「君はどうしてここに?今もミッドチルダの方で忙しいと聞いていたが……」
「ええ。ナチス残党との戦闘で地上の首都は制圧されちゃいましたし、残った本局のほうも地上のような奇襲攻撃や反管理局組織のテロを恐れて表立った行動を避けてるんで、介入はできないんですが、個人単位の動きなら黙認する傾向があるんで、私はそれを利用したんです」
そう。公式の『交流』公務でここを訪れているフェイトやスバルと違い、なのはは理由をでっちあげてこの世界へ来ている。そのため時空管理局の制服を着用せずに、私服の地球連邦軍制式軍服を着用して行動している。
「君もなかなかのやり手だな」
「ルーデル大佐から教わったんです。あの人からは色々と教えてもらったんですよ」
アムロはなのはが言ったなにかかしらの大義名分を作って行動する行為を第二次ネオ・ジオン戦争時にブライト・ノアがやったという「参謀次官の発言を録音する事」に重ねたのかほくそ笑んだ。それくらいしなければ混乱する時空管理局から了承は得られないだろう。組織にいても行動すべき時は行動するというロンド・ベルの精神はなのはにも受け継がれていると示された一幕であった。
〜〜♪
話しているうちにスピーカーから流れる音楽が切り替わる。今度はト○プガンのエンディングテーマ「マイ○ィ・ウィングス」である。選曲のセンスは完全に搭乗員の好みだろうと思うが、暗い雰囲気を少しでも和らげようとする通信車両を操縦する兵士の心使いなのだろう。
「ところで新早乙女研究所の事故って……本当にゲッター線の暴走なんですか?」
「ん?竜馬くんから聞いていないのか?」
「前会ったときはあまり教えてくれなくて……それで」
「俺も隼人くんから聞いただけなんだが、事故の原因はゲッタードラゴンにあるらしい」
「ドラゴンに?」
「ああ。ドラゴンは真ゲッターの完成後はエネルギー増幅装置代わりに使用されていたんだが、敵が襲ってきた時にメルトダウンを起こして弁慶くんと共に地下に沈んでいった。その時のゲッター線で竜馬くんと隼人くんを残して研究所の所員は全滅したのだ」
ゲッタードラゴンがなぜそのような事になったのか。ゲッター線はゲッタードラゴンに何を起こし、研究所の所員を消滅させたのか?その判明の糸口さえつかめないとアムロはいう。ただ隼人の証言によればドラゴンは昆虫のように繭をつくりながら眠りについたという。ゲッター線の性質からすると、『ゲッタードラゴンは真ゲッタードラゴンへ進化し、いつの日か蘇る可能性がある』というのが最近の学会での主流説なのだ。
「真ゲッタードラゴン……?」
「そうだ。便宜上、学者たちは地下のドラゴンをそう呼んでる。ゲッター線には何者も進化させる性質があるから間違いじゃあない」
ー―真ドラゴン。それは人類にとって希望足りえるのだろうか。車弁慶と共に地下へ眠ったゲッタードラゴンは何を思い、その進化の道を選んだのか。それはわからない。
「暗黒星団帝国のパトロール隊を補足!」
「気取られるとまずい。確実に撃破せよ!!」
ジャベリンが前に出て、敵と交戦に入る。4分もあればカタはつくだろう。
(ゲッタードラゴンが繭を……?無機物なのになんで……)
なのははドラゴンの事が気になっていた。なぜそのような事になり、繭を作ったのか?これもゲッター線のなせる業なのか。ゲッター線とはなんであろうか。その意志はどこにあるのか。度重なる人類の危機は人類に進化を促すためなのか?それはわからない。放棄された新早乙女研究所の地下では、は3形態の顔が突き出ている形の繭となったゲッタードラゴンが静かに『ドクン、ドクン』と鼓動を刻みながら進化を着実に進めていた。事故時、羊水に浸かる胎児のような態勢で地下に沈んでいったゲッタードラゴンは繭を作ったが、その中での変化は此の様なものであった。まず、ボディの装甲が肩を除きドラゴン特有の形状から真ゲッターと同様に変化して体長が大型化。次にヒゲのような口に当たるパーツがさらに鋭角化し、グレートマジンガーの頭頂部装甲のように変化する。腕のスピンカッターは真ゲッターよりもさらに鋭いレザーへ変貌していく。マッハウイングもより鋭角に、なおかつマントのように変化する。この急激な変化は進化と言っても過言ではなかった。本来の歴史では数十年の月日を要したであろう進化はこの世界では2年という急激な期間で行われた。それは何故か?
戦間期、というべきだろうか。その間に百鬼帝国を初めとする一派に、ゲッターロボに対抗出来る力とされる最終兵器がもたらされたからであった。そして、戦間期に隼人はゲッター線の導きのままに、一人の青年と出会った。
――西暦2201年頃、 日本 某地
新たな基地で新早乙女研究所の元所員であった「橘博士」と共にゲッター線開発が凍結された中でもゲッターと同等の能力を持つ合体型スーパーロボットを開発中の元ゲッターチームの神隼人は奇妙な2人組と出会ったが、そのうちの一人に戦友の流竜馬の面影を見出していた。
「……どういう事だ貴様!なぜ、流竜馬に似ている!?」
隼人は珍しく驚きの感情を顕にしながら目の前の流竜馬によく似た青年を問いただす。その青年は態度や立ち振る舞いなどは竜馬を思わせた。そして自らの名を言う。
「あんたが驚くのは無理はねえな、神大佐。俺の名は流拓馬、平行世界での流竜馬の息子だよ」
「竜馬の……子だとぉぉ〜!?」
その流竜馬によく似た青年は自らの名を流拓馬(ながれたくま)といい、平行世界での竜馬の実子と言った。確かにそう言われてみると顔立ちなどは竜馬にそっくりだし、態度も似ている。DNA鑑定でも完全に親子だと認定され、納得せざるを得なかった。
「俺達は真ドラゴンの導きでここに呼ばれた。ある奴を止めるために」
「真ドラゴンだと!?」
「そうだ。元の世界で真ドラゴンは俺達に言った。『奴』に人類の進化を絶やさなせないためにはこの方法しかないのだ、ってな」
拓馬は語った。自分はある世界で、早乙女博士の最後の遺産の『ゲッターロボアーク』を駆って、戦いを挑んだが、敵に圧倒されて窮地に追い込まれた時に真ドラゴンが現れ、危機を救われた。その時にドラゴンの意志が彼に話しかけたのだ。(彼は知る由もないが、その声はかつてドラゴンと共に眠った車弁慶の声であった)
「……それで俺達はこの世界に来た。ゲッターアークと共に」
彼らが持ち込んだ半壊状態のゲッターロボ「ゲッターロボアーク」は早乙女博士が生前に残していった最後の新ゲッターロボの設計図案を具現化したと言っても過言ではない。この世界の技術を加えれば、真ゲッター以上の戦力になるだろう。それでも太刀打ち出来ない敵とはいったい何者だろうか。
「その敵に対抗するためにゲッター線はドラゴンを急激に進化させたというのか」
「そうだと思う」
「……!」
隼人は唸った。それほどまでに強大な敵となれば現在建造中のプラズマが主動力の「ゲッターロボ號」では到底太刀打ちできはしないからだ。
「いやゲッターロボ號は別の形にしてでも、完成させるんだ」
「どういう事だ、拓馬」
「それが運命だからさ。俺は転移するときにゲッターを操ってきた者達を見てきた。親父やあんたを初めとする初代チーム、一文字號、橘翔、大道凱の2代チーム……。あんたにはこれから2代目のチームを集める宿命が待ってるのさ」
拓馬は隼人がこれから2代目ゲッターチームとなるであろう面々を集めることは宿命だと言った。そしてこの世界のでの若き日の父、竜馬を再起させるのは息子の自分の役目だともいった。
「そういえばお前が息子ということは……、あいつはいつ結婚したんだ?」
「いや、籍は入れなかったみたいだ。親父は俺の世界では結婚式も挙げないまま真ゲッターで死んでいったみたいし」
これは多少事実と異なる。実際には拓馬の母は竜馬の所に押しかけ女房のような形でやってきて、いつの間にか拓馬を身ごもっていただけである(拓馬の世界の竜馬が聞いたら`!?`と飛び上がるであろうが……)
「ゲッターアークの修理は終わるのか?」
「あと少しだ。例の暗黒星団帝国に対抗するために突貫で行ってるからな」
「2号機のパイロットはどうするんだ?俺と獏を入れても2人しかいないぜ」
「それは俺がやる」
「大佐が?」
「そうだ。お前らの世界ではどうだが知らんが、この俺は現役バリバリのパイロットだからな」
この世界の神隼人は未だ百鬼帝国と交戦中の状態で科学者として転身したので、拓馬の世界のように、肉体的問題は抱えていない。このことと、年齢の違いを並行時空での違いかと感心した。(拓馬達の世界での隼人は拓馬の時代から20年以上前のプロフェッサー・ランドウという敵との最初の戦いでパイロット生命を失い、更に、拓馬の時代では隼人は壮年期を迎えていたので、現役当時の青年時代の容姿を拓馬は初めて目にしたことになる)
「それと教えてくれないか、大佐。暗黒星団帝国とは何者だ?」
「この世界では人類は急激に宇宙に進出してるんだが、宇宙と行くと当然他の星間国家に出会うだろう?暗黒星団帝国は人類が出会った国家としては5つ目(きちんとした国家の体をなしているという点での事。イスカンダルを含めている)だが、地球は運悪い事に出会った国家のぼぼすべてが侵略国家でな。対応も自然と苛烈になる」
「へえ。面白いじゃねえか」
「おい、どこへ行く?」
「親父の所へ行く」
「竜馬の所にか」
「そうだ。不抜けてるっていう親父を打ん殴ってくる」
「おい、大丈夫か?」
「親父と一緒で、俺の体は不死身なんでね」
拓馬は竜馬を打ん殴ると言って出かけていった。竜馬は空手の達人だが、拓馬も鍛えられているので、さしもの竜馬もただですむまい。隼人は不思議な次元を超えた親子の出会いに感慨ひとしおであった。それから数時間後……
「神さん、親父を打ん殴ってきたぜ……」
拓馬は竜馬の肩を借りて立っている。どうやらそうとう殴り合ったらしく、2人ともボロボロだ。
「その様子じゃ相当やりあったな?」
「なかなか、俺のことをてめーのガキだって信じてくれなくてよ。大変だったぜ」
「たりねーだ。いきなり、あんたのガキですなんて言われて、信じるバカがどこにいんだ。おりゃ、まだ20代前半だぞ」
「ハハハ、竜馬。お前らは大した奴だよ」
「ああ、全くだ。どら息子が世話になるぜ、隼人」
こうして、並行時空からもたらされた大いなる力『ゲッターロボアーク』と、目覚めが『近い』真ゲッタードラゴン。両者は地球の守護者足りえるのだろうか。ゲッターチームはそんなこんなで西暦2202年を迎えるのであった。
――2202年に主要メンバーの殆どが赴いた形となった機動六課。本局で待機を命じられた八神はやてら他の面々は為す術も無く切歯扼腕していた。
「おいはやて!!なんであたし達が向こうにいけねえんだよ!!」
机を激しく叩いて憤慨するヴィータ。なのはやフェイトなどを除いたメンバーでは最も向こうの世界への思いが強い彼女であるが、なのはやフェイトが向こう側に赴いた以上、本局の防衛戦力のこれ以上の弱体化を恐れる上層部によって有力部隊の人員はほとんど幽閉に近い状態に置かれているので、どうしようもなかった。
「うちらを含めた有力な部隊は上にとっては貴重な駒や……人材のこれ以上の損失を恐れとるんやろ」
「クソッ!!何が、人材の損失を…だ!」
「だが、道理に適うのは確かだ」
「でもよ、茂さん!」
ナチス残党による首都制圧後も本郷猛の命で引き続きはやて達の護衛についている、仮面ライダーストロンガーこと城茂がいきり立つヴィータを諌める。彼はRXが愛車の一つであるライドロンで捕虜(ノーヴェらの事)を向こうの世界に送る兼、本郷への報告のために元の世界へ帰還した後はスカイライダー=筑波洋やZX=村雨良と共に別命あるまで、ミッドチルダに留まり、はやてたちの護衛を続けていた。
「動乱で管理局は混乱している。今の時点で動かせる戦力の過半数は向こうに行った事になる。お前が行ったらはやてはどうなる?」
「〜〜!」
ぶーたれるヴィータ。だが、城茂のいうことは事実だ。動乱を堺に、ナチス残党による制圧後のクラナガンはまるでナチス進駐時のフランスを想起させ光景が広がっており、この間など、動乱が休戦になってからという理由で、W号戦車やX号戦車などの往年の名戦車が武装親衛隊や国防軍の兵士たちが凱旋パレードをこれ見よがしに行っていた。規律の統制もきちんと取れており、一矢乱れぬ動きで行進している。子の様子は本局にも中継され、はやては敵ながらもこの光景に圧倒され、1930年代のドイツで何故国家社会主義ドイツ労働者党(後の世の蔑称のナチスが有名)が躍進し、当時の人々に支持されたのか、その一端を垣間見たと感じざるを得ない。
「なのはの奴、そんな状態なのによく向こうに行ったな」
「上層部へ提出する書類を偽装したんや。上手いもんや……私の印鑑を持ち出して判を押した上でコピーしておいた私のサイン貼っつけて出したんや。しかも出るための理由をでっちあげて」
「……上手いですね。それっていったい誰から教わったんでしょうか?」
「だいたい想像つく……あの人しかおらんで」
「誰です?」
はやての隣にいる人格型ユニゾンデバイス「リィンフォースU」の幼さを感じさせる声にはやてはため息混じりの声で答えた。なのはにそのような、大それた事を教えたのはただ一人。なのはが少女時代に出会ったという、別世界のドイツ軍人で、「スーツカの悪魔」とその名を轟かせているエース「ハンナ・ウルリカ・ルーデル」大佐。
「ハンナ・ウルリカ・ルーデル大佐。あの世界のカールスラント空軍のエース。なのはちゃんが尊敬しとる軍人さんの一人や」
「ハハン、ルーデルか。コイツは面白いな」
「茂さん、ルーデル大佐ってどういう人なんですか?」
「テメエにも分かりやすく言うとだな、1945年時点で、出撃回数2530回・被撃墜回数30回・戦闘による負傷5回・敵にかけられた賞金が日本円で20億円以上、撃墜スコアは戦車が519輌・装甲車・トラックが800台以上・火砲150門以上・陸戦ネウロイも戦車と同数を撃破、イージス駆逐艦1隻、上陸用舟艇で70隻以上・航空機9機・航空ネウロイ9体撃破、戦艦一隻撃沈の戦績を持つ史上最強レベルの魔女(ウィッチ)さ」
「ひゃぁぁあ〜すごいですぅぅ〜!」
城茂はリィンフォースUにも分かりやすくルーデルの凄さを解説する。ルーデルのこの常識はずれな戦果はなのはやフェイトの凄さを理解する彼女をしても、仰天させられるほどの凄まじいもの。時空管理局にもここまで個人で戦果を上げた者はいないだろう。同郷の通常ウィッチで限定して考えて、ルーデルと肩を並べられるに値するであろう戦果を上げているのはエーリカ・ハルトマン、ゲルトルート・バルクホルン、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ、ハンナ・ユスティーナ・マルセイユなどだが、それにしても扶桑やカールスラントは撃墜王多すぎである。
「その人から軍隊で自分の要求を通すための術を教わったんやと。もうどうなってるんや……」
はやては常識はずれな人材と出会ったことで人外へ足を踏み入れつつある親友に対して遠い目をする。それは彼女の苦労が増えるという証であり、胃薬が手放せない生活が当分続くという事でもあった。
「……話は変わるけどよ、この前、テスタロッサが話してたスバルやギンガの母ちゃんらしいのがいるって話はどうなったんだ?」
「それはアドルフィーネ・ガランド少将閣下に確認取った。彼女はフェイトちゃんに、『この子は数年前、放浪していた所を私が引き取って育てている。名前以外の記憶が無いと言ってたから多分転移の際に過去の記憶を失ったんだろう』と話してる。その時にフェイトちゃんは本人に会ってるんやけど、本人は凄い戸惑ってたって……」
それは数週間前、智子が持ってきた写真から判明した事実。フェイトはその真相を確かめるために、数週間前に、その人物のいるノイエ・カールスラントを訪れていた。その時に「クイント・ナカジマ」は生存こそ判明したもの、フェイトにとってはショッキングな事実も多く知らされた。対面したときの彼女は容姿が若返ったせいか、ギンガ・ナカジマとほぼ同じ(フェイト曰くギンガよりは幼い印象を受けたとの事)姿であり、当人は引きとってくれたガランドの娘として、育ててくれた恩に報いる証として、名も「クイント・N・ガランド」と名乗っていたと、はやてはヴィータに言う。
「昔の記憶が無い……!?そのことをスバルやギンガは……?」
「既に知っとる。ガランド少将が気を使ってくれて4ヶ月前に会わせてくれたんや。2人は、記憶がなくってもあたしたちのお母さんにはかわりないですから、ってと受け入れた。今じゃクイントさんにも少しづつやけど記憶が戻ってきとる。まあハッピーエンドや」
「そりゃ良かった。それでクイントさんは今なにやってんだよ」
「引きとられて一年後に空軍に志願して、その後に叩き上げで少尉になったみたいや」
(これ師匠に言ったらなんて言うやろか……)
はやてやスバル達はこの事をクイントの夫であったゲンヤ・ナカジマにはまだ言っていない。言ったらショックが大きいだろうからで、ガランド共々、事実をいうのに四苦八苦していた。これがはやての最近の心労のもとであったが、クイントとしても、『時空管理局では死亡扱い』であることや、体が若返っている事などが要因で言いにくいらしいのである。ナカジマ家がハッピーエンドを迎えるにはもう少し、時間がかかりそうだ。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m