――メカトピア戦争の終結から、およそ二年の歳月が経過した西暦2202年。地球はまたまた、絶体絶命の危機を迎えていた。戦乱期と後の世から称される時代が本格化したのだ。事の発端は、『宇宙戦艦ヤマト』が前年に遭遇した暗黒星団帝国の艦隊が地球本星に急襲をかけてきたのだ。さしもの強力を誇った地球連邦軍もワープ戦法を用いた奇襲に対応が後手後手に回ってしまった。人的資源の問題を補う目的で配備されていた無人艦隊はシャロン・アップル事件の教訓で半自立化していたもの、半分機械人間化したような人種である暗黒星団帝国には通じず、動きを読まれて各個撃破されていき、殆ど戦果を上げることは出来なかった。更に、かつて恐れられた兵器“中性子爆弾”の宇宙版の重核子爆弾が日本の東京にに設置され、さらに上陸部隊の奇襲で連邦議会は制圧。映像付きで誇示される爆弾の威力に連邦政府は畏怖し、更に全地球上の主要都市が制圧されたという報告に『降伏』を決意した。だが、大統領自体はあくまで徹底抗戦の意志で固まっており、レビル将軍らに極秘で指令を発した。レビル将軍ら軍首脳は歴代仮面ライダーたちやスーパー戦隊の助けもあって、辛くも脱出に成功していた。そんな最中、大統領ら政府高官には暗黒星団帝国地球占領軍の設問が待ち構えていた。


「私は暗黒星団帝国地球占領軍司令、カザンである。現時刻を持って地球占領を完了したことをここに通告する」

それは政府行政の中枢を制圧したことを意味する。連邦軍は迎撃指令を出される前に制圧されたのでどうする事もできなかった。辛うじて戦力が無事なうちにどこかへ脱出するのが精一杯だろう。

「そこで地球連邦政府大統領に対し最初の司令を出す。宇宙戦艦ヤマトの所在を明らかにせよ」


カザンのこの一言に連邦議会議員たちは一応にざわついた。敵の第一声が「ヤマトの所在を明らかにせよ」というある意味?マークが浮かぶほどに理解に苦しむものだったからだ。


「ヤマトだって?」

「馬鹿な、いくら白色彗星帝国やガミラスを倒したと言っても、たかが戦艦一隻だろう?」

「そうだ。ヤマト以外にもアレクシオンやバトル級とかいくらでもいいものがあるだろうに……何故?」

そう。地球連邦軍にはヤマト以外にもいくらでも強力無比な艦船は存在するのに、なぜ現在となっては、もはや旧型になりつつあるヤマトを名指ししてくるのか。連邦議会の議員たちはその点が疑問であった。

「答えられないのか?」

「……何故ヤマトなのだ?ヤマトの所在を知って何になるというのだね?」

「質問は許さん」

「怖いのか?ヤマトが!!たかが戦艦一隻、何をそこまで恐れるのだ」

「どこにあるのだ!?ヤマトは!!」

カザンは拳を机に叩きつけて怒鳴る。ヤマトを異常に恐れているのか、小刻みに腕を貧乏揺すりしている。

「私は何とも言えんね。あれは軍の管轄から離れた。探したければご自由に」

それは大統領が咄嗟に思いついた出任せであった。実際に白色彗星帝国戦後に艦内設備が旧式化していたヤマトは前年の戦いの後、大改装のために一時的に軍籍から外れていたのは確かだし、あながち嘘ではない。こうして形式上、地球連邦政府は暗黒星団帝国に屈した。だが、地球連邦軍の兵士や艦隊はゲリラ化して抵抗を続ける。そして逃げおおせた兵士らは『英雄の丘』に集まっていた。



――英雄の丘とは、元々は宇宙戦艦ヤマトの功績を後世に伝えるべく、戦死者を祀った施設で、現在は地球連邦軍の近年の全ての戦死者を祀る施設に様変わりしている。しかし、元々の目的故、広場にはヤマト初代艦長の沖田十三の銅像と、彼らのこれまでの航海での戦死者達のレリーフが建てられている。そこにはなんとか逃げおおせた兵士達が集合しつつあった。そして、フェイトやティアナ・ランスター、スバル・ナカジマらもそこをミッドチルダ動乱が落ち着き、休暇で来訪したのだが、運悪くこの事態に巻き込まれたのだ。


――状況は最悪であった。地球連邦軍の迎撃が行われる前に、敵の攻撃は執拗に行われ、東京はまたも炎上していく。


「あの黒い戦闘爆撃機や兵士たちはどうしてこんなことを……!?これじゃ、これじゃ……ッ!!」

――空襲を受け、炎上する東京を見下ろしながら、愕然とするフェイト。世界が違えど、ここは『地球』である。自分の第二の故郷と言える地球の、それも日本が地獄絵図を呈しているのだから、フェイトの怒りも当然である。スバルも父親の先祖が地球出身なのでその気持ちは痛いほど分かる。ティアナもスバルと同じ気持ちのようで拳を握りしめて吐き捨てるように悔しさを顕にしている。ましてやティアナの現在の所属先は別世界の日本軍たる、扶桑陸軍なのだ。3人の中では東京を攻撃された悔しさは一番強いだろう。それを示すように、フェイトとスバルが時空管理局の制服を着込んでいるのに対し、ティアナは扶桑陸軍制式戦闘服である巫女装束と小具足姿である。

「どうして奴らがこんなたいそれた事をやったのか教えてやろうか?」

「あなたは……!」

皆が振り返るとそこには、一人の少女がいた。茶色の上着を着て、マフラーをしている小柄な少女こそは菅野直枝であった。彼女はヤマトに乗艦し、暗黒星団帝国と一戦交えた後も未来世界に滞在してその翼を休めていた。実はあの後、佐渡酒造の家に上がりこんでいたので、今回の事態に巻き込まれたという、ある意味不運続きな状況であった。


「オレは扶桑皇国海軍・第343海軍航空隊及び、連合軍第502統合戦闘航空団“BRAVE WITCHES(ブレイブウィッチーズ)及び、ストライクウィッチーズ所属、菅野直枝大尉。久しぶりだなフェイト」

「はい、お久しぶりです、大尉。今は空軍に転属されたんですよね」

「ああ。ん……今はオメー、20いったっけ?」

「行ってません!かろうじてですけど!」

フェイトは菅野とは数ヶ月ぶりになる。ミッドチルダ動乱での彼女の働きの結果、時空管理局にも勇名が轟いており、人材交流の人選にも候補者として挙げられるほどだ。

「大尉の評判はウチの方にも轟いてますよ」

「ま、まーな」

菅野はその評判にまんざらでもない表情を見せる。

「どうして大尉はここに?」

「オレはチョイと静養中だったんだが、暗黒星団帝国の奴らがここまでたいそれた攻撃をするたぁな……驚いたぜ」

ここで菅野は3人に新たな地球の脅威となる帝国の名を告げる。果敢にも偉大なる地球連邦政府に喧嘩を売った星間国家。その名も暗黒星団帝国。前年にヤマトが撃退した国家である。

「暗黒星団帝国?」

「その辺はオレだとうまく説明できねえから、そこにいる佐渡大先生に聞いてくれ」

菅野は銅像の前で、やけ酒をしている医者と思しき、壮年の年代の男を紹介する。佐渡酒造は菅野からの紹介で一礼すると事情を説明する。

「お嬢ちゃん達、宇宙戦艦ヤマトという戦艦を知ってるかね」

「はい。少しは……。たしか坊ノ岬沖海戦で沈んだ戦艦大和を宇宙戦艦に直した艦ですよね?ミッドチルダ動乱でお世話になりましたし、聞いた時は無茶だと思いましたけど」

「そうじゃ。波動エンジンを積んで生まれ変わったヤマトはこれまで3つの星間国家と事を構えてきた。ガミラス、白色彗星帝国……そして暗黒星団帝国……」

佐渡酒造は自らが乗艦した宇宙戦艦ヤマトの武勇伝を懐かしそうに語る。それは苦闘の歴史であった。戦いの末に多くの犠牲を払い、帰還を果たすヤマトだが、当初の乗組員はもはや一割に満たないほどに戦死してしまった。そして彼がやけ酒をしていた場所の目の前に堂々と鎮座する軍服姿の老提督の銅像こそ、歴史上の偉大な軍人の一人に数えられる男。宇宙戦艦ヤマトの初代艦長の『沖田十三』の銅像なのだ。辛くも空襲から逃れてきた連邦軍兵士、連合軍ウィッチたちが皆、沖田十三の銅像に対し敬礼をしている事から、彼の偉大さをフェイト達に実感させていた。彼は前年の航海でイスカンダルの救援を行なった際に交戦したのがあの暗黒星団帝国と呼ばれる軍隊であり、その主力艦隊が地球に攻めこんできたのだろうと説明する。

「軍の指揮系統は崩壊したに等しい。じゃが、ワシらは奴らに屈服するわけにはいかんのじゃよ」

「軍の指揮系統は崩壊したに等しい。じゃが、ワシらは奴らに屈服するわけにはいかんのじゃよ」

「佐渡先生の言うとおりだ」

「おお!山南さん、コーウェン提督、それにレビル将軍!!ご無事で!!」

英雄の丘に、辛くも脱出に成功していた地球連邦軍の首脳陣の第一陣の3人がやってきた。彼らは沖田十三と個人的に親交があった。それでここに足を運んだのだ。佐渡先生とも親交があるようで、佐渡先生とも仲がよさそうであった。

「仮面ライダー一号からXまでの5人ライダーのおかげでなんとかここまで来れましたよ」

「古代たちもここに向かっている。じきに着くだろう」

「おお、それは良かった」


と、その場にいる兵士たちに訓示を行う。それは暗黒星団帝国に屈服するわけにはいかないという大統領の意志を自分たちが具現化するのだという趣旨で、だ。こうして、軍は残存する戦力をかき集めてバルチザンを結成し、地下に潜って抵抗を続ける者と宇宙で攻撃をかける部隊に分けるという事だった。宇宙艦の中で動けるものは急ぎイカルス天文台に迎えと電報を打ってあるとの事だ。

「君たちには辛い戦いを強いることになる。だが、私たちも前線で戦い、死ぬ覚悟だ。スマンが諸君の命、この私が預かる!!」

レビル将軍の訓示に歓声が響く。軍の高官でありながら前線で死ぬ覚悟を示したのは腐敗した連邦軍上層部の人間ならまず言わない言葉であり、これが彼が兵士たちから慕われる最大要因なのだ。

「まずは横須賀に無傷の主力戦艦改級戦闘空母やウラガ級護衛宇宙空母が係留されているはずだ。それを奪還する。既に現地で穴拭智子大尉と黒江綾香少佐の率いる部隊が戦闘を開始している。我々は彼女らと合流し、敵を叩く!」

こうして2202年の地球連邦軍は地球人類としての誇りを捨てず、暗黒星団帝国にあくまで戦いを挑むという気概を見せた。フェイトは地球の敢闘精神に改めて感銘を受け、3人もまた、バルチザンとして戦いに臨む決意を固めた。これでミッドチルダ同様に地球も本土が戦場となったのであった。








――そもそも、今回の事態は、宇宙戦艦ヤマトがイスカンダルで暗黒星団帝国を撃退した事が主因と言える。だが、愚痴を今更言っても後の祭りだ。この時、連邦軍兵士たちは皆、そう思っていた。彼らは暗黒星団帝国に本土を蹂躙されながらもなお闘志を燃やしていた。それはかつての大日本帝国軍航空隊が本土空襲をされても闘志を失わなかったのと同じであり、フェイト達はこの点に本部を制圧されただけで抵抗をやめていった時空管理局地上本部の一部人員との心意気の差をひしひしと感じていた。

「おお、相原、相原じゃないか!よく生きとったなぁ……」

佐渡酒造が声を上げる。ヤマトの乗組員の中でいの一番に英雄の丘に到着したのは通信班長の相原義一であった。背中には旧型の通信機を背負っている。ついで航海班副長の太田と戦闘班副長の南部も姿を見せる。


「太田、南部も来たか!」

「アア、ユキサントコダイサンダ!!」

佐渡酒造の傍らにいるロボットで、艦内のコメディーリリーフ役のアナライザーが驚いた声を出す。階段からかけてくるのはヤマト艦長代理の古代進とその婚約者で生活班長の森雪だ。

「お〜い、みんな〜!佐渡先生〜!!」

古代と雪も姿を見せたとあれば、残りは島大介だ。

「おっ、相原、いいものを持ってきたじゃないか」

「こういう時は最新型だと敵に電波妨害されますからね。妨害にあまり気を使っていないだろう周波数を使う旧型を持ってきたんですよ」

「さっそくイカルスの真田さんに連絡を取ってくれ」

「はい」

「こだいさぁ〜ん!!島さんが……」

この幾分幼さを感じさせる声は機関室勤めで、戦死した元機関長『徳川彦左衛門』の息子(次男)の『徳川太助』だ。肩を借りているのは古代の親友で航海班長の島大介である。彼らは防衛用無人艦隊の管制室で任務についていた。無人艦隊は半自立タイプであるが、人の手による管制も必要と」していた。これは完全自立型AI搭載兵器研究がシャロン・アップル事件の影響で凍結された影響で、敵艦載機の空襲でコントロール室が被弾。その時に島が咄嗟にAIの抑制システムをオフにするスイッチを入れていたのが幸いし、敵艦隊に出血を強いることはできたらしいが……どの程度かはもはや確認無能であった。


「島!徳川!!」

「古代!やっぱりここに来ればみんなに会えると思ったよ……」

固く握手を交わし合う古代と島の2人。それは揺るぎない2人の友情を示していた。彼が到着したことで、地球にいるヤマト第一艦橋要員の全員がここに集結した事は明らかになった。佐渡酒造はホッと安堵の溜息をつく。

「皆、よく来た……さすが沖田艦長……あんたの`子`達じゃ……みんな揃っておる……」


(あれがヤマトの……。私とそんなに変わらない年齢に見えるのに……凄い貫禄)

そう。ヤマト幹部たちの大半は忘れられがちだが、まだ20代前半という若齢に過ぎない。これはイスカンダル航海時に16〜17歳だった訓練生を幹部乗組員にした連邦の采配によるもので、数度の航海を経た今でさえ、平均でまだ23から25歳の若さなのだ。階級も功績相応の地位であり、全員が佐官以上である。古代に至っては戦艦の艦長なので、将官である。フェイトは自分は彼らのように誇り高さや確固たる意志を持てるのだろうかと彼らの姿をみてそう自分に問いかけていた。



「古代」

「山南司令、ご無事で」

「レビル将軍からの伝言だ」

山南が古代に話しかけ、レビル将軍の意志を伝えた。それは政府が降伏しようが国民はそれを望まない。軍はゲリラ化しても抵抗を行うというものだ。古代も同じ思いだ。白色彗星帝国やボトルザー機動要塞などにも屈しなかった地球人の底力というものを暗黒星団帝国に教えてやらなくては。

「それで将軍は?」

「既に首都直掩地上部隊や海軍の生き残りを率いて、艦艇を奪還すべく横須賀へ向かわれた。ここに残っている面々は各地でバルチザン活動を行うメンバーだ。各地の部隊にもモールス信号で参加を呼びかけている」

「そうですか。司令はどうなさるのです」

「うむ。幸いタイタン基地に改アンドロメダ級の“しゅんらん”と第3艦隊、外惑星巡航空母艦隊が待機している。私はコスモタイガーで現地に向かい、しゅんらんらを率いて戦うつまりだ。場合によれば君たちに同行する」

「真田さんに通信がつながりました!」

相原の歓喜の声に広場にいる全員が通信機の前に群がる。真田志郎が何故イカルスにいるのか、その理由をしりたかったのだ。

「真田さん、古代です」

「しばらくだな古代」

「そちらの状況は」

「何の被害もない。小惑星だから敵も甘く見ていたんだろう」

真田はイカルスでの状況を説明する。地球本土より一足早く敵をキャッチしていたが敵の妨害電波で地球に連絡する事が出来無かった事、そして古代はヤマトの所在を問う。前の戦いの後に一時的に軍籍から外れたヤマトの行方は乗組員である古代らさえ知らない。知っているのは真田とレビル将軍のみだ。

「真田さん、ヤマトはどこにあるんですか?どこでどうしているのか……」

「……そうか。実は私もそれを待っていた」

「待っていた?」

「あるんだよ、ヤマトが!!」
「……え?」

「何だって!?」

「ヤマトが!?」

一同がざわめく。ヤマトが小惑星イカルスに秘匿されているというのか。うれしい知らせであるが……。

そこで通信が途切れる。妨害電波の周波数を増やしたのか、それとも電波妨害帯を当たりにミノフスキー粒子のようにばらまいたのか……。

「強力な妨害電波が……ミノフスキー粒子が濃いせいもあってこれ以上は」

「しかし、今はっきり、『ここで』といったぞ」

「古代さん、いきましょう!真田さんのところへ!!」

「そうだ。ヤマトがある小惑星イカルスに行こう!」

「でも古代さん、火星の向こうまでどうやって?移動手段がなきゃ、ヤマトがあっても宝の持ち腐れですよ?」

「それはあたしに任せて。駐屯地の地下に大統領用の高速連絡艇があるはずよ」

「よし行こう」

「みんな、聞いてのとおりだ。俺達はヤマトに乗るためにイカルスに行く!しかし駐屯地には敵兵がいるのは確実だ。俺達はなんとしてもヤマトにいかなくてはならない。みんなの力を借してくれ!」

古代は広場にいる兵士たちに呼びかける。古代たちを高速連絡挺までまで送り届けるという事に反対するものは誰もいなかった。普通の兵士はもちろん、空間騎兵隊や戦闘機搭乗員、ウィッチなどの様々な人員が古代に賛同してくれた。フェイト達や菅野もそれに加わった。一同は円陣を組んで互いを鼓舞すると、駐屯地へまっしぐらに向かった。みんな、任地からそのまま来ていたので、得物は様々。連邦軍制式のコスモガンやアサルトライフルはもちろん、ウィッチは九九式二〇ミリ機銃、二式二十粍固定機関砲(ホ5)、バズーカ砲や日本刀、はたまたGSh-6-30など……。因みにフェイト達はそれぞれのデバイスである。人類はまだ屈してはいないのだ。それを思い知らせるのが、今の彼らの行動原理であった。


ヤマト乗組員達は宇宙戦艦ヤマトへ乗り込むため駐屯地に隠されている大統領用の高速連絡艇を使うことを決意。他の兵士たちの援護のもと駐屯地へ急いでいた。ウィッチを除いても、兵士たちは携帯用のビームガンにあたる、コスモガンをあまり重視せず、前時代的な実弾銃を持つ者が大半であった。フェイトは何故最新兵器であるコスモガンなどをあまり持たずに旧型の兵器ばかりを使うのかと問うが、空間騎兵隊の生き残りの兵士は率直に答えた。

「そりゃ簡単なこった。人間が弾を防ぐ技術を研究し続けて防弾チョッキとかが作られたように、宇宙じゃビームガンを防ぐ技術は当たり前にあるだろう。しかし実弾を使う銃を防ぐ技術は向こうにとっては、とっくの昔に廃れた技術だからかえっていいのさ。それにエネルギー補給に専用のカートリッジとかがいるビームガンと違って、実弾銃の弾は規格さえ合えばいくらでも確保できる。ゲリラ戦にはうっけつけだ」

――そう。ゲリラ戦には専用のカートリッジや修理施設などを用意しないといけないコスモガンなどはあまり向かないいが、実弾は”いくらでも銃の換えが効いてどこでも弾が入手可能”という利点があり、実弾銃が全てコスモガンに代換されなかった理由がそこにはあった。

「おい、ガンショップだ。弾を確保しとけ」
「そうだな……あれを物色するか」

一行は無人となった地にあったガンショップで弾を確保する。この時代においても実弾銃の需要は衰えず、軍用・民間用問わず流通は続いていた。ガンショップが存在するのもそのためだ。弾はここでいくらでも持って行ける。銃も確保可能だ。ウィッチ達はベテラン勢は扱い易さを理由に、自分たちの時代の扶桑軍制式装備の『一四年式拳銃』とその弾の8ミリ弾を持って行く者がわりかし多いもの、威力重視でデザートイーグル50AEモデルと50AEマグナム弾を持っていく者もいた。菅野は西部劇を見た影響からか、S&W M500を持っていった。彼女はひたすら攻撃力重視なようである。ウィッチは戦闘時には身体能力を魔力で強化するので、反動は気にせずに撃てる利点をよく理解している――此頃には未来世界に行ったウィッチ達の間には、元の世界より遥かに多くゲッター線が降り注ぐ未来世界の環境に体が適応したのか、リンカーコアが生成され、魔力減衰が無い体となっていた者も1000人に一人の割合で出現するようになっていたので、あまり扱い易さを気にしなかった者も多い。ゲッター線が何故そのような所業を見せたのかは不明であり、早乙女博士亡き後の今となっては当分解明はできないだろう。ティアナも魔力増幅用のカートリッジが切れた場合の保険代わりにM92FSを携帯する。

「……ん、9mmパラベラム弾を入れてっと」

さすか扶桑陸軍で拳銃の訓練を受けていただけあって、弾を装填する動作は手馴れている。そしてセーフティを解除し、いつでも発砲できるようにする。

「フェイトさんにはこれがいいですね」

「ありがとう」

ティアナは戸惑っているフェイトに銃を手渡す。グロック17だ。フェイトはこの頃には戦闘機搭乗員としての知識は完璧に身につけていたもの、銃はめったに使わないので、その方面の知識は未だ疎い。そのためにティアナが自衛用の銃の選定をしたのだ。スバルは突進だけでは敵を倒せない事は承知しているので、前の戦いの際に銃火器の訓練は積んでいた。サイドアームはM1911を選んでいるとの事。一行は兵科別に最適な携帯火器を持ち出すと、予備の弾を持っていけるだけ持って行き、航空機関砲などの重火器は対掃討三脚戦車用に極力温存する方針で。駐屯地へ急いだ。途中、パトロール隊と遭遇する事があったが、連絡される前に全滅させた。その時、フェイトは初めて、人(異星人だが)を撃った。仕方が無いことなのだが、人を殺すという経験はバジュラなどの生物とはまた違った恐ろしさがある。フェイトは改めて異星人とは言え、人間を殺した事への恐怖を味わった。銃を持つ腕が小刻みに震え、息づかいも荒くなっている。

「ハァ……ハァ……、ハァ……」

「……フェイトさん、フェイトさん!」

「……ス、スバル……」

スバルの声にハッとなり、ようやく落ち着きを取り戻す。この点は前の戦いで正規の軍人となっていたなのはに遅れる事、8年で味わった恐怖であった。(銃で殺したことが無かったため)

――戦争とはかくも残酷なものである。侵略する側にもそれなりの理由はあるし、守る側にも大義がある。どっちが善で、どっちが悪などという単純なメガネで図れるほど、本当の闘争は甘くはない――


フェイトはその事を分かっていたつもりだった。だが、これで改めて実感した。生きる為には自ら銃や剣を取って戦わなくてはならない事を。




―― 同時刻 横須賀

ここには、前年度にかつてシブヤン海で果てたはずの戦艦武蔵の骸が同地より回収され、展示されていた。他の世界と異なり、武蔵はトリムを保ったままで搭載されていた弾薬の誘爆やボイラーの水蒸気爆発も一切起こさずに沈んだので、回収時にも沈んだ時のままで、その原型を保っていた。幸いにも埋もれていたため、ゼントラーディの攻撃にも被曝しなかったためだ。その後に一般人の嘆願に国が答える形で、引き上げられた。大和がヤマトに改造された関係もあり、当初はムサシ新造に当たるベースになる話があった。だが、歴史的価値から、マニアたちの保存運動が起こり、結果、武蔵はそのままの形で補修され、記念艦として保存されていた。奇しくも引き上げられた日は、ミッドチルダ動乱で扶桑海軍の武蔵が戦いを挑んだ日であり、軍部からは、『何かの運命だな』と評されたとか。暗黒星団帝国は武蔵をただの鉄屑とみたのかは不明だが、無傷で浮かんでいた。横須賀で蜂起した部隊はその中にいた。

「……さすがに敵もコイツまでは空襲しなかったか。まあ200年落ちの兵器なんてあいつらからみりゃ、ただの鉄屑だもんな」

三羽烏筆頭の黒江綾香はこの時、外見年齢16歳。武蔵の古めかしい風体が敵を安心させたのに皮肉を感じつつも檣楼内の第一艦橋にいた。かつてレイテ沖海戦時には猪口敏平艦長が指揮を取っていた場所だ。横須賀で難を逃れたウィッチ達や海軍関係者たちはここで作戦を考案していた。レビル将軍の呼びかけた通信は武蔵に設置されていた当時の通信設備(内装はタイムふろしきで包むことで復元していた)でも傍受可能であったので事情は把握している。


「少佐、どうします?」

「ドックに主力戦艦改級戦闘空母やウラガ級空母が係留されているはずだ。これを奪還する」

「しかし現状の部隊では……」

「やってみなければわからんだろう…!当たって砕けろだ。穴拭、行くぞ」

「ええ、このまま黙ってるんじゃ、『巴御前』の名が廃るってもんよ」

「……よし、志願者は30分後までに甲板に集合しろ。共に戦うものは残ってくれ」

と、いうわけで武蔵を隠れ蓑に、挺身隊を結成した黒江はドック奪還に挑んだのであった。しかし、やはり、敵の機動兵器に出くわし、苦戦を強いられていた。


「くっ、なんなのよあの3本足は!!」

智子は自分たちを猛攻する3本足の火星人を思わせる黒いボディーの兵器『掃討三脚戦車』の掃射に追い立てられていた。レーザー兵器の威力もさることながら、その重装甲は歩兵用火器を殆ど受け付けない。

「あれが敵の掃射3脚戦車ですよ!!」

「弱点はないの、弱点は!!」

「去年のヤマトの戦闘データによれば、足の付け根です!!そこさえ破壊すれば無力化できますが……近づけますか!?」

「よし、援護たのむわよっ!」

智子は掃射3脚戦車に突撃した。目標はあの映画に出てくる宇宙人の兵器のような細い足の付け根。魔力を使った日本刀の攻撃なら十分対抗できる。ウィッチとしての力を行使し、魔力の助けを借りて近くに落ちていた何かのクッション材の残骸をジャンプ台替りにして(筋力が強化されているのと、飛天御剣流の心得により、通常の人間より遙かに跳躍可能)飛んだ。

「はぁぁぁッ!!」

足のうちの一本に思い切り日本刀を押し当て、そのまま横にたたき斬る。さしもの暗黒星団帝国も、このような攻撃は想定外だったようで、割と簡単に斬れた。足を破壊されたバランスを崩した三脚戦車は何故かそのまま倒れ、沈黙した。どうやら動力機構か何かが内部で誘爆を起こして乗員を殺傷したらしい。

「やった……!!」

とは言った物、喜ぶ暇は無い。敵の数は圧倒的。対してこっちは少人数で、単位で言えば小隊にも達していない(2〜3個分隊程度)。連邦軍の軍人達はともかく、今回帯同してきたウィッチ達は若く、実戦経験が浅い者ばかりだで、ベテランはあたしと綾香くらいだしね……。(実際は2人とも、一度は第一線を退いているが……)

一体倒せた程度で浮かれていられない。そして案の定、断末魔を聞きつけたらしく、戦車隊がぞろぞろ現れる。

――敵は雑多な火器を持つレジスタンスの掃討にここまで徹底的に行うのか?いや、狙いはあたしたちじゃない……?

その瞬間、虚空から「声」が当たりに響きわたる。それはまさしく人類の希望の象徴と言える声だった。

『タァーボスマッシャーパァァンチ!!』

「この声は……兜か!?」

『待たせたな!カイザーのオーバーホールついでの試運転から、そのまま飛んできたぜ!!』

マジンカイザーの颯爽とした登場ぶりは、挺身隊を勇気づける。それだけ、スーパーロボットが強大な存在かがよく分かるという事だ。魔神皇帝は新たな戦いに臨む。仲間とともに。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.