか。
『超電エレクトロファイヤー!!』
その間にもストロンガーは超電子エネルギーを瞬間的に開放し、強化されたエレクトロファイヤーを放つ。周囲にオレンジ色の電光が散り、集積回路を持つ兵団の命を断っていく。ストロンガーは体内に元からあるダイナモでも有に100万ボルトを超える発電量である。これは回路を新式に変えられた影響である。超電子ダイナモも改良が加えられたが故、現役当時よりも基礎能力が上がったのだ。
(ストロンガー、俺だ)
(本郷さんかい。そっちはどうだい)
(あと20分は持ちこたえてくれ。そうすればみんなで殴りこむ)
(OK!)
「おい、みんな聞け!今、脳波通信でライダー一号からあと20分は持ちこたえてくれと伝えられた。あと少しの我慢だ!ここが正念場だ、気合入れろ!」
「おっしゃあ!20分はもちゃいいんだな!?」
「こうなりゃ突撃あるのみ!」
と、ウィッチ達は意気軒昂になる。やはり彼女たちも人間、援軍の目処がつくことを望んでいたのだろう。援軍の望み薄な戦いを行ってきたドラえもんとのび太、ストロンガーは互いに顔を見合わせて『やれやれ』と溜息を付いた。最も自分たちも嬉しかったりするので、お互い様だと笑いあった。
――外では、場をチューリッヒ旧市街から新市街へ移しつつ、歴代ヒーローたちの死闘が続いていたが、彼らのもとにも援軍が到着した。それは仮面ライダースーパー1からBLACKRXまでの残りの仮面ライダー、五星戦隊ダイレンジャー、忍者戦隊カクレンジャーである。ある意味、彼らの参戦は贅沢とも言えた。複数のヒーローを一箇所に集めること自体が極めて異例な事なのだ。
「ぬううううう〜!貴様ら仮にも正義の味方だろう!卑怯だ〜〜!」
「やいやい、疲弊したところを襲ったテメーらの方がよっぽど狡賢いだろ!成敗!」
ニンジャレッドの啖呵が切られ、カクレンジャー達は戦線に参加する。背中に刀を背負う、ステレオタイプ的な忍者の姿かつ、動きがどことなく外国映画で見るような感じなので、彼らより後年に現れたとも伝承が残る、もう一つの忍者モチーフの戦隊がカクレンジャーを見て、どう思うのだろうか。それは分からない。
――もうこうなると鉄人兵団は単なる『カカシ』同然。さながらヒーロー達の見せ場を作る『斬られ役』の如く、蹴散らされていった。
「ライダーァァ卍キィィィィック!!」
二号ライダー最大最強の大技が炸裂し、彼の倍する体躯の兵団兵らを複数貫いていく。回転しながらライダーキックをかますこの技、デルザー軍団でも無い限り、薄紙のごとく貫かれるのを待つしかない。元の世界の特撮番組で同名の技を見た覚えがあるなのはと箒は実際に仮面ライダー二号が放つ様を見て、思わず見とれてしまう。
「凄い、あれがモノホンの……実際に見るとマンガじみてるなぁ」
「もうこの世界、なんでもありだな……」
その間にも、次々に分厚い装甲を薄紙のごとく貫くライダーキックの数々が炸裂していく。箒はスーパー1から体力回復用の栄養食を、レッドファルコンからは栄養ドリンクを受け取って、ISを纏ったままでそれらを口に入れる。なんともビジネスマンやサラリーマンがやりそうな強引な手法だと考えつつも、腹を満たす。
「X!必殺キィィィィック!」
XライダーのXキックがマントを纏った参謀級の一体を貫けば、仮面ライダーアマゾンの『アマゾンキック』が炸裂する。ヒーロー達ももううじゃうじゃ湧いて出る鉄人兵団に嫌気が差しているらしく、最大レベルの必殺技を惜しげもなく披露していく。
『このままでは埒が明かない!みんな武器の発射体勢に入ってくれ!一気に蹴散らす!』
『了解!バイモーションバスターだ!!』
『Vターボバズーカ!』
『パワーバズーカ!』
手始めに、第一射で重火器を持つ三大戦隊(ライブマン、ターボレンジャー、チェンジマン)がそれぞれの必殺バズーカを呼び出す。チェンジマンは手持ちの火器を合体させて、一つの大口径砲を形作り、ライブマンは空中からISのごとく召喚し、ターボレンジャーはマシンのエンジンをバズーカのエネルギー源として接続し、エネルギーをチャージする。
『君達は退避するんだ!巻き込まれたら命の保証は出来ないぞ!』
『は、はいっ!』
なのは、フェイトは一号ライダーの警告に従って直ちに安全圏へ退避し、箒のもとに戻る。それを確認したチェンジマーメイドがパワーバズーカにアースフォースを充填した黄金色の弾丸を装填し、狙いを定めていく。他の戦隊もバズーカのエネルギーを臨界にまで高めていく。
『マーク!』
チェンジマーメイドが目標をロックオンしたことを報告すると、チェンジドラゴンが号令を掛ける。
『よし、行くぞみんな!』
『レディ、マックス!!』
『ファイア!!』
なのは達は耳の鼓膜が破れんばかりの轟音と閃光に、思わず目を瞑って、耳を押さえる。それでも耳が痛くなるほどの轟音が彼女たちの鼓膜を揺さぶった。バイモーションバスターとVターボバズーカが先に放たれ、2つのバズーカのエネルギーが途中で融合していく。そしてその中心部をパワーバズーカの弾頭が突き進んでいき、エネルギーを纏う弾頭が炸裂した。キノコ雲ができるほどの爆発がチューリッヒの新市街の一角を覆い尽くした……。
――3つのバズーカの破壊力はチューリッヒ市街の一区間に大穴を穿ち、街を消滅させる程であった。幸いにも爆心地は新市街であり、人類の遺産たる、旧市街には被害は及んでいない。
(これがこの人達の武器の破壊力……強力すぎる!だけど、これくらいじゃないとあの怪人達は倒せないんだよね……もし、これでやっと倒せるような怪人達がミッドに来たら……!)
フェイトはスーパー戦隊の武器の破壊力に畏怖しつつも、バルディッシュを奪ったデルザー軍団の怪人のような存在がミッドチルダを蹂躙する光景を思い浮かべてしまう。考えただけでゾッとする。このように、子供ながらも、後々に『敏腕執務官』の評判を取るようになる素養の片鱗を垣間見せる。
「とどめは俺達に任せろ!スーパー気力バズーカ!」
最後のとどめとばかりに、ダイレンジャーがスーパー気力バズーカを用意する。コレは色々と使用するための手順がややこしいため、第二射に回された。そして、最後の止めに放たれ、兵団は文字通りに殲滅される。
「よし!みんなマシンに乗れ!兵団地下基地に突入する!」
「おう!」
突入を敢行するヒーロー達。超豪華な布陣で以って進撃する彼らの後に続くなのは達は、彼らも彼らなりに戦争を終わらせるために戦うのだと理解し、彼らの心情を察する。恐らく、戦争が続くことを一番嫌っていたのは、影で戦い続けてきた彼らかもしれないからだった。
――リリーナ・ドーリアン外務次官は反鉄人兵団レジスタンスのリーダーと会談に臨んでいた。護衛はウイングガンダムゼロのパイロットであるヒイロ・ユイだ。もし、この場にドラえもん達が立ち会っていれば、相手方の容姿に驚天動地の余りに腰を抜かしていたのは間違いない。その容姿はかつて、ドラえもん達と友情を育み、自らを犠牲にして歴史改変を行って地球を救った少女『リルル』と瓜二つだった。
「外務次官、私が極秘に地球を訪れたのは、本国での政権打倒が目の前に来ているからでもあります。戦後の条約や捕虜や民間人の返還協定……決めなくてはならない事が山ほどあります」
「ええ。私共も同じ思いです。それでは始めましょう。まず今日までにそちらに連行された民間人の帰還と軍人の捕虜の返還ですが……」
リリーナはまず、鉄人兵団が行ってきた強制連行からの国民の帰還を切り出した。これはメカトピア現政権が行ってきた行為は地球連邦政府の南極条約は愚か、地球連邦が加盟予定の銀河連邦の国際条約にも反する行為だからで、いざ国際裁判が行われば地球連邦政府が勝訴間違いなしだ。レジスタンスリーダー、(以後、仮にリルルと呼ぶ)は現政権の破廉恥な行為を詫びると同時に、地球連邦政府の捕虜や民間人の帰還を確約した。
「なんともお詫びのしようがありません。現政権は暴虐非道の輩の巣窟、私共が政権を握った暁には捕虜や民間人の帰還をお約束します」
「次に講和条約の発行についてなのですが……」
講和条約はメカトピア側が地球連邦政府に譲歩を申し出た。対等な条件での講和を望むリリーナは当初は固辞したものの、理不尽な侵略を受けた国民感情との兼ね合いもある故、多少は有利な条件でなければならないという国内事情も考慮に入れた結果、ひとまず5/4の割合で条件が纏まった。
――条件は旧日本国が第二次大戦の平和条約を結んだ際のものを参考に、手直しされたものを含んでいた。これはメカトピア側の事情が第二次大戦後の日本国に置かれる状況が似ていたからであり、違うのは軍備問題が縮小に留まっているところだ。これは軍人たちの雇用問題を解決し、不満を抑えるためであった。
「外務次官、只今、プリベンターより情報が入りました。兵団は欧州の残存能力を全て玉砕させる腹づもりのようです」
「なっ……そんな事をして何になると言うのです!?自分から死に行くなど……」
「それが古今東西の負ける側の軍隊の思考というものだ」
「ヒイロ……!」
部下の報告に驚くリリーナをよそに、護衛についていたヒイロが部屋に入り、リルルに会釈をした後にこの一言を言った。兵士として生きてきた彼は勝つ側の思考も、負ける側の思考も知り尽くしている。それ故の発言だった。
「かつて、第二次世界大戦で、追い詰められた日本軍やドイツ軍は各地で絶望的な戦いを続げた。彼らは『負ければ悲惨な歴史が訪れる』と考え、戦い続けた。実際にドイツは分断され、日本は政治的植民地化された。その将来が訪れるのを認めない軍人は大勢いた。それ故に残党となって戦後も活動を続けた。軍人という人種は勝てば『英雄』、負ければ『国賊』の汚名を被り、名誉回復の機会をよほどの事がない限りは失ってしまう。当時の日本の指導者達がいい例だ。それは鉄人兵団も同じだ。負ければ次の政権によって断罪された末に、国賊の汚名を被ったまま、軍人達の一族は生きていかなくてはならない。そんな事を鉄人兵団の上層部は認めない。最後の一兵まで戦い続けるだろう。」
――一見して無益な行動だが、旧・大日本帝国陸海軍を初めとする古今東西の敗北側の軍隊は後世に存在意義や行動に至るまで批判の対象とされている。そして国の最高指導者の一族は未来永劫、後ろ指を指され続ける未来が待っている。そんな事になれば軍人にとっては生きていても意味が無い。軍人としての名誉を守るためには戦死するしかないのだとヒイロは言う。リリーナはヒイロのいう軍人達の悲壮な決意を否定はしなかった。かつて自らが軍備縮小を推し進め、将来的な軍解体の内定まで行きかけた時、軍人は疎まれて故郷を追われる者や、一族が迫害を受けるなどの弊害があちらこちらの地域で生じたという事実があるからだ。町でゴロツキと化し、一気に富裕層から赤貧に堕ちていった元軍人と家族の窮状を救いたい考えと、次第に増長していく警察組織の横暴を止める側面(これはリリーナ個人に罪はなく、当時の政権の官僚が軍人恩給や年金まで停止させてしまうという愚策を取ってしまったためである。リリーナは過剰に安全保障政策政策を軽視する考えしかなかった当時の政府官僚達を追放できなかった事を悔やんでいる。)彼女が今の『平和は自分たち一人一人の手で勝ち取る』という考えに至るまでには、紆余曲折があったのだ。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m