短編『フェイトと仮面ライダーのとある散策』
(ドラえもん×多重クロス)
――さて、戦車道全国大会が盛り上がっている最中、水面下では。
「やはりキサマらか……この世界まで手を広げてるなんてご苦労様なこった」
仮面ライダーストロンガー=城茂は戦車道全国大会第一回戦の会場に向かう途中、バダンの再生怪人軍団と出くわし、戦闘に入っていた。彼ら7人ライダーはこの世界で束の間の休息を楽しんでいたが、そんな彼らの事情を全くお構いなしに悪の組織が襲ってくる事にいいかげんうんざりしたストロンガーは再生怪人軍団に一言漏らす。再生怪人軍団にはストロンガーの言葉をご丁寧に返す知能は無い事はわかっているが、言わずにはいられなかったようだ。
「エレクトロファイヤー!!」
いきなりエレクトロファイヤーを放って怪人軍団へ斬りこむストロンガー。折角の休日を邪魔されたのが頭にきたらしく、いつになく荒い戦い方である。ついにはオーバーキルとも言える方法で一気に怪人軍団を始末する。それは。
「こちとら時間がねえんだ、早めに決めさせてもらうぜ!チャージア――ップ!!」
ストロンガーが何故、後発のスカイやスーパー1を抑えて、ZXやRXに匹敵する攻撃力を誇ると評されるか。その訳はこれである。かつての戦いでデルザー軍団に対抗すべく、悪の組織を抜けた科学者の協力のもとに自身を再改造させ、電気の100倍の力を発揮する超電子ダイナモの試作型を組み込みさせた。試作型であった都合上、一分という使用制限がある。だが、その間の必殺技の破壊力は飛躍的に増大する。ストロンガーは危険性よりも能力強化の方を選んだというわけだ。
「トウ!!」
そのために瞬時に必殺技の態勢に入る。空高く飛び上がり、空中で大の字になって回転する。その瞬間に超電子ダイナモから放出された膨大なエネルギーが空に凄まじい落雷を発生させる(超電子エネルギーでの落雷、言わば超電子の雷なので、何気に周囲の民家のあらゆる電化製品に凄まじい被害をもたらしてしまっているのは言うまでもない)。その落雷とともに超電子エネルギーを集約して打ち込む、ストロンガーの最強最後の大技。
「超電!!稲妻キィ―――ック!!」
稲妻キックが炸裂し、怪人軍団を大爆発と共に屠るストロンガー。その時のあまりの大音響と衝撃波でガラスが砕け、パニックになった周囲の民家から当局に問い合わせが殺到したのは言うまでもない。
――こちらは仮面ライダー一号=本郷猛。ストロンガーが超電稲妻キックを使用した事を本人から脳波通信で知らされた本郷は荒療治な後輩に苦笑いすると共に、市街地でのチャージアップを諌めた。
「茂……お前……市街地のど真ん中でチャージアップする奴があるか!」
「しょーがないでしょうが、本郷さん。まともにやってたら間に合うわきゃないッスから」
「もうちょっと穏やかにやれないのか?全く……」
さすがの本郷もこれには参ったらしく、やれやれとため息をつく。彼は市販車形態の新サイクロン号で既に全国大会の第一回戦が行われる会場へ着いている。一文字やその他の数人かの後輩達などは既に席をとっているので、茂のみが若干遅れる形となった。こうして、戦車道全国大会は幕を開けた。
――大洗女子学園の面々は試合前に激励を受け、士気は高かった。相手はM4シャーマンの軍団。車両の平均性能で劣る大洗女子は戦略で相手を圧倒せねばならないが、その辺はみほの才覚がものを言った。開始直後こそ敵に翻弄されたもの、敵の策略を逆手に取ったみほの作戦で一気に戦局を逆転した。これを観戦用の大型ディスプレイで知った、観客席にいる本郷猛を始めとする面々は流れが大洗女子に来ている事を感じ取った。
「あの子たち、やったな」
「ああ。流れが来ている。こりゃ勝つぞ」
本郷と一文字は大洗女子学園の勝利を確信した。実際、M4で唯一、ティーガーTを撃破可能なファイアフライ以外に一撃で情勢をひっくり返す可能性を持つ車両はいないので、これはもはや勝ちである。彼らはポップコーンとコーラを片手に余裕であった。数人かの仮面ライダーの見守る中、試合は土壇場を向かえた。
――そんなライダーらの確信など知る由もないみほ達は必死であった。ファイアフライが次弾を装填するまでが勝負。先ほどの砲弾を戦車ドリフト(履帯に負担がかかるが……)で華麗に回避し、敵の撃破対象(戦車道全国大会では、強豪校と弱小校の戦力差を埋めるために予め指定された車両を行動不能にすれば試合に勝利できるというルールが採用されている)の上面を狙える絶好の位置を確保に成功はしているもの、敵の次弾装填がみほ達が主砲を撃つよりも早ければジ・エンドだ。
「ファイアフライが次の弾を撃ってくるまでが勝負!」
「分かりました」
砲撃手である五十鈴華と一言だけのやりとりをするみほ。そして装弾完了が優花里から告げられる。
「花をいける時のように……集中して……。」
照準器で敵に決定打を与えられる部位に狙いをつける華。彼女の実家は華道の家元で、彼女はその後継者である。そのためにこの一言を呟いたのだ。そして彼女がW号戦車D型の主砲、24口径75mm Kw.K.37砲のトリガーを引くのと、ファイアフライが主砲を発砲したのは数秒の差であった。その数秒が明暗を分けた。みほ達の思いが詰まった75ミリ砲弾は移動中のM4シャーマンを撃破する方がファイアフライの砲弾がW号を行動不能にするよりも早かった。大洗女子の勝利が全観客に告げられたのはそれからまもなくであった。
――その観客の一人にみほとの因縁がある人物がいた。みほの実姉の西住まほである。彼女は部員や実家の師範である母の手前、妹に対して酷薄に振舞っているが、内心ではこの勝利に大歓喜であり、周りに部員がいなければガッツポーズを決めて小躍りしたいくらいなのだ。まほはその場から立ち去るフリをし、部員達をうまく巻くと、一目散にみほのところへ向かった。その途中で勝利インタビューをしようと、みほのところへ向かっていた圭子に見つかった。
「まほさんじゃないの。どうしたのこんなところで」
「け、圭子さん!?いや、その、こ、こ、これは……!!??☆※〜!?」
まほとしては隠密行動のつもりだったのだが、さすがにプロの軍人である圭子は誤魔化せない。まほは不味いところを見られたとばかりに赤面し、しどろもどろになっている。普段、大人らしく振舞っているまほも歳相応の少女らしい側面を持っていたのがよく分かる。
「その様子じゃみほちゃんにこっそり会うつもりだったんでしょ?」
「うぅ〜〜」
茶目っ気を見せる圭子。彼女の外見年齢が10代後半ほどなために、まほは自分とそれほど歳が離れていないように感じているが、実際のところは10歳近く差がある。もっとも圭子の本当の生年月日が1919年(この世界は2010年代なので、これに従うと……)だということを知れば、これまた仰天するのは間違いないだろう。
「恥ずかしがってないで、堂々として会ったら?」
「で、で、できませせんよ!言ったでしょ、部員たちや実家の手前……」
「実の姉妹にメンツも建前も無いでしょ?ほらっ」
圭子は半ば強引にまほをみほのもとに連行する。この時ばかりはまほも本来の妹思いの少女としての姿に立ち戻っていた。(ちなみにこの時の加東圭子の服装は世界相応のスーツ姿なのだが、違和感がバリバリなので、フェイトや歴代ライダーらに爆笑されているとか)
――しかし、それどころでは無かった。みほ達のチームの一人で、冷泉麻子の祖母が倒れたという報が伝わったからだ。麻子は手に持った携帯電話を落としてしまうほど動揺し、ついには「泳いでいく!」と言い出してしまう。そのタイミングでまほはここぞとばかりにこの一言を言った。
「私達のヘリを使って」
「お、お姉ちゃん……?」
ここでみほは姉が別の学校の生徒のためにヘリコプター(なんと世界初の量産ヘリコプターのFa223) を貸すと申し出たという事実に思わず若干驚いたような声と表情を見せた。戦車道から逃げた形で黒森峰を去った自分を見てくれていた事(学校としての観戦なら、試合終了時点で去っていても可笑しくないので)、姉がまだ自分の事を姉妹だと思っていてくれていた事に気づいたためだろう。
「それじゃ操縦はあたしがするわ。こういう急いでいる時はプロが必要だからな」
「え?そ、操縦できるんですか(「の?」、「のか」)!?」
圭子がヘリの操縦を申し出る。これに一同は異口同音に仰天する。記者のように見える圭子に乗り物の操縦ができるのかと。これに圭子は自信満々で答える。
「ええ。一応飛行機やヘリの免許取ってるから」
……と言ってごまかす。本当は未来世界での戦場での移動などで使いまくっていて慣らしたのだが、そんな事言えるわけない。なのでそう言ったのだ。
「それじゃお願いします」
「OK!」
ヘリコプターのエンジンがかかり、ローターが周り始める。麻子と沙織を乗せて、麻子の祖母が入院する病院へ向けてヘリコプターが離陸する。それを見送り、みほのもとを去ようとするまほの後ろ姿に、みほは「ありがとうお姉ちゃん」と言った。この時のまほは表面上は仏頂面を装いつつも、内心ではガッツポーズしまくりなほどに“き、決まった……!”と喜んでいたり。ヘリを自分の一存で大洗女子学園に貸した事は、帰ってから副隊長の逸見エリカに咎められたが、“これも戦車道よ”の一言で押し黙らせたとか。(エリカはなおも不満気だったが、尊敬するまほにはそれ以上言えなかった)
――病院に向かうヘリコプターの中で携帯電話を一旦起動させて、ニュースを確認していた。するとこの日の午前中に不思議な落雷事故が起こったとのニュースが目に飛び込んできた。
「へぇ〜……不思議な事もあるもんねぇ」
「どうした?」
「午前中に落雷が起こったんだって。雲一つ無かったのに突然起きて、市街地に落っこちて周辺の民家の電化製品が全部ぶっ壊れたそうよ〜しかも危うく火事になりかけたところもあるんだって……『なお、この落雷の破壊力はこれまでの常識の範疇をはるかに超えており、何故いきなり発生したのか、尋常では無い破壊力を持っていたのかは不明であり、専門家らを悩ませている……当局への問い合わせも殺到しており……』だって」
「不思議なこともあるものだな」
この落雷はその方面の専門家らを悩ませる事になるが、実際のタネは仮面ライダーストロンガーの最強技「超電稲妻キック」によって発生した超電子エネルギーの余波にすぎない。このニュースは仮面ライダー一号こと本郷猛、二号の一文字隼人の知ることとなり、翌日、茂は大先輩らからきつーいおしおきを受けたのは言うまでもない。(どういうおしおきかは言及を避けたい)
――フェイトは執務を真面目にこなし、ナチス・ドイツ軍がこの世界に対し、どのような行動に出るかをシミュレートしていた。
「奴らは怪人を使ってじっくりこの世界に浸透してくるに違いない。怪人を撃破できる力はあるけど、デルザー軍団の化け物たちがいたら私に殆ど勝ち目はない……」
そう。フェイトの魔力変換資質の電気はバダンの精鋭軍団“デルザー軍団”と相性が悪い。デルザー軍団さえいなければあとはどうにでもできるのだが、デルザー軍団のメンバーが一人でもいたらライダー頼りになってしまう。その時のために飛天御剣流を習い、ある程度心得を得たが、それは身に付けてまだ日が浅く、付け焼刃的なものに過ぎない。そんなものがライダーと対等に戦える精鋭らに通じるとも思えない。だからフェイトは単独で怪人軍団と戦うのを避けていた。が、そうも言っていられない時は来る。
「私の魔力変換資質がパワーアップして超電子になれば……デルザー軍団と対等に渡り合えるのに……」
フェイトは前の戦いの後、仮面ライダーストロンガーの持つ超電子ダイナモの繰り出す超パワーに羨望に近い想いを抱いていた。デルザー軍団といえど超電子の前には赤子同然で、形勢を一気に逆転させられたという経緯を後に教えられたフェイトは超電子の強大な力を求めるようになった。が、ストロンガー曰く、超電子エネルギーはもはや自分に組み込まれたダイナモしかこの世に実証するものもなく、その提唱者である正木博士もこの世の住人ではない。そのため、超電子ダイナモの再現は不可能に近い。その理論、発生を可能とするメカニズムのすべてがストロンガーにすらわからないし、正木博士の独自理論な為にバダンのデータベースにも無い、言わば歴史の闇に消えた研究なのだから。
「付け焼刃の飛天御剣流がどこまで奴らに通用するか……」
フェイトはライダーマン=結城丈二の手を借りて、怪人軍団に通用する切れ味の日本刀を用意したもの、デルザー軍団にまで通用するかは未知数である。バルディッシュ・アサルトは強力なデバイスである。威力も十分であるが、デルザー軍団の魔人達に通用するかはやってみなければ分からない。飛天御剣流の技に耐えるように強度を前大戦から上げてはあるが……。そんな不安を抱えつつもフェイトは調査を再開した。
――この世界でのバダンの戦力の存在がフェイトや圭子を通して地球連邦政府に伝えられると、連邦政府は戦車道全国大会の二週間前に極秘裏に戦力を送り込み、空軍一個軍団、陸軍二個MS師団、一個機甲師団、海軍一個潜水艦隊(機動兵器搭載型潜水艦で構成)、宇宙軍一個艦隊が送り込まれ、日本海及び太平洋側の海底臨時基地(資材を運び込んでMSなどを使って数週間かけて設営。すぐに畳め、なおかつ頑丈)に集結。水面下で情報収集を行なっていた。フェイトらはここと連絡を取り合い、情報交換をしている。
――臨時基地
「司令、テスタロッサ執務官より定期連絡です」
「読め」
「ハッ。仮面ライダーストロンガーが怪人軍団と遭遇、これを撃破したと。やはり怪人軍団を送り込んでいるのは確実なようです」
「ご苦労」
この基地の司令に任じられたのはミスマル・コウイチロウであった。今回は大学生活も峠を越えようとする愛娘を元の世界に残しての単身赴任である。もうじき大学を出る娘の就職先を探さなくてはならない時勢に来ているせいか、自慢のサ●ーちゃんのパパヘアーも後退し始めたと部下たちのネタにされているとか。フェイトは仕事では現在のファミリーネームであるハラオウン姓で呼ばれる事が大半だが、太戦後の地球連邦側からはテスタロッサ姓で呼ばれることもある。これは戦時中、彼女のフルネームを暗号文で打つと暗号文の署名の文字数制限にギリギリ引っかかった事例があったので、簡略化と解読迅速化のために、二文字のイミシャルを用いてわかりやすくしたのが始まりである。以来、フェイトは急ぎの暗号文などを打電する時は改名前の頭文字を使って署名していた。
「戦車道全国大会もよく観察せよ。どこに奴らが潜んでいるかわからんからな。」
「第一回戦は問題ありませんでした。次は二回戦ですな」
「ウム。各学校の様子を歴代ライダーに良く観察してもらうように打電したまえ」
「了解です」
基地は簡易的な施設ながらも機能的には中規模軍事基地と同等の管制能力を備える。バダンが超兵器を大々的に使えばこの時代の警察は愚か、軍隊でさえも対抗する術はない。その時こそが地球連邦軍が世界を超えて軍事力をしなければならない。そのために四軍から戦力を抽出した統合軍として派遣されたのだ。ミスマル・コウイチロウが宇宙軍出身のために、艦隊旗艦は宇宙軍艦艇で、次期艦隊旗艦級候補のテストケースとして英国で建造された“波動エンジン搭載のキングジョージV世級宇宙戦艦一番艦のキングジョージV世”だ。
「出来ればHMS King GeorgeVは使いたくはないが、ナチ公共次第だな」
キングジョージ五世級は波動エンジン艦の数を揃えるドクトリンを重視していた連邦政府が“質の充実”に舵を切った、2200年度に認可された艦隊旗艦級波動エンジン戦艦の第一号である。当初は次世代の先頭に立つという意味で“ドレッドノート”の襲名が予定されたが、旧・イギリス軍や旧英国王室から「革新的ではないとドレッドノートではない」という意見が出た事で変更され、キングジョージX世の名を受け継いだのである。
「ええ。アレは昔のプリンス・オブ・ウェールズとかのような二流品ではありません。カタログスペックではしゅんらん以上の一流品です。ナチのUFOだろうが落とせますよ」
イギリス人の副官は旧イギリスが技術の粋を集めて創りだした新鋭戦艦への信頼を見せる。が、過度な信頼はアンドロメダのような場合になった場合のショックが大きい。ミスマルはそんな彼を諌めつつ、情勢を見据えるべく、更なる報告を待った。
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