短編『魔法少女達の奇妙な物語』
(ドラえもん×多重クロス)



――さて、ホテルとなんとか示談に持ち込んだはやてだが、課題は山積だった。同一人物が二人いて、しかも一方の戦闘力は群を抜いて高いという事態だった。

「なるほど。そっちでの六課は半分は有事即応部隊なん?」

「そそ。予想される敵が強大だから、必然的に承認されたんだ。だから常設だよ。部隊戦闘力のバランス取りのための能力限定の規定は適応されなかったし、有事で規定そのものが破棄されたから」

「そうなのか……それで敵って何や?管理局を畏れさせるほどの敵って」




なのはAの次元では機動六課の設立目的も有事即応の側面が全面に打ち出されたために、常設部隊である。メンバーはだいたい同じだが、管理局のいくつかの規定は撤廃されている。それが能力限定である。有事即応部隊として設立された機動〜課(これは機動課そのものの設立目的が有事即応となったため)には適応されなかった。これがナチス侵攻時に思わぬ事態を招いた。それは本来はS級以上の実力であった魔導師達が能力限定状態で戦闘したために、敢え無く戦死していったのだ。これは管理局にとって寝耳に水状態。機動〜課からも裏切り者が多数生じ、管理局残存地上部隊の戦力は往時の30%以下に減ったという有り様であった。なので現在では能力限定は撤廃されている。




「一言で言うなら……鍵十字のあの軍隊だね」

「鍵十字って、ナチス・ドイツ軍?第二次大戦に負けて滅んだはずの?」

「うん。信じられないだろうが、そのナチスだよ。負けた後に次元航行技術を手に入れていくつもの並行時空にまたがって組織を再建させた。それはうちらの世界の管理局地上本部の中枢にまで入り込んでいたのさ。あまつさえ最高評議会のクソジジイ共も……」

(へぇ〜〜クソジジイねぇ……細かい気質や性格の違いって結構あるんやな……)







なのはAは吐き捨てるようにいう。管理局地上本部の中枢にいた連中が寄ってたかって裏切っていた事、最高評議会の構成員がナチス・ドイツの人間であり、ナチス・ドイツの手で昔年の肉体を取り戻し、それでいてあっさりと地上本部を明け渡した事に激怒しているのだろう。はやてはなのはBなら絶対に言わないだろう“クソジジイ”という単語を使うところに、気質の違いを感じたはやてであった。

「おもろいやぁ。同じ人物でもこうしたところで違いって出るっーの」

「そだね。あたしの場合はいろいろな人達の影響も大きいんだけどね。今じゃ突撃あるのみだよ、ハッハッハ。教導隊じゃ異端児扱いだけど」

「えぇぇ〜〜!?」

なのはAは師らの影響大で、突撃あるのみなファイトスタイルとなっている。大火力と高い近接戦闘力により、文字通りの一騎当千が可能となっている。管理局の教えにあるポジションなど、まるで無視な突撃重視のファイトスタイルなので教導隊の仲間内では“教導隊の異端児”と呼ばれているとか。これになのはBはまたしても涙目となる。

「戦場じゃ教え通りには事は運ばないからな。臨機応変だよ、臨機応変」

なのはAはサラッと言ってのける。正規軍のセオリーを無視出来、ゲリラ的戦いも多いロンド・ベルにいるために戦闘での判断力及び行動力では、なのはBを凌駕している。これは実戦経験の差が物を言う。ロンド・ベルがあらゆる敵と戦う部隊なためも大きいが、とにかく戦場での能力はなのはAに軍配が上がる。

「それはそうだけど……そう上手くできるの?」

「いるじゃないの、ここに。生き証人が。否応なくやらざるを得なかったから覚えるしかなかったし、生き残るためにはやらなちゃならなかった」

「そう。私達は状況や仕事柄、敵の兵士を倒すしかなかったからな。容赦なく機関銃や対戦車ロケットを撃たれたりしたし……」

なのはAとフェイトAは戦争やその後の各組織や軍隊の残党狩りやバダン、クライシス帝国との戦いで色々と苦労した。その経験からか、サバイバル術に長けるようになり、その気になれば一ヶ月ほどは水だけで生きていけるとの事。



「仕事柄、か……。軍隊ってそんなに大変なの?」

「そうだよ。索敵しくじったら味方が危険にさらされるし、下手したら一本釣りで味方の旗艦を狙われるからね。これでも将校だし、考えること多いからね。管理局じゃ佐官になったし」

そう。なのはAは連邦宇宙軍中尉(昇進した)であり、時空管理局の三等空佐である。それ故に、一尉であるなのはB以上に大局的にものを判断せねばならない場面は多い。上級将校に足を踏み入れるとやることは多いからだ。




「それじゃあなたは三等空佐に?」

「敵への内通者や裏切り者が上級将校に多く出たからね。上の佐官補充の一環で昇進したのさ。やること多いから大変でさ。酒のまないとやってやれないよ」

「ええぇ!?そりゃ一応、ミッドチルダじゃもう飲める年だけど……」

「仕方ないさ。うちらの世界だと色々と問題が多くてね。敵が吸血鬼とかサイボーグとかの兵士でバンバン攻める上に、各種兵器にはAMFもどきが添えつけられているときてるからね。参ったよ。飛行魔法封じられちまったから航空隊は無力化した。それはあたしやフェイトちゃんも例外じゃない」

「それじゃそっちのミッドチルダはどうなったの?」

「他の世界からの援護でようやっと戦線を保ってるところだよ。なんていうか……第二次大戦?」

「ど、どういうこと?」

「救援に来たのが、これまた往年の日本海軍連合艦隊でさ。戦艦大和と戦艦ビスマルクのガチンコ対決中だよ。ミッドチルダはた迷惑な、日本軍とドイツ軍の戦争だよ」

「な、なにそれぇぇぇ〜〜!!」

なのはAはもう時空管理局そっちぬけで第二次大戦中の戦争の続きをしている友軍と敵軍の状況になんとも言えないようで、若干参っていた。なのはBの驚きも当然である。ミッドチルダが別の時空で日独戦争の舞台になってしまうというのは、前代未聞のトンデモだからだ。

「うん。そういうと思ったよ」

なのはAは別の自分に同意する。普通に考えればSFか仮想戦記ものでなければ起こりえない状況だ。自分も未だに現実味がないように感じてしまう時があるのだから。もっとも、バダンの技術を考えれば、侵攻は予測の範囲内ではあったが。

「それであなた達はどうしたの?飛行魔法が封じられたなら真価は発揮できないはずだよね?」

フェイトBからの質問にはフェイトAが答える。この時の彼女の服装は扶桑陸軍ウィッチの制式戦闘服(扶桑陸軍では巫女装束+小具足姿で戦闘するウィッチが多数派である)。ストームウィッチーズから借りたものをそのまま着ていたままで転移したので、この中では、一番コスプレだと誤解を受ける可能性が高い。

「ああ、こんな事もあろうかとと思って、未来の地球から念の為にバルキリーもらっておいたのさ。それで応戦した。これでも戦闘機乗りだからな」

「戦闘機乗りぃ!?」

フェイトBは度肝を抜かれる。別の自分が戦闘機乗りになっていたことに。世界が違えば辿る道も違うということか。そこにはやてが突っ込みをいれる。

「バルキリーまであるんかい!んじゃ機種は?」

「私が22で、なのはが19。あれは乗りこなせばいい機体だよ、はやて」 


「贅沢やわぁ。AVFを使うなんて。お高いんやろ」

「一機あたり……日本円の21世紀頃の価値で……どのくらいだっけ、なのは」

「ええと……自衛隊のF-35がだいたい100億円位だから、それよりは多少安いよ。未来じゃ軍の払い下げ品が車感覚で買えるからね。星によってはバンバン飛んでるっー話だし、機種にもよるけど、星の数くらい生産されるから」

「へぇ……つかどんな軍事力やねん。そっちが出会った地球って」

「恒星間国家を滅ぼす程度のもんさ。白色彗星帝国とかガミラスとガチンコして生き残ったから軍事力は銀河系随一だよ」

「なるへそ……。それで管理局はどうしてんの?」

「地球連邦軍の軍事力に恐れをなしてる感があった。8年の間、ずっと結論が出ないままだったけど、“去年”にようやっと友好関係の維持で固まった。で、安定と思われたんだけど……あれじゃね。参っちまうよ」

ナチス・ドイツの侵攻は時空管理局の盲点と組織の求心力の程度を突いた。結果、首都の住人には『ナチのもたらす平和』を享受して安寧を得おうと時空管理局の魔導師が逃げた方向を教え、内通する者、ナチス・ドイツによって住み家を奪われて憎しみを新たにする者と様々であったが、中央区の住民の6割は『ナチスの平和で、二通りの形で永遠の命を得て、未来永劫の安寧を得おう』という考えであった。これにより、かなりの数の魔導師が命を落す悲壮な結果が招来された。なのはAはそんな住民らの“長いものには巻かれろ”な思想に内心では激怒しているのだ。

「なのはちゃん、なんかそっちじゃ大変そうやねぇ」

「あたしはそっちのあたし自身と違って、品行方正な局員とはいえないからねぇ。中学の頃には当時の教導隊の分隊長殴り倒して謹慎処分くらった事あったんだ。その時に初めて始末書書いた。上の連中もあたしのことプロパガンダに使ってたから、余り強くは言ってこなかった。向こうが悪いのはわかってたし、処分も数週間くらいで解かれて、教導隊を除名もされなかった。上もその分隊長が教導隊向きじゃないのわかってたから、この後からは上官の人事に気を使うようになった。その分隊長、あたしが憤るくらいの理不尽なことしてくれたし、しまいにゃ同僚を侮辱した。それで幻の左を脇腹にぶちこんでやったのさ」


「……」

なのはBはこの発言に目を白黒させるが、気持ちはわかるようだ。理不尽なことにはどのような形であれ、立ち向かうという本質は変わっていないのを感じ取ったからだろう。

「さっきからずっと気になってたんだけど、その格好は何?コスプレ……じゃないよね?」

フェイトBがAのコスプレとしか思えない服装に突っ込みをとうとう入れた。はやて、シグナムなどのこの世界側の誰もが突っ込みたいところだったが、自分で自分に突っ込みをいれるのはなんともシュールである。


「もちろんコスプレじゃあない。これは別の世界での日本陸軍飛行隊(飛行戦隊)の魔導師の間で普及してる戦闘服さ。仕事でその世界に行った時に借りて着てたんだが、そこから帰ってきたばかりの時に転移したからなぁ」

「これが戦闘服?……なんか恥ずかしいなぁ」

「真ソニックフォームしてる時点でそれはないだろう?」

「あれとこれは別だってばぁ!」

そう。フェイトAは服装には特段こだわりはなく、扶桑陸軍ウィッチの戦闘服にも抵抗感はない。(海軍と違って、陸軍はパンツ一丁ではないためもあるが)そのためこうして着ているのだ。


「主はやて。あまりお時間がありません。この三人の処遇を最重要作戦までに定めませんと」

「せやな。三人ともややこしいけど明日づけで機動六課預かりや。今日はこの世界にいる自分自身との違いをびっしり説明させてもらうで」

「OK」

その後、はやて達はなのはA達の説明をびっしり聞き取った。戦力的違いと能力的違いを。はやて達が驚いたのは、なのはAの持つレイジングハートは接近戦用の機構が組み込まれており、砲撃関連機能は子供時代から特別、進化していない代わりに、接近戦用の機構が充実・発展していて、斧と剣を使い分け可能なこと、個人的嗜好の変化でそちらのほうを主に使うようになっていることだった。

「これをメインに使うようになったのは、砲撃に安易に頼るのをお師匠達に諌められた事も大きいんだ。それで接近戦を初めて、今じゃ並の戦闘機人なら返り討ちにできるよ。あなたがガンファイトに特化したのとは別の成長の末に、オールラウンダー化したと考えてもらっていい。火力は子供時代から変化ないけどね。撃墜の時の後遺症もなかったから魔力も闇の章事件の時の最大値を保ってるよ」

「子供の頃の魔力値を維持したままでの火力と格闘術か……羨ましいよ」

「接近戦に持ち込まれて苦戦する事多かったからね。弱点を補う意味合いもあったんだけど、いつの間にかそっちがね…」



そう。なのはAは地球連邦の高度な医療技術のおかげで体に後遺症を残さないですんために、少女時代の最大魔力を青年期以降も維持している。なのはBが瀕死の重傷から立ち直った代償に、最大魔力値を発揮させる事を前提にするエクセリオンモードを放棄せざるを得なかったのとは対照的だ。そのためなのはBは少女時代の傾向を継続している別の自分に羨望の眼差しを見せた。それは心にトラウマを負う以前の自分を見ているようだったかも知れなかった。


「フェイトちゃんはどうや?」

「私は中学の頃からは剣術を鍛えることに完全に特化したからな。中高は剣道部だったし、全国大会にも行ったよ。仕事の合間に稽古をしたり、仕事先で知った武術を身につけるようにしたから自信あるんだ」

フェイトAは思春期以降は剣術に打ち込む日々を送った。飛天御剣流、示現流、それらに関連して、柳生新陰流の甲冑兵法も学んだ。(師の黒江綾香が薩摩出身だったために、根こそぎ叩き潰すという思想を教えこまれ、根付いた)そのためにバルディッシュも進化を遂げたと。

「それでバルディッシュにザンバーフォームとは別にそれらを扱うために、日本刀を模した形態を追加した。刀の方がザンバーより取り回ししやすいからな」

「日本刀か……あの時のあれがそうなんだね?」

「そう。あれが私のフルドライブ形態。かなり加減して攻撃当てたんだけど……すまない。痛かったか?」

フェイトAはBにバツの悪そうな表情を見せ、謝意を示す。当人は峰打ちをするように努め、振りぬく時の威力も本気の時よりだいぶ落したそうだが、少なくともフェイトBが三時間は昏倒していたことから、元々の威力の高さが伺える。

「うん。だけど一瞬だったから……。あれって時代劇とかで見る峰打ちだよね?」

「そうだ。やるにはちょっとしたコツがあってな……念の為に非殺傷設定しておいたんだが、加減難しいんだよ、これが」

加減が難しい事をぼやくフェイトA。フェイトBはなのはと違って、そんな別の自分の姿にはっきりと嬉しいようだ。こちらは良好な関係を持てそうだが、問題はなのはだ。なのはBは自分が子供時代から『変わってしまった』事を自覚し、ティアナに対して行ってしまった“見せしめ”と取られても仕方がない行為への罪悪感、子供時代のトラウマからか、“自分がやらなければ”と心に十字架を背負って生きて、戦っている。そのため、遭遇した子供時代の純粋さと気持ちを保ったままで大人になった別の自分を、心底羨ましくもあり、妬ましく感じてさえいる。これは11歳の時に味わってしまった恐怖を克服できていない表れでもあった。それがなのはBがAをいまいち受け入れられないところなのだろう。


――やはりスバルの言ったとおりだな。こっちのあたしは11歳の時のあの事件を克服できていないんだな。表面的には明るく振舞っていても、根本にゃ無茶する事が怖いんだ。それがたとえ他人であっても。しゃーない。暇な時にガチでやりあってすっきりさせるか



なのはAはこの頃にはニュータイプの素養を着実に開花させていた。その能力の大きさはアムロ・レイやカミーユ・ビダンなどの名だたる英雄達ほどではないが、明確にサイコミュシステムを稼働させられるレベルには到達している。そのため、別の自分の心に渦巻く過去の事件や行いに対する罪悪感や恐怖と言った負の感情を感じ取ったのだろう。彼女自身、落胆してしまうほどに。なのはBの心情を理解はするもの、彼女の心の殻をぶち破らなければならないと決意を新たにした。それに必要なことも。

「そうやスバル。次元飛び越えたんやったらメンテナンス受けないと」

「いやあそれがですね。あたし、小規模な定期メンテナンスは不要な体になってるんですよ」

「何やてぇーーーー!?」

「話すと長いんですが、仮面ライダーってヒーローたちに助けてもらって、体を治してもらった時にナノマシンの自己修復機能と身体能力の向上が副産物として残ったんです。こういうのも何なんですが、多少の傷ならすぐに治ります」

「仮面ライダーってどの年代ライダーなん?ゼロ年代以降?それとも昭和?」

「あ、あるんですね。仮面ライダーの特撮シリーズ。年代で言えば昭和ライダーです。RX以前の人たちが実在してる世界なんで、なんか嘘みたいに早く治っちゃって……たぶん実質的には再改造に等しいくらいに手を入れたとかなんとか」


そう。今のスバルはオリジナルの肉体構造を殆ど失った。実質的には仮面ライダーたちと同等の肉体を持ち、ZX以前の彼等同様にナノマシンによる自己修復機能を持つ。これは転移の影響とそれ以前の負傷でオリジナルの肉体が殆ど限界を迎えていた事によるもので、内部部品の殆どは仮面ライダー側の技術で造られたオーバーテクノロジー品に取り替えられ、損傷大なフレームの重要部分はコピーしたライダー達特性の超合金製に代えられるなどの措置が取られた。それによって仮面ライダー達に比肩する身体能力と治癒能力を得た。

「それじゃギンガはどうするんや。普通に考えりゃギンガは年を取ってゆくんやで!?」

「……いや、あたしの次元じゃギン姉はナチスの手に落ちてます。遅かれ早かれあたしと似たような改造を受けるでしょう。その時はどんなにボロボロになっても助けてみせますよ。どんなことになっても諦めないことをあの人達に教えられましたから。こんな事言うと世間じゃ馬鹿にされますけど、あたしは信じますよ、部隊長」

スバルは歴代の仮面ライダー達と一時的にしろ共に戦った。そこで教えられた勇気と不屈の精神をはやてに告げる。はやてたちの年代は昭和期型の古き良き正義のヒーローはほぼ絶え、単純な善悪二元論的な風潮は時代遅れとされる風潮が当たり前となって久しい。だが、そんな時代遅れとも言える思想に生き、未来永劫に渡って悪から地球を守る宿命に殉じた11人の仮面ライダー達の背中に憧れたのだと。

「ヒーローか。あってみたいもんや。モノホンの仮面ライダーに」

「いや…たぶんすぐかと」

「なんでや?」

「彼等には次元飛び越えちゃうスーパーマシンがあります。たぶん部隊長の頼みであたし達を次元世界をしらみつぶしに探してると思いますよ」

「次元飛び越えられるマシンって昭和ライダーには一つしかあらへんじゃん。たしかRXの……」

「ライドロン。時速1500キロのギネスブック記録保持のスーパーマシン。それです。あたしも最初見た時、仮面ライダーじゃなくってドライバーじゃないって突っ込み入れました。多分、今頃はもう捜索中でしょう」


スバルのいう通り、仮面ライダーBLACKRXこと、南光太郎ははやてA(同上)の要請に答える形でなのはA達の師の一人である黒江綾香と共に三人の消息を探っていた。
















――第3管理世界

「そうですか。ここには来ていませんか…」

南光太郎ははやてやクロノたちの名を出し、現地駐留の管理局部隊になのは達を搜索してもらったが、首都はいうに及ばず、郊外までの隅々にまで調べてもらったが、結果は空振りであった。肩を落として役場を後にする光太郎の落胆は目に見えて大きく、役場の担当者が同情し、労いの言葉をかけてもらうほどだった。

「綾ちゃん、ここもダメだったよ……」

「光太郎さん落ち込まないで。次元世界はまだまだあるんですから。まだ2つ目ですよ?ドンマイです、ドンマイ!」


黒江は仲間が傷ついたりいなくなる事を極度に恐れる光太郎の心情を理解し、精一杯励ます。これは一度でも兄弟同然に育った秋月信彦をその手にかけた事が彼の心に深い傷を残している表れであった。それをスバルや圭子を通して教えられていた黒江は光太郎を励ますことしか出来ない自分に歯がゆさを感じ、同時になのは達を心配する。


――あんにゃろー……どこにいきやがったんだ!ったく、見つけたら一発ぶん殴ってやるぞ〜!まったく……心配させやがって!

まるで夜遊びして帰りが遅くなっている子を心配する親のような独白である。長年(なのは達換算で8年)に渡って面倒を見てきたためか、単なる師弟関係とは言いがたい、例えるなら仮面ライダーたちにとっての歴代のおやっさん達(7人ライダーにとっての立花藤兵衛が著名)のような関係に昇華していた故だろう。二人はライドロンに乗りこみ、光太郎がエンジンを始動させる。

「それじゃ次は第4世界だ」


光太郎はライドロンのアクセルを全開に吹かし、時速1500キロで転移していく。目標は第4世界。もし次元世界でダメならば並行時空に搜索の幅を広げる。こうして二人はなのは達の搜索を続けていく…。



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