短編『のび太の宇宙開拓史・中学編』
(ドラえもん×多重クロス)



――21世紀にいるドラえもんらに、黒江からコーヤコーヤ星のある銀河が特定されたという報が伝えられた。コーヤコーヤ星及び、トカイトカイ星は、銀河系と同じ局部銀河群には属していたが、アンドロメダ星雲よりも遥かに遠い、銀河群の外れの別の銀河に属する事が分かった。波動エンジンを持つ探査船が長距離ワープを繰り返しても、有に五ヶ月かかる距離で、『見慣れた星座が無い』、『銀系から遠く離れた』という話の頷けが取れたのだ。


「そうですか、コーヤコーヤ星が」

「ああ。探査船が辿り着いて、月に大使館を置くそうだ。地球本国は空気が汚いしな」

――トカイトカイ星で生まれた、その銀河の人々は多くの星に植民したが、ガルタイト工業という会社の横暴に苦しんでいた。そこに偶々に超空間のねじれで畳と宇宙船がつながったドラえもん達が介入し、問題を解決したのだ。

「そうそう、お前らに朗報だ。ロップルとかいう青年がお前らに会いたがっていたそうだ。そうなると、お前らの冒険から数年しか経っていないな?」

「遠い銀河だと、時間の流れ違うんですねぇ」

「アインシュタインの相対性理論ってやつか?向こうで数年でも、こっちじゃ数百年経ってるってやつ」

「僕たちから出向くしかないですね、エデンなら」

のび太は中学生を迎え、背が以前より伸び、既に160cmを超えている。最終的には173cmに成長するだが、それはあと数年後の話。

「だな。それでその、話してくれねーか?コーヤコーヤ星で何があったか」

「あれは小5のゴールデンウィーク中の話でした――」

のび太は語る。過去にコーヤコーヤ星と自分たちの間で何があったか、を。

「――それで、僕が始めて射撃を冒険で使った冒険でもあるんです。懐かしいなあ」

「なるほど。まるで西部劇みたいな話だな。殺し屋と決闘なんて」

「ええ。僕のほうが一瞬、撃つスピードが早かったんですよ。あそこは基本、ガルタイトっていう鉱石を主軸にした文明が発達してるから、地球でのプロペラは発明されてないし、重力が軽いから、僕でもクラー○・ケントになれるんです」

「地球人より筋力が強かったりする宇宙人いるのは漫画で見るが、地球人より貧弱な宇宙人がいるなんて思ってもなかった」

「ガルタイトの性質だと思うんですけど、地球ほど重力が強くないから、地球人に比べるとどうしても筋力が強くならないんです。なので、僕でも宇宙戦艦の装甲が貫けますよ」

「地球人にとっての発泡スチロールみたいなもんか。コーヤコーヤの宇宙船の構成材」

「重力が弱いぶん、物理的強度が地球の金属より弱いんですよ。ジャイアンが打ったホームランボールで宇宙戦艦のバイタルパートが貫通できるくらいに」

「おっそろしい。で、コーヤコーヤ、いや、トカイトカイ星人は、約1000光年の範囲内、200余りの開拓星に移民しているそうだが、23世紀の目で見ると、意外に『まだまだ』だな。大銀河を制覇出来るだけの進出具合には達していないぞ」

「確か、昔に聞いた話だけど、星間連合って言ってたから、銀河連邦より規模は小さいと思いますよ」

そう。23世紀での地球連邦が加盟している銀河連邦は、旧白色彗星帝国が統治していたアンドロメダ銀河が一部、銀河連邦に恭順したため、銀河を跨った勢力へ復興に向かっている。そのため、トカイトカイ星人の星間連合は銀河連邦に比すると、『地方自治体』レベルの統治機構なのだ。

「そうなると、大きめの球状星団の星々の中で生まれた文明かな?1000光年以内が生存圏なら、銀河系の文明圏より規模小さいから」

「どうなんでしょ。中佐が今度の休暇でウチに来たら、出木杉君に聞いてみましょう」

「それがいいかな。休暇が取れたら連絡する」

黒江は電話を切ると、空自の職務に戻る。2005年を迎えた頃には、第305飛行隊から異動して、上層部の要請で第204飛行隊に配属され、新田原基地勤務になっていた。この頃は第204飛行隊がまだ本州にいた時代であるため、休暇で野比家に行きやすかった。彼女は経歴が実質上の旧軍人であるのと、教導に天賦の才能があるため、早いペースでの異動が防衛庁内で模索され、ちょうど沖縄移駐が検討段階にあった204飛行隊の練度向上が必要になったため、同隊に異動したのだ。同時に階級は三佐になっていた。

「ここの部隊は将来的に沖縄に行くんだったな。なのはの奴が言ってたが、他の世界だと、15運用時はここ、百里だけど、この世界だと新田原基地にいるままなんだよな。学園都市の部隊と鉢合わせしないための措置か?」

そう。なのはの世界と比べると、学園都市との政治的兼ね合いか、空自の部隊配置が微妙に違うのだ。そこを考える。また、黒江は戦技競技会へ出場したら『強すぎる』ため、教導群から『ウチの面子潰れるから、数年は出ないで〜!』と泣きつかれたのだ。実戦経験がある上、祖国でF-104Jを乗り回しているため、戦技のレベルが違うのだ。

「姐さん、そろそろ固有のTACネーム考えたらどうです?正体もカミングアウトしたんだし」

「そうだな。そろそろいいかな?」

「部隊の連中はウチのノーズアートに因んで、ミスティを提案してますよ。姐さんの異名、魔のクロエでしょ?昔にウチにいた空将補と同じで」

「それだな。異世界の同位体だよ、その空将補とは。釣りで死んだのは、ちょっとあれだけど。あ、そだ。親父はいるか?休暇の申請したいんだが」

「夜にはいると思いますよ」

――その日、休暇をもらった黒江は、野比家を訪れ、お馴染みの5人と共に未来に行き、月面第一の都市「フォン・ブラウン」を訪れた。そこで彼女らを待っていたのは、かつて、友情を築いた少年『ロップル』が長じ、青年となった彼だった。

「ロップル君!」

「のび太君、まさかこんな形でまた会えるなんて、思わなかったよ」

悪手を交わすロップルとのび太。ロップルは23歳となっており、星間連合に『スーパーマンとともに、ガルタイトを壊滅に追い込んだ』事が高く評価され、数年の実務を経て、月面駐在の大使に任じられた。のび太も14、5歳ほどになり、以前よりグンと背丈が成長している事、声変わりを終えた事もあり、かつ年月の経過を互いに感じさせた。

「あれから僕はトカイトカイの大学を卒業して、君達と一緒に戦った事を評価されて、星間連合に就職したんだ。ガルタイトは潰れたけど、また別の企業があこぎな商売してることが分かってね。大忙しさ。そこで、地球に詳しいという事で、若年だけど、僕が選ばれたってわけだよ。本題に入るけど、連邦政府にも取り締まりの協力を要請したんだが、感触が悪くてね。君達にも手伝ってもらえるかな?」

「もちろんさ」

ロップルは、星間連合が悪徳業者の強引な開発(惑星を破壊してまで鉱石を採掘する)行為が後を絶たない事に難儀しており、地球にその取り締まりの援助を要請したものの、デザリウム戦役後の混乱した状況では、連邦警察及び、連邦軍も殆ど余裕がない事から、難色を示されたのだ。そこでドラえもんらを頼ったのだ。

「中佐、連邦政府と軍は動かせます?」

「今はネオ・ジオン関連の動きが活発化してるから、全部は無理だろうが、ロンド・ベルの一部メンバーの派遣なら許可されるだろう。それと、仮面ライダーの方面から、ヒーローたちに働きかけるように頼んでみよう」

「お願いします。ロップル君、待っててくれ。良い返事が出来るように努力するよ」

「ありがとう、ドラえもん」

こうして、黒江が仮面ライダーらに要請し、ヒーローたちに働きかけてもらった他、レビル将軍自らが時空管理局も加えた、銀河連邦の安全保障理事会の議題にかけてくれ、議論が交わされた結果、時空管理局からなのはとフェイトが警備に派遣される事、ヒーロー達からは仮面ライダーZX、BLACKRX、スーパー1、電撃戦隊チェンジマンが参加し、ロンド・ベルの主力が派遣されることが決議された。また、連邦警察からは宇宙刑事シャイダーが参加した。



―ロンド・ベルを中心に、各艦艇がフォン・ブラウンに集結したのは、それから数日後の事だった。追加で太陽戦隊サンバルカン、電子戦隊デンジマン、超獣戦隊ライブマンも追加で参加したため、予想以上に大規模な船団が結成された。だが、その大規模な動きを警戒したネオ・ジオンがフォン・ブラウンを強襲。早くも戦闘となってしまった。

――フォン・ブラウン ドック

「敵はネオ・ジオン艦隊!ムサカ級3、エンドラ級7、ムサイ改4です」

「奴らめ。何を考えている?我々の動きを『攻勢作戦』と誤解でもしたか?」

ブライトがネオ・ジオンの動きを理解しかねるような発言をする。彼としては珍しい発言だが、ネオ・ジオンにしては珍しく、大規模艦隊を組んでまで行う意義を見出せないようだ。

「機動兵器部隊は直ちに発進。港では物資搬入中の艦がまだある。近づけさせるなよ」

「了解した。Hi-νガンダム、行きます!」

先陣を切って、アムロのHi-νガンダムが発進する。この当時、総合的に見て『歴代五強』に数えられるガンダムだ。白と青のツートンカラーという珍しい組み合わせのカラーリングもあり、とにかく目立つが、連邦のフラッグシップ機としては地味な方だ。

「カミーユ・ビダン、Zガンダム行きます!」

ロンド・ベルへ転属になり、エゥーゴ時代以来、再度、アムロと隊列を組む事となったカミーユ。Zがアーガマ時代のカラーリングに戻された(マーキングはロンド・ベルのそれに変更)ため、Zの再来をジオンにアピールする狙いがあった。

「ジュドー・アーシタ、ガンダムZZ、行きまーす!」

フルアーマーZZを駆るジュドー。今回はクィン・マンサの後継機『クシャトリヤ』の存在が警戒された事もあり、重装備だ。次にシナノから射出されたのは……。

「シーブック、いや、今はキンケドゥ・ナウだったな。随分と目立つ新型だな?」

「サナリィが木星圏用に作った奴ですからね。それにウチの会社の奴がハッタリでドクロ書いたんで、目立ちますよ」

「お前の腕なら大丈夫だと思うが、油断するなよ」

「了解。キンケドゥ・ナウ、クロスボーン・ガンダムX1、出る!!」

デザリウム戦役後、シーブック・アノーはセシリー・フェアチャイルドが運送会社を隠れ蓑にした民間軍事会社を設立したのに付き合う形で『キンケドゥ・ナウ』と名を変え、F91の正統後継機『F97』こと、『クロスボーン・ガンダムX1』を受領、それに乗り換えて参加していた。キンケドゥはクロスボーンを木星圏用と言ったが、一部は嘘だ。時勢的に恒星間運用のテストも必要であるため、実際は歴代ガンダムでは初の恒星間作戦機として建造された。胸のドクロもあり、この場で一、二番に目立った。そのため、ネオ・ジオンからも『ふざけやがって。海賊気取りのガンダムだ!』と憤慨された

「さて、お前らは久しぶりのMSだ。落とされるなよ」

「大丈夫ですって。さて、ハイパーメガカノンを試してきます。高町なのは、ZZ行きまーす!」

「フェイト・T・ハラオウン、ストライクZ、出る!」

それぞれ、ミッドチルダから持ち込んだ機体である。なのはがZZなのは、メガカノンのテストである。フェイトは肉体がアイオリアから返還されてからは、初のMS戦であった。

(本当はS使いたいんだけど、アストナージさんから調整間に合わないって怒られたしなあ。メガカノンあるし、我慢しよう。ワイバーンのエミュモード(飛行特性再現モード)で訓練名目で遊ぶかな)

と、内心でSガンダムに乗りたいと吐露するなのは。出撃するMSがガンダムタイプだらけなのに泡を食うネオ・ジオンが目に浮かぶのだった。


――対するネオ・ジオン側はレーダーと目視から、ロンド・ベル側の機体がみんなガンダムであることに腰を抜かした。

「大変です!敵は、敵は、敵はみんな、ガンダムです!!」

「ロンド・ベルめ!ガンダムのバーゲンセールをしおって!マリーダ中尉のクシャトリヤはどうか?」

「出せますが、中尉にあれだけのガンダムを相手にできるので?」

ネオ・ジオン側は自分達のエース機であるクシャトリヤへ不安を見せた。パイロットのマリーダ・クルスは優秀であるが、精神的に不安定さが残る。対するロンド・ベルは第二群とはケタ違いの陣容を誇る第一群、それも総帥であるシャアと対等に渡り合えるトップエース揃いなのだ。それも指揮官はシャアが『終生のライバル』と認める、『連邦の白き流星』のアムロ・レイなのだ。

「奴らとて、無敵ではない。一年戦争でも、ガンダムには被撃破記録がある。落とせない敵ではない!」

必死に部下を鼓舞するネオ・ジオン指揮官。だが、ニュータイプが駆るガンダムを落とせた例は少なく、しかもアムロはシャアのサザビーを撃墜しているのだ。その事もあり、彼らには早くも悲壮感が漂う始末だった。


――戦場は一方的だった。ネオ・ジオンもけして弱くはないが、相対した相手が歴代ガンダム乗りの多くが勢揃いした部隊であったため、殆ど虐殺にも近いキルレートを叩き出される始末だ。

「ガサD隊、全滅!!」

「全滅!?12機のガサDが全滅!?一瞬でか!?」

映像には、歴代ガンダム達がそれぞれの得意レンジの攻撃でネオ・ジオン機を落とす様が写っていた。旧型とは言え、弱くはないはずのガサDが一瞬で全滅するという、散々たる醜態を晒したのだ。当然といえば当然だった。

「ガンダムめ……何故、いつも我らを邪魔する!」

思わず罵倒する艦隊指揮官。歴代ガンダムの前に、ジオンが毎度毎度敗れ去ってきた事を知る故、殆ど呪詛に近かった。そんな事を言っているうちに、歴代ガンダムらは数機だけで、有に倍以上の味方機を蹂躙していく。




「落ちろ!」

クロスボーンガンダムX1はこの場にいるガンダムの中では、最も白兵戦に長けている。ビームザンバーの出力は圧倒的で、斬撃武装としての威力はZZのハイパービームサーベルをも超える。その一方で遠距離攻撃力はジム系の平均を超える程度だが、これは白兵戦に運用の主眼が置かれた故の『割り切り』だった。その為、重MSであるザクVも一撃で両断可能であり、一瞬で同機はビームサーベルごと両断される。

「なんだ!?あのドクロのガンダムは!」

「白兵戦に持ち込まれるな!持ち込まれたら終わりだぞ!」

ネオ・ジオン側はクロスボーンガンダムX1を警戒する。射撃戦ではジム系とさほど代わり映えしないが、接近戦では無類の強さを持つため、接近戦に持ち込まれれば『如何な機種でも終わる』と理解したのだ。それをカバーせんと、なのはとフェイトが前に出、ハイパーメガカノンとハイパーメガランチャーを構える。

「メガランチャー、クロスシュゥゥゥ――トォ!!」

二機がメガランチャーを斉射する。当然ながら、戦艦を撃沈できる威力のビームを束ねたビームは見事にネオ・ジオン軍を蹴散らす。戦場は一気にロンド・ベルのものとなっていく。

「ん、来たな。『四枚羽根』」

なのはのZZのレーダーが強大なエネルギー反応を捉える。クシャトリヤが発進したのだ。二人の腕では抑えられないので、ジュドーにバトンタッチする。

「頼みましたよ、ジュド―さん」

「ああいうのは任しとけ。乗ってる奴の目星もついてるしな」

ジュドーはクシャトリヤのパイロットがプルの妹であると感覚で感じ取ったらしく、なのは達とバトンタッチし、クシャトリヤに当たる。

「ダブルゼータ……!」

マリーダは彼女らが『造られた』時代故、エゥーゴの象徴であったZZへの憎悪を掻き立てられるように調整がされている。これはプルスリー以後のプルのクローン達に能力のバラつきが生じた故、後期ロットになるほど、プルの持っていた天真爛漫な側面は持たなくされ、プルツーのような攻撃性を増幅されて造られた。マリーダは本来の『プルトゥエルブ』としては臆病な側面を持っていた。成長により、次姉のプルツーに近い性格になったが、根本的にプルに近い純真な側面も残っている。

「落ちろ、ZZぁっ!!ファンネル!」

憎悪の念を迸らせながら、マリーダはクシャトリヤのファンネルをフルアーマーZZへ射出する。マリーダは一気に畳み掛ける。だが、彼女のファンネルを操る練度はハマーン・カーンやプルツーに比べると拙く、ハマーンとの死闘に勝利したジュドーには通じない。(クシャトリヤのファンネルはキュベレイのそれよりも高性能であったが、ジュドーの反応速度はそれをも超えていた。

「何!?」

マリーダは己の目を疑った。フルアーマーで動きが鈍くなった(追加装備の重量で腕部の動作レスポンスが低下している)のにもかかわらず、ZZはその場でファンネルを切り払ったのだ。

「おのれ、ならばこれを!」

胸部メガ粒子砲を発射するが、ZZにはかすりもしない。逆に肩部スプレーミサイルを当てられてしまう。

「くっ……!?」

ZZから強烈なプレッシャーを感じ、感応するマリーダ。相手がジュドーであると感じ取り、憎悪する。

「お前が……ジュドー・アーシタか……!マスターが倒せと命じた、エゥーゴのニュータイプ……」

「俺はジュドー・アーシタ。お前さんがプルとプルツーの姉妹だってことは、すぐに分かったよ」

ジュドーは感応したマリーダの成長した外見ではなく、内面に隠されていた『プルトゥエルブ』としての面を見た。幼少時は姉らと同じ外見を持ち、グレミー・トトの死で拠り所を失い、結果として姉達を見捨ててしまった(逃亡したため)事にトラウマを持っている事を幻視する。

「そうか……お前は姉妹を、キャラの攻撃で……」

「敵であるお前に何がわかる……!姉さん達はあの時、ゲーマルクの攻撃で死に、私の他、数人しか生き残れなかった……私は……あの時、あの場に『魂を置いてきた』のだ!」

マリーダは幼き頃から抱えてきたものをジュドーにぶつけた。ジュドーはグレミー・トトの遺産と言えるマリーダの感情を受け止めてやる。

「お前さんの気持ちはよく分かるよ。センチメンタルだよ、お前の。だけど、それを延々と引きずって生きる事を、姉さん達が、一番上の姉ちゃんのプルが喜ぶと思うのか!?」

「何を!!」

マリーダは反発した。直接は会っていないとはいえ、長姉であるプルの事は、生前のプルスリーから聞いていたからで、姉妹で最も優れた能力を持っていたプルツーをスリーからの話を聞いて尊敬していた分、エゥーゴに出奔した長姉を嫌っていた(グレミー・トトがそのように教育・洗脳したのもある)

「この分からず屋ッ!」

ジュドーは怒りに任せて、ZZの素手でクシャトリヤを殴る。パワー・トルクはカタログスペックでのジェネレーター出力に差があるはずのクシャトリヤよりもあるため、クシャトリヤの片腕を押さえつけながら、もう片腕で殴る。ジュドーのプレッシャーがサイコミュに作用し、クシャトリヤのバインダーの作動を阻害している事もあり、クシャトリヤは一方的に殴られる。応戦しようと、マリーダはマシンキャノンとメガ粒子砲を作動させようとするが……。

――やめて、マリーダ!!――

「!?」

マリーダは、ZZを守るかのように現れたプルのビジョンと、脳裏に語りかけてくる思念に困惑した。

――あたしはあなたの一番上のお姉ちゃんのエルピー・プル!!――

「黙れ……!私はもう、『十二番目の妹』ではない!マリーダ・クルスという名を与えられた存在だ!」

「なら、なんでマスターの人形に未だに甘んじてる!!自分の名前に誇りがあるなら、なんで人形のふりをするんだ!!」

――そうだよ、マリーダっていう名前を与えられた事が嬉しいんだったら、自分なりの生き方を探せばいいんだよ!マスターに頼る必要なんてないんだよ!――

「黙れ、黙れ、黙れ――ッ!マスターは私を救ってくれた『光』だ!それを奪われるわけにはいかないんだ!もう!!」

マリーダは感情を顕にした。紆余曲折ある彼女にとって、自己否定にもつながりかねない事を、事もあろうに姉達と同じ姿を持つ者にまで言われたため、かつての強い強化の名残りとも言うべき『自己防衛』に走った。

「奪うとか奪われるとか言ってるから失うんだ!光だって照らす方向が間違ってる事だって有るんだ!自分で考える事を止めるな!相手の意見に黙れとしか言えない理由を考えやがれ!!」

ジュドーは怒りでパワーが増幅したハイパービームサーベルを見舞い、クシャトリヤを斬る。下半身と上半身、更にバインダーを斬り、クシャトリヤを無力化し、鹵獲する。

「『姉さん』……私はどうすればよかったの……?」

プルの幻影へ、その一言を言いつつ、気絶するマリーダ。クシャトリヤの残ったパーツはコックピットと頭部周りまでだけだ。

「こちらジュドー。四枚羽根の鹵獲に成功したよ。アムロさん、後は頼むよ」

「了解、よくやった。戦艦は俺が沈める」

――アムロは艦隊の直上にまで機体を上昇させ、ある所で艦隊の死角になる下へ潜り込む。彼はジュドーらと別動である。そのため、ネオ・ジオンはHi-νを探知できなくなっていた。

「何、聞こえない!」

「ガンダムが、Hi-νガンダムがいません!」

「あのギラ・ドーガは!?」

「ジョンです!奴はHi-νを見ていないと!」

「まずいぞ、このパターンは!対空砲、直上を注意!直掩機は何をしている!」

「待って下さい!下からです!上の反応はフィン・ファンネルです!」

「何ぃ!?」

アムロはフィン・ファンネルと母機の二段構えで艦隊を奇襲した。一年戦争の際の冴えが完全に戻ったのを表すように、一年戦争でのキャメルパトロール艦隊を襲った光景を再現した。Hi-νのフィン・ファンネルはムサカやエンドラの砲塔を狙い打ち、更に艦橋は母機の直接攻撃で叩く。

「あれが……Hi-νガンダムか……!」

宇宙空間に映える白と青のツートンカラーに彩られた、νガンダムの後継者『Hi-νガンダム』。その勇姿に見とれる間にも、艦隊は瞬く間に4隻を失う。

「艦長!」

「後退信号を打て!急げ!このままでは全滅だ!」

彼はすっかり恐れをなし、艦隊に撤退命令を出す。大艦隊で襲いながら、クシャトリヤを含む艦載機のおよそ半数近く、艦艇4隻を瞬く間に失ったのだ。大兵力を以ても、ロンド・ベル第一群に打撃を与えることは叶わない。これが戦力の差であると痛感した彼は、シャアへどう言い訳しようかと考えるのだった。


――ロンド・ベル第一群は圧倒的な強さで、ネオ・ジオン軍を蹴散らした。その中でも、最もネオ・ジオンの注目を浴びたのが、クロスボーン・ガンダムX1であった。

「なんだ!?あのドクロ野郎、やたら速くて……!」

「早すぎて当たりやしねぇ!う、うわああああっ!」

クロスボーン・ガンダムは基本的に、接近戦で真価を発揮するガンダムである。大推力推進器として、大型の可動式スラスターを備えている事もあり、懐に入り込むスピードは迅速で、ジオン軍兵士らは対応すら出来ない。

「スクリュー・ウェッブ!」

ドリル状の先端を高速回転させる鞭を用いて、ギラ・ドーガを攻撃する。それで態勢を崩したところに、ヒート・ダガーを足の土踏まずの部分から高速射出し、ギラ・ドーガのモノアイに突き立てる。このようなトリッキーな戦闘法は後にロンド・ベルに普及し、ヒートダガーを追加で携行する機体がZ系、ZZ系、F系、RX系、ジム系を問わず増えていくのだった。



――その様子をシナノのブリーフィングルームのモニターで確認したウィッチ達(この頃には、デザリウム戦役からの継続で、飛行64Fの複数がロンド・ベルに同行するようになっていた)は感嘆の声を挙げる。

「凄い。これがロンド・ベルの実力なのね……。圧倒的多数の部隊を、いとも簡単ににねじ伏せるなんて。」

ロンド・ベルの真価と言える、機動兵器戦での異常なほどの高練度ぶりに、雁淵は改めて圧倒される。僅か10機にも満たない数で圧倒的多数を更に圧倒するというのは、軍事学の常識を超えているからだ。

「ウチは、基本的にそれを求められるからな。悪と戦うにゃ、これくらいは『出来ない』とな」

甲児が言う。マジンカイザーとゴッドマジンガーの双方が搬入されたため、今回はその調整のため、待機だった。

「そうか、君はメカトピアの後は元の世界に戻ってたんだったか」

「はい。あの時にご一緒できたのは僅かでしたので」

「あの時は、ちょっと口調違ってたね?」

「あ、あの時は若返って、ちょっと気分がノッてたもので……」

雁淵はメカトピア戦の際に口調が違っていた事を突っ込まれてタジタジだ。普段は今のような丁寧な口調だが、若返った直後は10代半ばの時に気が若返ったためか、口調が多少荒かったのだ。

「ハハハ。今回は大所帯で来たね。それと芳佳ちゃんも久しぶりじゃねーか?」

「お久しぶりです。今回は無理言って、ついて来たんですよ。いつも留守番だったんで」

――そう。今回の遠征には飛行64Fの主力の多くと、501隊員の一部が参加している。そのため、バルクホルンとドラえもんらは今回が初の顔合わせとなる。(ハルトマンは野比家に顔を出しているため)

「しかし、連邦で失われた過去の遺失技術とは、どれだけのモノだったのだ?皆目、見当もつかないな。あの青だぬ……もとい、ネコ型ロボットの持つ道具は凄まじいぞ」

「ドラえもんの持っていたモノは、多くがバーゲンセールで揃えられる廉価な品だ。物質の大きさを変えられるライトとか、物資の時間をコントロール出来る風呂敷とかでもだ。統合戦争前の地球の科学はある意味では、この時代も超えていた。だが、統合戦争でそれらは失われたそうだ。今は一部が復刻されたが、往時にゃ程遠い」

――黒江の言う通り、統合戦争前の地球はある意味で、この時代を超える科学を誇った。だが、過度の発達による破滅を恐れる欧米が統合戦争の炎を再燃させたため、多くが失われた。いつしか『何のために戦争を続けたのか』という意識が当たり前になり、反統合同盟は自然消滅に向かった。だが、最末期の頃の科学者らは今でも存命なため、現在でも『我々のほうが凄い可変戦闘機作れるもん!』と宣っていたりする。

「大昔のローマ帝国が滅んだようなものか?中佐」

「そうだ。ローマ帝国が滅んだ後、ローマ帝国時代に成し得た事を、後の世の人間が理解できなくなったりして、後世に継承されなかった技術が結構あるだろ?それだよ、バルクホルン。技術簒奪の側面が大きかったから、技術が途絶えて、反重力エンジンの技術が失われたり、タケコプターが作れなくなったりと、統合戦争直後の頃は正に、暗黒期と呼ばれるに相応しい時代だったそうだ。一部は更に発展したようなんだが……」

――そう。重力を制御する反重力機関は光子機関と共に、宇宙救命ボートに搭載されていたりした。重力制御については慣性制御レベルまで退行したものの、当時に最新の技術とされた光子エンジンについては光子力反応炉に発展し、マジンガーの動力源とされている。

「戦争は時として、文明を退化させてしまうのだな…」

「歴史上、たまにある事さ。この世界でのイスラム文明の黄金期の繁栄を築いた科学が戦争とかで失われた結果、イスラム帝国が復興する事はなかったし、ローマ帝国が栄光を取り戻せはしなかったようにな。だが、別ベクトルで文明が発達したのが、この時代だ。軍事技術面が突出してるだろう?」

「軍事技術だけが妙に突出したのは、そのためか……」

「特に戦乱期が続くと、軍事技術面が異常に進化するからな。青天井の予算が与えられて、勝つために新技術が作られる。それがいいか悪いかは私達の判断するところじゃないが、民生分野で花開いた技術だって多いんだし、そう重く考えるな」

「あ、ああ」

バルクホルンとしては、軍事技術面が異常発展したこの時代に複雑なようだ。戦争は大勢を殺したが、それで人類の生存圏が銀河系全体に広がったという『いい側面』も確かに存在はする。それがあるだけに、尚更複雑なようだ。黒江の言葉に頷くものの、生来、生真面目である分、億単位の犠牲の果てに得た発展への物悲しさがあるバルクホルンだった。



「そういえば、黒江さん。今回はどこに遠征するんですか?」

芳佳が聞く。今回の旅の目的はズバリそれだ。

「今回は、便宜上に『トカイトカイ星団』と呼ばれる伴銀河、あるいは球状星団の調査だ。地球と新たに接触した、この宇宙文明は、とても遠いところにある」

「もしかして、それってアンドロメダ星雲の中ですか?」

「いや、そこよりももっと遠い。天文学は詳しくないから、兜、解説頼む」

「おう。伴銀河ってのは、大きな銀河の周りを回る小さい銀河の事で、球状星団ってのは恒星が互いの重力で集まった、銀河に満たない集まりのことだよ。今回の目的地は、その内のどれかと推測されている。伴銀河はマゼラン星雲が有名所さ。何せ、探査船が最新の波動エンジンでワープ繰り返したら遭遇したくらいに遠いから、向こうの星図とこっちの星図とすり合わせるから、行きに5ヶ月はかかるよ」

「ひぇー……遠いんですね」

「それでも、宇宙全体からすれば銀河系なんて、太平洋に浮かんでるスイカの種みたいなもんだよ。銀河系は銀河群って言う集まりの一個で、それが更に集まった銀河団、それが集まった超銀河団があるんだぜ」

「なんか、もうスケールが大きすぎて、想像できませ〜ん!」

芳佳の目がグルグル巻きになっている。銀河が太平洋のスイカの種と言われば、当然の反応だった。銀河大航海時代を迎えた23世紀では、小学生でも知っているが、天文学がそこまで発達していない時代の人間である芳佳には『途方も無い』話であるのが分かる。

「ハハハ、みんな最初はそういうさ。出発までにはあと3日あるから、市内観光でもしてきなよ」

フォン・ブラウンは人口5000万を超える大都市である。構造的に、最初の都市区間の上にどんどん新しい地区が建てられる形で発展したため、今では六層以上に上る構造となっている。その内の繁華街になっているのが、最上層エリアの一角だ。(オフィス街もそこにある)

「うわぁ。月の穴の中にこんな街を作れるんですねー!」

フォン・ブラウン市内を走る高速道路。そこを疾駆するエレカー。芳佳は月の穴にまで街を造るという発想に圧倒される。

「ここはこの時代最大級の都市だ。連邦の首都が移されたばかりでもあるし、治安もいいぞ」

「ん?あれ……鷹?」

「ライブマンのジェットファルコンだよ。多分、エンジン換装してのテスト飛行だな」

上空を飛行するジェットファルコン。エンジンが外宇宙航行用に換装されたため、瞬発力や加速力は以前より遥かに増している。また、ジェットマンやファイブマンと言った後発のヒーロー、デンジマン達の技術も加えられ。総合性能は以前と比較にならない。

「そ言えば、フジの奴があれに乗せてもらったとか言って、すごく嬉しがってたな」

「加藤大佐、隼好きなんですか?」

「若い頃から隼が大好きなんだよ、あいつ。扶桑海の時も『隼作戦』なんてつけてたしな。それで呉がやられた時に、レッドファルコンに助けられたらしいんだよ」

武子は呉への襲撃の際に、超獣戦隊ライブマンに命を救われた。その際にレッドファルコン=天宮勇介とちょっとした縁ができたらしく、精神的ショックでの療養中に、彼に世話になった。そのため、剣筋に彼の影響が生じたという。

「それでなんですか、執務室にレッドファルコンさんと写ってる写真があるのって」

「そうなんだよ。聞いた話だと、あいつは私よりも凄い光景が目の前であったから、そのショックが凄くてな。竹井のじい様の話だと、一番ひどい時はうなされながら暴れる始末だったそうなんだよ。そこを彼が剣の勝負でボコす形で叱咤してくれたんだって。それ以来、勇介さんにアレなのよ、アレ」

超獣戦隊ライブマンのリーダーである天宮勇介はそれなりに頭脳は切れるが、どちらかと言うと体力派である。憔悴した武子が風翔のほうへ夢遊病者のように行こうとしたのを止めたのがきっかけで、彼女と縁が出来た勇介は、岬めぐみ=ブルードルフィンの勧めもあり、武子を見舞うようになり、結果として、武子を立ち直らせる原動力となった。そのため、1945年以後はライブマンと縁が出来たのだ。武子自身、ライブマンから多大な影響を受けており、後年、1999年厳冬に亡くなる前、孫娘の美奈子に『もし、友達が悪の道に走ったら、せめて魂だけでも救ってやれるようにしなさい。私の恩人達も友を救う事ができなかったと嘆いていたけど、魂だけでも救えるようにしたいと言っていたわ……』という一言を残し、それが孫娘への遺言となった。その姿勢は友人へも徹底しており、ある時、黒江がグレーテ・M・ゴロプ少佐への殺意を示唆すると、思いを裏切られた黒江を否定はしなかったが、『あなたの気持ちはわかるわ。だけど、せめて、彼女の魂だけでも救ってやりなさい』と一言注意するほどであったという。

「へえ……」

――芳佳は、武子と超獣戦隊ライブマンとの間にあるエピソードに関心する。智子は仮面ライダーBLACKRXに、黒江は仮面ライダーストロンガーや1号ライダーとの間に、という具合で、それぞれ似たようなエピソードを持つ。それぞれ生き方にまで影響を与えており、芳佳はちょっぴり羨ましかった。




――その頃、シナノでは。

「ボゲェ〜〜♪」

ジャイアンがご機嫌でカラオケを歌っていた。周りの人間達はジャイアンの歌に耐えられず、気絶している。バルクホルンは思わず、小声でのび太に『こ……これが歌であってたまるかぁ……単なる殺人音波ではないか!?』と目が回りつつも愚痴る。のび太は『これでも声変わりして、威力が下がったほうですよ……」

と、告げる。ジャイアンの殺人音波……もとい、歌声は、ジャイアン自身が変声期を迎えた事で多少は改善されたものの、耐性がない人間達に取っては相変わらずの『劇薬』であり、常人より遥かに頑強であるはずのバルクホルンでさえ目を回し、今にも伸びそうな様相を呈している。バルクホルンはげっそりし、心の中で『声変わりしてこの威力だとぉ!?』と絶望したのだった。そして、歌はジャイアンの一八番の曲となる。

「〜〜♪!!」

ご機嫌で歌うジャイアン。これまで気力で耐えていたバルクホルン、のび太、ドラえもんもこれでとどめを刺され、卒倒する。小学生時代にドラえもんに『これも一種の公害だよな』と評された威力は声変わり後も健在だったのだ。ハルトマンが様子を見に来た時には、歌う当人を除く全員が、泡を吹いて気絶していたことに顔面蒼白となったとか。後日、ハルトマンは『なんで歌ってる当人は気絶しないの!?』とドラえもんに問い、ドラえもんは『当たり前でしょ、フグが自分の毒で死にます?』と返したという。バルクホルンは目を覚ました後も「あの殺人音波……死ぬかと思ったぞ…」と息も絶え絶えであり、次の日の任務を休む羽目となった。


――そんな事を挟みつつ、遠征船団の出発は迫る。今回はヒーローたちも巻き込んでの大遠征である。その前途に待つものはなんであろう?



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