――ゲリラ化した地球連邦軍。その活動は前途多難で、兵器の形式や年式はてんでバラバラ、部隊別に持ってきた装備は旧型も多く、黒江達はゲリラ戦の最中でも、帳簿作りに追われていた。

「一年戦争の時の兵器も相当数あるなあ。こうもバラバラだと、補給の手配が大変だぜ」

「まあ、寄せ集めの兵器を使ってる感は出てるわよ」

「しかし、合流してきた主力戦艦改級戦闘空母、艦載機がないんだって?」

「そうなのよ。ドックで艦載機降ろしてのオーバーホール中だったのを引っ張りだしたらしくて、艦載機積んでないんだって」

「慌てすぎだろ!空母なのに、艦載機無くてどうすんだよ……」

黒江は圭子の報告にがっくりしてため息をつく。合流してきた『主力戦艦改級戦闘空母』はなんと、艦載機を積んでないのだ。所属航空隊が収容されていない空母など、丸裸も同然な状態だ。それをどうするかが幹部らによって、協議されていた。そもそも、主力戦艦改級戦闘空母自体の数は希少なのだ。ウラガ級護衛空母やグァンタナモ級宇宙空母、ペガサス級強襲揚陸艦などの艦艇が空母戦力の大半を占める中、本来は戦艦として設計された主力戦艦級をアングルドデッキ付きの空母へ改装したものを再設計したのは、波動エンジン搭載艦と共に遠洋航海可能な空母を求めた用兵側の都合によるものだ。初陣のフェーべ航空決戦で成果を上げたが、その後2隻が戦没。修理できた6隻と別働隊の生き残りである2隻が艦隊として1944年で活躍したのは記憶に新しい。合流してきた空母は、メカトピア戦争末期のどさくさにまぎれて建造された新造艦。後期生産ロットの建造のために当初からスーパーロボットの運用も視野に入れて建造されたので艦の受け入れ態勢は他艦より整っているが、肝心の艦載機がなくては、宝の持ち腐れである。それを心配したのだが、その内の四分の一ほどはすぐに解決した。

「将軍、メイサー方面より、ゲッターロボの反応が複数きます」

「オーバーホールが終わったか。受け入れ態勢を整えたまえ」

「ハッ」

メイサー基地で一旦、整備を受けていたゲッターチームはゲッターアークと、ブラックゲッターを加え、艦に着艦した。ゲッターアークに関しては、事情聴取が改めて成された。


――艦長室

「すると、君は竜馬くんの別次元での実子……ということになるのかね?」

「そういう事になる。顔だって、親父に似てるだろう?」

レビル将軍はゲッターロボアークの操縦者の青年がゲッターチームの流竜馬の`子`に当る事にしきりに驚いている。ゲッター線がもたらした奇跡とでもいうのだろうか。そして真ゲッターロボ以上の力を持つという『神の戦士』ゲッターロボアーク。彼らがこの次元に来たのには何か意味があるはずだと、レビルの傍らにいる隼人が注訳を入れる。



――まさか、別次元の実子と共に戦うなど思ってもなかった竜馬は混乱気味で、甲児らに噂を立てられる事を心配し、アムロに愚痴った。


「まいったぜ。これじゃ甲児の奴に何か言われちまう……どうしよう」

「別次元での事だから、あくまで君自身には影響は無いが、とんだ災難だなぁ」

「人事だと思って、気楽に言ってくれるぜ……」

竜馬は何か誤解され、周囲にあらぬ噂を広がってしまう事を危惧するあまり肩を落としている。一旦、女性陣に誤解されると、誤解を解くのも一苦労なのだ。竜馬はひたすらそれが心配事であるらしく、彼にしては珍しく、肩をがっくりと落とした……。






――宇宙戦艦ヤマトの復活の時は今であるとばかりに、ヤマトクルーは仮死状態に偽装しつつ、小惑星に向かった事を通達されたパルチザンは、波動エンジン艦を援軍に送るかを議論していた。ISを含むパワードスーツ装備の宇宙運用の実戦データも欲しているパルチザンは、援軍にIS組や、それに類する装備を持つ、空軍三羽烏を神奈川の制圧が完了次第、送り出す計画を立てていた。彼女らにも通達は行っており、それぞれ準備を進め始めていた。


「ヤマトか……。海軍のお偉方が大艦巨砲主義で生み出したものが、今や地球の希望とはな……面白いもんだ。どこでどうなるか分らねーな」

「大和型って、なんでこんなに有名なの?昔はでかいだけだと思ってたけどさ」


「こっちじゃ、本来の目的に使われること無く、どれも悲劇的な最期を遂げたからかもな。栄華を誇りつつも、米軍の科学力と物量に葬り去られた、日本海軍悲劇の象徴なんだし」

黒江は自室に飾っているタ◯ヤが23世紀になっても販売している、350分の一スケールの大和型戦艦のプラモを使いつつ話す。大和型戦艦は自分たちの世界では、長門型戦艦でも対抗できない怪異へ対抗するために作られたように、この未来世界における過去の歴史では、アイオワ級やサウスダコタ級など、アメリカの新型戦艦を圧倒するために作られたが、大和は沖縄のために決死の出撃を敢行して果て、武蔵はシブヤン海で大和の身代わりになるかのように、航空攻撃の前に立ち往生し、本来の敵と戦う機会が得られぬままに、悲劇的な最期を遂げた事が、日露戦争からの数十年、『世界三大海軍』として、栄華を誇った帝国海軍の悲劇として、一般に語り継がれたのだ。帝国陸軍がその伝統を殆ど後世に残せなかった(完全な継承者は現れなかったという意味)のとは対照的に、帝国海軍はその後も20世紀後半の『海上自衛隊』、その後身の『日本国国防海軍』と、後継者達の手により伝統が息づき、それは地球連邦軍となっても脈々と受け継がれた。なので扶桑海軍の事を知っている自分たちにとっては、やりやすいとも語る。


「宇宙軍は『海軍』だ。敬礼の礼式に至るまで、海軍のそれが基になったから、海軍の船に乗っといて正解だったぜ」

「本来なら、陸軍、いや、空軍か……その軍人の私たちが『海軍』にいるってのも、不思議なもんね。今じゃ板についてきたけど」

「元来、宇宙軍自体が空軍の派生組織みたいなもんだったから、陸軍軍人も多くが宇宙軍へ転科したって経緯がある。その内に日本人を中心に、『宇宙は大海原である』って考えが広がったから、地球連邦宇宙軍が出来る時は海軍みたいになった。今じゃ、宇宙軍は事実上の海軍だし、あながち間違っちゃいないぜ」

「でも、今じゃ、坂本よりも船に詳しくなっちゃったし、あの子、相当悔しがってたわよ」

「あいつ、空母関連の知識はあるんだが、変なところに疎いからなあ」

「あの子は航空畑だし、そこはね」

「だな」

宇宙艦艇が当たり前のように存在する宇宙は、事実上の海。いつしか宇宙軍は、事実上の海軍と見なされるようになった。実際、地球連邦軍の宇宙艦は、船を浮かべたような形の宇宙艦艇が多い。智子や黒江は時勢が時勢なら、、『潮風とは無縁の、陸でゼイゼイいう』陸軍軍人で、自分達が志願する頃には、空を飛ぶ技術ができたから、航空部隊に志願しただけだ。それが空軍ができたために、空軍へ移り、いつしか宇宙艦に乗り込むようになり、いつしか、ユーモアを解する海軍軍人気質も身につけるようになっていた事に、二人は思わず苦笑する。

「箒達はなんて?」

「あいつらは納得してるよ。シャルは『ISの本来の運用想定場所は宇宙空間ですから、問題ないです』ってさ。ただ、今回の戦場は恒星間の宇宙空間だからな。通信機能の強化は頼んどいた」

「念には念を入れるのね、あんたは」

「ああ。…ん?携帯だ。わりぃ、ちょっと出るわ」

黒江の携帯電話が呼び出し音を鳴らし、電話を取ると、相手はのび太だった。のび太はちょうどこの時期、西暦2001年の冬休み頃で、太陽王の国での冒険を経た後だった。


「のび太か?お前、ドラえもんから聞いたけど、また冒険したんだって?」

「ええ。その話はあとでゆっくりしますけど、そっちは大変なんでしょう?僕たちも行きます」

「お、おい。ちょっと待て。お前、今回は鉄人兵団との戦争とはワケが違うんだぞ、人型宇宙人との戦争なんだぞ?軽はずみな……」」

「それなら問題無いです。僕たち、前にパピ君のピリカ星行った時、危うく銃殺刑にされそうでしたから。それに、唐の時代に行った時は牛魔王とガチでやりあったんですよ」

「そ、そうか。お前、実戦経験豊富だな……」

「犬の王国行った時は空爆されましたし、ポセイドンとは死闘繰り広げたんですよ?今更ですよ」

「7万年前に行った時は、遭難して死ぬ所だったろ」

「あれになったおかげで、ギガゾンビ捕まえられたんですから、万事オッケーですって」

「お、お前なぁ……」

のび太らはタイムマシンやドラえもんの存在によって、いくつもの大冒険を経てきた。そのため、『宇宙一、修羅場慣れしている』小学生だと自負しているようだ。黒江がのび太に指摘したのは、ギガゾンビの騒動の際、のび太はリニアモーターカーごっこから落伍して遭難、幻覚症状を来し、危うく死にかけた事だ。のび太は『その結果、タイムパトロールが助けてくれたし、ギガゾンビを捕らえるきっかけになったから、万事オッケーだ』と言い訳した。黒江は若干、呆れ顔だ。のび太たちの過去の大冒険の事は聞かされていたが、半信半疑だった。しかし、のび太の強い自信から、これは信じるしかないと悟ったようだが、底抜けに楽天的なのび太には負けるようだ。

「とりあえず、マシーンはこっちで用意します。ドラえもんもそばにいるんで、用意させます。それじゃ」

「あ、お、おいっ!……マジかよ……はぁ……」

「のび太はなんだって?」

「意気揚々で参陣するってさ」

「はぁ!?」

「おおかた、スネ夫あたりにラジコン造らせて改造するか、ドラえもんにスタークラッシュゲームを買わせて、セットの宇宙戦闘機を、材質変換器と天才ヘルメット、技術手袋で改造するんだろう。穴拭、タイムマシンを用意してもらうよう、整備班に言ってくれ。心配だから見てくる。ヒガシもつれてくから、言付け頼む」

「アイアイサー。武子に言っとくわ」




――意気揚々と参陣を宣言したのび太が心配らしく、タイムマシンを用意させ、圭子を連れだして、21世紀初頭の野比家に向かう。危機に俄然と挑むのが、あの五人である。保護者的なポジである身としては心配なようである。黒江は自室で残業をしていた圭子を強引に連れ出し、二人は着の身着のまま、ドラえもんが使っているそれと同じ型のタイムマシンに乗り込んだ。

「ち、ちょっと!黒江ちゃん、私、まだ着の身着のままなんだけどぉ!?」

「時間はあるから、タイムスリップ中に着替えろ!風呂はついたら沸かしてもらえ!」

ドラえもんの使っているのと同じ型のタイムマシンである(時空乱流対策で、機体周りの保護空間は強化されているが)から、タイムスリップには時間は多少かかる(感覚的には20分ほど)。これはこの『空飛ぶじゅうたん型』タイムマシンが、実用化後から10数年後には、一般流通していた初期のモデルであるからだ。野比家はこれをノビスケの小学校時代に購入し、改修しつつセワシの時代に至るまで使用している。タイムマシンは高度な時空間航行技術を要する必要上、並のMSやVFより高価であり、地球連邦軍も中々調達できない装備であった。パルチザンも確保を急いだが、当時の最新モデルは関係当局が抑えられている都合上、調達不能であったため、倉庫で埃を被っていた『空飛ぶじゅうたん型』を引っ張りだして整備して使用する羽目になったのだ。




――ちなみに、電話でのび太が言及した『スタークラッシュゲーム』とは、22世紀初頭のひみつ道具時代に流行した『宇宙探険すごろく』の派生に位置する体験型ゲームである。シューティングゲームの要素を取り入れ、ドッグファイトが体感できるため、その種のゲームとしては異例の売り上げを上げた。そのゲームで使われる宇宙戦闘機は材質変換器とビックライトがあれば実戦運用可能で、ドラえもんらはこれで冒険を乗り切った。だが、23世紀の戦闘はマッハ20以上でミサイルやビーム、パルスレーザーが飛び交う世界である。おもちゃに多少手を加えた程度で戦えるほど、戦闘機の空戦は甘くはない。黒江が心配したのは、その点だ。

――野比家

「おい、のび……って、壁紙秘密基地にいんのか。入るぞー?」

壁紙秘密基地に入ると、SFチックな宇宙戦闘機に天才ヘルメットと技術手袋で改造を加えているのび太、ドラえもん、スネ夫、ジャイアンの姿があった。意外に大掛かりかつ、本格的な改造で、レーザーを23世紀で使われているパルスレーザーへ強化し、エンジン系の構造を改造していた。

「あ、加東中佐に、黒江中佐。いらっしゃい」

「お、おう。意外に本格的だな……」

「ぼくがいるんですよ?実戦するには、それなりの準備しないと」

ドラえもんは宇宙戦闘機の外見にもかなり手を加えており、元の原形が残っていない。SFファンおなじみの『スター・ウ◯ーズ』のXウイングそのままの外見に改造していた。これは可変戦闘機や可変MSを目にした故、航空力学にも気を配った姿でないと高性能に出来ないと、ドラえもんが天才ヘルメットを通して意識していたのかが伺える。

「原型残ってなくね?つか、この姿……Xウイングじゃねーか!!」

「あ、わかります?」

「戦争が始まる前に、借りて見たんだよ。お前らのことだから、『ウル◯ラホーク1号』とか、『マット◯ロー』とか辺りと思ったが……渋いところ突くな」

「って、突っ込むとこ、そこ?」

圭子は若干、呆れ顔だ。しかし、全てが映画通りというわけでは無いようで、所々で地球メカらしい変更点がある。空母運用を重視したのか、メンテナンスハッチなどの位置は23世紀地球での一線級戦闘機と同じ位置だし、アビオニクスはコスモタイガーのそれと同じ作りになっている、着艦フックなどもついているなどの差異がある。

「ラウンデルは入れた?」

「いえ、まだですけど」

「入れといた方がいいわよ。宇宙じゃ遠近感がつかみにくいし、誤射される危険もあるし。ペンキある?」

ラウンデルとは、古来から地球で軍用機に用いられる国籍識別標識の事である。この文化は地球のように、内戦が続いた惑星特有のもので、ガミラスや白色彗星帝国のように、惑星がすぐに統一された国家では無い文化である。地球連邦やジオン公国、ザンスカール帝国、クロスボーン・バンガードなどの、地球発祥の国家は当然ながら持っていた。圭子は、ドラえもんらの作ったXウイングに地球連邦軍の国籍識別表記と、宇宙軍所属である事を示すマークを書き入れる。ランディングギアもきちんと作りこんでいるのは、スネ夫のアイデアだろう。

「何機分作るつもり?」

「五機くらいですけど?」

「もうワンセットくらい作っておいたほうがいいわよ。パーツ取りとかも考えると、予備機は必要よ」

「そういうもんなんですか?」

「そういうもんよ。タケコプターだって、長く使ってると、何機かは必ず壊れるでしょ?」

「そいえば、ピー助を日本に戻しに行った時は、のび太君やジャイアンのが壊れたっけ……念入りに整備したんだけどなぁ」

「どんなに整備しても、故障起こす個体ってのは必ず出るわ。その中からやりくりするのはけっこう大変なんだから」

圭子は扶桑海事変やアフリカ、未来世界での戦闘で経理方面も担当している。その経験上、予備機が無いと苦労しているため、予備機の確保やローテーション整備、部品確保に余念がない気質になった。ドラえもんにもその点から忠告したのだが、問題があった。素体になったスタークラッシュゲームはそこそこ高価で、ドラえもんの小遣いでは、月賦を払って買うしかないが、今のドラえもんの貯金では、とてももうワンセットは買えない。そこで黒江に買って来るように頼み、22世紀前半の日本へ向かわせた。(この時に黒江は釣り用具が買いたかったらしく、かなり渋った。だが、ドラえもん達のために泣く泣く我慢した)


「あ、ドラえもん。天才ヘルメットと技術手袋、もうワンセットある」

「ありますけど、何するんですか?」

「綾香に買いに行かせたから、Aウイングも作ったら?Xウイングだけじゃ、未来の映画ファンが怒るわよ」

「確かに」

――ハンドメイドで作る故、外見は好きにできるためか、圭子はここでスター・ウ◯ーズに登場する反乱同盟軍のもう一つの戦闘機を上げた。反乱同盟軍の機体なのは、『味方サイドの機体のほうが作りやすい』という身も蓋もないものだが、敵方だと外見上、誤解されるという問題も鑑みた結果であった。ドラえもんはアイデアを採用、黒江が4時間後に買ってきた、もうワンセット分の内、一機を素体に建造した。ここまで行くと、もはや悪ノリであったが、戦力確保のためには仕方ないとばかりに建造されたそれは、ドラえもん達の戦闘機として使用されていく。ある意味ではハリウッドのメカデザイナーの勝利だったのかもしれなかった。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.