宇宙戦艦ヤマト編その7


――ゲッターエンペラー。究極のゲッターであり、人類最強のスーパーロボットの一角である。宇宙を消滅させる機械の化物とも形容されるが、実際は宇宙の消滅を防ぐために宇宙を安定させ、また、地球人の名のもとに宇宙を統べるのが真の目的である。その根源はゲッタードラゴンであり、それが長い年月で進化を重ねた個体である。そして、その中間形態が真ゲッタードラゴンである。中間形態とはいうものの、その戦闘能力は真ゲッターロボすら軽く凌駕し、23世紀当時ではゴッド・マジンガーと双璧を成す。その進化は急激に起こり、地下でゆりかごの中の赤子のようなポーズで石化した姿から変化を始めていた――





――雷王作戦開始直前の事。石化したゲッタードラゴンは次第に変化を起こしていた。頭部形状が変化し、体格が一回り大きくなる。装甲形状も真ゲッターロボと似たようなものに代わり始め、スピンカッターがゲッターレザーに先祖返りする。また、ヒゲにあたる部分の形状も変化し、真ゲッタードラゴンに変化を始めていく。それが観測され、急激に周辺のゲッター線の濃度が上がっていく。繭が成熟し始めたのだ。旧・新早乙女研究所がゲッター線の作用で修復されていくと同時に、一瞬で濃度が通常に戻り、更に下がっていく。ゲッタードラゴンが目覚めつつあるという結論を隼人は出した。その隼人の前に姿を見せたのは――


「む、武蔵…!」

「早乙女博士の意志を俺は伝えに来た。黄泉からな」

「あの世に行った以上はゲッターの使者になったというのか」

死んだはずの巴武蔵が往時の姿そのままで隼人の前に姿を見せた。最初の闘いで自爆したので、武蔵は10代のままの姿だが、隼人は20代と年を重ねていた。隼人はゲッターを見届ける役目を負ったため、ある意味では孤独と言える。

「…黄泉から俺を笑いに来たのか?」

「相変わらず皮肉屋だな。早乙女博士が言ったはずだ。俺は偉大な遺産を残すために逝ったと」

武蔵は生前はコメディリリーフであったが、ゲッターの使者になったためか、どこかの世界の同位体のように大人としての口調で喋っている。生前のギャク担当の面影は容貌のみだ。

「ゲッタードラゴンのことか?お前の後輩諸共に地下に潜っちまったよ」

「ベンケイの事なら心配するな。あいつはドラゴンのコックピットで仮死状態になってるだけだ」

「何!?なぜ、ベンケイの事を」

「ゲッターの力のおかげで、俺はベンケイと出会う可能性を見た。俺がいれば可愛がってやったよ。手土産に、起こすついでにオレの技を刷り込んでおいた、イイ感じに育ってるぜ?」

「馬鹿な、大雪山おろしを?」

「ああ。あいつは元気を育てる可能性も存在するから、その恩返しだ。ミチルさんは隼人、お前に任す」

それは早乙女博士の次男『元気』が実は女性で、『渓』という名を与えられた場合の世界線であり、その世界線では、ゲッタードラゴンの実験中の『事故』で早乙女ミチルは死亡している。武蔵は多くの世界線で死亡するが、その代わりにゲッタードラゴンか真ゲッターロボを遺産として遺す。また、隼人は多くの世界線で竜馬までも失い、『置いてけぼり』に遭うため、流石に可哀想になったのか、早乙女ミチルを生存させ、隼人に託すと明言する武蔵。

「武蔵、教えてくれ。あの巨大真ドラゴンはなんだ?」

「ある世界線の早乙女博士が幾多のゲッタードラゴンを無限合体させて生み出した代物だ。その世界の號をキーにして進化し、そしてその役割を果たすはずだったものだ。連中はそれを盗み出し、ウザーラを改良する参考にした」

「その世界での真ゲッタードラゴンそのものだと?」

「そうだ。あれはウザーラによく似たドラゴン形態、殆どロケットのライガー、樽のポセイドン形態を持つ」

「その破壊力は?」

「木星の衛星程度はビームで破壊できる。シャインスパークは自壊の危険があるが」

「ふむ。真ゲッターよりは強力というわけか」

「それが悪用される前に鹵獲しろ。真ゲッターを超えるなら、こちらも真ゲッタードラゴンを目覚めさせるまでだ」

「それがあの繭から生まれる真ゲッタードラゴンの可能性なのか?」

「戦闘能力は俺が保証する。真シャインスパークと真ストナーサンシャインを備え、ゴッド・マジンガーとタメを張れる」

「真ストナーサンシャイン…」

「こちらの真ゲッタードラゴンも三形態になれるが、原型をそのまま進化させたものと思え。ドラゴン形態でも三形態すべての能力を使えるようになるだろう」

「従来のゲッターとは比べ物にならんのか?」

「アークも比ではない。真ゲッターを5とするなら、真ゲッタードラゴンは15くらいの差がある」

基礎能力でそれほどの差があるのを説明する武蔵。生前より理知的な物言いであり、ゲッターの使者になっているのがわかる。

「フッ、真ゲッタードラゴンが終着ではないだろう?ゲッターは」

「真ドラゴンは聖ドラゴンに進化し、その後に皇帝として玉座に座る」

「皇帝だと…まさか、前史で見たあの…」

「そうだ。ゲッター究極最後の進化、ゲッターエンペラーだ!」

ゲッターエンペラー。その名を告げる武蔵。それこそがドラゴンの行き着く進化であり、宇宙を救う力を持つ唯一無二のゲッターロボであると。

「宇宙を救うだと!?」

「そうだ。宇宙の終焉を止めるためにゲッターは宇宙を喰らう。空間を支配するのだ!」

ゲッターエンペラーの生まれる目的を告げる武蔵。自分はゲッターを悪用するものを討つように仕向けに来たとも言う。竜馬に言付けを頼む。

「自分で言ったらどうだ?」

「あいつ、意外に繊細なところがあるからな。俺よりも適任がいる」

「博士か」

「それと、ヤツの妹だ」

武蔵はそれを聞き、後に竜馬を竜馬の妹のジュンと早乙女博士が尋ねるようにセッティングする。竜馬が本格的に復帰したのは、妹に激励されたからでもあり、妹の生前は妹思いの兄であったのがわかる。これが竜馬の復帰の真相であった。意外だが、竜馬も隠れシスコンと言えるが、トラウマになっていた面もあるので、ある意味では肩の荷が下りたのである。





――その頃、少年のび太は調から連絡を受けていた。正式に野比家で暮らしたいとの事であるが、切歌と揉め、クリスやマリアには引き止められていた事は知っているので、夜中に忍法で抜け出す算段という――

「いいのかい?」

「あそこに私の居場所はないよ。師匠が作った居場所であって、私の居場所じゃないもの」

「どうやって抜け出す気?」

「忍法変わり身の術で抜け出す。力ずくで止めようなら、ライトニングプラズマでボコボコにしてでも押し通る」

「闇夜に紛れて抜け出す気だね」

「人に隠れて悪を討つ、じゃないけど、闇夜はスニーキングにはもってこいだよ。草木も眠る丑三つ時に抜け出す。古代ベルカで暗殺任務もこなしてきたから、一応は心得てる」

「それ、そっちの仲間に言った?」

「言ったって本気にしないよ。特に響さんとは折り合い悪いんだ、古代ベルカで汚れ仕事もしてたので」

「なるほど」

調はベルカ戦争に従軍してきたので、当然ながら主が遂行できない汚れ仕事もこなした。物資強奪などの山賊まがいの行為、敵対国の政府高官の暗殺。それらもこなしてきたため、『誰も傷つけさせない』モットーの響とは帰還直後から折り合いが悪く、それも出奔の理由だ。また、騎士とは言え、半分は近代軍の兵士のような割り切りも必要とされた世界であるため、武士道を重んずる風鳴翼には苦言を呈されている。

「物資強奪もしたし、暗殺もした。おかげで響さんに頭ごなしに否定されたよ。カチンと来たから、超光速でボコボコにしたけど」

「どんな風に?」

「単に、今日の模擬戦で白金色のナインセンシズのオーラを纏って威圧してから、ぶっ飛ばしただけだよ」

ナインセンシズのオーラを纏うと、威圧感は感じるが、エネルギー量の大きさを人では感じ取れない様になる。某バトル漫画ではないが、神の次元の力はクリアで高質なのだ。また、響が模擬戦で『映画は何でも教えてくれる』とも言ったので、『映画は見栄えのいいの優先だから、嘘も相当入ってますよ』と皮肉を言ったともいう。

「まあ、実際、映画やドラマって嘘も多いしね。44マグナムも、車のエンジンはぶち抜けないのは有名だし」

「もっと強いのが、映画撮影された時点であったしね」

「君、その模擬戦はどうしたの?」

「最後はクリス先輩を驚かす目的で、コルト・ピースメーカーを作って、先輩に向けたよ。シンフォギアには効かないのは分かってるから、本当に驚かすために作って、とっさに構えた。のび太君のおかげで早撃ちできるようになったからね」

のび太には及ばないが、それでも西部開拓時代のアウトローより早いクイックドロウを可能にしたらしい調。クリスがショックを受けたのは、反応したときに既に撃鉄を起こしていた事である。

「とにかく、なんとか抜け出すつもりだよ。私には聖剣の力が備わったっていうし、最悪の場合はそれで切り抜ける」

「死なせない程度にしなよ。後でしこりにしたら面倒だと綾香さんが」

「分かってる」

とはいうものの、なんとか草木も眠る丑三つ時に切歌と暮らす寮を抜けだし、運良く誰にも会わずにドラえもんと合流し、野比家へ出奔する。着の身着のまま出奔したが、この時には忍法を習得していたので、センサーに反応もせずに抜け出せ、西暦2000年後半の野比家へドラえもんに連れられ、行方をくらます。遠い平行世界への移動なため、痕跡はない。一応、置き手紙は残してきたが、それが切歌と疎遠になった原因であり、後のダイ・アナザー・デイでなのはの行為などの要因になる。また、野比家に行くにあたり、シンフォギアはGウィッチとしての能力で複製を作り、タイムマシンで移動中に起動している。黒江が改良を加えた理論を元にしたものであるので、エクスカリバーを展開しても、ギアを維持できる。野比家で暮らすのに、シンフォギア姿がトレードマークになっていたからであろうか。必要はもう薄くなったが、敢えて纏っている。箒も野比家を訪れる時にはアガートラームを纏っているので、それに合わせた形だ。しかし、出奔に踏み切った時には、黒江達はもう宇宙戦艦ヤマトに乗り込み、イスカンダル救援に向かっていたので、初陣はダイ・アナザー・デイにずれ込んだ。その代りに野比家の守護を任され、当面の間は野比家に滞在しての暮らしを再開する事になったという。黒江達はタイムスケジュール的には、未来でジオン残党狩りとイスカンダル救援に勤み、本国に召還後すぐに501に着任して、ダイ・アナザー・デイを戦っているという、多忙を極めたものだ。黒江達の実績はその時点でかつてのものに更に箔がついていたのだが、連合軍の人事書類への反映が遅れ、更に覚醒前のミーナが監察官と早合点した事で冷遇され、業を煮やした源田実が山本五十六を動かし、人事書類を書き換えたのだ。表向きは当時の報告漏れの新資料の発掘という体裁で、だ。偽装工作のため、当時の人事課の高官の名を引っ張り出して使い、当時の人事課の処理ミスと装った。正確には詳報の処理担当者の処理ミスとし、処分は曖昧にし、人事記録をなんとかしてすり替えた。そのすり替えは極秘裏になされた。ハルトマンの要請もあり、僅か半日で処理され、書類上は『一貫して現役のまま』とされた。実際にルーデルのような例もあり、扶桑には最古参組の例があったので、違和感は無いし、ガランドの例もある。

「師匠、かなり強引に人事記録を書き換えるとか言われたみたいだけど、どうするんだろう」

「ああ、501に送り込むとかいう奴でしょ?簡単さ。当時の担当者のミスって事で、記録をそういう事にするのさ」

しかし、現場で引退式典がなされていた者の人事記録を非合法で書き換える事にはウィッチ出身参謀たちが反対し、処理が遅延してしまう。その間に黒江達の着任が予定通りになされた事で問題が発生し、世代間対立が権限してしまう。なし崩し的に復帰した圭子はともかく、療養扱いとして先行して書き換えが済んでいた黒江、引退式典が公にされた智子が火種になってしまった。最も、智子は分かっていたことなので、茶目っ気を出して『I'll be back!』と式典で言っており、有言実行したことになる。しかし、ミーナ自身が早合点から冷遇した事、外見が若々しい(着任時は圭子と黒江は素の容姿である)事などから、嫉妬を買いやすかった。しかし、既にハインリーケがアルトリア化を起こし、黒田が覚醒済みであった事で、睨みは効いていた。また、作戦が近づくにつれ、圭子が猫かぶりをやめ、黒江も普段の奔放な態度になった事、赤松の着任が一種の統制となった。また、黒江のエアの披露、アルトリアが若手をハインリーケを装いつつ、それらしくまとめ上げていった事、サーニャとルッキーニの覚醒の兆候の表れが黒江達の希望となった。イスカンダル救援時は本格的な覚醒へ至らないまでも、サーニャのほうが先に表れ、ある507周辺の基地への空挺部隊による奇襲の際にそれは起こった。当時の解散前の502の援護に訪れていたが、覚醒前の雁渕孝美が負傷し、エイラが援護に行けず、自身もティターンズの空挺部隊に取り囲まれた危機的状況で、サーニャは意識が殆ど消失したような状態になりつつも、オラーシャウィッチの魔方陣ではない未知の魔方陣を展開し、手に何かのカードを持ち、詠唱を唱えた。普段より高めで、あどけなさを感じさせる声色で。

『告げる!汝の身は我に!汝の剣は我が手に!聖杯のよるべに従い、この意この理に従うならば応えよ!誓いを此処に!我は常世総ての善と成る者! 我は常世総ての悪を敷く者――!汝、三大の言霊を纏う七天!抑止の輪より来たれ、天秤の守り手―――!夢幻召喚(インストール)!!』

この行為をしている時、サーニャ当人に意識はない。だが、サーニャの中にあったイリヤスフィール・フォン・アインツベルンの魂魄の記憶が覚醒した狼煙ではあった。セイバーのクラスカードを夢幻召喚した場合のイリヤスフィール・フォン・アインツベルンと瓜二つの容貌に変貌し、手にはエクスカリバーが握られていた。

「サーニャ…さん……?」

「もう、これ以上、誰も傷つけさせない!」

クラスカードで自身の存在を英霊化したため、目にも留まらぬ剣技を見せ、ティターンズ兵の銃をスパンとたたっ斬り、見事な横払いの一撃で吹き飛ばす。少女騎士という体裁のサーニャ(イリヤ)に覚醒前の孝美は一種のデジャヴを覚えた。いつかどこかで見たような、自分の大先輩たちの剣技に太刀筋が似ていたのだ。近接格闘でも『セイバー』の力を行使し、怪異を有無を言わさずに一刀両断する姿は孝美に前史の記憶を呼び覚まさせた。ティターンズ空挺部隊兵も一緒くたに斬っていくイリヤ。

「智子先輩に…似ている…。あの時の……あの時の…?」

言っている傍から記憶と意識の奔流が脳内を駆け巡る。そして……。

「思い出した……私は……」

孝美はこれを以て、Gウィッチとなった。聖闘士になったのは、これ以後のことである。Gウィッチになった証か、瞬時に肉体の外見が二歳ほど若返る。同じく、危機的状況で覚醒した事になるが、自分で確信が持てるまで、ラルにも報告しなかった。イリヤについては、危機的状況下での一時的な表層化であったが、黒田にラルから最重要事項として通達された。また、エクスカリバーを使用したが、目撃者が数人程度だったのもあり、黒江の501着任までの箝口令が引かれたし、サーニャ当人も覚えていなかった。そのため、黒江が披露したのが公では初である事に変わりはない。それを知らされていた黒田はサーニャの中に眠るイリヤをサイコフレームで呼び覚ましたのである。サーニャは自分の中のイリヤを受け入れたため、イリヤとしての自我を確立。九条しのぶと使い分ける事になる。こうして、Gウィッチネットワークは確実に拡大し、やがて、23世紀にアストルフォ、ジャンヌが出現したことを期に行動を開始する。途中、ロボットガールズの来訪と誕生も入り、Gウィッチは未来世界で先行して地位を築く事にし、イスカンダル救援に志願していく。それは赤松の意志であり、レイブンズは未来世界での戦果で表立った批判を封じろと指令されているのだ。


「――師匠にはお詫びのメール出すよ。間に合わなくてすみませんって」

「今夜、ドラえもんが君のところに行く。気取られないようにね」

「分かってる」

この一連の電話が調がのび太の元へ出奔する直前の会話である。本当はイスカンダル救援に召集されていたのだ。だが、その数日前にSONGを抜ける意志を表明したら、クリス、切歌、響に慰留され、マリアからも『あなたがなぜ、アヤカの呼集に応じなければならないの?』と疑問を呈されるなど、大パニックになってしまった。連絡を受けた黒江が次元間通信で事情説明をしたが、年少組は納得しなかった。出奔の形になったのは、最終手段がそれであったためだ。置き手紙は残しての。ギャラルホルンを介さない手段での次元転移はSONG側には感知できない。さらに、お互いに次元の位置が遠いために、ギャラルホルンではまず探し出せない。更に、聖遺物を介さない手段での転移であるため、21世紀前半水準の科学では探知も痕跡を辿ることも不可能である。ドラえもんのタイムマシンは幾度かの改造で平行世界のワープすら可能なようになっており、外見は初期型でも、性能は『作れた最後の時代の一線級』に達している。もっとも、搭乗者が次元空間に姿を晒すという点はドラえもんの時代のタイムマシンに多く見られるが、天蓋を有するタイムマシンが普及しだした時代でもあるため、ドラえもんのタイムマシンは初期の古いモデルと未来デパートでも明言されている。それでなんとか野比家に行き、以後、野比家を住処とする調。シンフォギア姿である事が多いので、アンドロイドと思われてもいるが、街の影響力が及ばない領域への買い物では普通の服装でしているし、街の予防接種も受けているのと、学園都市の活動が2001年には公にされたのもあり、人間と認知されだしている。(ただし、外見が変化しないため、ノビスケが少年のび太と同年代になる時代に疑惑が再燃するが)2000年からの数年は調が単独で常駐を担当したが、その数年でのび太に仄かな恋心を抱くようになる。特に、のび太の天然スケコマシぶりは伝説で、のび太の街の影響力が及ぶ新宿の名画座に映画を見に行った帰りに、さり気なくマフラーをかけてやるなど、兄として自然な優しさを出していた。のび太は一人っ子であった上、玉子が義母亡き後は成人まで厳しい教育を課すことを決めていたので、ダメダメなところが目立ちがちであるが、のび太はおばあちゃんが培ったその無垢な優しさこそが人たらしであり、それについては黒江以上であった。彼を黒江がなぜ友と呼ぶのか。生き方は違えど、のび太は自分の行く末を知りつつ、敢えて、時代の特異点としての使命を果たした。黒江の傍にはずっといてはやれないが、心の拠り所として、友であり続ける。それがのび太が選んだ人生だ。子孫達に遺訓を遺したのも、残される黒江達へのせめてのたむけである。(のび太自身、自分が運命の神に愛された故に、子孫の誰かとして転生することは今回においては悟っており、死に際に『また会える』と黒江に言葉を残している。それは実際に、セワシの曾孫の『野比のび久』(セワシの嫡孫の第一子)という形で実現する。22世紀の終盤に生まれたので、ガトランティスとのとの戦争当時は赤子であったが、更に後のボラー連邦との戦争には、高等工科学校生ながら従軍し、軍人としての道を歩む。その時代に黒江と対面する事で彼の先祖ののび太の意識が目覚め、約束を果たす。以後は『父親』から家督を譲られ、23世紀には名家として地位を築いた野比家の若き継承者として名を馳せつつ、裏ではのび太として振る舞うようになる。また、のび久はその運命の暗示であるかのように、その容貌はかつてののび太と瓜二つであり、実質、のび太の魂の新しい器であった。また、のび太の自我意識が覚醒してからは、内輪ではのび太であった時の『僕』を使いつつ、公では『俺』、『私』を使う。これはのび久は気性は本来、歴代当主ではノビスケ寄りであったが、のび太の自我意識の覚醒で温厚になったからだろう。彼がのび太の転生先であり、不本意ながらも、死に際の約束を果たしたのび太は、23世紀以降は彼として二度目の生を生きていくのだ。ただし、以前と変わった独自要素もあり、『激しいアクションは見せないけれど、気配無くすっと動くよう』にのび久が心がけていた名残りで、合気道を習得する。また、以前は青年期以後に能力を上げたため、壮年期からは無理が効かなくなってきていたが、のび久は軍人であったため、基礎能力が高く、のび太の絶頂の頃の動きを14歳で可能だった。転生した特典は、彼が元から地球連邦軍高等工科学校の俊英で鳴らしていたところに、のび太の絶頂の頃の能力値が+されたところだろう。(士官学校でのトップ5に入る。中学時代は体育系が盛んな学校で、卒業後は高等工科学校に入り、在籍中にボラー連邦との戦争になり、駆り出される)のび久はのび太の転生の器である事は受け入れており、任官後に融合を選び、のび太も子孫に報いるため、表向きは彼として振る舞うが、裏では一族をのび太として率いていく。自分の9代ほど後の子孫として転生し、子孫として生きつつも、黒江達との約束を守ったのび太。セワシの臨終にはのび太として語りかけ、彼に最後の安らぎを与えたという。セワシは自分の高祖父が自分の曾孫に転生したことを今際の際に知ることになったが、今わにかつてのテキパキした姿の片鱗を取り戻し、のび太の孫の孫として死ねたのである。享年は80代。のび太としても、自分の孫の孫の最期を看取る事になり、不思議な感覚を覚え、黒江がこれまでに何度も味わってきた不思議で、なんとも言えない感覚を真の意味で理解した(老いた子孫の最期を若い自分が看取る)のだった。黒江も人の子、娘の翼に代表される、元から半神であるほぼ直系の子孫と対照的に、長兄や次兄の系統の子供達が普通の人生を送って死んでいく事は辛いことだった。また、長兄や次兄の系統は綾香の血筋と化した三兄の系統と違い、綾香の神格化の恩恵は受けられなかったので、綾香は次兄の子の妻(新興宗教にハマっていたため)から激しく嫌悪された。その時代の確執は次兄系統に強く受け継がれ、次兄の孫が聖闘士になれず、次期当主レースから脱落した事でも決定的になり、綾香を好いていた次兄の意志と裏腹に、彼の子孫は綾香と対立していってしまう。次兄の孫が素養はあるが、研鑽を怠った事で聖闘士になれず、遂には綾香の主であるアテナに拳を向け、綾香自身の手で泣く泣く処断したことから、綾香は結果的に推されていた教皇の座を棒に振る。ただし、その子の『涼香』は綾香を敬愛する誠実な子供であり、その子が4代目レイブンズとなる事で一族内の名誉回復を果たし、光輪の鎧の継承者となる。また、星矢の隠居後、綾香が棒に振った教皇の座を涼香の妹『玲香』が継ぎ、綾香、翼が色々な要因(二人の性格面とその不祥事)で棒に振る教皇の座につくのであった。彼女たちが次男系統で初のレイブンズにつく者であり、綾香と強い繋がりを持つ三男系統以外でのレイブンズとしての初の例である。また、玲香の姪『凛香』は双方の素養を備えた、長兄の系統の末裔であり、この二代の活躍が綾香の肩の荷を降ろさせたのであった。その頃にはレイブンズも六代目になっていたが、聖闘士とサムライトルーパーの素養を兼ね備える者は二代目の後は中々出ず、六代目レイブンズの黒江凛香がそうなるのを待つしか無く、事実上の近代黒江家の始祖である綾香の強大さを一族に印象付ける事になった。黒江当人は『仲間や一族の死すら力に変えなきゃ戦えない程、俺は弱いのか?』と、兄達の子孫との別れを気に病んでいたが、僕が生まれ育ち、此処に居る。自分の前世を含めて託せる人がいるって幸せな事なんだなあって、今は感じているよ』との転生したのび太の一言で救われたとか。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.