短編『ジェノサイド・ソウ・ヘブン』
(ドラえもん×多重クロス)
――のび太と調の共同生活はおおよそ半年近く続き、その間、黒江の言いつけを守り、シンフォギアを維持したままで生活していた。それを聞いた切歌は膨れたが、それより前に、レヴィの水鉄砲にビビったりし、いいところがまるで無かった。また、シンフォギア展開に制限が消えている調に嫉妬する一幕があった――
「うぅ。あのお姉さん、とても怖かったデス……」
「ああ、あの人は雰囲気が裏世界の人だから」
「なんかサラッと流してるデス!」
「レヴィさんと会ってないの、君」
「ワタシはその時はすれ違ったりしただけで、会話までは。マリアたちはなんだか親しげに……ぃ、いぃ!?」
「のび太、今日の晩御飯買って来たぞ。お、起きたか、えーと、切歌?」
「アナタは……!?ど、どうしてマリアのアガートラームを!?」
箒は調に付き合って、アガートラームを展開した姿を見せた。切歌が戸惑ったのは、声色がマリアに酷似していた(箒はマリアを若返らせたような声色である)事と、アガートラームのギアである。纏える理由は色々あるが、声色もあり、妙なフィット感がある。赤椿が手元になく、聖衣も持ってない状況では、シンフォギアは身体保護の観点から使い勝手がいいと踏んだ箒は、調に付き合うことにしたのだ。
「師匠がコピーしてたんだよね、シンフォギア。空中元素固定の技能持ってるから、例え聖遺物でもコピー出来るんだ」
「私も驚いたが、こいつは使い勝手いいからな」
「いやいやいや!?シンフォギアをそんな、データのコピー感覚で!?」
「あの人は神だ。そのくらいのことは朝飯前だ。おっと、自己紹介が遅れたな。私は篠ノ之箒。調の姉弟子で、射手座の黄金聖闘士だ。ISの操縦者でもある」
「あ、あの時の!?」
「そうだ。ダイ・アナザー・デイ以来になるな」
「あの、ギアの制限時間は?」
「お前、魔鈴さんから小宇宙の事は聞いたな?」
「は、はい」
「目覚めれば、第二種適合者(LINKERで適合者となった後天的適合者)ではなく、第一種適合者と同等……いや、それ以上になれるから、制限時間はないな。」
「うん。私もここ数カ月は風呂と用を足す時以外は展開しっぱなしだよ?」
「なんデスかそれぇ!?」
「お、なんだ、調の友達が来たって?」
「あ、ガイちゃん。野球の助っ人はどうだった?」
「にしし、コールドゲームでのしてやったもんね。ジャイアンのとこは弱いけど、あたしが出れば楽勝さ」
「お前、小学生相手にハイドロブレイザー投げたのか?」
「なのはなんて、アステノイドキャノンを投げてたけど」
「あいつ、加減を知らんのか?」
呆れる箒。声色が似ているせいか、マリアが喋っているように聞こえ、不思議な気分の切歌。
「レヴィさんはどこいった、ガイちゃん」
「ああ、レヴィなら外で薬吸ってるよ。ガキの教育によくないとかってさ」
「あの人、そこは気にしてるのか?」
「まあ、傍からみりゃ、タバコだしね。のび太のパパさんよりはマシだけど」
「あの方はチェーン一歩手前だからな。ガランド閣下も言っておられたが、外国だと『タバコを吸わないと、大人と見なされない』風潮あってな。そこのところで苦労するらしいな、日本人」
「まあ、時代が70年ずれてるしね。レヴィが燻煙喉薬布教してるみたいで、Gは次第にそれに移行してるよ。智子やビューリングも吸い始めてるとか」
「智子さんはロールプレイの都合もあるだろうけどな」
智子はバラライカになりきるため、レヴィの勧めで吸い始め、ダイ・アナザー・デイ作戦の後は愛用者へ移行していた。これは愛煙家のビューリングに取ってもいいニュースであり、ビューリングも智子と同じ時期に移行している。別の世界にいくと、タバコの税率が高い事に愕然としたからだ。
「お前、何日間いられる?」
「えっと、一週間はいられます。長めにお願いしたから」
「うーむ。何日か、私達のトレーニングを見てみるか?何気ない生活のようだが、修行になる」
「なんか、人気バトル漫画で見たような」
「どっちかと言うと、全ての食材に感謝を捧げる主人公の修行にちかいかも」
「どっちみち、少年ジャ○プじゃないデスか」
「まー、そこはね」
調は切歌の記憶にはあまりないほど、明朗快活な笑いを見せた。のび太が買っている漫画雑誌の一つがそれで、この近所に住む人気漫画家『フニャコフニャ夫』も『ライオン仮面』の特別編を描き下ろしている。フニャコフニャ夫は過去、ライオン仮面の本編の筋書きの件で、ドラえもんに迷惑をかけており、また、ドラえもんに漫画模写の才能がある事が判明したので、ドラえもんはアシスタントのアルバイトをしており、彼とのコネクションを持っている。また、この時期の彼の新作『時空パトロール7』も、雑誌掲載までにのび太のイタズラが絡んでいたりする。将来にジャイ子がストーリー漫画家として成功する裏には、のび太とドラえもんの助力もあったのである。
「この世界には、私達の世界にはない漫画もたくさんあるから、暇潰しに結構なるよ。例えばこれ」
「少年ヨンデ―の『ライオン仮面?」
「この途中の話が面白くてね」
のび太達が掲載時に話題にし、ドラえもんが彼とコネクションを持つきっかけとなった話をまとめた『絶体絶命、ライオン仮面』編。ライオン仮面を救援しに現れた奇抜なヒーロー達がライオン仮面と同じ流れで連続して捕虜となるストーリーは掲載時に、悪い意味でマニアを、いい意味で子供達を惹きつけた話。調も読んでいる内に大笑いしてしまうほどのインパクトがあったヒーロー。その代表的なのが『オシシ仮面』。ライオン仮面の実弟で獅子舞の格好のヒーロー。彼の断末魔『グエ―――!!』は後年にまで語り継がれる迷シーンである。のび太が青年に成長した後の2010年代では、『オッサン達のコスプレの定番』となるほどの人気だ。切歌も、オシシ仮面のインパクトのある断末魔のコマで吹き出してしまう。このコマはのび太が高校生の時代にはストラップ化しており、のび太が高校生活を満喫出来る要因にもなった。この時期には原作がバリバリに連載中であるので、話はまだ続いている。とにかくも、『グエー!!』で漫画史に名を刻んだライオン仮面は、フニャコフニャ夫の代表作である。また、彼のオフィス兼自宅は佐倉魔美の通学圏内でもあり、不思議な事に、不思議な存在と縁がある。それに関連して、切歌は気づいていないが、ダイ・アナザー・デイ作戦の終了後、各地に散る前のスーパーヒーローたちとののび太とドラえもん、調の三者の記念写真が本棚に置かれており、歴代仮面ライダー達の他には、『超獣戦隊ライブマン』のレッドファルコン、『光戦隊マスクマン』のレッドマスク、『電撃戦隊チェンジマン』のチェンジドラゴン、『太陽戦隊サンバルカン』のバルイーグル、『高速戦隊ターボレンジャー』の5人と写っていたりする。日本が誇るスーパーヒーローとのショットは中々できるものではない。日本は年が変わるごとに、新しいヒーローが誕生していた時代もあるので、中々貴重なショットである。特に、活動終了したヒーローは市井から姿を消すことが多い時代の戦士達なので、尚更だ。彼らの薫陶を受けた事も、調が他世界と決定的に違う心を持つ理由に繋がっている。彼らは戦士として、英霊の資格を持つに値する者達。朱に交われば赤くなるの言葉通り、他の世界の彼女とは違い、明確に生きる理由や戦う理由を見出したのである。(その事が理由で、雪音クリスは心に溜まっていたフラストレーションが爆発し、のび太を追っかけまわし、その挙句に早打ちでのび太に敗北し、眠らされた。これで、のび太の技能の高さが証明された)
「確かに。でも、調。あの作戦の後、クリス先輩がムキになって、のび太さんを追っかけまわしてましたけど、どういう事だったんですか?」
「あー。先輩、私がすぐに師匠についていったのが気に入らないようなんだよね。先輩、響さんとは違う意味での純粋な後輩って、私達が最初みたいだったし」
「それ聞くと、先輩って子供みたいな所あるんデスね」
「先輩、戦災孤児だからなぁ。レヴィさんの言葉に眉顰めたとか?」
雪音クリスは戦災孤児であるため、シンフォギア装者の中では、実のところ、一番にリン・ミンメイの伝説に感動している。これはシンフォギア装者として戦っているが、子供の頃は『戦争の火種を無くしたい』とする願いを持っており、それをフィーネに利用されていた経緯によるもので、血と硝煙に愉悦を感じる旨のレヴィの発言に突っかかるほどだ。もちろん、レヴィには相手と見做されていないので、クリスは溜まりに溜まった不満をのび太にぶつけてしまい、彼の手で腕の差を示されている。
「あの人、どうみてもカタギじゃないデスよ」
「外見はね」
レヴィは圭子の『仮の姿である』が、最近は常態化している。元の容姿で行動が困難な地などでは、レベッカ・リーとして行動する。ジャーナリストとして活躍し始めた頃、、のび太が小学生の時代では、レヴィとして普段を過ごしている。なお、切歌は普段着姿だが、これはレヴィがイガリマの待機形態のペンダントを預かっているからだ。
「あ、ペンダントがない!」
「レヴィさんが預かってるよ。それに、今の切ちゃんじゃ」
「うぅ。早く扱えるようになりたいデス…」
切歌はこの時点では、まだ修行の途中であった。当然ながら、のび太をとっ捕まえようとした時は持参したリンカーを服用している。本来なら体内洗浄の必要があるが、エクスカリバーを食らったので、その必要はない。デザリアム戦役の際に持ち込まれたものが解析され、切歌とマリア用に一定数が用意されたが、切歌が覚醒したので、マリア用として使用される事になる。マリアも覚醒を目指したが、デザリアム戦役の終戦までには間に合わずじまいであった。同じアガートラームを扱え、同じ魂を持つ箒と親交を持つのだが、箒はマリアの戦闘センスに、マリアは箒の持つ潜在能力に羨望を感じあったという。また、箒との同調がマリアを小宇宙へと導く事になるが、それはここからは未来に属する話だ。
――デザリアム戦役が始まる直前の状況のウィッチ世界は、ダイ・アナザー・デイ作戦の終了と同時に、未来に赴くウィッチと、太平洋戦争の準備を始める者とに大別されていた。特に、覚醒組は全員が未来世界の最前線行きを志願した上、ガランドが電撃辞任し、後任にラルを指名したという混乱が起こった。これはガランドがG機関での活動に専念するからで、前史では軍部を去ったが、今回はラルの空軍総監就任を懸念した周囲の説得で大将昇進と自由行動権を得ている。これはミーナが西住まほとの同調後はキャラに変化が生じ、政治的な動きに興味をあまり見せない『実直な前線形の軍人』と化したため、ガランドの存在がラルの制御に必要とされたというべきだろう。また、ラルはカールスラントウィッチ中でも特に高い戦闘能力を持つ。御坂美琴の能力をそっくりそのまま得たからで、そのスペックはパワーアップ後の美琴と同等であり、アルトリアに次ぐ戦闘力を持つ『対軍』ウィッチである。カールスラントのGウィッチとしての直接戦闘力では、アルトリア>ラル>ハルトマン>マルセイユとなる。これは元々の空戦技能によらない順位である。
「扶桑は大変そうですな、アルトリア」
「アナタも色々と密約を結んでいたようですな、グンドュラ。ミーナ大佐が変わられた事に安堵しているように見受けられますが」
「もし、元のままであれば、密約を怒られていたでしょう。私はかつて、カールスラントきっての悪童の名で知られてましたから」
ラルはアルトリアの事に真っ先に気づいたため、敬語を使っている。階級と立場はラルのほうが上だが、元ブリタニア王であるアルトリアに敬意を払って、敬語で接している。
「ああ、定子を引っ張る代わりに、芳佳を軍に入れるというものですね?」
「他ならぬ坂本との密約ですが」
「ミーナが前の状態でいたなら、間違いなく、MG34でも乱射してますよ、貴方に」
「違いない」
ミーナは作戦後は口調もまほのような冷静沈着なものに変異し、政治的策謀へは、ほぼ興味を失ったため、ある意味で安堵したラル。その代わりにハルトマンが政治的舞台に立つハメになり、今やカールスラント空軍有数の多忙ぶりだ。これは、まほとの同調で『戦えれば、それだけでいい』とする質実剛健の西住流の思想が作用したのだ。元の政治力そのものは損ねてはいないのだが、使おうとする興味が薄れたとも言える。当人曰く、『組織での栄達にこだわるのが馬鹿らしくなっただけだ』との事で、相当にまほの影響が出ていた。
「あの方が変わられた事で、最も安心したのは貴方では?グンドュラ」
「確かに。空軍総監に任じられ、ミーナを一気に追い抜いたのもありますが、ヒステリックなところが鳴りを潜めたところですか。前史ではレイブンズ関連で暴走し、苦労させられましたので」
「でしょうね。私は私で大変でしたが。進水式の後、やたらとインタビューしたがる雑誌が増えましてね」
「貴方は円卓の騎士だった。それがカールスラントの王室の係累として転生したのです。否応なしに注目されますよ」
ダイ・アナザー・デイ作戦後、アルトリアはハインリーケの立場を継いだものの、インタビューを求める雑誌が多すぎ、ガランドが規制をかけてくれたという。公では、ハインリーケとして存在している以上は色々と避けられない道である。また、今までのハインリーケを知る者ほど、アルトリアとしての人物像には瞠目する。騎士の理想とされたほどの高潔な人物であるので、元506の同僚だったアドリアーナは事を知ると、臣下の礼を取ってしまったほどである。その為に、今までと変わらずにペアを組める黒田の凄さが際立つのだ。従って、黒田は黒江とペアを組みつつ、圭子のレヴィモードについていけ、アルトリアからも信頼に値すると評価されているために、黒田家当主の就任の反対意見を黙らせたと言える。
「邦佳の当主就任の件ですが、黒江大佐と共に、黒田本家へ圧力をかけました。お上の裁可にも関わらず五月蝿いようなので」
「硬直化した旧家の仕来りなど壊すに限る。黒田大尉は充分に当主の器ですからな。」
ラルは美琴から得た知識により、扶桑の読継新聞の記事を普通に読む。黒田の当主就任の記事である。日本人としての知識が加わった状態なので、ネイティブ級の日本語が話せる。カールスラント人としては稀有な事例である。(他は、ハルトマンやバルクホルンなど、前史で晩年までに何かしらの理由で扶桑に滞在した経験があるGウィッチが該当する)
「私はちょっと日本語に不安があるんですよ。ベースが美琴のものだから、語彙がね」
「なるほど。日常会話では問題ないですよ」
とはいうものの、ラルはこの時(1945年秋)、18歳だが、美琴は中学二年生であるため、14歳。語彙がかなりラル本来のものより幼い印象を与える。元になったのが女子中学生という事を考えれば、美琴はかなり大人びたほうだが、相応に幼さも残している。そのため、密かに日本語の勉強をしている。(のび太の両親との会話には当座の対策として、翻訳こんにゃくを用いた)
「とはいうものの、語彙が不安なので、翻訳こんにゃくもらったんですよ。貴方は完璧なのが羨ましい」
「そこは元・英霊ですので」
「しかし、デザリアムとの戦いが終われば、今度は太平洋の戦。忙しないな。アルトリア、南洋に住まいは?」
「黒田大尉のツテで、一戸建てを確保しました。どうです、グンドュラも」
「ああ、閣下に申し出て確保をお願いします。当分はあそこに駐在するでしょうから」
「ニューレインボープランのほうはどうです?」
「資材確保は完了、地下ドックの完成は目処は立っています。後はベース艦の選定だそうです」
「リバティーの完成までに間に合うか。改モンタナをラ級にされても問題だが、ドリルと波動エンジンの確保に失敗している。今頃は修理改装の最中だろうな」
ラ號はモンタナを撃破したものの、肝心の動力源とドリルの回収に連合軍が失敗したため、実質的にはプラマイゼロになってしまい、連邦軍を落胆させた。回収出来たのは、ドリルと波動エンジンを覗いた部位だけだからだ。副動力源も機能停止しており、不時着したモンタナから回収されたデータによれば、ラ級としてのフリードリヒ・デア・グローセは53cm砲の可能性が出てきた。その為、ラ號は更に大口径の56cmショックカノン(ブルーノア用の試作品)を乗せ、船体を拡大強化する計画が実行されている。これぞ大艦巨砲主義の極致である。
「大艦巨砲主義が息を吹き返しましたね」
「核兵器を花火感覚で撃ち合うよりは、よほど健全な戦いですよ、アルトリア。大艦巨砲主義も極端になれば、航空機も怖くない」
ラ級の存在で大艦巨砲主義が息を吹き返したわけだが、キングスユニオンも、日本連邦も、ダイ・アナザー・デイ作戦までは戦艦の存在に懐疑的な層が多かった。しかし、いざ戦艦が存在感を示した途端に手のひら返しである。これは坊ノ岬沖海戦の結果が有名なため、旧世代の兵器である戦艦に多額の費用をかけて近代化する意義が日本の財務省から提唱されたが、ラ級ではない通常の大和型が、イージス艦が粉微塵になるほどの威力の対艦ミサイルを物ともせずにイージス艦を粉砕した事に由来する。イージス艦は確かに優れた能力を持つが、戦艦の主砲弾の被弾は想定外である。ミサイルで初弾は防げたとしても、続けて来られれば、実質的に駆逐艦でしかないイージス艦に為す術はない。その事と、重装甲による耐久力は政治的に人員の戦死に五月蝿い戦後日本に於いては好意的に見られた。仮想戦記などでは、過去の兵器に万能と描かれる事もあるイージス艦も、実際は同等の能力の電子装備を持つ戦艦には、『近づかれれば一巻の終わり』である事がわかった事により、今度はイージス艦の存在意義が問われる珍事が起こった。元は防空艦であるイージス艦に万能性を求めるのは間違いである。ダイ・アナザー・デイ作戦後、日本連邦では、巡洋艦や戦艦といった存在の使い方を学ぶセミナーが扶桑側主体で開催される始末である。これは21世紀の海では、大規模海戦が遠い昔となっていたためで、海自も自身が貸与された大型戦闘艦の存在を扱いかねているかが分かる。今回においてレンタルされたのは、数が多い超甲巡であり、その内の4隻だったが、250m級の船体と、21世紀の海では、異例の巨砲を備えた同級は母港が問題になった。大和型の設計がある程度適用されたデザインの大和型よりは小ぶりの塔型艦橋は人気を博している。今回、『扶桑軍の打撃艦隊を指揮下に入れた際の訓練』も兼ねて、時の海上幕僚長が推進させた事だが、これが太平洋戦争でプラスに働く事になる。また、横須賀や呉への寄港かその母港化も検討されたが、没になった。海保の海上交通センターが21世紀では異例の巨体の戦闘艦の通行を懸念したからだが、超甲巡や、寄港する大和型は佐世保が母港と定められた他、豊後水道経由であれば問題ないため、寄港地に加えられたという。
「日本の新聞ですが、超甲巡は一般に受けがいいようだ。艦橋から煙突にかけては大和型と共通規格化されているのが効いているようです」
「後ろの部分に垂直型のマストがあるのを除けば大和型ですからね。それを大和型と同型のに改装する計画があるようですね?」
「欺瞞のためらしいですよ、それは」
「まぁ、元々はアラスカ級を破るために設計された艦種ですが、金剛型の夜戦用途の代替目的で作られましたからな、あれは」
超甲巡は欺瞞の意図で、マストを大和型と同様のモノに換装し、大和型の所在の欺瞞に使う案が海自から出されていた。デザインに類似性があるからだ。これは大和型の存在は21世紀では余りにも有名なので、今後は扶桑が思うほどの秘匿は困難であると評議会で議題になったからだ。扶桑側も、レイブンズのリークで大和型が公表されたのを機に、世界各国が対大和型を目指して、新戦艦を次々と作った例から、その自覚はあると海自側に告げた。その際の議題は『大和型に対抗できる建艦計画の狂想曲について』で、扶桑側造船関係者の戸惑いが伝えられた。
――ダイ・アナザー・デイ作戦から数ヶ月後にあたる1945年冬――
「貴方方は思い至らなかったのですか?大和型が登場すれば、それに対抗できるフネを各国が血眼で作ろうとすると」
「大和型の計画段階では、まだ戦間期型の戦艦が新型だったのですよ?貴方方が旧型と詰った紀伊型も、完成当時は世界最優秀戦艦の一つでしたのですよ」
扶桑の艦政本部の関係者は予想外の反応に驚いていた。彼らにしてみれば、まさか各国が大和型に対抗しようとし、それも戦艦を最高でダース単位で作ろうとする国が現れること自体が予想外だったのだ。紀伊型は完成が1928年以降にずれ込んだため、加賀型以前より世代が新しい装甲を採用していたし、ダメージコントロール技術も当時の最新のそれを採用していた。艦政本部としては『軍馬としての戦艦』として、その当時の最高峰を作ったのだと。
「設計こそ、八八艦隊計画のそれを流用しておりますが、実際の建艦は今上天皇陛下が即位なされてからです。加賀型よりも新しい装甲を使用しています。28年から30年代前期に於いては最高峰の一つです」
「しかし、モンタナには」
「あれは世代差です。設計が大正末期の艦が、ここ5年以内に計画された艦にがっぷりと組み合って勝てると?だからこそ、紀伊型は本来、今頃には近代化の予定だったのです。しかし、新型怪異には紀伊型の砲では打撃力不足が懸念され、大和型が計画されたのです。移動司令部兼最終兵器として」
大和型は本来、最高の防御力と攻撃力を持つ移動司令部兼最終兵器として考えられた事を改めて告げる関係者。大日本帝国とは、計画した理由がそもそも異なるのだ。従って、当初計画では、二号艦=武蔵で打ち止めだったのだと。信濃以降は予備艦不足を懸念した用兵側の要望で加えられたもので、前線で打撃力として運用する考えは、計画当時は無かったと告げる。
「当然、当初計画では大和型を前線運用することは考えもしなかったし、そうするまでもないとする考えが主流でした」
「アイオワ、いや、モンタナが現れても、そのつもりだったので?」
「我々は国家間戦争がそもそも可能性の低いものと考えておりましたし、貴方方の常識でモノを語らないで頂きたい」
「しかし、それは起こった」
「ええ。あれは我々が国民から責められました。脆いフネを造りおってとか。しかし、まさか、たやすく305ミリもの厚さの傾斜装甲を貫かれるとは…」
艦政本部は呉襲撃の直後、扶桑国内から非難轟々、モンタナに太刀打ちできなかった事が報じられ、威信はガタ落ちだった。住民の造艦運動が国内のウィッチ閥が推進させていた信濃型航空母艦の計画を立ち消えにさせた。計画は搭載機策定の段階に到達していたが、母体の110号艦と111号艦がそのまま戦艦として続行されたという経緯がある。これはジェット機運用には、大和型の船体すら小さいことと、速力不足が判明したからと、110号艦用の各部パーツが地球連邦軍のFARMの実験に使用されたのも要因だった。その結果が良好であった事、地球連邦軍はその上で、モンタナの次が現れるであろう事を伝えた。それが超大和の計画の復活理由だ。扶桑軍はティターンズが持ち込んだ第4世代、第4.5世代ジェット戦闘機に太刀打ちできなかったウィッチ達が住民から怨嗟による迫害を受けた事を受け、緊急声明を出した。
『予想外の新砲弾は軍が想定しうる中でも最大限の貫通力を持つ物でした。今後の艦艇開発ではその点を考慮し、現行艦艇にも改良を進めて行きます。また、ウィッチ達が立ち向かった奮進機は未来世界の超音速機であり、扶桑海七勇士の内の二人を以ても、現有機では対応は甚だ困難です』
と。扶桑海七勇士の内、武子と若本がその場にいたのを発表し、国民を鎮めようとした。扶桑海七勇士は誰がメンバーにいた事は記憶から薄れても、『無敵の英雄』扱いであった。これは呉にいたウィッチ達は住民から情け容赦ない罵倒を受けて鬱病状態に陥ったり、家を暴徒化した住民に焼き討ちされたり、不時着したのを、殺害は無いな、集団暴行(性的含む)で精神的にリタイアする例が生じていたのを憂慮した山本五十六の発案だ。若本も、入院先から、竹井の電話での助言で、『一世代やそこいらの差なら、腕でどうにもなるが、あそこまで次元が違うとかタマランわ!速度が違い過ぎて交差戦で一撃当てるのがやっとだったぜ』とする発言をインタビューで発表した。若本で駄目なら、殆どの扶桑ウィッチが駄目だというのは有名だからだ。それ故に、往時に無敵だったレイブンズのカムバックが切望されたのだ。黒江達の現役復帰が軍発行の情報誌で報じられたのは、未来世界のメカトピア戦役が終わった辺りであった。扶桑での日付では、1945年に入るか否かの頃である。レイブンズの華麗なる復帰劇が特集された裏には、各地にいるG達へ黒江と智子の覚醒を知らせる意図のもと、黒田が糸を引いていた。その当時の新聞は一面記事であり、後輩である竹井と坂本が『寄稿』している豪華なものだった。写真はメカトピア戦役直後に、VF-19シリーズの飛行訓練を受ける智子と黒江の姿を移したスナップで、レイブンズの経歴も、江藤が流した未確定スコアも含めて掲載されていた。このスコアの公認の是非で江藤が長老二人にこってり絞られたという裏話もある。
「今の事態に至った事は予想外でありましたが、紀伊型の陳腐化は充分に認識しております。大和型の増強がその証です」
大和型の増強は信濃型航空母艦の計画の撤回がなされた打撃と引き換えに、予算削減を避けるための海軍の選択であった。扶桑は日本帝国より議会の影響力がかなり強く、不手際をした海軍に憤る呉の衆議院議員達が海軍予算の削減を叫ぶのが恐れられていた。その対策が大和型の増強だった。
「我々は111号、つまり戦艦『甲斐』までは竣工し、更にその次の三河も建造中です。我々としてはかなり奮発しているのですよ」
彼らは海自へ説明する。扶桑は見かけは海軍国家だが、レイブンズの活躍で陸軍系組織のほうが予算が潤沢である時期が続き、近年の動乱で増えてきてるのだと。レイブンズは海軍系にかなり好意的であり、源田実の子飼いであるというのは上層部に知られている。扶桑は太平洋戦争に至って、ようやく完全な海軍国家になるが、それは予算配分が是正されたからである。(陸軍航空部隊の分が独立空軍となり、海軍の基地航空の予算も空軍に回された故でもあるが)
「井上大将が愚痴っておられるが、空軍は陸海の合同部隊ではだめなのですか?」
「我々はそれで完膚なきまでに負けましたが?それに、組織戦闘を重視しているとあるが、実際はエースの腕に……」
日本側は、空軍は『独立した軍隊である』とする思考を持つが、扶桑側は空軍への認識を『有事に作る合同部隊』と考えていたが、同位国が防空戦に敗北している事を持ち出されても、なんとも言い様がない。日本側のトラウマでもあるので、そこは仕方がないと言えるが、当然ながらウィッチの気持ちは考えていない。高度10000mの爆撃機編隊を血祭りにあげる訓練など、9割の部隊がしていない。しかも、後続機は高度15000を高速で飛ぶが、それを国家間戦争で用いる事は初めての事態なのだ。多くのウィッチの装備は12.7ミリ銃を一丁か、打ちっぱなしのロケット発射器。大口径砲持ちすら稀有なのだ。そんな彼女らにぶっつけ本番で12.7 mm AN/M2機銃 12門、20 mm 機関砲 1門の防御砲座を持ち、20ミリ砲では中々エンジンにも火がつかない化物を200機も相手させるほうが無理だ。扶桑軍がウィッチ閥を相手にしなくなり始めたのは、この問題が重く伸し掛かったからだ。また、高高度爆撃を多数でされたら、現有のウィッチでは数がそもそも足りない。怪異と違い、装甲が魔力で脆くなるわけでなく、人同士で戦う事実を否応なしに認識させる機首のキャノピーが厭戦を掻き立てるため、MAT設立と同時に六割が移籍したのも当然だ。扶桑軍が極秘に可変戦闘機運用部門を空軍の精鋭部隊や本土防空部隊に置いたのも、空軍のウィッチの数が思ったより少なくなったので、単独での独立した部隊として各地へ回せなくなったためである。その為、Gウィッチが一箇所に集められるのも不思議では無く、この時期には既に『軍の航空ウィッチは温情と慣例で在籍させているだけ』と陰口を叩かれるのも横行している。Gウィッチはこうした動きに対抗し、存在意義を示すために戦果を常に求められていたのだ。黒江達がVFを積極運用する選択を選んだのも、陸戦ウィッチが『CASと陸戦ウィッチによる機動歩兵戦』で活路を見出したのに対し、超重爆に効果が疑問視される航空ウィッチは生き残りを模索していたからだ。
「黒江大佐たちは来訪者達の『バルキリー』を買い、使っていますが?部隊単位で使っているので、B公は恐れるに足らず。それで納得しないようなら、本土にバトル級でも置けばいいですかな?」
扶桑側は切り札を切った。バトル級可変ステルス攻撃宇宙空母とバルキリーの存在を告げたのだ。黒江達が地球連邦軍にも在籍しているため、バトル級可変ステルス攻撃宇宙空母を23世紀から派遣させることが合法的に可能なのだ。デザリアム戦役を控えた段階でも、マクロス1から4船団用のバトル級や、バトル13などは手空きであり、増派可能であった。
「ば、ば、バトル級!?」
「左様。第一世代型ではなく、後発世代のマクロスです。トランスフォーメーションも可能です」
宇宙大航海時代の宇宙空母を持ち出せば、21世紀の如何な軍隊も太刀打ちできない。マクロスは初代型の時点でその威力が有名なので、その後継艦を呼べる時点で既に、自分達と組む意義は何かと問いたい海自。
「ぶっちゃけますと、技術格差がありすぎたのです。彼らと我々とでは、現代人と古代ローマ並の格差ですので」
移民船をポンポン造れる技術を持つ者と、20世紀前半相当の技術レベルの者では、それこそ20世紀と古代ローマ並に格差がある。恒星間航行が当たり前、月単位でマゼラン星雲まで行ける技術を持つ地球連邦とウィッチ世界では、悪く言えば、コロンブスと先住民族にも例えられるくらいに差がある。それ故、地球連邦に、『比較的にウィッチ世界と技術レベルが近い』時代と接触を勧められたのが事の発端である。
「彼らが勧めたのですよ、貴方方との接触を。そういうことです。貴方方の政治屋連中には苦労させられましたが」
ここに至り、日本の海上自衛隊は、ウィッチ世界の背後に星間戦争を経た後の自分達の末裔が控えている事を知った。将来、少なくとも、ゼントラーディとの戦争が控えている事を知ったわけだ。それがいつか、は明かされなかった。実際には21世紀から100年もすれば、統合戦争から一年戦争に至るが、あまりに非現実的であるからだ。表向き、『直接の未来とは限らない』とは前置きされているが、実際はアチラコチラに伏線が貼られている。少なくとも、統合戦争の伏線は存在し、日本の強大化に不快感を持つ国々が潜在している。銀河連邦に日本が議席を持っていた事、オーバーテクノロジーを太平洋戦争で使おうとしていた事などから、日本は特に警戒されている国だ。特に、それに不快感を持っていたのがアメリカ合衆国であった。日本が戦中にドイツからオーバーテクノロジーを得ていた事は承知しており、自分達より先にラ級のパーツを完成させ、超人機を完成させていた事を背景に、日本に警戒心を持ち続けていた。東條英機は戦後直後に、『確かに、サイパンを失った段階で投入を決意したのは遅すぎたかも知れんが、大和民族の滅亡を避けるためにも、我々は敗者に甘んじよう』と述べたというが、東條は全てを葬ったのだ。自分の命と引換えに。ウィッチの軍事利用計画もそれに含まれ、東條はオーバーテクノロジーの産物やウィッチを抱えたまま、大日本帝国と共に歴史の闇に消え去った。だが、2017年。ウィッチの軍事利用計画に関わっていた元・少尉が死の床につく際に、その資料を公開した事で、軍に女性を雇用する計画があった事が知れ渡った。それがウィッチであった事も。これは日本にウィッチがおり、東條英機が戦況打開の切り札として、ストライカーを研究させていた事の証明であり、宮藤博士のような人物はいなかったが、ストライカーの試作品は45年4月には完成していた事、華族や士族などを問わず、数十人はリストアップされていた事を。実現していれば、日本初の女性戦闘部隊であり、女性に軍隊が門戸を開放したという証明になるはずだった。また、そのリストアップされていた者達の生き残りがウィッチ世界との交流開始後に口を開き始めたため、21世紀人は日本帝国への認識を少なからず見直す事となる。日本帝国は終戦間際とは言え、女性軍人を求めていた事は、女性の社会進出は戦中に始まっていたと言うことだからだ。彼女らへは軍人恩給がきちんと支払われており、極僅かの期間であるが、士官待遇だった事も確認されていた。戦後に忘れ去られていたのは、彼女らが口を噤んだ事や、機密書類の処分などが大きい。日本はこれを機に、ウィッチ世界への償いの一環として、NGOを隠れ蓑にして、ウィッチを発掘する事にし、大日本帝国の時代にリストアップされた者の子孫を中心に調査し、才能があれば、ウィッチ世界へ派遣するという手法でウィッチ世界への『償い』を開始する。また、日本には超能力者/魔術師が意外に多くおり、旧・日本軍はその力で決号作戦の勝算を見出していた事が判明する。これは戦後日本には驚きであった。また、オーバーテクノロジー兵器は未完成でも投入するつもりだったが、天皇陛下は凄惨な戦を避けるために終戦を決意した(旧軍が戦後に否定され、名誉が損なわれたことは相当に悔やんだようで、いいところは真似して欲しいとしていた)。オーバーテクノロジー兵器やウィッチ部隊の事は知っていたが、連合軍に非難されるのを恐れたか、口を噤んでいたと、旧軍の高官の手記で判明する。(後にショッカーが現れ、彼らがナチス残党である事が判明すると、非公式に『自衛隊を強化せよ』と述べたとか)旧軍のオーバーテクノロジー兵器の一つ『超人機メタルダー』が80年代に復活し、『ネロス帝国』を倒したのを聞いた時、『軍の遺産が日本の平和を守った。これで私も安心して涅槃にいけるよ』と語ったという。(その数年後、昭和天皇は崩御している)これはショッカーや黒十字軍が暗躍していた時代、警察では物の役に立たず、旧軍亡き後の軍事組織である自衛隊は70年代当時、法的問題が山積であり、ショッカーなどのテロ行為で殉職者が出ても、社会党は意に介さなかった(しかしながら、仮面ライダーなどのヒーローは都合のいい存在と考えていた)。そこで当時の日本政府は国連に働きかけ、『イーグル』(80年代には、地球平和守備隊へ発展解消)を設立し、国際的組織の国内行動として処理する事とした。これが秘密戦隊ゴレンジャーからのスーパー戦隊の系譜の誕生理由だ。これは慣習となり、少なくとも75年から数十年は続けられた。宇宙刑事ギャバンが地球に赴任してきたと同時に、銀河連邦に議席を獲得するなどの行動も起こしていたので、これが日本の繁栄の真の理由だった。これらの慣習は政権交代が起こるまで続き、政権交代時に学園都市に引き抜かれ、そこから渡ってしまった超技術もある(クラステクターの製造技術など。使用技術はむしろ学園都市より上だった。気づいた時には日本警察は愕然としたとの事)。
「貴方方は技術の秘匿の方法を日本軍から継承しなかったのですか?なんでもオープンにすれば良いものでもない。クラステクターの後継機を作れないのがその証明だ」
「あれは警察の管轄です。正木俊介警視総監が退任なされてから、もう随分ですから」
正木俊介。ウインスペクターからエクシードラフトまでの設立に尽力し、2000年代後半に退官するまで、日本警察最高の実力者と謳われた有能な警察官だった。風見志郎や番場壮吉にそっくりな事から、同期の間では『ヒーロー顔』と言われていた。彼の退官後、予算削減などの要因で技術者が学園都市に流れたため、後継のパワードスーツは途絶えている。(正木俊介は実のところ、退官後は銀河連邦警察のコム長官に直接スカウトされ、銀河連邦警察の参与になっており、コム長官の娘婿のギャバンの後見人を勤めており、2010年代には地球にはいなかった。)
「彼はバード星で宇宙刑事ギャバンの後見人を勤めていますよ。それと、ウインスペクター達の復活はできなくとも、往時のメンバーはどうにか呼び出すことは出来るはずだ。我々の要請ということで、彼らを我々に預けるよう、日本警察に通達を」
「警察系官僚を通して、通達しましょう」
ウインスペクターらの内、2010年代まで警察に在籍していたメンバーはどうにか呼び出せた。かつてのウインスペクター隊長の香川竜馬は相応の地位にあり、壮年になっていたが、現場復帰のため、往時の青年の姿に若返った。その後、ソリッドスーツの所在が不明だった事もあり、エクシードラフトの技術で改良したクラステクターを着化。往時の最後の姿である『ナイトファイヤー』ではなく、『改良型クラステクター』を着化したファイヤーとして復活したという。これはナイトファイヤーのソリッドスーツの所在が長い保管の歳月の内に不明となっており、お役御免となった後、後発のエクシードラフトのスーツのテストベッドになっていたのを引っ張り出したからだった。(後に、エクシードラフトのヘビーサイクロン製作時の実射標的にされて損壊、廃棄されていた事が判明したが、頭部の残骸は残されていた)また、旧式化して引退したギガストリーマーはビッグワンが持ち出し、メカトピア戦で箒に使わせていたが、戦後はリバースエンジニアリングで複製したものが採用されており、調なども使ったという。(反動抑制装置が備えられた改良型であるが、外見上はオリジナルと同じ。機動刑事ジバンが使用していたオートデリンガーも製作されたという)
――こうして、着々と太平洋戦争の準備を進めるウィッチ世界。ラルはもたらされたそれら超兵器をも使用する決意であり、64Fへ送り込んだ。受領した64Fは用途別に使い分けたという。なお、64Fへ送る前に、量産型ギガストリーマーを試射したヴァルトルート・クルピンスキーは笑顔で『カ・イ・カ・ン★』と延べ、ラルに大笑いされたという。また、ラル自身も超電磁砲を撃てるため、ゴネるゲーリング元帥を脅す時に使い、ちびらせたとか。なお、ラルは美琴の能力を得たため、イライラすると、静電気を散らすようになり、それでロスマンはえらい目に合い、アルトリアに慰めてもらったとのこと。また、アルトリアはノーブルウィッチーズがストライクウィッチーズに吸収された後は、しばしの間、ラルと行動を共にしており、その関係でカールスラント系の旧ブレイブウィッチーズのメンバーと親交を持ち、壊滅したと思われた、旧503『タイフーンウィッチーズ』の生き残りのウィッチの救出には、ラルの護衛として随行、聖剣の力を見せつけたという。その時の大暴れぶりはかつてのレイブンズに匹敵するもので、ラルが超電磁砲、アルトリアがエクスカリバーを同時に放った際、彼女らに救出された『フーベルタ・フォン・ボニン』少佐はボロボロの軍服姿ながら、二人の圧倒的な力に唖然とし、更に甲冑を着た凛々しい少女騎士が『ハインリーケ』だと教えられたフーベルタは『なん……だと…!?』と本気で自分の目を疑い、アルトリアを苦笑いさせたという(フーベルタはラルの戦友であったため、数年の内にラルが総監の地位についた事や、503が解隊扱いになっていた事、ハインリーケが騎士のような服装で、しかもエクスカリバーを持つなどのカルチャーショックで気を失う。後日、彼女は64Fの追加部隊『魔弾隊』に配属され、ルーデルにこき使われたとか)
――極秘:503統合戦闘航空団の消息――
同航空団は、44年にティターンズと交戦。必死の抵抗にも関わらず、同部隊は四散。部隊の隊員は散り散りとなった。判明した事項は以下の通り。
ヴァルトラウト・ノヴォトニー大尉
テスト中のMe262ストライカーで応戦。同機がエンジントラブルを起こし、ストールしたところを撃たれ、撃墜。戦闘中行方不明。
オティーリエ・キッテル少尉
ノヴォトニー大尉の僚機だったが、消息不明。
川口文代少尉
扶桑海からの猛者。黒江達を知る当時の数少ない現役者。MSに果敢に斬りかかったのが目撃されたが、それ以後は不明。状況から、恐らく戦死したと思われ、大尉へ特進。
アレクサンドラ・シェルバネスク中尉
出撃準備中に格納庫がバンカーバスターで破壊されたため、行方不明?
ロザリー・ド・ラ・ポワプ中尉
不明。川口少尉を援護していた姿が目撃されている。
ガリーナ・D・コストイリョーフ大尉
ティターンズの手に捕らえられたのが確認されたが、以後は不明。
ブロニスラヴァ・F・サフォーノフ中佐(司令)
ティターンズに捕らえられ、凄惨な拷問をされたとの情報あり。
フーベルタ・フォン・ボニン少佐(副司令)
捕虜収容所をどうにか脱出。アルトリア、ラルの両名に救出された。軍に復帰後は大佐へ特進。魔弾隊へ配属(ルーデルの次席へ)。
503の人員の消息は以上である。目下、調査中だが、ブロニスラヴァ・F・サフォーノフ中佐は全身に酷い火傷を負わされ、その人格が破綻寸前であるとの情報あり。取り急ぎ、捕虜収容所の爆撃を敢行するものとする――
後に、事をフーベルタから知らされた黒江とラルが回収作戦を実行。ドラえもんを呼び出し、とりよせミラーとトリモチとタイムホールで川口文代の救出を成功させたという。(彼女は斬りかかった際に手榴弾を投げられ、爆死していた)大尉へ特進していた事と、実家へ行きかけた戦死通達を止めさせていた事を知らされた際に、黒江に忠誠を誓い、以後は黒江の有力な部下の一人となったという。(志願したての頃の事変時、既にジャイアント・キリングの属性を持っていた黒江へ憧れていたらしく、その黒江の正統継承者と目された黒田へライバル心を持っていたとの事。彼女は黒田の後輩にあたるが、彼女は幼年学校在籍中に黒江の指名で隊付勤務となった黒田と同年代でありながら、幼年学校の卒業が末期となったため、実質的に最終決戦が初陣であった。その為、全期間を憧れの黒江とともに過ごした黒田にライバル心を抱くようになったとか。)また、黒田は幼年学校の直接の後輩が来た事を喜んだが、川口は突っかかる。かつての若本のような位置づけであり、大人な黒田と、子供な川口は、64の新たな名物となったとか。
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