短編『プリキュア対百鬼帝国+α』
(ドラえもん×多重クロス)
――第二期、第三期プリキュアも参戦し、物語から大きくずれ始めたオールスター戦。5勢とフレッシュ勢が合流し、お互いのリーダーがなり代わられていた事実を確認しあうが、事態はそれどころではなかった――
「な、何!?」
「巨大な……竜!?」
5とフレッシュ勢が地上からハッキリと視認可能な巨大な竜。それは黒江と智子すらも驚愕する代物だった。
「ち、ちょっと!?」
「馬鹿な、こいつは……ウザーラだと!?」
「完成していたなんて…!?」
黒江、智子、フェリーチェが驚愕したそれこそ、百鬼帝国の切り札『聖竜ウザーラ』であった。全長は真ドラゴン(龍型)をも上回り、龍に人型の上半身が載っかっている体裁の海底国『アトランティス連邦』最後の遺産。かつて、ドラえもん達が戦った『鬼岩城』を生み出したアトランティスの最高技術の結晶。自動報復装置の制御端末にすぎなかった『ポセイドン』を遥かに凌ぐ超兵器。
「な、何よ、こいつ!?」
「みんな、うかつに動くな!こいつはバケモンだ!伝説のアトランティスが遺した最強の遺産だぞ!」
「あ、アトランティス!?」
「そんな、そんなものがなんで!?」
『知りたいかね、プリキュアの諸君』
「テメーは…ブライ大帝!大人しくしてたのはこいつを完成させるためか!」
黒江は声の主が誰か分かり、啖呵を切る。ウザーラに搭乗していたのは、ブライ大帝その人であった。
「その通りだよ、キュアドリーム。我々としても、君達の事は興味を惹かれたのでね。御成といったところだよ、フハハ…」
「あんたら、なんなのよ!あたし達の事を調べてたわけ!?」
「お答えしよう、キュアブラック。われわれは鬼よ、地獄より出でたる鬼!すべての生物を奈落の底に落とす地獄からの使者だ!そこにいるキュアドリームとキュアピーチ、キュアフェリーチェとは縁があってね」
ブラックの問いかけに答えるブライ大帝。ブライは元々が科学者であるため、ドリームが黒江と入れ替わっている事も承知であり、敢えて言及しない。『無粋な事をしない』という小粋なところを見せる。
「あんたらはドリームやピーチと戦ってるわけ!?」
「そうだ。我が百鬼帝国は人を奴隷にし、その生存圏を我が物にするのでね。君たちや正義の味方全般は邪魔者ということになるよ、ブルーム」
「どうしたのよ、あたし達の後輩を!」
「ハートキャッチプリキュアの二人は我が配下が捕らえたと言っておこう」
「冗談も休み休みいいやがれ、アンポンタン!ヒドラー如きにそんな能力あるかっての!」
「あ、アンポンタン!?」
驚くブラック、ブルーム。ドリームが江戸っ子喋りで『アンポンタン』という表現を使ったからだ。
「確かに、ヒドラー元帥ではない。だが……」
「この私に新しい世界が待ち受けていたように、貴様らに待ち受けているのは『地獄』と言っておこう、プリキュアの諸君」
「あしゅら男爵、やっぱてめーか!ぜってー、ヒドラーじゃねーって思ったぜ!」
「この二人の命は我らが預かっている」
「ブロッサム、マリン!?」
ウザーラの龍の頭の頂部に立つあしゅら男爵。変身解除には至らなかったが、血を吐き、ボロボロの状態で倒れ伏しているブロッサムとマリンの姿も見えた。
「血反吐を吐くまで、しこたま膝蹴りをしてやったよ。変身を解除しない程度の痛みを鋭くな。」
「く、くあああっ!」
「待て、ブラック!」
「離してよ、ドリーム!あいつにパンチを食らわせ…!」
ブラックが頭に血が上り、血気に逸る。それを止める黒江。
「闇雲に突っ込んで、勝てる相手じゃない!わかんないの!?」
「で、でも!」
『ドリームがブラックを止める』。事態を知らない他のプリキュアにとっては凄い絵面であった。
「見た目あんなんでも、スーパーロボットとタイマン張れる化け物なんだぞ!真正面から行こうとすんな!」
「なっ!?」
「ドリームの言う通りだよ、ブラック。初代というのは、冷静沈着に振る舞うものだがね」
「知ったような事を!」
「馬鹿、ブルーム!やめろ!そいつは…」
「はぁあああっ!」
ブルームが代わりに突っ込み、それをウェンディイーグレットがカバーするが…。
「鈍いわ!!」
ブルームの顔面にあしゅら男爵のパンチがクリーンヒットし、殴りぬかれる。イーグレットの蹴りも動きを見切られ、得意の風の攻撃をする前に、自分が錐揉みシュートまがいの攻撃をされ、ウザーラから吹き飛ばされてしまう。
「ブルーム、イーグレット!」
「言わんこっちゃない!情報くらい聞いとけ!」
「くぅ、行くよ、ピーチ、ハート!」
「うん!」
続いて、あしゅら男爵との交戦経験を持つ三人が同時にかかる。ピーチは智子が成り代わっているが、三人の攻撃をその場でいなす。キュアメロディ、キュアハートも歴代随一の強者かつ、最強フォームだが、その動きすらあしゅら男爵は見切っている。三人の身体能力は歴代随一かつ、メロディには紅月カレンとしての戦闘術もあるが、それを加味しても、あしゅら男爵は三人と互角であった。
「す、凄い……」
「これがあたし達の知らないプリキュアの力なの…?」
ブラック、ホワイト、ルミナスらも圧巻の三人の死闘。
「ダイヤモンドぉぉ…ダスト!!」
ピーチ(智子)がダイヤモンドダストを放つが、あしゅら男爵はそれを受け止め、氷を砕く。
「これでどうだぁ!」
メロディも円状に固定した輻射波動をぶん投げ、あしゅら男爵を追い立てる。あしゅら男爵はそれを拳で迎撃する芸当を見せる。クラクラ状態から回復したブルームも加わり、四人がかりでかかるが、それでもあしゅら男爵は息一つ乱さなかった。
「寄って集ってかかって来ても、私に防御させたのは二人のみ。なんとも青臭いものよ」
最強フォームで四人がかかっても、ピーチ(智子)、メロディ(シャーリー)しか攻撃を当てられなかった。ブルームは自身のスピードが最強フォームでさえも、あしゅら男爵に及ばない事にショックを受けている。
「さぁ、次々とかかってこい!」
「言ったなぁあ!!」
ブルームは光の精霊の力で特大のエネルギー波を放つ。だが、あしゅら男爵はそれを片手で払うだけでかし消してしまった。
「なっ!?」
「流石、マジンガーとタイマンした男、って言っていいのかしら?」
「我が半身を気遣ってくれるとは余裕だな、だが一応は感謝を述べておこうじゃないか」
「伊達じゃないのよ、こっちもね。それに貴方も分かってるでしょう?」
「お前らにも同情すべきかな?友と呼ぶあの男の事で干渉されているだろう」
「知っていたのね、流石の情報網」
「異能生存体は自然現象すら介入出来ぬもの。それを理解できるものは少ない。海底鬼岩城やコーヤコーヤ星、ピリカ星。Mr.Nも中々の異能生存体ぶりだと言うのにな」
「Mr.Nは子供の時は主役だけど、大人になってまで、その立場でいろっていうのは、周囲の傲慢よ、貴方も言ってよ」
「あの男にとっては酔っぱらいの戯言だろうが、2000年代後半以降の若造共は物語での必要性だの、存在の意味だのをすぐに定義づけしたがるのだ。Mr.Gは存在そのものがデウス・エクス・マキナなのだがな」
あしゅら男爵ものび太とデューク東郷に敬意を払っているため、智子に同情の言葉を述べる。
「Mr.Nは私に言ったのだがな、ダイ・アナザー・デイの時に。『外伝まで主役を張る気はないね』と。若造共は『ドラミちゃん/ミニドラSOS』を知らんらしいな」
のび太は自分でメタい事を、あしゅら男爵と戦い、退けた際に漏らしたらしい。
「あの男も不幸なことだ。子供の頃の普段の生活がステレオタイプ化して、大長編での活躍を顧みられないのだからな」
「Nがどう生きようと、個人の勝手でしよ、あしゅら男爵」
「物語で貴様らが目立つことが気に入らぬ輩が多いのだよ。外伝というのは本来、本筋にあまり関係ない、同じ世界観の物語を指すのだがね」
「あたし達が強大な力を持って、何が悪いのよ」
「メアリー・スー。それと同義に捉えているのだよ、おそらくはな。だが、この『外伝の主役』はあの男とMr.Gではない事は確かだ」
あしゅら男爵もメタ発言をけっこうするタイプなので、智子の愚痴に付き合う。意外に律儀なのが、あしゅら男爵である。
「それをいうならば、プリキュアもブラックといホワイトをとりあえず出しとけば勝つ展開が約束されている存在になりえるというのに。近頃の若造共は『血統』や『秘めた才能』というのを嫌うからな」
「講釈、ありがとう」
「何、偶にはこのような会話も乙なものだ。ヒドラーはこういうウィットに富んだ会話もできん小物だからな、相手する気も起きんよ」
「あたし達は後輩の後押しをするだけなのに、そんな事言われてるの!?」
「君らは意識していないだろうが、偶像崇拝が行き過ぎた例だ。独り歩きしているのだよ、初代プリキュアという肩書きだけがな」
話を聞いたブラックが憤慨する。なぎさとほのかは本来であれば、後輩を差し置いて活躍できるだけのポテンシャルを持つが、後輩を立てる事も多いし、この戦いでは、キントレスキーにボコボコにされていたなど、ピンチに陥る事も多い。あしゅら男爵は律儀にメタ発言をしまくる。ブライ大帝も楽しんで聞いており、長話を許すあたり、短慮に逸った挙句に置いてけぼりにされた帝王ゴールよりは圧倒的に大物であった。
「ピーチの友である『Mr.N』という男は、子供の頃はダメ人間そのもので、あやとりと射撃と昼寝しか能がなかった。だが、成人すると、ナイスガイになった。人間はそういうものだ」
「『俺達』は何も持たなかった。だけど、プリキュアになることで変われた。きっかけ一つで人間は変われる。そうだろう、ブラック、ブルーム?」
「お、俺…?」
黒江は本音をポロリという。だが、のぞみもそう思っているのは事実だ。
『わたしは知ってる。何も持たない自分でも変われるって!』
のび太の優しさに触れることで、のぞみが再認識した事。のび太は公式の見解として、繰り返し、こう述べている。
――『光と闇の交錯する彼女たちの道に灯火を照らし、彼女たちを導くのが私とドラえもんが彼女へできることであり、現地での自分達のの役目と認識しております。自分は自分という人間のストーリーの主役であります。もちろん他人には、その人の『人が主役のストーリー』がある、だから機会を捉えて必要な役をこなすのも自分の人生というストーリーでは大切な事で、誰かの成功に助けを出すのも、自分の中の輝きを見せる事になる。私はそう確信しております』――と。
「この『物語』は本来あるべき形から変わっちまった。なら、変わっちまったなりに物語を紡げばいい。創造は破壊から生まれると、どこぞのヒーローも言ったらしいしな」
それは門矢士に紅渡が告げたとも言われる一言だった。黒江はドリームの姿で言うが『ドリームが言うには』あまりに知的な発言過ぎたため、ブラック、ブルームを唖然とさせ、ホワイト達を困惑させる。
「そうだよ、力ずくで自分の望む方向に他人を動かそうとするってのは、仲間とか友達に価値を見出そうとしない人のすることだよ!物語だって、形は決まってない。友達が言ってたけど、定形を崩してもいいんだよ!刑事コロ○ボとかマカロニ・ウェスタンとか!」
キュアハッピーを思い出したらしいキュアハート。キュアハートは歴代ピンクの類型に反する『成績優秀、生徒会長』属性を保有している。
「つか、刑事コロ○ボは頭脳解決系刑事ドラマの先駆けだだろ?それと犯人が大物俳優っていう」
「当時の類型は崩してたじゃないですかー!」
「ダーティ○リーみたいなのが出たの、コロ○ボより後だった気がするぞ?」
「えー!?」
「ま、あの俳優、監督になる前はガントレットとかにも出てたけど、アウトロー的演技だったしなぁ。元はマカロニ・ウェスタンで名を上げたけど」
「確かに、コロ○ボ系とハリー・キャ○ハン系に刑事ドラマは分化していったからな。夜の大捜査線も見てみたらどうだ?」
「あしゅら男爵、お前…、みょーに詳しいな」
「ドクターヘルのご趣味なのだ…」
「へー、意外だなぁ。世界征服狙ってた爺さんが…」
妙に盛り上がる会話。苦笑いのブライ大帝だが、キュアハートの何気ない一言をきっかけに、妙な方向に話が逸れてしまった。困惑のブラック達。この会話で、ドリームの言動に流石にブラックとブルームも違和感を感じたが、黒江もさるもの、ドリームらしさをわずかでも残しているため、違和感を完全なものにはしなかった。
「ま、あの爺さん、親にも疎んじられてたし、夜の大捜査線とか、招かれざる客とか好きそーだよなぁ」
メロディもこれだ。
「あ、あの…、ほ、本当に敵同士なのですか?」
「腐れ縁ってやつだよ、ルミナス。あの縦まっ二つ男とあたし達は」
「そうなの。何度も戦ってる内に、世間話の一つや二つね」
ダイ・アナザー・デイからの日数の経過に伴い、キュアメロディとキュアラブリーも、あしゅら男爵と何度か戦った事を示唆する。困惑するルミナス。だが、キュアブロッサムとキュアマリンの救出事態は成功していない。最強フォームの四人同時でかかっても、あしゅら男爵は余裕だった。そのあしゅら男爵を退けたと、あしゅら男爵当人がハッキリと言った事から(彼はリップ・サービスに無縁である)、『Mr.N』こと、青年のび太の実力の高さが窺え、同時に青年期以降に少年時代からは信じられないほどの研鑽を重ねた事がわかる。だが、のび太は『外伝で主役を張る気はない』というメタ発言をあしゅら男爵にしたように、『外伝での自分は脇役である』自覚を持つ。ドラえもんもメタ発言が多い質なので、ドラえもんの影響が大なのだ。ドラえもんはツキの月をのび太に飲ませた事があり、その点で異能生存体の素質を拡大させたという指摘があるが、のび太は特別に『ツイてない』体質なので、薬の効き目が強く出るだけである。
「この隙に、ブロッサムとマリンを助けられないの?」
「無理だよ。見て、イーグレット。あしゅら男爵は会話してても、気を張り詰めさせてる。四人がかりでも無理だったんだよ?隙を作るのが」
吹き飛ばされたイーグレットを助けたラブリー。イーグレットの指摘に、ラブリーは首を横に振る。歴代でも特に強いピンクとされる、ピーチ、メロディ、ブルーム、ハートの四人がかりで隙を突くのが不可能であった以上、たとえ、ブラックと自分が加わっても焼け石に水だと直感的に理解した。ラブリーにそう思わせるほど、あしゅら男爵は実力者である。
「あたし達らしくないって言われるかもしれないけど、あいつは強いよ」
「諦めないのが、あたしらの売りだしな。ただ、個々の事情は顧みられないけどな。ブラック、ブルーム、ドリームの三代は美化されがちなんだよ」
「そう。あたし達だって、挫けそうになった時は何度もあるのにな。ハートも『ある事』で心が折れた事あるしな」
「あたしは『人を助けたい』気持ちだけが逸って、周りの気持ちを汲めなかった。メサイアコンプレックスって奴かな。子供の時の経験がもとでね」
ラブリーは現役時代に抱え、現在でも尾を引いている傾向があるメサイアコンプレックスに触れる。メロディもドリーム(黒江)も自身の経験で『心が折れかけた事がある』と語る。黒江はラブリーと似た傾向に陥り、二重人格になったこともあるため、ある意味では心が折れ、自己防衛のために二重人格化したほど、意外に弱さを持つ面があるため、ラブリーの理解者でもある。ちなみに、キュアハートが現役時代で心が折れた事は『レジーナ』の一件のみだが、それもいつしか世の中からは忘れ去られた。プリキュア達も完全無欠ではないのだ。
「身の上話ってわけじゃないけど、誰でも苦しみは抱えてる。なのに、プリキュアだからって、いつも『勝て』って言われてもね。あたしなんて、学校の成績はがんばっても平均なのに」
ラブリーは自嘲気味に語る。
「あたしも中等部での成績を持ち上がりに足りるまでに上げるのに苦労したもんね…」
ドリーム(黒江)も、自分の知るのぞみの経験を話す。なんとも世知辛いが、ヒーローやヒロインも完全無欠ではない証である。仮面ライダー一号/本郷猛など、人間時代に親友と思っていた男(さそり男)に裏切られるわ、恩師の娘に誤解される、未来永劫の時間を生き、戦う宿命を最初に背負わされるなど、よく心が折れなかったものだと言わざるをえない状況である。(ちなみに本郷猛は父親が日本海軍の技術将校で、戦後は民間の造船技師に転じ、莫大な財を築いた人物であったが、猛が17歳当時に仕事中の事故で死亡。そのショックで心を病んだ母も数年後に死亡。天涯孤独になってしまうという、まさに不幸の連続であり、極めつけが改造された事と言える)
「だけど、努力することで状況は変わった。変えられる。あたし達はその体現者としての生き様を求められちゃうんだよ、イーグレット」
「ドリーム……」
「あの二人を助けるには、なんとか隙を作らないとならない。助けるのは、あたしに任せて。切り札があるから」
「ドリーム……?」
「どういう事、切り札って」
「ある人から『教わった』方法だよ、ブラック」
ドリーム(黒江)は『切り札』の存在を示唆する。それが何であるか、メロディとラブリー、ハートは知っている。
「ここはドリームの言うとおりにしてください、皆さん。ルミナスは『ハーティエル・アンクション』を撃ってください」
「は、はい」
フェリーチェの指示が飛ぶ。一同は捕らわれているブロッサムとマリンの救出に動く。物語が変わったのなら、それ相応に動かなければならない。聖竜ウザーラを舞台にして繰り広げられる戦い。物語は明確に変わったのだ。単純に『プリキュアオールスターズが勝利しての大団円』とはならない方向に。百鬼帝国の介入により、黒江たちも想像だにしない方向に。
――一方、黒江と入れ替わっていたのぞみは仮面ライダーディケイドから事の次第を知らされ、のび太の仲介でスーパーロボット軍団に出動を要請。ダイ・アナザー・デイを終え、基地に帰還していたスーパーロボットの内、百鬼帝国と縁深い者達が緊急出動した――
――ゴッドの砦――
ZEROとの交戦やダイ・アナザー・デイでの激戦でターボスマッシャーパンチが破損し、その新造と機体のオーバーホール中のマジンカイザーに代わり、兜甲児はもう一つの究極のマジンガーを使った。その名も『ゴッド・マジンガー』。
「よっしゃ、ここはこの兜甲児様に任しとけ!」
のび太からの通信に、小気味よく応えた甲児。いつものノリで防護服に着替え、格納庫に駐機されている『ゴッドファルコン』に乗り込む。
「エンジン始動!」
ゴッドファルコンはブレーンコンドルの発展機に位置する戦闘機である。乗り組みシークエンスはブレーンコンドルに準じており、本来はグレートマジンガーの系譜に位置するのが分かる。
『ゴッドファルコン、スイッチ・オン!!』
ゴッドファルコンの光子力エンジンが始動し、噴射炎を吹き出す。暖気運転を一定時間済ませた後、抑止ロックを解く。勢いよくゴッドファルコンはルート特定を避けるためのいくつかの通路を滑走路代わりにする形で発進する。その点はグレンダイザーの影響である。
『マジーン・ゴー!!』
ゴッドの砦の近くの海から、ゴッド・マジンガーが射出される。
『ブレース・オーン!!』
甲児は鉄也がしていたように、ゴッドファルコンとゴッド・マジンガーをドッキングさせ、スクランブルダッシュを展開、発進していった。友のために。
――ネイサー基地――
新早乙女研究所に代わり、ゲッターロボ最大の拠点になったネイサー基地。兼ねてより、その調査と調整が続けられていた真ゲッタードラゴンの初陣が遂にやってきたのである。車弁慶もチームに復帰し、初代チームが再結成に至ったからだ。
「いくぜ、隼人、弁慶!」
「ゲッターチーム、復活だ!若い連中に底力を見せてやろう!」
「フッ、俺達はまだ20代だぞ、お二人さんよ」
「いいんだよ、こういうはノリで!真ゲッタードラゴン、発進!」
真ゲッタードラゴンは合体分離機構の調整が遅れたため、モーフィング変形で姿を変える。しかし、完全な変形は無防備になる時間が生ずるため、ドラゴンを基本に、部分的な変形を行う事で済ませるという。調整が伸び伸びになったこともあり、ダイ・アナザー・デイへの投入は見送られた。しかしながら、その手間に見合う力を有するのも事実だ。真・マッハウイングを展開し、真ゲッタードラゴンは勇躍、発進した。真ゲッターロボ以上の速度を発揮。23世紀初頭時点のゲッターロボでは最高峰と言える疾さであった。
――新科学要塞研究所――
こちらは新科学要塞研究所。ダイ・アナザー・デイ後に移転した科学要塞研究所。炎ジュンと結婚しつつ、兜剣造の恩師『神竜博士』の生涯最後の願いにより、彼の養子になったため、戸籍上は『神竜鉄也』になった剣鉄也。マジンエンペラーGを主体に、Gマジンカイザーを予備機として管理する同研究所、地球連邦・日本州の知事選挙に弓教授が出馬したため、光子力研究所の次期所長に推された弓さやかが大学と大学院に通っている間は兜剣造が光子力研究所と兼任する形で新科学要塞研究所の所長をしている。ジュンは鉄也の子を身ごもったために戦いから離れ、鉄也一人ががんばっている状態であった。
「鉄也君、時は来た。マジンエンペラーGを以て、百鬼帝国の野望を叩き潰せ!」
「そうこなくちゃ!」
鉄也は10代の頃から意外にノリがいい面があり、結婚しても変化しなかった。ただし、帰るべき場所を自分で築くことが出来た事で精神的に安定した感があった。マジンエンペラーのブレーンコンドルに颯爽と乗り込み、グレートマジンガー同様の手順でドッキングする。
『エンペラーオレオール、GO!!』
マジンエンペラーGも発進していく。のび太が仲介した事で尾ひれが若干ついたが、政権交代間近の状況に張り切り、ダイ・アナザー・デイの作戦終了を大義名分に、スーパーロボットの出動を抑制しようとしていた地球連邦議会の野党勢力にとってのチャンスを失わせる効果を挙げた。百鬼帝国が遂に動き出したからだ。いち早く出動した三機はディケイドの力で、ゲートを通らずに、プリキュア達がいる世界に直接、転移していった。
――ブロッサムとマリンを救出するべく、黒江はメロディ達にあしゅらの注意を引かせ、自身はクロックアップで二人を救出する。だが、二人のダメージは予想以上であり、キュアレインボー化は起きるものの、ダメージの完全回復には至らない。二人は覚醒初期の段階であるため、後期の『スーパーシルエット』ではないためもあるだろう――
「ご、ごめんなさい……体が言うことを聞かないんです…」
外見上はダメージが治癒したように見えるが、体の芯にまでダメージが及んでいたようで、とても戦闘が可能な状態ではないハートキャッチプリキュアの二人。
「ハハハ、ハハハ!足手まといを抱え込んだようだな!」
「何を…あっ…」
マリンも足腰が立たないほどのダメージが残っているようで、その場から立てない。ブラックとブルームがカバーに回る。一同とあしゅら男爵のにらみ合いになると思われたが、5とフレッシュ勢がようやく到着する。
『ちょっと待ったぁ!!』
「5とフレッシュの連中か。面白い、貴様らにこの私を止められるか、試してみるかね」
「うるさいわよ、この縦まっ二つ男!!よくもかわいい後輩を甚振ってくれたわね!」
「ふん、ルージュの分際で熱りおって。エターナルが過去にしたという、クイズ対決の二の舞にしてくれる」
「ひ、人がトラウマってる事をよくも!!つか、なんで知ってんのよぉぉぉ――!?」
「お、落ち着いて、ルージュ…」
「と、とにかく!あたし達が来たからには……って!?な、な、な、な……、なんで、見たこともないプリキュアが増えてんの!?なんなの、どーなってんの!?」
「ふ、やはり貴様はコメディ担当のようだな」
「人を勝手に、コメディ担当とかゆーーなぁ〜!!」
しかしながら、本来はまだいないはずのキュアラブリー、キュアハート、キュアメロディ、キュアフェリーチェが参戦している状況であるので、ツッコミももっともであった。あしゅら男爵の妙に秀逸な会話術もあり、コミカルさが際立つキュアルージュ。5とフレッシュ勢は四人の未知のプリキュアに大いに動揺したようで、一様に驚愕したりだった。ハートキャッチの二人も四人の存在を認識したらしく、驚きの表情であった。
「あ、あの、ブラック。その子達は?」
「なんだかよくわかんないけど、あたしたちの後輩だよ、ベリー!」
『こ、後輩ぃぃ――っ!?』
5と『フレッシュ!』勢のハモった驚きの声。苦笑いのメロディ達。
「ど、どうも〜」
衝撃のあまりに、5とフレッシュのプリキュア達は動揺しまくり、コメディじみた雰囲気に一変する。だが、それもそこまでであった。
「な、何!?」
「空が…カーテンみたいに開いていく!?」
「ま、また何か来るの!?」
空がカーテンのように『開き』、そこから姿を現したのは……。
『そこまでだぜ!ブライ大帝、あしゅら男爵!!』
「ハハハ、つくづくも腐れ縁のようだな、えぇ、兜甲児ィィィ――!」
歓喜の声を挙げるあしゅら男爵。プリキュア達は唖然としてしまう。最初に現れたのは、甲児の駆るゴッド・マジンガーであった。21世紀の科学力では、夢のまた夢と言える巨大ロボットがプリキュア達より更に上空で仁王立ちであった。
「ご、ゴッド・マジンガー!?」
「ドリーム、ピーチ、知ってるの?」
「うん。とある世界の日本の頭脳が生み出した、宇宙最強のスーパーロボットだよ!」
「す、スーパーロボットぉ!?」
続いて、エンペラーGと真ゲッタードラゴンも現れる。スーパーロボット軍団の筆頭格とされる、マジンガーとゲッターの最新最強の機体が揃い踏みであった。
『プリキュアのみんな、助けに来たぜ!』
「甲児さん、鉄也さん、それとゲッターチームの皆さん、どうしてここに!?」
『なーに、あの子がのび太君を介して、俺達に連絡したんだ。しばらくぶりなんだ、暴れさせてもらうぞ』
フェリーチェにそう返す鉄也。三大スーパーロボットの飛来で、すっかり見せ場を取られた形のプリキュア達。雄々しい姿の三大スーパーロボット。どう考えても『ありえない』色々さに圧倒されたキュアブラックは思わず、叫んだ。
『ありえなーーーい!!』
…と。フェリーチェが『私の友達が手配してくれた味方ですよ、ブラック』と解説するが、どう考えても色々とオカシイため、頭をかきむしりながら、そう絶叫したという。おいしいところを尽く取られた挙句、キントレスキーにボコボコにされっぱなしのままで終わっていた事も含め、自分達が何に巻きこまれたのか、なぜ、未知のプリキュア達も参戦したのか?それすら釈然としないまま、三大スーパーロボットが駆けつけたため、ますます置いてけぼりの感があるキュアブラック。本質は現役時代と変わらぬままであるのもあり、プリキュア5とフレッシュ!プリキュア勢と共に呆然気味であった。それは現役のはずのハートキャッチの二人も同様。しれっと戦列に加わり、歴代プリキュアに混じっている未知の四名のプリキュアや謎の三大巨大ロボット。ブロッサムは『何がいったい……、どうなってるんですかー!?』と叫んだ。そうするしか出来なかった。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m