短編『フェイトと仮面ライダーのとある散策』
(ドラえもん×多重クロス)
フェイトは16歳時までに未来の地球についてまとめたレポートを管理局に提出したが、それとは別に高校二年頃からは色々な地球の可能性を探していた。そのうちの一つを今回は取り上げようと思う。その世界はレポートではフェイトはこう評した「ガールズ&パンツァー」と。
――その世界の地球 日本。
「すいません少佐。それに7人ライダーの皆さん。付き合ってもらっちゃって」
「このところ忙しかったからたまにはハメ外さないと軍人なんてやってられないわよ」
「なあに、俺達もここのところはバダンやクライシスがおとなしいから暇でね。良い休暇になるさ」
フェイトはこの時、高校二年の初夏頃を迎え、中間試験を終えた試験休みを利用してその仕事をしていた。そのお供が今回は加東圭子の他に、なんと栄光の7人ライダーである。彼らは宇宙刑事やスカイ以降の後輩達、スーパー戦隊に守りを一時任せ、骨休みも兼ねてフェイトの護衛圏お供としてついてきたのである。
「この世界は調べたらこういう世界だそうです」
「何々……軍隊とは別に戦車が部活であるだって?どういう世界だこりゃ」
一文字隼人は鳩が豆鉄砲を食ったような表情でフェイトが渡した概要について書かれているレポートに目を通す。内容は戦車が女子高生の日常に普通にあり、戦車道なる文化が世界的に存在するという少し不思議な世界であるということらしい。
「ま、ケイちゃんの世界みたいに“パンツじゃないから”と違って、至って普通だな」
「一文字さ〜ん。それどーいう意味ですか?まぁわかりますけど……」
「ようするにカルチャーの違いって奴さ」
圭子はぶーたれて拗ねる。これも文化の違いなのだろうが、一文字は軽く受け流す。こういう女性の扱いに関しては歴代ライダーの中では上手い方である。
「その戦車道というのはどういう文化なんだ?」
V3=風見志郎の質問にフェイトは答える。
「はい。戦車道というのは騎士や武士の時代の馬上薙刀や槍道が戦車が出てきた後に転じて発生した文化だそうです。それでこの時代には学校の部活になってます」
「バレーボールやサッカーと同じ感覚か……」
「そうです。この時代のルールだと二次大戦中の戦車ならOkだそうです」
「そうなるとパットン戦車とかの戦後世代はXという事か。実弾を使うのか?」
「装甲を貫かないように設計された専用の弾丸を使うようです。それなので普通の弾丸よりは遥かにかる〜い代物だそうです」
「それもそうだな。ソ連とかじゃ120ミリ砲もあったというからな。女の子にそんな重さの砲弾が装填できるはずないしな」
と、言うわけで9人がいるのは茨城県大洗町。この日は丁度練習試合がある日らしく、街は盛り上がっている。9人がいるのはちょうど市内のビル内で、そこから屋上に出てみると、かつてのドイツ軍のW号戦車の割りと初期型がチャーチルやマチルダなどのイギリス系歩兵戦車に追い掛け回される光景が目に入る。
「フム……イギリス系の戦車か。どーやって部品を調達してるんだ?第二次大戦の頃の博物館行きな代物を」
風見志郎の言うとおり、眼下で市街地を疾駆する戦車は自分達の世界ならばとっくに戦争博物館行きになっている戦車をどうやって稼働させているのか、それ相応のレストアはしていてもそれには限界があるはずだだからだ。
――それはほんのすれ違い。誰も、当人たちも気づかない、一瞬のすれ違い。それはW号戦車の車長である、女子高生“西住みほ”と歴代仮面ライダーである青年(最も青年というのには語弊があるが)らの。数に劣る側はその後、戦車の性能差から惜しくも敗れたもの、戦術には光るものがあった。
「現役の陸軍将校の君から見てどう思う?」
本郷が圭子に振る。
「私は航空畑ですよ?それで良ければ」
「構わないさ」
「そうですね……大洗女子学園のあの隊長車のマークWは短砲身型でありながらマチルダとチャーチルを相手にうまく渡り合った。うちに欲しいくらいですよ」
圭子は仲間に機械化装甲歩兵が何人かいるし、連合軍の知り合いには戦車兵も当然ながらいる。それに比べてもあのW号戦車を操っていた女子高生らは遜色ない素養を持っていると見た。それほどの動きだったのだ。
「俺が明日あたりに取材に行ってみよう」
「え?いいんですか?」
「俺はフリーのカメラマンだぜ?それくらいは朝飯前さ」
そう。一文字隼人は元々ジャーナリストである。職業柄違和感無く調査を行える。7人ライダーの中では潜入等は得意である。フェイトの了解を取り付けた上で、翌日、一文字は大洗女子学園へ潜入捜査を行った。
――翌日、大洗女子学園
この世界の学校は空母型の大型艦船の上に町ごと立っている。大洗女子学園は旧大日本帝国海軍の翔鶴型航空母艦を模した姿の艦船の飛行甲板上(見てくれの形としては)に立っているのだが、飛行甲板上というのは、マクロス級が存在する世界の住人である一文字から見ると構造的に不味い気がするのだが。
「エクセリヨン級よりでかい船体の上に街、か……新マクロス級とかよりは第一世代型に近いな」
船の全長がビックなためか、揺れは感じない。そのため甲板上の市街地を車が通っており、地上となんら変わらない風景が広がっている。
「へぇ。世界が違うと面白いもんだな」
最も、モビルスーツや宇宙戦艦が普通に存在する光景もこの世界の住人からすればアニメの中の光景としか取らないだろう。それを思うと可笑しく思える。
「ちょうどいい。あの子に聞いてみるか。おーい、君」
「なんですか?」
「このへんに大洗女子学園の校舎はないかい。初めて来たもんでさ。迷っちゃって……おっと、怪しい者じゃない。俺は一文字隼人。フリーのカメラマン」
一文字は見つけた女子高生に名刺とカメラを見せて身分を明かす。21世紀以降はむやみに女子高生などに話しかけると警察のお世話になってしまう可能性があるための措置だ。
「カメラマンの方でしたか。私は秋山優花里。大洗女子学園の生徒です。うちの学校に取材でも?」
その子は元気そうな年頃の女子高生だった。印象としては、一文字が人間として生きていた年代の女子に比べて遥かに行動的である。これも年月の経過故だろう。
「まぁそういうところかな」
優花里と一文字は話をしあいながら学校に向かった。話しているうちに優花里が相当な戦車フリークである事を知った一文字はこう思った。「この子に連邦軍のMBTの61式戦車を見せてやりたい。どんな顔するかな?」と。61式戦車は電気駆動ながら戦車としては到達点と言える高性能である。おそらく頬ずりくらいはしちゃうだろう。そう一文字は目星をつけた。そうしているうちにその友人たちと合流した。
「カメラマンの方がなんで家の学校に?」
「取材だそうですよ、西住殿」
「へぇ」
「でも、取材するなら強豪校のほうがいい素材になりそうなもんだけど」
優花里の友人の一人で、ウェーブがかった髪型の少女の武部沙織が言う。それは大手の戦車道雑誌などでいつも取材を受けるのは伝統的に強豪校であり、弱小校は歯牙にもかけられないからだ。
「いやね。雑誌に売り込むにも新鮮さが必要なんだよ。この商売は楽に食えるわけじゃないしね」
一文字は大洗女子学園に赴く理由をジャーナリストとして当然なこの理由を使った。実際、フリーのカメラマンである一文字は新鮮かつ独創的な記事を出版社に売り込んで生計を立てているので、決して嘘ではない。一文字は校門で彼女らと別れると、手続きを取って学園長と面会し、戦車道の授業風景の取材を申し込んだ。学園長は二つ返事でOkし、生徒会の承認を得るだけとなった。
――学園内 生徒会室
「ふ〜ん。我が校の戦車道の風景を取材したいと?」
「そういうことです。」
「よし、Ok」
「会長、よろしいのですか?」
「別に。隠すことなんて何もないし、むしろ大いに大歓迎だよ」
生徒会長の角谷杏はニィっと笑って見せる。ツインテールの髪形と小さめの体格とは裏腹の腹芸を心得ているらしい。一文字はこの少女に見かけによらぬ大胆さと非凡さを感じた。
――戦車の車庫
「ねぇゆかりん。今朝のあの人、どう思う?」
「急にどうしたんですか、武部殿」
「いやね、今の時代には珍しいマッチョ系のイケメンじゃないの。今のありがちなイケメンは細めだし……」
「そう言われると……一文字さんって確かにカメラマンとは思えないくらいに筋肉質な体してましたもんね」
彼女らの言う通り、一文字は改造される直前の1971年の23歳当時でさえ既に柔道五段、空手六段の猛者であった。仮面ライダーとなったことで更に筋肉質なボディである。それはショッカーに万能超人と評された本郷猛と対等の戦闘能力を期待され、対仮面ライダー用の次世代型仮面ライダータイプ改造人間として改造されるほどのものであった。
「あの人、世界を飛びまわってるって言ってました。それであんな筋肉質なんでしょう」
優花里は一文字がカメラマンとは思えぬほど引き締まった体をしているのをそう解釈する。カメラマンと言っても、戦場カメラマンは危険と隣り合わせだし、おそらく彼もそういう仕事をしてきたのだろうと。
「やぁ。やってるね」
「生徒会や学園長の許可降りたんですね」
「驚くくらいに簡単に出た。学園長なんて二つ返事だったよ。……こりゃ随分マニアックな。八九式かよ」
「元バレー部の人達が使ってますよ」
「戦力にならんと思うけどなぁ。プラモで作ったことがあるが、確か日本初の戦車の上に歩兵戦車だから太平洋戦争で軽戦車にも勝てなかったとかなんとか……」
「でも機動性はそこそこだから偵察とかにはいいですよ。戦車戦はできませんけど」
「確かに」
みほがいう。そもそも軽戦車なので八九式に対戦車戦闘は酷であるのは良く認識しているのでみほは斥候役などとして活用している。
「君たちは何に乗ってるんだい?」
「W号です」
「ああ、ドイツの……。ってどこにあるんだい?」
「これですよ」
みほは自分の目の前にある中戦車に目を向ける。短砲身のドイツっぽい戦車に。
「あれ?W号ってこんなのだっけ?もっと鼻長くなかった?」
「これは初期型なんですよ。一文字さんの言うのは後期型で、連合軍の装甲が厚い戦車に対抗できないから砲身長くして火力を上げたんですよ。そうだよね、優花里さん」
「そうです!これは短砲身型のD型で、中期以降に生産されたのがF2型からH型。長砲身の75ミリ砲を積んで奮闘したんですよ〜!」
優花里は戦車のことになると熱く語る。一文字は改めて彼女の戦車フリークさを確認し、頷く。
――すごいなこの子。現役の戦車兵なみの知識だ。ロンメル将軍に会わせたらどーいうコメントするんだろうな。
そう。一文字は圭子を通して、連合軍の司令官級の将官とこの頃には面識がある。ロンメルやパットンなどの名だたる将軍らを連れて来ようとすればできるのである。感激のあまり悶え死ぬのではないか。そう思うほど彼女の熱さを見て考えた。
「全国大会の抽選も近いですし、練習に熱が入りますよ」
「そうか、抽選か。誰がくじ引くんだい?」
「わ、私です」
みほが恥ずかしそうな表情でいう。
「頑張れよ。俺も高校とか中学の頃に部活で同じような経験持ちだから」
呵呵と大笑してみほの肩を叩く一文字。大会前というと、自分にも“大昔”に同じ事があったからだろうか。豪快な彼の姿にこの場にいる誰もが清々しいさを、同時になぜか心強さをも感じ、この日の練習に熱が入ったとか。
――一文字が大洗女子学園に潜入調査を行なっているのと時を同じくして、圭子も本郷の命を受けて、別の学校で同じような目的の元、インタビューをしていた。もちろん服装は普段着代わりの戦闘服ではなく、時代と世界相応のスーツ姿だ。(これはドラえもんに用意してもらって彼女宛に送ってくれた着せ替えカメラで対応したとの事)圭子も復帰までの一時期、ジャーナリストとして生計を立てていたので、こういうのはお手の物である。
――黒峰女学院
ここ、黒峰女学院は過去に西住みほが在籍していた学校で、旧ドイツ軍の誇った怪物級の戦車を多数保有する、代々強豪校として名を轟かしている。みほの実家で、戦車道の由緒ある一流の流派“西住流”の後継者の一人で西住家の長女で、みほの実姉のまほが在籍する学校でもある。制服はほとんどドイツ軍である。
(本当、カールスラントの装甲師団にもそんなに出回ってない強力な車両がズラリ……ウチらの軍団に分けてほしいくらいだわ。ロンメルが見たら泣いて喜ぶわよこれ)
圭子は戦車庫に、W号駆逐戦車やらパンター戦車、ケーニッヒティーガー、ヤークトティーガー、ヤークトパンターなどの車両がズラリと並んでいる様を見て、そう独白した。この陣容はアフリカの連合軍が見たら泣いて羨望する陣容であり、ノイエ・カールスラント本国でも近衛装甲師団でなければそうそうお目にかかれないほどだ。ロンメルが“せめてこれくらい欲しいよ”と愚痴をこぼすが、その気持ちが理解できた。そう考えたつつ、黒峰女学院の隊長のまほへのインタビューを無難にこなす圭子だが、まほから突然ある事が切りだされた。
「ここから先に言うことはオフレコにしてもらえませんか?」
「それは構いませんが……なぜですか?」
「実家や部員たちへの手前もあるので、私事の事は伏せておきたいのです。」
「そういうことですか。わかりました」
まほは西住流の後継者として、周囲の期待を一心に受けて育ってきた。そのため西住流の教えに忠実であった。だから妹が試合であることをして、試合に負けた事で妹に対して怒りを覚え、みほの行為を家の教えに反するとし、叱る母に対しても妹を擁護しなかった。が、妹がこれまで黒峰女学院で築いた地位や名誉をかなぐり捨てて大洗女子学園に転校していった事は、妹と本来の“姉妹”という形で接することができなくなった事を意味する。そこに至って、まほは自分の本心に気づいたのだ。
「……妹が大洗女子学園でまた戦車道を始めたというのは本当なのですか?」
この時のまほの声の調子や表情からは妹が戦車道に戻ってきてくれた事への嬉しさと、「なんでおめおめと戻ってきた!」という怒りの感情が複雑に入り混じっている事が伺えた。
「はい」
「……妹は戦車の指揮官としての才能があります。たとえ戦力が敵に劣っていても渡りあえるほどに。だから私は去年まであの子に副隊長を任せていた」
「身内に任せるのは周囲から反発があったのでは?」
ここで圭子は至極当然なことをまほに聞いた。いくら自分らが名家の出身とはいえ、入学したての、しかも実妹に副隊長の地位を与えるのは職権乱用と陰口を叩く口実を部員に与えてしまうのではないかと。
「ええ。当時は先輩方や同年輩、後輩達に散々に言われました。ですが、当時の黒峰女学院にあの子以上に指揮能力のある人材はいなかった。……今でも正しいと思っています」
「それがまほさん、あなたの本心ととっていいのですね?」
「……構いません」
それがまほの偽りなき本心であった。まほは本当は妹と共に戦車道をやり続け、出来れば大会で優勝したかったのだ。それを実家の教えなどという、カビの生えた考え如きに邪魔された事への悔しさ、試合に負けた事で叱責してしまった自分の未熟さ、家の教えを守るためなら実の娘であろうが容赦なく切り捨てていく母の姿に、内心では嫌気が指したのだろう。しかし、家の事を考える母の姿もわからないわけではない故にまほはどうしても母のしほを裏切れない。妹を目一杯抱きしめてやりたいという姉としての自分、西住の名を継ぐ者としての自分。その双方の立場の間で悩んでいるのだろう。圭子はそんなみほの姿を見かねて助け船を出した。
「妹さんに何か伝えたい事は?」
「……こう伝えて下さい。“あの時、庇えなくてすまなかった”と」
「ええ。確かに伝えます」
この時、まほはこれまで心に貯めていたものを吐き出すように、本心をさらけ出した。西住流の後継者として生きる事しか知らない己と、大洗女子学園に転向したことで自由に生きれるようになったみほの違いと、義務ではない、楽しく戦車道をやれる事への羨望。実家などには決して言えない彼女個人としての心を。いつしか彼女の表情は晴れ晴れとしたものとなっていた。
「ありがとうございます。オフレコのところ以外は記事にさせてもらいます。……ところでこの学園で余ってる戦車あります?ウチの“田舎”のほうで戦車が欲しいって言ってる学校があって……良ければお願いしたいのです」
「それなら生徒会などに話を通してくれればいくつかご提供できると思います」
圭子は黒峰女学院の戦車を連合軍へ持ち込みたいのだ。北アフリカ戦線の連合軍にはV号戦車すら未だ現役稼働の部隊すらある。実戦仕様に改修すれば十分に使用に耐える。そこを狙ったのだ。圭子はこの後、連合軍内の折衝で培った交渉術を駆使して、黒峰女学院上層部を説き伏せ、黒峰女学院で余剰となっていたパンター戦車(G型)10両、ケーニッヒティーガー6両、ヤークトパンター1両、ヤークトティーガー2両を教材名目で取得。その後、その方面の引取り業者に偽装した地球連邦軍の戦車部隊の人員に運搬してもらい、この世界の日本の学校に本当に何両か寄付した後、殆どはノイエ・カールスラント軍塗装に塗り直され、対ネウロイ用改修が連邦の手で行われた後に連合軍へ持ち込まれ、重要戦力として実戦で運用されたとか。そしてまほの本心もちゃんとみほに伝えられたとか。
――だが、仮面ライダーあるところ闇がある。この平和な世界にもバダンの魔手は伸びていたのだ。
――とある場所
「7人ライダー共がやってきた。あわよくばこの世界で始末せよ。よいな」
「お任せ下さい、大使」
「ゲルショッカーの怪人も送り込んでおる。それらも活用してライダーを倒せ」
「ご期待下さい」
……と、7人ライダー抹殺使令を発するのはバダン最高幹部の暗闇大使。それを受けるのは旧ドイツ武装親衛隊の軍服を着た集団。その中にはかつて、第5SS装甲師団司令であった、ヘルベルト・オットー・ギレ親衛隊大将の姿があった。彼は公的には1966年に“死亡した”。だが、彼は実際には同年にバダンに加わっており、公に知れている老年期の姿ではなく、自身が最も気力が充実していたと自負する、プロイセン軍人であった頃の姿で活動していた。一度死ぬことで家族に事が及ばないようにした上でバダンに加入した彼は暗闇大使から装甲師団の指揮官の任を与えられ、この世界に潜入し、来る、“大作戦”で投入されるであろう戦車のテストを地下で行っていた。それがパンター戦車のモデルチェンジ型である、パンター“V”なのだ。この戦車は一見すると戦後ドイツのMBTのレオパルト2に見える。これは大まかな設計データを流用したからだが、一部に戦中ドイツ軍戦車らしいデザインも見え隠れしている事から、戦後と戦中ドイツ軍の間の子である事がわかる。
「この世界のフロイライン達に本当の電撃戦と戦車戦闘を教えてやれ、ヨハネス・ミューレンカンプ大佐」
「ハッ。閣下のご期待に答えましょうぞ」
師団の有能な戦車兵である、ヨハネス・ミューレンカンプ大佐が答える。彼は第5SS装甲師団のエースの一人で、赤軍を震え上がらせた逸材。彼らはバダン旗下での装甲師団の中では練度の高い事で評判であった。なので新型を与えられたのだ。他の部隊のほとんどが大戦中のものであるのに比べると優遇されている。彼らは深く静かに潜行し、戦車道大会の運営員会に人員を送り込んでいた。そしてライダー抹殺作戦を決定する。その日は……。
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