短編『魔法少女達の奇妙な物語』
(ドラえもん×多重クロス)



――はやてはなのはとフェイトAの総合戦力の確認のために模擬戦を行なわせた。それはデモンストレーションであったのだが、予想外の威力を見せたことでB側との戦力差が予想以上であると判明してしまった。特にそれはフェイトが顕著で、近接戦闘においては完全にAが凌駕していた。

「フェイトちゃん、そっちだと剣術を徹底的に鍛えたんやね?」

「高校と中学じゃ剣道部の副将だったし、師匠から剣術を仕込まれたりしたからな……防御力を上げるためにスピードを捨てたが、その代わりに瞬発力と居合い抜きとかを鍛えて補った。一撃でやられてては話にもならんからな」



フェイトAはスピードに傾倒しなくなり、その代わりに、そこそこの防御力と飛天御剣流の速度と示現流の豪剣を活かした攻撃力と高い身体能力を得た。武器の構え方も完全に大昔の武士のそれである事からも、彼女が日本の剣術を会得している事が伺える。

「バリアジャケットもずいぶんとヒロイックな色にしてるんやね?」

「私となのははこちらでは、11歳の時のある事件がきっかけでプロパガンダも兼ねる形で一気に祭り上げられた。もちろん私達自身は実力で地位を得たんだが、周りからの妬みも凄くてな。スピード出世を妬む上官から無茶な命令が出る事もあったんだ。そこはなんとか乗り切った。で、バルディッシュを近代化させるときにこのバリアジャケットを登録したんだ。は、半分は趣味だが…」


(はーん。そっちだとあのアニメ全話見たんやな……あのアニメ、妙なノリなところもあったけど佳作的出来だったからやぁ)

実はフェイトAには学生時代に地球で見た、とある『歌いながら戦う、歌とバトルアクションアニメ』にピーンと来て、バリアジャケットのアイデアをまとめたという赤裸々な話がある。子供時代の時点でシェリル・ノーム達に『その気になれば歌手で食べていける才覚がある』と評され、そっち方面の才覚を見込まれていた事もあってか、しばしば『戦場で歌う』行為を行っている。これはシェリル・ノーム達の姿に感銘を受けての事だ。これが原因で管理局上層部からは『不謹慎だ』との声が上がったが、戦場での歌の力を知る地球連邦の強力な援護射撃で渋々ながらも容認され、19歳の現在では戦巫女的な役割も期待されているとか。はやてはフェイトAの『半分は趣味』という一句で全てを悟ったらしい。

「なるへそ。大体わかった」

「なんだその、どこぞの仮面ライダーみたいなセリフは!?」

「ふふ、言葉の通りや。気にせんでええで。正直言って、あれは正直げんなりするラストやったから好きじゃない。私は夏の映画で終わると思ってたんやで……ネタとしては使えるけど」

「昭和ライダーの皆さんが見たらげんなりする終わりかただぞあれ……中学の時に1800円も払って、休暇とって見たのにぃ!なんだあれは!納得出来ないぞ」



フェイトAは中学時代に、はやてがいうそのライダーの映画を見に行った。娯楽映画は世界が違えど、だいたい同じように存在するのがこれで確認された。しかし感想としては、映画そのものの出来は佳作と言っていい出来だったのだが、冬も続きの映画を作る点にげんなりさせられたらしい。しかもそのライダーが過去作をどことなく踏み台に利用している作風なのが、実物の仮面ライダー達を慕う彼女としては我慢できなかったらしい。

「ストーリーや素材は悪くなかったと思うんやで……どうしてこうなった」

「うむ……」

ここだけ聞くと完全に特撮ヒーローオタクの会合としか思えない会話である。しかも一方はバリアジャケット姿なので、何とも言えない間抜け感が漂ってくる。

「モノホンのライダーと友人なんて言ったら日本全国のライダーオタクから羨ましがられるの間違いなしやで、フェイトちゃん」

「昭和ライダー限定だけどな。平成は前に仕事で『7番目』がいる世界に行ったくらいだ」

「すると、クロックアップするあの?」

「あれされるとわけがわからない内にボコボコにされるから厄介だった。まだ他の平成ライダーの世界には行ってないが、少なくとも昭和ライダーの世界と平成ライダーの世界は別々に存在しているのは掴んだ。しかも平成は昭和のように地続きじゃないのがこれまたややこしい……行動目的も昭和ライダー勢と平成ライダーの多くは違っている」



フェイトAは歴代ライダー達が一つの世界に存在する昭和ライダー達のほうが仕事的に楽だとはやてに示唆する。昭和ライダー勢は劇中で歴代が客演していた通りに、RXまで延々と仮面ライダーの称号が受け継がれてきた。一つの世界にいるので、仮面ライダー一号の号令があれば、すぐに全員集められる。行動原理も『人類の自由と信ずる正義のため』という、明確に共通の目的がある。が、平成ライダーは平成世代らしい『個人的な目的も多分に作用する』行動原理を持つ。良くも悪くも『正義の味方』を地で行く昭和ライダーとは趣が異なるのだ。

「平成ライダーは大人ウケする要素入れてるからなぁ。まぁそっちの方が現実的って言うのも言うのもいるのは確かやし、ライダー同士がバトルロイヤルするのもあったで」

「『あれ』か。私はまだそれには手出してないんだ。まだ『電車に乗るライダー』見始めたばかりで」

「アレはおもろいからね。昭和ライダーさんからすれば、ライダー同士の戦いは見たくないとは思うんやろが、時代の流れやし」

「仕方がないが、平成までにすっかり勧善懲悪的考えが陳腐化したからな。現実でアメリカが絶対正義と信じてた連中がベトナム戦争で泣きを見てから反米に鞍替えしたりしただろ?日本には勝てば官軍負ければ賊軍なんて言葉があるが、要するにな。戦いに勝てば全て不問に付されるんだよ、どんな下衆な行為をやりまくろうが。反吐が出る。だが、旧いと馬鹿にされろうが、あの人達が信じるものを私は信じたい」



フェイトAは未来世界でドラえもんに頼み込んで、多くの歴史上の戦争を見てきた。まさに人間の醜さが表に出た戦争は未来まで見ても第二次大戦は尚も凄い。人種差別が蔓延り、そして勝てば全て許されるとばかりに敵国の文化財を焼き払いまくる連合軍、自国民すら弾圧した枢軸国の様は、人間の醜さそのものである。フェイトAがその中でも特に嫌悪したのは連合国の間で蔓延っていた人種差別である。そのせいで、有色人種であった日本に何しても釈されるという風潮があった。東京大空襲やドレスデン空襲、両軍の猟奇行為。サイパン島、強制収容……原爆。連合軍も少なからず残虐極まりない行為を実行した。未来世界では、その報いを第二次大戦から遥か未来での統合戦争で受け、旧欧米列強の多くは日本の軍事力に膝を屈して、見る影もないほど零落していった。戦後日本の苦難もそうだが、それらは因果応報という奴である。平成ライダーの多くが昭和ライダーとおおよそ違う目的を持つのは、昭和ライダーが活躍していた時代の価値観が時代の変化と世代交代で覆ったり、変わった後の時代の人間たちであるからだろう。

「確かに。今の世の中だと、昔みたいな『悪いやつをぶちのめしてハイ終わり』っの受けへんしなぁ。ところでそっちの私はどうなったんねん?」

「中間管理職の悲哀全開だから、語るも涙、聞くも涙……」

彼女は、はやてAの現状はまさに中間管理職であると教える。実際、往年の日本海軍や日本陸軍の提督や将軍達、はたまたアドルフィーネ・ガランドなどの名だたる将校達と管理局上層部との折衝に追われる毎日で、数キロ痩せたと聞いているからだ。

「中間管理職なんてそんなもんや。上には怒鳴られ、下からは突き上げ食らう……軍隊、警察、サラリーマンとかにかぎらず、どこも当たり前や。だから出世しない喜びを見出す若者増えるんやで。気苦労多いし」

「うむ。私達の世界だと速い内になったから大変そうだった。私達も佐官になってるが、前線担当だから楽なんだが……」

はやては通常の軍隊で言えば中佐である。中佐は大佐が隊長の部隊では副長、もしくは参謀の役割を担う事が多く、大佐や少佐などとの中間点なためにフィクション作品では割と登場回数は少ない。はやては大抵の世界で二等空佐に昇進するらしいが、大小の差そこあれ、気苦労が多い。機動六課の隊長に就任するのは同じだが、必ず部下の行動に頭を抱えるからだ。

「私達は本式の軍隊で揉まれてきたが、部隊が破天荒なロンド・ベルだったから、出世に縁が薄くてな。ブライト艦長からして、まだ大佐だし、アムロさんがようやく少佐になれたところだ」

「あれ?連邦軍って士官学校出てないと出世が止まるんじゃ?」

「私達がいた世界だと、宇宙戦艦ヤマトの白色彗星帝国との戦いのせいで佐官級の数が激減してて、尉官が多くなっていたんだ。歪な人口構成だから、佐官級を増やしたのさ。アムロさんはいの一番になったよ。隕石押し返したし、サザビーを倒したからな」

「むしろそんな功績あるのに、大尉どまりなのおかしいやろと思ってたで」

アムロの功績は隕石押し返した事を考えると、二階級から三階級特進でもまだ余るくらいのものだが、一年戦争後に士官学校に入学しなかった事で『現場叩き上げ』コースが確定した。グリプス戦役までに大尉になったが、士官学校未卒なために、それ以上の出世は不可能だった。しかし白色彗星帝国戦役などで佐官級が大量に戦死してしまい、佐官級が深刻な不足状態になると、大量発生した『大尉』から佐官にして穴埋めしようという案が実行され、少なくない有能な尉官が佐官へ出世した。ちなみになのはもその際に中尉へ昇進していたりする。

「士官学校未卒だと、出世が大尉で止まる規則だったから、それはしょうがないさ。こっちだと戦続きで佐官不足が深刻だったからという止むに止まれぬ事情があるから変わったんだし」


「軍隊にいたっつー事は……本来の任務は?」

「ちゃんとしてるさ。なのはのことがあってちゃんと研修受けてなかったから、改めて宇宙刑事のいる星で法務関係とかの研修も受けたよ。」

「なんでミッドでしなかったんや?」

「私達がその世界の戦争でで色々動いたおかげで地球連邦とミッドの間に国交が出来たんだが、戦後に地球連邦がこれまた銀河連邦に加盟した時に人員交流が始まることになった。12歳の頃、そのプログラムの第二陣の一環でバード星に行った。その時にミッドも引っ括めての法務と警務関係の研修を改めて受けたんだ」


フェイトAはなのはAが良くも悪くも『前線要員』の傾向が強いのとは対照的に、『政治的駆け引き』も普通に上手い。職業柄、仕方がない事だが、管理局執務官は銀河連邦の宇宙刑事たちと同等以上の警務権限と、更に法務関係権限も持ち合わす。そのためメカトピア戦争が終わった後は本来の任務を勉強すべく、仮面ライダーV3こと、風見志郎の仲介で、管理局は銀河連邦警察と人員交流を行うようになり、そのプログラムでフェイトは派遣され、法務もひっくるめた研修を改めて受けている。これは責務が通常の警察官や裁判官などを合わせた膨大なものなので、きちんとした教育をする必要があるからである。(この時にギャバン、シャリバン、シャイダーの三大宇宙刑事と出会っているらしい)

「これでも一応『敏腕執務官』で通っている。私としてはあまり祭り上げられるのは嫌なんだが…」

「しゃーない。軍隊みたいな組織には祭り上げる『英雄』が必要なんや。どこの世界でも同じやで」

そんなはやての下に一つの報告が入る。それは……。

































――こちらは仮面ライダーBLACKRX=南光太郎。遭遇した戦闘機人『セッテ』と戦闘になった。戦闘はロボライダーのロボフォーム(装甲)の前にセッテは全ての攻撃が通じず、逆に装備をボルティックシューターで破壊される有様であった。

(こちらの攻撃を全て見切られている……それだけじゃなく、身体能力、反応速度……完全に負けている……!)

「やはりこの世界でもスカリエッティは何も知らない少女達に破壊活動を……ジェイル・スカリエッティ!貴様ら許さん!!」

ビシッとお馴染みの見得を切るロボライダー。セッテは彼に対し、もはや無力さを露呈していた。ロボライダーの攻撃力は彼女、そしてその様子を監視していた面々にとっても、常識を超えていた。

――セッテは頭のヘッドギアをロボパンチの鋭い一撃で砕かれ、既にボルティックシューターの精密射撃で撃たれて損傷を負っていた。スーツはロボパンチの際の衝撃波で一部破け、裸体が露わになっていた。ロボライダーの戦闘力が送り込んだ側である彼らの予測を超越していたかがわかる。




――この子はジェイル・スカリエッティに利用されているだけだが、ミッドチルダを混乱に貶しれた!それは許すわけにはいかん!

南光太郎は平和を乱す者を許さない、昔ながらのヒーロー的な一面がある。このように、セッテの出自には同情はするが、ミッドチルダの人々の幸せを奪った事は断じて許さない。既にRXに戻り、必殺のリボルケインを生成して構えている事からもそれが伺える。

「トゥア!」

RXのこの一連の攻撃を阻止できるほどの力は彼女にはない。RXキックで怯ませられた一瞬を突かれ、リボルケインを脇腹に突き刺される。そのエネルギーの奔流はセッテの体を駆け巡り、内部を破壊しながら、傷口の反対側から火花のように吹き出す。

「あ、ああああああっ!?!?」

――彼女の顔は苦悶に歪んでいた。普段の機械的とさえ比喩された無表情さからは想像もつかないほどのその表情からは、リボルケインの太陽エネルギーの凄まじい破壊力を思い知らされる。そしてRXがリボルケインを引き抜き、Rの字を描くように振るい、決めポーズを取るのと同時に彼女の意識は消失し、そのまま倒れこむ。倒れたと同時に、彼女の痕跡は大爆発と共に消え去った……。時空管理局はその大爆発を観測しており、それが機動六課に通達されたのだ。















――RXのこの戦闘は監視していたナンバーズをも震撼させた。自分達の中でも強力な力を持つ一体を、何もさせぬまま一撃で屠る存在。創造主のスカリエッティはこの戦闘データに何か着想を得、何かを始める。それで何をするのか?マッドサイエンティストの様相を呈する彼のすることは我々には想像もつかない。だが、数多の並行世界の概念を考慮に入れれば分かる。

「これを埋め込んで、あの少女『本来の役目』を果たさせる。それが本来あるべき姿……」

彼が行うつもりの行為は幾多の並行世界に共通する事項。それはなのはを慕う少女『ヴィヴィオ』が果たすべき本来の目的。そのための下準備であった。ヴィヴィオは既に寝かされ、その幼い姿を実験用寝台に横たえている。管理局の誇るエースオブエースを精神的に追い詰めるためのサディズム的実験。それは何であろうか?培養される彼女の細胞と、キングストーンのような輝きを見せる『何か』……そして時空管理局からハッキングして得たと思しき『なのはB』のデータとそれを裏付ける写真……。なのはが持ち、抱え込む心の傷を探っているのは誰の目に見ても明らかであった……。その写真に写る彼女の姿は……。













――時空管理局 地上 とある分署

「機動六課に取り次いでもらえますか?はい、そこに知り合いがいるんで……」

黒江は光太郎と別れた後、街を虱潰しに彷徨く内に、なのはA達の消息を掴み、分署に辿り着いていた。得意の口八丁で何とか分署の業務用通信端末を借りることに成功し、機動六課に連絡を取ろうとしていた。三人がそこにいる保証はないが、一か八かの賭けであった。三人の行動思考パターンを長年の付き合いで熟知しているから取った行動である。もはやこれしか望みはないとハラハラドキドキであった……。そして機動六課に繋がり、相手方が出る。その声は……



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.