短編『ジェノサイド・ソウ・ヘブン』
(ドラえもん×多重クロス)



――シンフォギア装者達の中で、黒江との繋がりがある都合、調はのび太達といち早く面識ができ、ダイ・アナザー・デイ作戦が終わった辺りになると、すっかり野比家に馴染んでおり、見かけが小柄だが、2015年時点での15歳である(背丈は師との同調で伸び、今のところは156cmに成長していた)事から、表向きは『のび太の知り合いの中学生』として、のび太の時代で行動していた。シンフォギアは、ススキヶ原の人々が非日常に慣れてしまっている都合、纏っていても不審がられる事もない(箒達のISが飛んでいても大丈夫だった)ため、のび太の頼みで、シュルシャガナを買い物での移動手段代わりに用いるのも日常になっており、ドラえもんがデザリアム戦役に備えて、不在になることも増加したため、黒江の指示もあり、西暦2000年6月時点では、野比家常駐メンバーになっていた――


――黒江らにとっては、二度目の西暦2000年―

「私、自分が生まれた頃の時代にいるんだよね……。なんだか不思議……」

西暦2000年。のび太が小学5年の年である。当時はまだ折りたたみ式携帯電話もそれほど普及しておらず、ブラウン管がデスクトップPCとTVの画面に使われていた時代の最末期にあたる。当時はスネ夫ほど裕福な家庭であっても、子供に携帯電話を持たす発想はなく、街を行く人々で携帯電話を持つのは最低でも高校生以上だったりする。調にとっては遠い昔の風景だ。当時、黒江は空自に潜り込むために、防衛大学校の学生になっていたため、今回は弟子筋かつ、自分と同じ『エクスカリバー』の継承者に当たる調を常駐させていた。彼女はこの日、玉子とのび助が親類の結婚式(のび太には、父親だけで兄弟姉妹が6人以上いるため、いとこがやたらと多い)で出かけていたため、駅前商店街まで出かけていた。のび太の言う通り、シュルシャガナを使っていても(ダイ・アナザー・デイ作戦前後の時期には、リンカー無しでギアを恒常維持できるほど、小宇宙を身に着けていた)不審がられない事に驚いていた。

(嘘、シュルシャガナ展開してても全然気にされない……箒さんがISを展開してても大丈夫だったっていうけど……すごい)

シュルシャガナは脚部にローラを内蔵しているが、調は長距離移動に、一輪バイクの要領で発動できる技『非常Σ式・禁月輪』(脚部・頭部から体の周囲に円形のブレードを縦向きに展開して、回転しながら突撃する技)を使用することが多いのだが、『それだと攻撃力がある分、市街地の移動だと危ない』との判断で脚部ローラーで移動している。これは脚部ローラーによる機動の応用性を見込んだ黒江の指示でもあった。その手に持つのが昔ながらの買い物袋であるのもシュールな雰囲気を感じさせている。ススキヶ原の町並みは、当時としてもレトロな雰囲気で、昭和的な風景なのも新鮮であった。

「本当に、ここって学園都市の外縁部の近く?レトロすぎて信じられない」

学園都市の開発は美琴の時代ほど進んでおらず、ススキヶ原一帯から見える範囲で摩天楼はない。その事もあり、のどかな東京の郊外の街というのがしっくりくる。(のび太の学校の裏山が姿を消すのは、美琴の時代である2010年代の事である)

「そう言えば、のび太君が言ってた……。『平地が案外少ないのと早いうちに住宅地になったから大型店舗が進出してないんだ、駅前も商店街が小さくて、ショッピングセンター建てようとしたら一般住宅地の立ち退きとか面倒らしくて』って。だからかな?」

のび太の街『ススキヶ原』は平地が意外に少なく、西暦2000年時点では、地主が土地を売らないのもあり、昭和時代の名残りが随所に見られる。駅前商店街が小さく、その周囲に名画座(マカロニ・ウェスタンを多く上映しており、のび太は常連)、TV局と大規模公園がある程度の開発具合だ。ロケーションが良いためか、当時の時点での有名人がロケで街を訪れる(元パーマン三号の星野スミレもその一人で、当時の子役アイドルの伊藤つばさ共々、のび太は何気に懇意にしていたりする)事でも有名だ。

「すみません、ロース肉をください」

「らっしゃい」

駅前商店街の店舗も昔ながらの販売方式である店が多い。店員からサービスされる事も多く、意外と安く買えたりするので、その恩恵を預かり、目当ての食料が安く買えた。シンフォギアを纏って買い物など、元の世界にいる面々が聞けば腰を抜かすだろう。ましてや、自分は元は正規適合者ではなく、第二種適合者とされる『リンカー』の服用を必要とするはずの装者である。

(不思議……。本当なら、リンカーを定期的に打たないとギアの全機能を維持できないはずなのに、ギアのバックファイアを感じない……。これが聖遺物を超えるって事なんだ……)

シンフォギアは正規適合者を探すほうが難しく、マリア、切歌、調は薬の投与で適合係数を引き上げて纏う『第二種適合者』であった。だが、調は黄金聖闘士である黒江との同調で、小宇宙に目覚めたため、正規適合者と同等以上の適合係数をマークするようになり、制限時間も、ギアの出力の低さも消えた。黒江はこれを『聖遺物を超える事だ』とした。(リンカーは薬である以上、どうしても抗体の生成などの免疫反応で効能が落ちる。これはウェル博士の作っていた改良型でも同様。それを乗り越えるには、小宇宙への目覚めしか方法はない)同調はかなり強まっており、黒江の確固たる信念がエクスカリバーの発動条件になっている事を知り、自在にエクスカリバーを使える師へ憧れの感情を持つようになっていた。青銅聖闘士に達するのみでも、ギアの時間経過による出力低下と解除は無くなる。それだけでも、かなりの利点になる。また、修行の一環で、『ギアを展開して生活してみろ』と指示されている事もあり、体がそれに慣れる事で、逆に体力消費率の効率化に繋がっていた。

(切ちゃんたち、師匠が成り代わってた時期に、こんな光景見たって言うけど、それは私の姿になってた師匠で、私そのものじゃない。たぶん…、間違いなく腰抜かすな)

黒江は調の姿になっていても、163cmは有にあるので、依然として調より長身である。調当人も4cmは伸びたが、依然として150cm台後半で、黒江には追いついていない。その事を思い、ため息をつく。

(いいなぁ、師匠。マリアより背があって)

黒江を『師匠』と呼ぶようになった関係で、黒江が1940年代当時では異例な長身である事を羨ましがる調。元々、170cmを超える長身である黒江は、扶桑海事変当時、ストライカーでは不利とも揶揄された長身の身である。(当時、ストライカーでは160cm台までが適していると扶桑では見られており、黒江は長身である都合、機体の負担が大きいと見られた。もっとも、当時は黒江が登場を早めた『キ44』などの大馬力型(当時)ストライカーが最新鋭であった時期なのと、むしろ米では珍しくない身長であり、大柄な体は運動性向上と揚力の増大に有利と判明し、体格は問題にはされず、初っ端からセブンセンシズ全開で暴れまわった事もあり、『大陸を統べられる』伝説になった。それを覆す黒江らの大暴れは、扶桑陸軍飛行戦隊が扶桑海の勲章を独占し、坂本ら海軍若手に過剰な期待がかけられた原因でもあるが)

(そう言えば、師匠。あんまり暴れまくったから、最初の戦役での戦果が過小に判定されて発表されてから、仲間内でいじめにあって、覚醒後のダイ・アナザー・デイ作戦で後輩と揉めた時に、『スコアの確定』をした体裁でトップ10に戻ったとか言ってたっけ。その辺、記憶の共有で見られたけど、やること、私の時代と変わんないなぁ、いじめ)

黒江は戦間期、部内でいじめにあったのは変わらず、審査部に適していると当時の責任者が絶賛したのに関わらず、猛烈ないじめに遭い、鬱病になりかけた。これに天皇陛下が激怒し、陸軍航空の責任者を叱責する大事となったのも有名だ。それを経て、505壊滅に繋がるのは変わらぬ流れだ。ただし、今回は未来に行くあたりで『覚醒』し、64Fに籍を残したままで各地の基地司令を兼任する事を仕組んだので、審査部に戻る事は未来永劫ない。もちろん、空軍にも同様の役割の部隊はできるが、黒江はグランウィッチである以上、64Fが固定配置になる。それはダイ・アナザー・デイ作戦時点で通達されている。本来、テスト部隊が最適とされる能力であったため、航空審査部の解散時の責任者は、黒江の異動と言う名の追い出しと、部内のいじめを後悔したという。また、太平洋戦争の激化でテスト部隊そのものが実戦部隊に転換させられた上、その人材が優先して64の補充に送られたため、その役目を終える事になる。

(だから、師匠、後方にいるのを嫌がるんだな。トラウマもあるんだろうけど)

黒江は、戦間期に航空審査部で陰険ないじめにあったのも強烈なトラウマになっており、今では後方勤務を嫌うようになり、前線勤務を望むようになっている。その為、源田は空軍の最高司令官に内定した段階で、『レイブンズは64Fに籍を固定し、基地司令をやらせる場合は兼任だ』と内部で極秘通達するほど気を使っていた。また、ダイ・アナザー・デイ作戦の際、江藤に『スコアを全て確定戦果にせよ』と圧力をかけた一人でもある。要は『黒江の戦間期の時の事件の遠因は、お前のいらん行為が原因だから、復帰したんなら責任は取れ』という事だ。

源田は直接、『スコアと伝聞の齟齬がレイブンズの活動の足枷になっとる、其処を理解しろ。 外国からの評価と、こちらの公式記録が噛み合わないせいであいつらは若手に嘗められてるんだぞ?』と告げ、ウィッチの世代交代で生じたレイブンズの現況を告げた。参謀への抜擢と同時に。江藤はその際、若松には積尸気冥界波をまたも食らわせられるわ、赤松には睨まれ、梅津美治郎陸軍参謀総長などの最高レベルの高官から連続で突撃を食らい、完全に心が折れ、終いには『どうすれば良かったんです、先輩方ぁ〜…』と大泣きしたという。黒江当人の突撃とそれらの効果で、江藤は扶桑海での全スコアを公表し、統合幕僚会議準備室(日本連邦結成での移行のための組織)公式で、扶桑皇国当代ナンバー3(当時、単独スコアでは若本や西沢が全員を上回っていたため)の撃墜王に返り咲くと同時に、ダイ・アナザー・デイ作戦後の欧州若手からの評価改善に繋がった。また、ダイ・アナザー・デイ作戦完了と同時に、サーニャが扶桑に亡命していったため、オラーシャ新皇帝が激怒し、陸軍総責任者を怒鳴りつけたという珍事も起こっている。

「そう言えば、サーニャさん、あの作戦の後、亡命したって聞いたな。確か、ご両親のいる樺太に行ったとか」

サーニャは亡命者として、軍入隊の資格が出る1950年を以て、扶桑軍軍楽隊に入隊する手筈となっている。最も、それは表向きで、実質的には64Fの魔弾隊(ルーデルを隊長とする外人部隊)へ出向が本当だ。軍楽隊入隊後は神田に居を構えるつもりらしく、圭子に不動産会社の紹介を頼んでいる。それはサーニャと知り合い、メールのやり取りで知った事だ。

(オラーシャの革命騒ぎ、確か、2010年代の日本共産党と中国共産党、それとソ連の残党が仕組んだって言うけれど、ソ連って、残党がまだ居たの?時代遅れのコミュニストとかって、裏社会じゃ馬鹿にされてるけど)

買い物をしつつ、オラーシャの革命騒ぎの闇の部分を考えてみる。日本連邦が結成される時代になれば、かつての軍事強国・ソビエト連邦の栄光は誰もが忘れかけているし、日本共産党も『確かな野党』としてしか存在意義が認められていない。中国共産党はバブル崩壊を食い止めようと躍起になっている。自分が元いる世界でも、似たような状況だ。ソ連邦の栄光は『歴史の中の出来事』というのが、調の認識だった。しかし、のび太の両親は、未だにロシアを『ソ連』と呼び続けているので、自分が今いる場所がソ連崩壊から10年に満たない時代である事の実感を沸かせる。

(あ、この時代はコンビニにATMもそんなにないっけ……。学園都市があるから、違うかな?とか思ったけど)

2000年当時はコンビニエンスストアにATMが設置され始めた初期の段階であり、大手コンビニには無いこともあった。立ち寄ったコンビニの風景に違和感を覚えたのは、まずそれが原因だと気づいた。更に、PC用品が置いてなかったり、雑誌で特集されている『最新PC』が自分から見れば、前時代的な代物であるのも、時代相応とは言え、新鮮だった。

(本当に、のび太君たちは私よりだいぶ上の世代なんだな……、OSも化石みたいに古いのだし……これでよくネットサーフィン出来たなぁ)

手にとって立ち読みしてみると、当時のPCは信じられないほどに性能が低い(15年後の水準からすれば)事に驚く。最も、メカに詳しい黒江曰く、『ネットサーフィン自体は古い軽いOSの方が快適だ。21世紀が10年を超えた頃のPCはメモリーがだいぶでかくなってるから、ブルースクリーンエラーが起きない分、マシだけど』とのことだ。これはこの時代、些細な事でブルースクリーンエラーが出やすかったウィンド○ズの9×系統が主流であったので(ウインド○ズXPでも起きる事があるが)、それと比べての感想だろう。

(私の時代って、ここから科学が進歩した世界ってのが分かった……。十年一昔って言うけれど)

調から見れば、十年どころか、二十年近く昔に当たる西暦2000年は『新しいようで古い』時代である。当時は自宅でインターネットができる環境にない家庭(以前の野比家のような)が当たり前、ゲーム機もスーパーファミ○ンがまだ現役な家庭もあったのだ。現在の野比家のように、プレイステー○ョン3の最終型を液晶テレビでプレイするのは、タイムマシン込みの反則行為である。(スネ夫がようやく、プレイステー○ョン2の初期型を買えた程度であるため、如何に反則かが分かる)

(タイムマシンって反則だよね。その時代じゃ影も形もない機器を買ってこれるし。古い時代のものも、ある程度の時代からなら、安く買えちゃうし)

のび太はタイム自動販売機を使い、マジンガーZなどの超合金を当時の値段で買ったりして、購買意欲を満たしていた。のび太曰く、『超合金魂とかは親が目回す値段だから』との事。2000年当時、コレクターズアイテムと言える超合金魂を買える財力は、子供ののび太にはないため、かつての超合金を当時から買う方法を用いていた。これをマニアに転売しようにも、インターネットオークションが根付くのはだいぶ先の時代であるため、のび太は、それに備え、遊び用と保管用とに分け、保管用は地下秘密基地に隠してある。



――野比家に帰ると、のび太が金を入れて、1976年から大空魔竜の超合金を買っていた。ガイアには実物があるのに、だ――

「ただいま……って、それ…ガイちゃんの?

「おかえり。大空魔竜。ガイちゃん見たら喜ぶよ、これ」

当時モノの超合金なので、可動やプロポーションは悪いが、当時としてはよく出来ている。当時としては破格のギミックであるため、その当たりは時代故だ。のび太は基本的に、数年間のお年玉を注ぎ込むが、それは万単位なので、当時ものならば、1000円単位のものであったので、当時から買えば、意外と安い。のび太は当時モノを買い、それをロボットガールズなどとの話のタネにしている。母親がコレクターズアイテムに理解がないため、のび太なりに工夫しているのがわかる。

「確かに」

「まぁ、ロボットでわ〜っとか言って遊ぶ年でも無いから、飾ってるだけだけどね」

のび太の机には、自分が共に戦ったロボ達の超合金がいくつか並べられていたが、未来世界では、マジンガーZはミケーネによって倒され、グレートが襷を引き継いでいたため、Zがあるのは、Zからの流れを重視したためだ。

「それじゃ、おさんどんしてくるから」

「お、おさんどん……。数十年昔に絶えた言葉だよ、それ……」

「え……本当?」

「うん。ちゃきちゃきの江戸っ子のぼくが聞いたことが無いんだから、間違いない」

調が言った『おさんどん』とは、台所仕事を示す言葉だが、明治時代以降は殆ど使われていない古い言葉であった。のび太の反応が予想外なのか、たじろいだ調。のび太の一族は少なくとも、曽祖父(1900年生まれ)の『のび吉』(のび太の祖父『のびる』の父)の代には現在の位置に住んでいたが、その頃でも使われたようなシーンは見ていない。ただし、のび助が中学生であった昭和50年代末までは聞かれたとも言う。

「……」

精神的ダメージが入り、ガクリとうなだれる調。ギア姿で落ち込む姿はシュールだ。

「うぅ、ここ最近で一番効いたぁ……」

「仕方ないさ。僕のパパが、聞いたことがかろうじてある程度だもの。僕は聞いたことないのも無理はないさ」

「そ、それじゃ、作ってるから……」

と、落ち込んだ様子で、調は食事を作りに向かった。のび太はここ最近は多少、自分から勉強するようになっており、その成果で、0点の比率が下がり始めた。これはのび太も、ドラミとは違う方向性の『年下の女の子』が身近にいるようになったので、自尊心をくすぐるからというのも多分に作用していた。また、黒江と圭子が『お前、鉄砲とか好きだろ?国語をしっかり勉強すればもっと好きな銃について知ることが出来て良いぞ。辞典を読むのも良い。 知らない事がいっぱい書いてあるし、そこからなにか面白い事が解るかもしれない。 解らない事を解らないまんまなんて人生損するぞ〜』と異口同音に煽ったのもあり、成績は改善に向かい始め、玉子も多少は寛容になり始めた。玉子は当初、黒江らへ怪訝そうな表情を見せていたが、『のび太を一念発起させてくれる』と知ってからは好意的に接しており、食費の心配もないのもあり、元は祖母の部屋だった二階の部屋を提供している。

「ん?電話だ。ドラえもんかい?そっちはどう?」

「パルチザンの行動を事後に合法にするように根回しを終えたよ。あとはアンドロメダ級を確保しにかかるとこ」

「『今回』はどれになりそう?」

「黒江大佐の記憶でのガイアは確保できなかったよ。なんでも、第7艦隊に配属されてるみたいで。だから、パーツ取り用になってたカシオペアを再整備して運用可能に持っていくよ」

「アンドロメダ級は何隻確保できる?」

「ネメシス辺りも欲しいね。カシオペアは拡散波動砲だし」

「ラ號はどこに?」

「三沢に隠した。あれはノーマークだから、デザリアム。ヤマト型はまほろばとラ號があるから、いいとして、ネメシスの所在を確認中」

「アンドロメダっていくつ生産されてたの?」

「当初の計画だと12隻。間に合って生還したのはカシオペアだけ。あとは航空戦艦として完成させる案もでたけど、損傷が酷いから、U型に切り替えたみたい」

「で、なんか美琴さんの時代に空母型の姿でたけど、あんな感じ?」

「あれは宇宙の運用が前提だから可能なんで、僕たちの知ってる未来じゃ、アングルドデッキ型の普通の空母さ」

「あれじゃ無理なの?」

「トップヘビーなんだよ、あれだと。洋上空母で気を使うのはこれなんだよ。魚雷食らうと転覆するよ、あれだと。だから普通の空母型になるだろうね」

23世紀では慣性制御で浮かすことも可能だが、制御装置頼りを嫌う船乗りが多いため、空母型は洋上空母同様の形状が好まれている。これはアンドロメダでも同じだ。ただ、完全な空母型を造る余裕も無いため、智子から『ミッドウェイ級宇宙空母の失敗』をリークさせ、双方の特徴を備えた航空戦艦を急いで設計させているとドラえもんは言う。

「ただ、前回のミッドウェイは、アンドロメダベースに作ったは良いが、格納庫やアイランドの設計に問題(飛行甲板を波動砲口から離すために格納庫を二層式に、アンドロメダ級の艦橋構造物をそのまま右舷に寄せてバランスが狂ってる)があって水上で転覆寸前になってたって言うから、今回は航空戦艦として造られるかもね」

「なるへそ。」

「それと空軍への根回しもしてるとこ。陸軍と海軍は裏切り率高そうでね」

「大西洋艦隊は?」

「ダメ。まるごとジオン残党と繋がってる」

「太平洋艦隊は?」

「幸い、ジュットランド級戦艦は太平洋艦隊にいたけど、空母があまりない。大西洋は一年戦争の影響が薄くて、空母多いしね」

「あそこはティターンズ派の巣窟だしねぇ。こっちのエゥーゴ派は不利だねぇ」

「元は反体制派だから、しゃーないさ」

デザリアム戦役勃発前、エゥーゴを母体とした部隊は極東を中心とした地域を地盤としていたが、ティターンズ解体後に渋々ながら恭順した部隊はキャルフォリアベースを除いた北米や欧州を地盤として点在していた。彼らは裏でジオン残党とも繋がっており、政府の統制が真に効いているのは太平洋艦隊と太平洋地域の空軍と陸軍のみというのが真相だった。その為、今回は内輪もめ要素も強まると思われ、のび太とドラえもんはため息だった。

「どうする、今回は」

「シンフォギア装者達が加わったけど、仮面ライダー三号には殆どぶつけられない。あれはジュドの器候補だし、神に近いしね。前回の時、大佐が半死半生に追い込まれたから、相当な強さだし」

「三号は大佐達レイブンズかライダー呼んで撤収で良いんじゃないかな?」

「だよなぁ。あれはライダーか、レイブンズじゃないと無理だし」

黒江が前回で聖闘士になった一番の要因は、剣士として限界に強くなっていたところに、仮面ライダー三号という、拠り所となっていた者達と同じ姿の改造人間が現れ、手も足も出ないまま、半死半生に追い込まれたというショックからで、黒江が三号に強い敵愾心を持っているのはそのせいだ。その強い敵愾心は同調により、調にも影響を及ぼしており、切歌との電話でのやり取りで、『三号?ああ、仮面ライダーのマガイモノ?』と口走り、切歌を戦慄させている。黒江が転生しても、憎悪や敵愾心などの負の感情を向ける相手の一人が、彼女自身が敬愛する『彼らの系譜』に歪みを与える『黒井響一郎=仮面ライダー三号』なのだ。彼へ向ける敵愾心は自身が完膚なきまでに叩きのめされたこともあって、調にも強く影響を与えるほど強烈で、調も漠然とした感覚だが、『倒さなくてはならない相手』と認識している。

「大佐、今回は三号をギタンギタンにして、反吐吐かせてやるとか息巻いてるよ?」

「前回が全身が骨折だしね。しかも倒れてるところに追い打ちかけられて、ゲドゲドの悲鳴あげて、のたうち回るって最悪の負け方だったし、黄金聖闘士になって、それを返すつもりなんだろうね」

「今回はもうなってるよ」

「そうか、早まってるっけ」



黒江は屈辱を返すという意気込みであり、その強い敵愾心が調にも影響を強く及ぼしており、黒井のような『善人を装いながら、実は純粋な悪の立ち位置にいる者』やウェル博士のような『歪んだ英雄願望で世界を滅ぼそうとする誇大妄想癖』を忌み嫌う言動を見せるようになっている。また、この頃になると、なのはとフェイトがグランウィッチへ覚醒しきっており、ヴィヴィオを預けて、未来世界で待機状態にある。特になのはは子供時代、ゲッター號に撃墜されたことで、グランウィッチに覚醒していたらしく、ミッド動乱期には、はやても引くほどに『戦士』になっており、天命が同じ前世の記憶までも得ている。フェイトもミッド動乱期の平行世界転移時に覚醒し、そこで大暴れしている。また、前史での記憶が全て目覚めた事により、調とも面識があることになり、なのはは『調』、フェイトは『月詠』と、調の事を呼んでいる。グランウィッチ化に伴い、なのはは青年期にはそれまで隠していた戦士としての血の目覚めにより、言動に荒さが目立つようになっているし、フェイトはアイオリアと同調し、戦役直前には既に、アイオリアに憑依されている。そして、調は黒江が前史・今回の二回に渡り、自分に成り代わって、フロンティア事変/魔法少女事変の解決に尽力してくれた事をそのルートで知ったため、黒江に献身的に仕え、ウィッチ世界では『黒江の従卒』のように見られているし、のび太の家にも常駐している。それを承知の上で、デザリアム戦役に臨むための準備を進めるドラえもんとのび太。

『のび太君〜、食事出来たよ〜』

「あ、食事出来たみたいだから切るよ」

「OK。明日には、箒さんと菅野大尉がそっちに行ってくれるって言うから」

「分かった。調ちゃんに伝えとく」

電話を切り、部屋を出て、階段を降りろうとするのび太だが、案の定、階段を踏み外し、転げ落ちそうになる。そののび太の悲鳴を聞きつけて、調が落ちてくるのび太を受け止める。

「あ、ありがとう。助かったよ」

「のび太くんの家の階段、急だから……」

「まぁ、昭和30年代に建て替えた元借家だしね。ん?ギアの上からエプロン?」

「いくらなんでも、料理する時は、ね?」


流石に、そのままの格好で料理をするのは気が引けたらしく、エプロンをギアの上からしている。切歌やマリアが見たら目を回しそうな姿である。小宇宙覚醒で、バックファイアと制限時間の問題が無くなっているからこそ可能な姿だ。

「それと、し、師匠からのいいつけだから……」

やはり恥ずかしいらしく、顔を赤らせ、モジモジする。黒江からの言いつけは守るが、羞恥心と格闘しているらしい。

「ハハ、なるほどね。ありがとう、おかげで助かったよ」

「うん……、け、怪我しなくて良かった」

のび太は青年期の片鱗の『誰にでも優しく接する事ができる』性格を見せ、普段がもてない男子であるのが嘘のようなイケメンぶりを見せる。実際、青年期のび太は顔立ちがそこそこ整い、優しい性格なのが吉と出、青年時代は『イケメンの敏腕環境官僚』として鳴らすので、今のこの出来事はその片鱗であった。調はのび太の人間的魅力を垣間見、師と共有している記憶と、今回の出来事がヒットとなり、のび太と良い友人関係に発展してゆくのだった。また、このエピソードが切歌に知られ、切歌が『調を誑かしたデスね〜!』と、イガリマで、のび太を追いかけまわすが、ジャイアンから逃げる時の健脚ぶりで追撃を躱した(箒の計測で、並のスポーツ選手真っ青のタイムだった)という。


押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.