短編『魔法少女達の奇妙な物語』
(ドラえもん×多重クロス)
――さて、フェイトAは『聖王のゆりかご』侵入と同時にバルディッシュを天羽々斬モードに切り替えた。鍔のない日本刀状となったそれは完全に彼女が『手加減無用』となった証である。明確にBとの違いが表れたのはこの時だ。露払いとばかりにガジェットを斬りまくる。しかも一振りで何機ものガジェットを破壊しまくる。その様子をモニター越しに確認したシャリオ・フィニーノらは唖然としてしまう。
「す、凄い……これが別の世界のフェイトさん。改めて見ると、まるっきり別人なんだなぁ」
「異世界間の同一人物というだけで、こんなにも違いが出るものなのか?」
「当たり前だ。実質的には『同じ姿を持つ別人』なんだから。ほんで今の状況は?」
「あ、はい!なのはさんは一人が猛烈な勢いでガジェットを落としまくって、フェイトさんは二人共、艦に侵入しました」
「よし。いますぐ他の部隊をガジェットU型との交戦空域から離脱させろ」
「え、え!?なんでですか?」
「埓があかんから、この機体の武器で一気に殲滅する。射線のデータは送るから、そこの範囲の魔導師を遠くへ退避させろ」
「どーやるんですか?そのパワードスーツ?刀以外に積んでないように見えますよ?」
「すぐに分かる」
黒江はすぐにアースラの前面に出、IS『旋風』に搭載されている武装を取り出す。量子変換で取り出したのは、バスターライフルである。ウイングガンダムが用いていたそれを小型化した代物。無骨な砲であると認識させる風体のそれは機体に対して大きめであった。そして、友軍の退避を確認すると、トリガーを引く。その瞬間、なのはBのディバインバスターすら可愛く見えるほどの射線を持つビームが空域を照らした。半径150mの強力なプラズマ過流を引き起こし、辺りのガジェットを全て飲み込んだ。
「試射としては上出来かな、こりゃ」
黒江はバスターライフルの威力が想定どおりであるのに安堵すると同時に、この世界の時空管理局魔導師の多くにショックを与えただろう事に複雑な心境となる。
(これだけの破壊力、時空管理局は放っておかんだろう。まぁ並行時空までは移動できないし、良しとするか)
――純粋な科学兵器が時空管理局の高位魔法にも引けをとらない破壊力を発揮するのは驚きだろうが、普通に考えていれば分かるこだ。この世界での機動六課の面々は、ISの戦力に対し、疑問を呈した。なのはB達も怪訝そうな表情を見せた。彼女らは科学軽視の危うい方向に舵を切りつつあるように、黒江には思えた。なので、敢えて全力を見せるのだ。魔法はけして万能ではないのだから。
『ビームトンファーだ!死にたくなかったら退け!』
腕のビームトンファーを稼働させ、メガ粒子の刃が展開される。トンファーというのは、格闘の補助に用いられる道具で、沖縄地方に伝えられていたものだ。ヒーローたちの中では、光戦隊マスクマンのブルーマスク=アキラが得意としている。黒江は彼のツテでトンファーの使い方を覚えており、格闘の補助道具として使っていた。ビームサーベル機能もあるため、トンファーで打撃を与えた後にサーベル部で切り裂くという芸当も可能である。
『はぁああああっ!!』
トンファーで直接、ガジェットU型のボディを殴る。トンファーはガンダリウム合金製なので、ガジェットの装甲は容易く突き破れる。そこからサーベル部で一気に上段に斬り裂くという戦法を見せた。これはある意味では、とあるガンダムの戦法の真似と言えるが、トンファーに剣の機能があれば誰でも思いつくであろう戦法だ。
「あれ、さっきのライフル使わないんですか?」
「バーロー、ありゃカートリッジの最大出力だから最大で6発しかうてねーんだよ。反動もかかるしな。節約、節約」
バスターライフルをしまう前に、使用済みカートリッジを投棄する。銃器ではビーム・実弾問わずお馴染みの光景だ。ツインバスターライフルであれば本体からのエネルギー供給なので、何発でも撃てる。しかしそのダウングレード版のバスターライフルは、カートリッジ式に設計変更した故、カートリッジがなければ射撃回数に制限を受ける。検討段階では、より使い勝手がいいツインバスターライフルが検討されたが、破壊力的意味で大量破壊兵器になりかねず、政治問題になるのでダウンサイジング化は見送られ、通常のバスターライフルになった経緯がある。それでも軍事的には十分すぎる破壊力があるので、問題とはされなかった。カートリッジ式の利点として、発射の衝撃に耐えられるのならば、他の機体でも使用可能であるのが評価されたからだ。
「そんなにエネルギー食うんですか?」
「最大出力で撃ったらな。確か、30万人いる都市の一日分の電気消費量くらいのはずだ」
「さ、30万都市ぃ!?」
「これでも上位機に比べれば可愛いもんだ。それだと本局レベルの巨大構造物でも一撃で消滅させられるからな」
「嘘ぉ……次元世界にはそんな武器があるんですね」
すっかり関心したりのシャーリー。ツインバスターライフルにもなれば、島三号型コロニーを完全消滅させられる威力がある。そこまでいくと戦略兵器と言えるものの、波動砲やマクロスキャノンなどに比べれば可愛く見えてしまう。黒江はバスターライフルの性能に感心するシャーリーに、ちょっと誇らしげにほくそ笑んだ。
――さて、侵入したフェイトAはその剣技でガジェットをどしどし蹴散らしていった。飛天御剣流で培ったそのスピードは速い。だが、それでも正統継承者らには及ばない程度だ。飛天御剣流を習う前、元・新選組三番隊組長の斎藤一(維新後は藤田五郎と名乗っていた)からは『並の奴らよりは速いが、俺や抜刀斎には通じん』と評されており、幕末期の動乱を生き延びてきた彼らには自慢のスピードも無意味に等しかった。飛天御剣流を求めたのはそうして知ってしまった『ソニックフォームを完成させ、天狗になっていた自分への戒めと、緋村剣心らの助けになりたい』心境も多分に含まれていた。
「さて……そろそろ来るか。スカリエッティの手駒共」
天羽々斬という日本の聖剣の名を与えられた、日本刀形態のバルディッシュ・アサルトを構え、戦闘機人の襲来を待ち受ける。彼女にとって、今や戦闘機人など子供の児戯に等しいものでしかないからだ。根本的に基礎スペックは改造人間には劣るからだ。
――改造人間のように物理的に強大な力を使えるわけではないが、戦闘機人も十分に強力な兵器ではある。だが、比較対象が仮面ライダー達故に、見劣りすると断じられてしまうのは哀れであった。スバルAはもはや再改造により、改造人間化したので分類上は改造人間に変わっている。そこもフェイトAにナンバーズ等らが軽んじられる要因であった。
「あなたは……フェイト・T・ハラオウン……いや、違う?」
「あいつは私の『従姉妹』さ、ディード。立ち塞がるのであれば、お前を倒させてもらう」
現れたディードに対し、その場で思いついた嘘をぬけぬけというフェイトA。ハッタリも幼少期より格段に上手くなったのが伺える。天羽々斬を構え、居合の態勢に入る。
「何のつもりですか?」
「言っただろう?お前を倒すと。ツインブレイズで斬りかかるつもりだろうが、私には通じんぞ」
「!?何故それを……」
「さあな。」
自身の能力を何故知っているのか?その疑問をすぐに打ち消し、ディードは斬りかかる。だが、その機動は見切られていた。剣を振る前にフェイトAの神速の居合が炸裂した。ディードに『斬られた』事を自覚させないで意識を消失させる威力を発揮した。
「その防御に感謝するんだな、ディード。普通なら上半身と下半身が泣き別れになっている所だ」
飛天御剣流の心得を活用した居合は他の剣術のそれよりも遥かに速い。そのため、その勢いで相手の肉も骨も断つことがままあったとされる。それが避けられたのはひとえにスーツと、戦闘機人としての頑丈さが彼女の命を辛うじて繋ぎ止めた。フェイトAは斎藤一の信念である『悪・即・斬』に感銘を受けた所があり、天羽々斬モードにおいては非殺傷モードは適応されないようになっている。それに持ちこたえたのを賞賛し、次の目的地へ向かった。その一部始終は他の機動六課隊員も目撃しており、ヴィータはその鮮やかな剣術に身震いし、シグナムは関心する。エリオは別のフェイトの剣術の鋭さに羨望と同時に薄ら恐ろしさを感じる。手加減無用かつ、躊躇いがないというのは、何かの一線を超えてしまったように思えたからだろう。
――艦内中枢部
「あらー、ずいぶん怖いのが来るわね。どうしましょうか」
「フェイト・テスタロッサ・ハラオウンに似ているけど、細かいところが違うよ。それに武器も地球の『ニホン』とかいう国の刀だ」
「あの子に姉妹や親戚がいるなんて情報あったかしら?」
「いや、あの子はある意味では『存在してはならない』人間だよ」
「ドクター、それはどういうこと?」
「あの子の根幹となる技術は私が作ったのだよ。あの子が生まれた原因は、彼女の亡き母親、プレシア・テスタロッサが数十年前に第一子のアリシア・テスタロッサを事故で失った事から始まる。彼女は娘を蘇生させんと狂ってまで蘇生術を求めた。彼女はその過程で生まれた、アリシア・テスタロッサのクローン人間に過ぎん。プレシアはアリシアが物心がつく以前に父親とは離婚していたし、親戚とも疎遠になっていたから、その類はいないはずだ。管理局は慢性的な人材不足故に、彼女の罪を許したがね。素敵じゃないか、敏腕執務官のその内実は咎人など」
ジェイル・スカリエッティは知っていた。フェイトのプロフィールは管理局が他の世界に寛容さを示すための格好の得物。彼女は本来は咎人であるべき人間で、人材不足故に免罪されたに過ぎない。罪を償うべき人間が皮肉にも体制側に最も尽くす人間の一人になっていたというのは、スカリエッティには面白い素材なのだろう。彼はフェイトを精神攻めし、精神の均衡を崩す事で手に入れようとしていた。管理局中枢が彼の『生みの親』であることもあり、フェイトの傷を全て知っている。それが彼の強みだった。デュエチはそんな創造主に嫌気が差し始めていた。最もスカリエッティの忠実な駒と言えるクワットロはナンバーズの中の複数の姉妹から煙たがられており、それが時空管理局に投降した人数の多さで証明されるのは大抵の場合の共通事項であった…。
――フェイトAは『自分の時』の予行演習も兼ねて、ゆりかごを破壊しまくる。彼女はスカリエッティを殺すつもりで行動していた。バダンに代表される巨悪に対抗するには『力』を持つほうが賢明である。悪を倒せる力を渇望した結果が今の彼女と言え、斎藤一の信念『悪・即・斬』に感銘を受けた事もあり、話の通じない悪には情け容赦がない苛烈な面を持つようになっていた。そのためバルディッシュのモードでは天羽々斬を用い、尚且つバリアジャケットが普段の黒主体から変化した時が彼女のリミッター解除と言えた。
「飛天御剣流……龍翔閃!」
天羽々斬の峰を支えながら斬り上げ、ガジェットW型という、史実でなのはに精神的トラウマを埋めつけた相手を破壊する。その身体能力は正に超人と言っても過言ではない。体重も飛天御剣流を扱うに値する筋肉量となった事に伴い、見た目と反比例して重いので、素の身体スペックは幕末期の超人らの領域に一歩踏み入れつつある。その様子を確認したなのはBはその様子を投影映像通信越しに確認し、思わず泡を食って久方ぶりのギャグ顔(なのはAはおちゃらけている面も持つようになったため、幼少期から継続してギャグ顔ができる。しかしなのはBは青年期以降は自分を律してきたので、素の自分を出した事があまり無い)を見せた。
「ふ、ふぇえっ!?ど、ど、どういうことフェイトちゃん!!それにその技!?」
「その世界行って習ってきた。もっとも交換条件でパシリにされたけどな……。私は奥義のあれは撃てんし、習得してまだまだ日の浅いヒヨッコに過ぎんさ」
そう。フェイトAは才覚により、ほぼ全ての飛天御剣流の技を習得したものの、飛天御剣流を得てから数年しか経過していない故に熟練度は低い。それでも大抵の敵を斬り捨てる事容易な強さを得た。彼女を圧倒する事が可能なのは、飛天御剣流の正統継承者である13代比古清十郎、緋村剣心の他に、新選組の生き残りである斎藤一(藤田五郎)、瀬田宗次郎などの数えられる(自らの師含め)程度である。もっともその内の半数近くがその世界の人間なあたり、その世界が如何に超人じみているかの証であるが。
(フェイトちゃん……そっちじゃ、るろうに剣心の世界に行ったんだね。ファンが聞いたら感涙モンだよそれ。しかも技をモノにするって、剣の才能あったんだなぁ)
関心するなのはB。元々、フェイトはシグナムに影響を受けてからはザンバーフォームを付加するなど、元来は戦斧・鎌であったバルディッシュの方向性と違う方向に進化させていったが、その極致がフェイトAの『天羽々斬』と言える。ここまで来るとバルディッシュの原型がほぼ無いくらいの変形だが、少女期以降は剣技に傾倒していった末と考えれば何ら不思議はない。
「さて……唄うか」
「?」
「聞いて驚くなよ?…綾香さん、サウンドブースターは量子変換してあります?」
「一応、そうだと思ってブースターをつけといた。いつでもいいぞ。ミュージックはこっちで選ぶぞ」
「了解」
黒江に連絡を取り、フェイトAは『唄い』始めた。彼女はシェリル・ノームやランカ・リーのツテで正規の歌唱訓練を積んでいた(チバソング値が素で高いことに目をつけたグレイス・オコナーの策略でもあったが)。それ故、その気になれば『歌手』として食っていける歌唱力を見せつける。選曲は未来に染まりきった黒江の好みだったので、半分は趣味も混じっていた。
(え、ここ戦場だよ!?そこで歌ぁ!?)
フェイトAの行為は一見して『場違い』な行為であり、サウンドブースターで増幅された事もあり、ゆりかご迎撃に出ていた時空管理局の艦隊を率いるクロノ・ハラオウンも事情を知らない故、『フェイト、いったい何をしている!?』と狼狽える姿を見せた。なのはBも例外ではない。戦場でロックやポップミュージックを歌うなど、『正気の沙汰とは思えない』。しかも最初に歌うのが……。
(く、クロスア○ジュのOP!?あれ知ってんの!?いやいやいや、確かに声似てるけども!?)
なのはBは最初にフェイトAが歌う曲に合点がいったようで、今日はまたも狼狽えのギャク顔になってしまう。はやてBは指揮を取りながらも、内心では腹がよじれるほど大笑いモンで、普段だったら床を転げながら腹を抱えて爆笑している事確実である。
(ブハハ!!この曲歌うなんて、イケてるでぇフェイトちゃん!!まぁこっちのフェイトちゃん自身じゃないから、後でクロノくんとかに説明大変だろうけど♪)
「フェイトさんって……歌うまかったんだ……」
「うん……」
エリオとキャロも呆気にとられてしまい、思わず戦闘を忘れてしまう。それほどにフェイトAの行為は唐突だった。だが、事情を知るなのはAはノリノリであった。
「おっしゃあ!!これで勝てるぞ〜〜!昔から正義は勝つって相場決まってんだぜぇ〜!おりゃあ!!」
ガジェットをハルバートフォームで蹴散らしつつ、イナズマキックでアースラの進路を開く。南光太郎=RXはその言動などに思わず、ある時に出会った一人の女性を思い出したらしく、笑みを浮かべる。
(あの言動、あの子を思い出すなぁ。さて、俺も一働きするか!)『俺は怒りの王子、RX・バイオッライダー!!スバルちゃん、加勢するぞ!』
「いきなりバイオライダーですか〜ノッてますね!」
バイオライダーとなり、スバルに加勢するRX。自分達そっちのけの会話に片腕をもがれつつも、ノーヴェは叫ぶ。
「テメーら、アタシらを無視すんじゃねー!」
それは半分無視されている悲しい(?)状況からのモノだった。しかしながらこの状況ではそれも無理かしらぬことであった。バイオライダーが加勢してしまうと、シャドームーンや歴代大幹部でないと台東にまで持っていけないのだから、当然であれば当然であった。
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