宇宙戦艦ヤマト編その12『Gウィッチの台頭2』


――ナチス残党はジオン残党のように漠然とした目的で惰性で存続してはおらず、神の軍団と化して23世紀に至るまでピンピンしていた――

「マルテン・ボルマンが囮?」

「ええ。Mr.東郷にイスラエルが叩かせたネオ・ナチ共はモサドの目を誤魔化すための囮であり、本物は南米に潜伏していた」

「ますますオカルトじみてきたわね」

「南米に逃れたナチは一種のコミュニティを形成し、やがて戦時中に略奪した富で軍備を再建し、一部の高官を切り捨てて生き延びてきた。ボルマンは特にマークされていましたからね」

「それがバダン?」

「ええ。その下位組織が歴代の悪の組織です。ショッカーもデストロンもブラックサタンも全て同じ時期に結成されている」

「デルザー軍団は?」

「大首領直属の天使の軍団というべき連中です。あいつらは7人総掛かりでやっと倒せた連中だといいますから、他の組織とは格が違います」

「やれやれ。Mr.東郷にモサドやナチハンターが大金支払っていたのが可哀想になるわね」

「世の中そういうもんです。中には元日本兵も混じってますから」

「戦後の兵隊への忌避が招いたツケ、か」

「戦後、兵隊連中は穀潰しのように扱われましたから。だから少なくない日本兵がショッカーに行って、時の首相の吉田茂は、イスラエルのダヤンに嫌味を言われて激怒したそうです」

「記録あるの?」

「同席していた秘書の手記によるものですが、吉田首相、かなり怒ってまして、『何故、数年前まで無かった国に、元軍人のことで嫌味をかまされるのか』と言ったとか」

「モサドは復讐に走りすぎたし、日本は元軍人への手のひら返しが露骨過ぎた。それが自衛隊作るきっかけでしょ?」

「ええ。彼は警察に治安維持をさせるつもりでしたが、いざという時の事を考えたのと、朝鮮戦争での保安庁の失態が原因で、旧日本軍人を復権させた。かなりごねたそうですが」

「元は確か、反乱抑止のために、元軍人を集める目的でしょ?」

「ええ。翁がごねたおかげで、内務の連中が蔓延ったんで、翁も晩年には悩んでました。軍人より警察のほうが扱いやすいと踏んでたら、かってに抗争始めたんですから」

内務閥は元軍人を敗北者として見下していたが、結局は組織を回せずに旧日本軍人を増やした歴史から、伝統的に旧日本軍人を見下す傾向にある。それは黒江が軍人であることが判明した後の冷遇が証明している。

「で、今になって日本連邦軍の事で揉めてるんでしょ?与党と野党が」

「正確に言えば、数年前の鳩山ユキヲが諸悪の根源ですがね。彼は扶桑軍を無くして、自衛隊を置けばいいとして、外地も放棄させようとした。おじいさんに叱責された途端に投げ出したんで、彼を持ち上げてた連中はパニックでした」

「その名残りがこれ?『野党、扶桑の金鵄勲章廃止を迫る』…」

「内政干渉と言われた途端に及び腰になりましたが、軍人の勲章を廃止してどうするんだという話」

「この新聞記事だと、退役時に瑞宝章を与えて代替にするのが野党の言い分らしいわね」

「それじゃ、将官じゃないと貰えないんだよねえ」

金鵄勲章は一兵卒でも授与対象になるため、野党の案は自衛隊に合わせろと言わんばかりのものだ。また、防衛記念章と瑞宝章で従軍記章と金鵄勲章は換えが効くものに過ぎないというのが彼らの言い分で、戦友会の生き残りらから苦情が入る要因であった。その事にもわずかに触れられている。また、金鵄勲章は扶桑では現在進行系で授与される勲章であり、自衛官も今後の任務如何では授与される可能性もある。また、日本唯一の武人勲章であったため、事変の英雄である黒江達にも、もちろん授与されている。江藤の報告漏れのせいで等級が功績に不釣り合いであるから、次の反攻作戦を使って更新するつもりであるとは扶桑の昭和天皇の談。

「だいたい、金鵄勲章は騎士章、ビクトリア十字勲章より格式が上なのよ?それ知らないのかしらね」

「軍国主義が〜とか言ってる連中に限って、他国の権威には媚び諂うもんですよ」

「いや、日本人は権威に弱いのよ。扶桑華族廃止論も、富を再分配させようとする勢力が煽ったもんだし、ノーブルウィッチーズを空中分解させたから、ガリアと国際問題になったから、萎んだし」

扶桑華族廃止論は扶桑華族の言い分は無視されていたが、シャルル・ド・ゴールからの抗議一発で立ち消えになるなど、日本の左派は言い逃れしようとしている。彼らの行動がウィッチ世界欧州の貴族社会に一石を投じてしまい、ノーブルウィッチーズが半ば強引に無かったとして扱われ、苦労して呼んだ人員が遊兵になってしまった。その人員は501に取り込まれるため、ガリアは自由に使える手駒喪失したという影響を与えてしまったからだ。また、貴族を自ら市民革命で追放していながら、その権威に頼ったと糾弾された事で、ガリアは理不尽に手駒を奪われた。ド・ゴールの抗議は賛否両論であった。その流れで扶桑華族廃止論が立ち消え状態になり、各地に散っている統合戦闘航空団の一本化が提案されたのである。これには現場の反対が物凄かったが、ウィッチの軍事的価値の低下が急激に起こっていた事や、分散配置が仇になり、ティターンズに既に潰された航空団があったこと、無かった事にされたノーブルウィッチーズに通常部隊への行き場がないことから、501への事実上の一本化が進められていく。統合戦闘航空団は元々、独自性も強く、各国の都合で動かせないのだが、いらん子中隊の功績を自ら秘匿したことが問題にされ、複数の参謀が失脚に追い込まれ、モントゴメリーも元帥の座を剥奪された。日本から流れた小説に詳細が書かれていて、それで全てが知られ、機密の意味が無くなったのだ。マンネルヘイムが『モンティに乗せられた』と言い訳したのもこの頃である。日本はモントゴメリーが元帥を剥奪されたと報道したが、正確には元帥への昇進が立ち消えになり、大将にもならなかったのである。また、ロンメルにも兵站に疎い馬鹿という誹りがあるため、相対的に大将になったパットンが嘘のように輝いていた。ロンメルは人気で元帥になったとする誹りがあり、パットンには人種差別主義者という罵りがつきまとう。そのため、ロンメルが中庸と見なされ、ドイツからも扱いやすいとされた。日本の提督や将軍につきまとう『若者を弾丸の代わりにした』という誹謗中傷と、将なら前線に立てという強迫はないのが救いである。日本は一般層が戦国武将と近代の軍人の区別がついておらず、官僚型軍人を無能と断じ、前線で戦うタイプを尊ぶ傾向が強い。しかし、実際には官僚タイプがいないと組織が回らないため、ウィッチ出身の将校と見なされた武子が要望もあり、あまり出世してこなかったのだが、日本側が問題にしたので、准将にしたのだ。武子は政治的決定だと憤ったが、日本側に人員を無理に整理されても問題なので、昇進を受けたのだ。准将は日本側からの政治的圧力を退けるため、陸自の協力で実現した階級なのだ。(准将とはいうものの、第一号の四人は実質は中将待遇だが)

「美琴さん、武子さんから召集かかってますよ」

「お武さんにあとで返事出すわ。あたしもここ最近は立て込んでたから、休みが欲しくてね」

「ラルさんが総監になるんで、あまり前線に出れなくなるとかで、召集かけたとか」

「あー、例の世界遺産ぶっ飛ばす発言の大佐が更迭された事件の影響ね?」

「報道されたんですか?」

「外のニュースはネットで見れるから。ドイツがかなり外聞気にして、圧力かけたみたいよ。ウィッチの現場が萎縮したみたいね?」

「綾香さん達の現役復帰もあるんで、抗争になりそうです」

「抗争ねぇ。あの人達、あたし達レベル5みたいに一軍と戦えるんだから、出る杭は打たれるみたいなことすると、後で自分達のほうが危うくなるのに」

美琴も言うように、既にGウィッチは基礎戦闘レベルが学園都市のレベル5に相当するため、却ってウィッチの立場を悪くするだけのGへの迫害には呆れ顔だ。近代兵器が普及すれば、空戦ウィッチのメリットはほぼ消え失せる。ましてや、黒江や智子のような近接格闘技能そのものが好事的な戯れとされていた時代、戦闘ヘリにも太刀打ちできるかどうか。また、Gへの覚醒は偶発的なものも含まれ、誰にでもあり得る事であるのに、突然変異扱いで排除はまさに闇である。

「あたしだって箒で飛べるようになって、黒子から逃げるんだし。広い世界には、前世がプリキュアな連中だっているかも知れないのに」

「ああ、思い出した。ディケイドさんにその可能性を探ってもらってます。中堅にいるらしいんです、その、プリキュア出身」

「…マジ?」

「そうでないと、わざわざディケイドさん呼びませんよ」

「あのストーカーなおっさんがつきまとわない?」

「念の為、一号ライダーの委任状を持たせるとか」

「なるほど。で、候補はどのプリキュア?」

「おそらく、三代目のプリキュア5。下手したらフェイトさんだって、ハートキャッチだし、シャーリーさんもスイート、芳佳さんはスマイルになりそうですがね」

「なんか一気に話が大きくなったわよ」

「綾香さんも最初は『まっさか〜』な感じだったんですが、ハインリーケ少佐がアルトリア・ペンドラゴンだったんで、もう諦めの境地です」

「ああ、あの腹ペコ王。息子と馬が合わなくて、国滅ぼした逸話があるのよね、あの人。そこは気に入らないのよね」

「まあ、あの人は王位というモノの意味合いが違う時代ですから」

アルトリアはモードレッドの真意に気が付かなかったり、征服王にどこかの世界で言われた事を気にしているため、転生後は一人の少女としての自分を出そうとしている。ハインリーケの意識が融合を選んだのもそのためだ。その感情もあり、戦闘時の甲冑が若き日の純白の甲冑姿になっているのだろう。(後に、在位中の青い甲冑も要望で使うが)

「でも、プリキュアなんて、話が大きくなったわね。仮面ライダーやスーパー戦隊がいるんだし、今更かしら」

「ですよ。芳佳さんなんて、あたしもその気になれば変身できそうだし、やってみようかなーとか言ってます」

「あの子、ノリいいわねぇ。」

「大洗の生徒会長入ってますし」

芳佳は角谷杏要素がかなり強まり、ノリがいい面が表に出ている。そのため、もし、事が実現したら自分もプリキュアに変身したいらしい。ただし、圭子は『容姿は出来ても、能力の再現は出来無さそうだがな』と冷静である。黒江がシンフォギアそのものを手に入れても、普段の身体保護具代わりに使い、重要な戦闘では聖衣を用いた例もあるからである。その事を指して、黒江は後輩から『マウント取りやがって』と言われているが、シンフォギアも普通のウィッチの大半より圧倒的に強力なことには変わりない。また、プリキュアの能力そのものは再現出来なくても、身体能力は再現できるだろうし、技は擬似的に再現は可能と思われるのも、シャーリーと芳佳が乗り気な理由だ。

「シャーリーも芳佳も、アニメ見てた気がするし、気持ちはわかるわ。綾香さん、あたしの超電磁砲を撃ったとか言ったけど、どういう場面?」

「それは、現地でカラオケで歌いまくったところに茶々入ったから、半ギレで撃ったんだそうな。切歌ちゃんがそれでますますおかしくなったけど」

「威嚇?」

「ええ。本人がいうには。だけど、マッハ5の速度でコインが直撃したら、いくらシンフォギア着てても気を失いますって」


「だよねぇ。それであの子がおかしくなったのね」

「ええ。その時から俺っていうようにしたんだそうで。それで別人だってマリアさんには確信されたけど、響さん達には事情説明が面倒とかでそのまま姿を消したとか」

「綾香さん、事情説明面倒とか言って、後に先送りする癖あるわね。それで一年間やらされたんでしょ?」

「勘違いからの押し付けに近いですけど。だから、さっき言った子が引いて、僕のところに来たんです」

黒江のその期間については、半分は自分のミスもあるが、響の暴走もあるので、お互い様といったところだ。しかし、後に赤松が言うように、他人が代わりになっても、ベンチウォーマーでしかないのだ。調当人も切歌に苦言を呈したところ、それをさせた響と揉めてしまい、出奔を決意している。圭子や智子が事情説明に奔走するのもこの頃だ。また、調はダイ・アナザー・デイまでに10年以上を野比家で過ごしていたし、響が立ち入れるようなことでは無くなっている。作戦中にははやてからかつての愛機『エクスキャリバー』を送られるのもあり、なのはがやらかすことは黒江の叱責を呼ぶのだ。なのははこれでメンタル面を教えるのが下手な事を自覚し、教導隊を辞するとまで口にする。実際、なのはの教えは強い信念や自身を持つ者の自信を木っ端微塵に吹き飛ばす教導隊のマニュアル通りで、黒江からは疑問を呈されている。また、既にこの頃には、のび太がティアナ・ランスターが持つ記憶をもとに再現した映像を見せていたので、なのははバツの悪さをしていたはずであり、同じ轍を踏んでしまった感は否めない。黒江は『このオタンコナス!教導隊のマニュアルは初期訓練終えた正式配置に就いた相手用の訓練マニュアルだから一般人にはキツすぎだっつーの!!お前も自衛隊行ったんなら、ブートキャンプからやれよ!!』と叱責し、響をその足で見舞っている。別の分岐の出来事にはなったとは言え、ティアナ・ランスターの一件があったため、『ガングニールを消してみせた時には、引っ込みつかなかったんです』となのはらしくもない言い訳をしてしまい、聞きつけた圭子にも修正されている。フェイトは『だから、俺に言ってくれれば』と嘆いている。フェイトはこの頃から、前史での憑依された影響が蘇り、一人称が俺になっていた。容姿は自分で11歳に戻しており、ブレイズフォーム姿で前史でのアイオリア憑依時の口調であるというギャップを出していた。映画撮影でタイムふろしきを使うのも面倒なためでもあり、フェイトは途中からは小学生モードで戦っているが、なのはは容姿の調整技能を覚えておらず、ショックで三日寝込んだという。

「そう言えば、なのは達は映画撮影なの?」

「ええ。管理局が疲弊してるんで、それを誤魔化すプロパガンダで。三人とも出たがってはいませんよ。暗部を削ってるから」

「今度、ウィッチ世界で予定される作戦に間に合うの?」

「休暇取って来るそうです。フェイトちゃんは休暇の時は体を小学生に戻してるとか?」

「なんで?あの子、まだ19じゃ」

「甥っ子と姪っ子の面倒見てるから、疲れるとか」

フェイトは義兄のクロノに子供が生まれ、その子の面倒を見ているため、休暇の時は小学生の姿で羽目を外すのがのび太によって明言された。(黒江いわく、その脚本を酷評するはやて(70パーは遠坂凛化)に『子供にも見せる士気高揚映画だからドロドロの裏側見せるこたぁねぇよ』と言って諌めている。)

「はやてはどうなの」

「半分以上はあかいあくまになりました。おかげでヴィータちゃんが怖がってるそうで。なので、格闘戦良し、頭脳明晰になりました。間は抜けてるところはあるけど」

「前の後手後手に比べれば、戦士としてマシになった、か。あの子、頭はいいけど、理論倒れっぽかったし」

「先天的素養に頼り切りでしたから。遠坂凛になる事で性格は難ありになるでしょうが、優秀になります」

「ケチになったのね」

「まあ、宝石魔術の関係もあって。まあ、これで暴漢に絡まれても大丈夫ですよ」

「たしか、格闘技してたのよね」

「遠坂凛としての技能ですが、八極拳をある程度は使えます」

八神はやては格闘はちょっとした護身術の域を出ない程度の訓練しかしていないが、遠坂凛の記憶と技能が覚醒し、八極拳を扱えるようになり、そこそこ強い部類に入るようになった。黒江がしたような歴史改変をフェイトも望んでおり、母と姉の救済を願っていることにも触れる。

「いいの、それ?」

「ゼウスの許可は取ってあるし、アリシアの救済くらいはいいんですよ。重要人物でもないし」

ゼウスによれば、タイムマシンでPT事件の時間軸に遡り、維持カプセルに安置されている遺体にアリシアの魂を再度宿らせる作戦とのことだが、フェイトは根本的な変化を望み、アリシア死亡事故を改変するつもりであると告げたという。事故が起きなければ、プレシアが狂うことは無かったからだ。この歴史改変にはGウィッチが全員で協力し、アリシアは死なない事になり、(フェイトがクリスタルウォールで魔力炉の影響を防いだ。ただし、それに伴って起こった爆発は対処しきれず、負傷した。フェイトが介入した事で起こった二次災害のようなもので、それでフェイト自身も負傷した)プレシアも狂わない。だが、フェイトは実の妹として生まれた事になる。改変後、フェイトはプレシアの次女であり、『姉と違い、大魔導師だった母の素養を受け継いだ』とされ、プレシア・テスタロッサ事件は歴史から消える。アリシアは存命した世界となった後はフェイトの年の離れた姉という事になり、研究員となっている。M動乱時にはフェイトが19歳の時に22前後という差であった。また、呼び方はフェイトは今の状態では『姉さん』と呼んでおり、(元はお姉ちゃん)年齢相応になっている。また、歴史改変後でもM動乱は起こり、はやてが鬱憤を晴らすために大暴れし、前回よりは楽に逃亡できたという。フェイトも歴史改変を行うが、フェイトの場合は事情が事情であることから、ゼウスもあっさり了承した(黒江は事後承諾だった)。だが、歴史改変後もプレシアが責任を問われ、職を追われたのには変わりはないため、フェイトは少女期にフェイトの将来を慮っていたプレシアが事件の折に事故死した後に判明した遺言で、既に管理局で地盤を固めつつあったハラオウン家に養子に出したという形で、ハラオウン家の一員にもなっている。フェイトは史実の事件とは違う形でなのはに会い、闇の書事件を共に戦ったという風に経歴が変化したが、ハラオウン家に養子に行ったという形で、クロノとの家族関係は保たれた。フェイトがその歴史改変を実行したのはダイ・アナザー・デイの数日前であり、アリシア・テスタロッサは歴史改変により生存し、フェイトの実姉という形で存在した(アリシア・テスタロッサの死亡からフェイトの誕生まで、今回の歴史では間が元々少なく、出自がアリシアの実妹に変化しても、大まかな流れは同じで、なのはに会えた)。プレシア亡き後はテスタロッサ家の名跡を継ぎ、母と同じ研究者の道を歩んだとされている。元々、プレシアの才能をアリシアは殆ど受け継いでおらず、フェイトがプレシアのものを受け継いだことは同じだが。アリシア生存の場合はフェイトの才覚を認めていたが故に、フェイトは愛情を受けられた。そもそもアリシアさえ生存すれば、優しい母親のままでいられたのが確認できたのが救いであった。ただし、フェイトは元の歴史における堕ちた姿との対比に衝撃を受けたのも事実であり、フェイトは改変で得た幸せを享受しつつ、別の歴史となって『消えた』本来の流れにおける母親と姉の冥福を祈るのである。

「あの子が求めたモノは家族、か」

「取り返しがつくと分かれば、それに縋るもんですよ。タイムマシンで変えられると分かれば、ね。タイムパトロールもドラえもんが説得し、最終的に容認しました」

「歴史的に良い影響与えるのは分かってるしねえ」

「そりゃ、何もナチスを勝たすとかじゃないし、アリシア・テスタロッサの生存が起こってもフェイトちゃんは生まれる運命だ。なのはちゃんとも会うし、万事解決ってわけ。プレシアの寿命は延びないだろうけど、アリシアはあり得た未来を実現させる。理不尽に子供の命が奪われるのは嫌ですからね」

アリシアは妹と『普通に生きていれば』、会うことは無かっただろうことは薄々と感づいており、分かった上で歴史改変で得た生を楽しんでいる。アリシアは歴史改変を行おうとしたフェイトを目撃している。大人の姿で自分を守ろうとした事を。その時に共鳴現象が起き、アリシアは自分が本来なら、事故で即死する事を知ってしまっていたのである。それを知り、アリシアは妹に母の狂気の業を押し付けた事を悔やんだ。それもアリシアが成人後には本来のフェイトより性格が明るめであるが、落ち着いたところもある研究者になっていた理由だろう。

「で、歴史を変えて、それの後にプリキュア出身者を見つけようってわけ」

「ええ。フェイトちゃんの考えはそうです」

「候補者がすごいことになりそう。歴代のプリキュアで怪しそうなのがいそうだし。つか、あの子自身…」

「分かってるでしょ。それ」

「うーん」

フェイトも自分の前世が何であるかは知らないが、のび太と美琴はある程度の目星はつけているようだ。黒江達がウィッチの組織的な生き残りのためにプリキュア出身者のGウィッチを求めているのは、ウィッチ全体の未来のためである。このまま抗争が続き、同位国の大規模な介入があれば、確実に多くが路頭に迷う。それはのび太や美琴も容易に想像できる最悪の未来像である。それを防ぐために、プリキュアを魂の出自として持つ者を必要としているのだ。(これは日本がヒーロー達のいる次元の日本なので、プリキュア出身者がいれば、政治的な手出しが容易にはできなくなるからでもある)

「ここがヒーロー達がいる日本だから、プリキュアさえいれば、政治的な手出しを控える様になる、とはよく言ったもんです」

「それで、その最初の候補は?」

「中島錦。扶桑陸軍中尉で、世代的にはエーリカさんの代に当たり、割に古参です。魂の出自は半分は特定されています」

「誰?」

「断定はできない段階ですが、恐らく、三代目プリキュアである『プリキュア5』の中心人物である夢原のぞみ、即ちキュアドリームと思われます」

「三代目、か。ずいぶん中途半端ね」

「仕方ありませんよ。まだ調査が始まったばかりですから。半分は確定したのがいただけでも御の字ですよ」

のび太は持参したPCでその調査研究のレポートを美琴に見せる。錦の魂の出自が通算で三代目のプリキュアに当たることが判明したのは誠に偶然であり、自分自身でも自覚のない無意識の状態で変身し、天姫を守るためにその必殺技である『プリキュアシューティングスター』を使った。これは立ち合っていた智子も大いに驚いているが、その時の映像はバッチリ撮影されていた。

『プリキュア!シューティングスタァァ!』

錦本来のハスキーボイスではない、普段より高めの声色での必殺技の発声、シャインスパークを思わせる『ピンク色のエネルギーを纏っての突撃』など、その人物の特徴がよく出ていた。Gとしての覚醒が始まる時に起こりやすい暴走状態であるが、これが智子を感嘆させた一幕で、事態に先立って、大規模な人事異動を504の基地に伝えに行った時に起こった現象である。美琴は画面に釘付けとなるが、子供の時にはそういうアニメも見ていたためだろう。



――錦はこの後、暫くの葛藤の末に、夢原のぞみとしての記憶と自我を受け入れてG化し、正規のGウィッチでは初のプリキュア出身者となるのである。これを聞きつけたシャーリーと芳佳が同好会と称してのサークルに誘うが、それはここより後の話だ――



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