ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部


――デザリアム戦役のやり直しに於いては、全期間通して参戦した者は意外に少ない。こIS学園のIS操縦者達では、鈴が本国の都合で一時的に抜け、ラウラは留守を守ることが課せられたのもあり、参陣はボラー戦役以後だった。更識簪に至っては、技能不足を理由に参陣は許されなかった。シンフォギア装者は黒江とのフィードバックの都合、調はデザリアム戦役に参加、全期間を戦い抜いたし、途中から他の全員が加わっている。また、アリカ・ユメミヤに代表される『オトメ』は、マスターの認証と、それが存在する世界でのしがらみが難点となり、全員は参陣していない。アリカの関係で、協議のためにやってきており、なおかつ『前世』でオリジナルの高次物質能力者であったのを思い出したり(厳密に言えば、『オトメ』ではなく、オリジナルの高次物質能力者『ヒメ』というべきだが)、その母親のレナ・セイヤーズの絶頂期がそうであったように、ある手段を介する事で、マスターの認証を介さずに能力を発動可能となったアリカ・ユメミヤのみが参陣した。厳密な意味でのオトメは彼女のみになる。聖闘士はというと、残留思念がフェイトに宿る形でアイオリアが加わった。聖域生え抜きの聖闘士は、死者である『彼』のみであった。ウィッチは基本的に、転生経験を持つグランウィッチのほぼ全員が、デザリアム戦役の全期間に参加したし、前史ではいない『面々』も今回はいたりする。



――パルチザン旗艦『カシオペア』艦内――

「まさか……、お前と会うことで、『前世』を思い出すとは思わんだ……。アリカ」

なのははその前世に当たる人物が、オトメ世界での『アスワド』という集団の首領『ミドリ』であった。黒江達が転生していた影響を受けたのと、アリカとの『再会』がその記憶を解き放ったようで、なのはの口調はその影響で普段より冷静な印象を受けるものとなっていた。

「でも、頭領。そんな姿になってたなんて思わなかったですよ」

「まぁ、不老ではあるが、不死ではなかったからな。どこかのタイミングで死ぬのは分かってた事だ……とは言うものの……」

「どうしたんですか?」

「いや、こう見えても、今は義理の娘がいる身でな。今となっては、娘には言いたくない事もある。特に、お前の世界に生きていた頃は、非合法な事をするのが当たり前だったからな」

なのはは、アリカと出会うことで開放された『前世』にあたる『ミドリ』の記憶の全ては『ヴィヴィオには言えない事もしてきたので、今となっては忌々しい記憶も多い』事を告げる。前世で会った時そのままのアリカと違い、『日本人・高町なのは』として転生した身としては、『生きてゆくためとは言え、民を率い、惑星エアルの倫理に照らし合わせて、非合法の事もしてきた記憶』は、けして誇れるモノではないと自嘲した。前世のその前、つまり前々生では、『日本人・杉浦碧』だった事もまとめて思い出したらしく、その辺りの事情は複雑らしい。

「あ、それとだな。人前で『頭領』はやめてくれよ?今のあたしは『高町なのは』で、『アスワドの頭領のミドリ』じゃないからな」

「分かりました。でも、舞衣さんや学園長とお知り合いだったんですね?」

「その辺は複雑と言ったろ?ややこしくてな。前々生で共に戦った仲だが……遠い昔だよ、今となってな。」

なのはの前世と前々生にあたる人物は、同じ姿を持つが、直接の血縁関係はない。従って、アリカが名を出した、オトメとしての『鴇羽舞衣』と、なのはが前々生で友人関係にあった(らしい)地球人としての『鴇羽舞衣』との間に、直接の血縁関係はなく、当人たちが辿った道も違う。その当人にとってはお互いは『前世』と『現世』に当たるらしく、アリカの絡みで通信越しに話す機会があった際には、その絡みで、『ほんっとに、色々ゴメン!』と詫びられている(舞衣の暴走が、その時の騒乱の混迷化の原因であったため)。輪廻転生というものを実感したのは、その時だ。

「でも、頭領。生まれ変わってからは、あたしと似たような事してるんですねぇ」

「お前と同じような『立ち位置』になったからな。思い出してみて、あの時のお前の気持ちが分かった気がするよ」

「頭領、その姿だと何歳ですか」

「あの時も言ったろう?あたしは17歳だ」


それは物語でいうところの『主人公属性』と言うべきもので、今ではなのはも持つモノだ。黒江のように、転生と努力で勝ち取れる属性でもある。(その都合、事変中の坂本の活躍を分捕ったが)と、ここでもっともな疑問を思い出す。17歳(実際は20歳超え)をアリカにアピールするおまけも忘れない。

「ん?待て。お前、ローブはどう発動するんだ?今回はマシロのやつはいないだろう?」

「いや、そのぉ、ややこしいんですけど……マシロちゃんの認証が無くても、『アルテミス』を介せば発動できるようになって。ミユさんに聞いたら、昔にお母さんが使った手段だそうで……」

「あ、アルテミスだとッ!?」

「知ってるんですか?」

「前々生の記憶が正しければ、ミユの前の主がそれと同じ名の『ヤツ』を行使していた。それが同一のものなら、お前の母『レナ・セイヤーズ』は……!」

なのはは引き出しの奥深くにあった記憶をどうにか引き出し、思い出した。その記憶から、ある一つの可能性を導きだす。それはアリカの母であった『レナ・セイヤーズ』と、アリカを見守っているアンドロイド『ミユ』の最初の主との間の『可能性』であった。その子であるアリカは……。なのはは『可能性』が確信に変わったらしく、大笑した。アリカはキョトンとしていたが、不思議な運命の巡り合わせを感じたらしく、『転生』という摩訶不思議な現象に感謝するなのはだった。




――格納庫――


「まさか、師匠からもらったスキルが役に立つなんて、思わなかったな……」

調は、カシオペアが降り立った基地から航空機を回収する任務を終えたところだった。黒江からフィードバックされた技能には、当然ながら『機動兵器の操縦技能』も含まれており、基地に置かれていたコスモ・ゼロを何機か回収した。黒江の記憶により、容易に操縦出来たのだが、計器レイアウトを一瞥しただけで、直感的に動かせるあたり、技能を受け取った時点で、黒江の操縦技術が円熟していた表れだった。

「アヤカさんからのフィードバックの効果はでかいってことだな」

「エーリカさん」

「こいつは熟練者向けの機体だからなー。零式宇宙艦上戦闘機って名前の通り、元は艦上機として大量生産するつもりだったが、計画が、次世代機のコスモタイガーの採用で棚上げされて、少数生産に留まってる機体だ。制空能力にパラメータ割り振ったぶん、搭載量は犠牲になってるから、少数生産のままなんだよな」

「でも、この飛行機、サブタイプが多いですよ?」

「ガミラスが攻めてきた初期の頃から試作が重ねられていたって言うからなー。採用がヤマトがイスカンダルに行く寸前だったから、コダイさん用に数機分が積まれただけだったけど、格闘能力に定評あるから、指揮官機扱いで生産は続いてるんだよなー」

コスモ・ゼロは元来、ガミラス戦役時の最新鋭艦上戦闘機だったが、格闘戦重視と運動性能重視で生じた『じゃじゃ馬』ぶりと高コストな構成が災いし、総合性能面で後発のコスモタイガーに劣った事から、主力機にはなれなかった。だが、コスモタイガーとて、元は月面及び、各惑星基地守備用の局地戦闘機として原案が作成され、紆余曲折を経て、総合性能が当時としては最も優れていた事から、ブラックタイガーに代わる艦上戦闘機として登板したという、扶桑においての紫電改に近い『裏の事情』を持つ。従って、新コスモタイガーは『戦闘機』としての、特に艦上機としての機能をアップデートしたサブタイプに当たる。エーリカと調がピストン空輸で持ってきたコスモ・ゼロの中には、ガミラス戦が本格化する前の試作機と思われる古いタイプもあり、機首周り以外は制式機と印象が異なる機体も4機ほど、日本の片田舎の基地に放置されていた。デザリアムの襲来で人員が捕まったのか、逃げ出したかは分からないが、格納庫に放置されていた。コスモ・ゼロは貴重な機体であるので、直ちに回収指令が下された。コスモタイガーは三座型、複座型などのサブタイプにこだわらなければ、トリントン基地のような田舎にも多くが配備されているが、コスモ・ゼロはその名の通り、極東は日本の基地にのみ配備がなされている。その事から、予備パーツ確保の意味も込めて、現存個体の確保は急務であった。

「なら、どうして、パーツの確保のために、何回も輸送を?」

「仕方がない。ゲリラ戦になるとさ、悠長に艦内工場で作ってるわけにもいかない時もある。そのいざという時のために、同型がある機種はいくつかバラしてんのさ」

カシオペアは外宇宙航行用の巨艦であり、ヤマトよりも高効率の艦内工場区間も有するが、ゲリラ戦では『いざという時の蓄え』も重要となる。戦場では予備資材の蓄えも必要となるため、資材置き場となる区間は満杯であることが望ましい。弾薬・機動兵器の予備部品なども確保するため、機動兵器の確保数は意外に少なく、少ない機体を一騎当千の人員達で回しているという、ジオン残党の気持ちが分かるような現況だ。

「どっかに空母がいればいいんだけどねぇ。パイロットも兵器も充足してるような精鋭艦隊所属の」

「そんな都合よく行きます?」

「前史じゃ運良くいったんだよ、それが。今回はそう都合よくいかないのはわかってるけど、空母が来てくれると、安定感が違うよ。この船は旗艦用途の戦艦だから、20機前後の機体しか積めない。直掩担当って感じだが、空母はバトルキャリアで60機前後、アームド級で120機以上は行けるからな」

「戦闘空母はダメなんですか?」

「戦艦と空母のいいとこ取りと思うだろ?あれはあれでいいんだけど、本式の空母にゃ劣るんだよ」

「そうなんですか?」

「戦艦と空母の両立にゃ大型化が必須でさ。バトルキャリアは元が主力戦艦のストレッチだから、限界があってね」

「確か……主力戦艦って、ラー・カイラムよりは小さいような?」

「後期型は大きくなってるけど、大抵は前期型ベースだしな」

――実のところ、主力戦艦級と呼ばれる『ドレッドノート級』の内、前期型は意外と小さく、ラー・カイラムより小さい。これは同級が単独長期活動をあまり想定していなかったし、艦隊で支援艦艇の補助の下、活動する想定になっているためだ。そのため、土星決戦でボカスカやられた戦訓から、サイズが大型化した。これは防御力の向上と航行能力向上の意図があっての事だ。防御力を追求し、波動砲を撤去した型も出たが、これは前線から好まれず、次の長門型戦艦の開発が進められた理由でもある。この時期に、繋ぎの意図もあって生産されている後期型の甲タイプはヤマトの量産型という体裁が強くなっており、アンドロメダの量産型というより、波動砲が収束タイプであるのもあり、ヤマトの量産型に近い。用兵側からも、ヤマトをアンドロメダの技術資産で再構築したと評価されており、後期型は意外に好評である。規格の関係上、生き残った前期型がバトルキャリアになるケースが多く、艦載機数は60機程度と、中型空母と同等程度の数で落ち着いている。パルチザンとしてはバトルキャリアでは数が確保し難いとし、ウラガ級、もしくはアームド級を欲していた――





バトルキャリアは数隻が合流したものの、艦載機数は三隻で180機程度。しかもパイロットは充足していない。アームド級やウラガ級と言った大型空母が欲しがられるのも無理はない。パイロットの充足率はパルチザン各艦でバラつきがあり、生身でも強い人員は重宝されている。特に『オトメ』なり、『魔導師』、『聖闘士』、『シンフォギア装者』と言った者は重宝されており、箒もISの操縦者というよりも『聖闘士』として戦っており、その窮状は切実だった。

「お前もまさか、23世紀で宇宙人相手にゲリラ戦やるとは思わなかっただろ?」

「いえ、なんて言ったらいいのかな?綾香さんの記憶持っちゃったんで、その辺は特に……。銃の扱いも体が自然に動いちゃいますから」

「そうか、お前は記憶と経験を共有しちまったんだったな」

調は黒江が一時的に成り代わった影響で、黒江の技能、経験値、記憶を共有する存在となり、連邦軍の武器や兵器を、一目見れば扱えるようになっていた。本来は華奢な体つきの調が、黒江が好むような大火力武器を扱えるのも、基礎的身体能力が黒江と同じ数値に向上しているためだ。

「存在そのものに干渉する形になってたみたいで、その影響だと思います。事後に私が違和感なく、綾香さんの……師匠のやってたバイトをやれるのも、それに周りが疑問に思わないのも」

「同調化だな。お前の存在はフィーネが宿っていた段階で薄くなってたけど、そこにアヤカさんが玉突き事故みたいな形で成り代わったから、お前が戻った時に同調現象が起こったと思う」

意外に知的な発言をするハルトマン。グランウィッチ覚醒に伴い、最終階級の『少将』であった時間軸の人格になっているらしく、青年期以後の面倒見のよさが表れていた。その事もあり、伯爵からは『可愛いじゃないの』と言われているが、前史での事もあり、伯爵の手癖にうんざりしているらしく、キレると剣を喉元に突きつけて『殺すよ?』と脅している。前史で青年期以後、散々に手を出されたらしいのがわかる。そのため、伯爵はちょっとビビっているとのこと。(因みに、ダイ・アナザー・デイ作戦の後、『あ、ミヤフジー!悪いけど伯爵がまぁた汚れてるみたいだから綺麗にしてやってくんない?』と芳佳に押し付け、芳佳の事務的な処理はがっくり感がある伯爵は『え、勘弁してくれぇー!!』と、芳佳の処理術を毛嫌いするようになった)

「同調化、か……それで私のギアとの同調率が上がったのかな?私は本来、翼先輩のパートナーだった天羽奏さんよりも低いはずだったんですが……」

「アヤカさんは神格だからなぁ。存在自体が聖遺物を超えてる。それと、お前が古代ベルカでお守り代わりに持っていたモノだが……あれはアリカの世界の至宝のようなもの、オトメの力の根源とされたGEM、それもアリカが母親から受け継いだ『蒼天の青玉』の別の個体から残った『遺物』らしい事が分かった。それも原因だろう」

「古代ベルカに、アリカの世界からの漂流者が?」

「向こう側に調べてもらったが、公的な記録には残っていない。おそらく、かなり古い時代の頃の事だったんだろう。中のナノマシンらしきものの機能は殆ど失われていたが、お前の身体を作り変えるのには充分な効果は残っていた。おそらく、古代ベルカが手を加えていたんだろう」

オトメ。正式には『乙HiME』と表記され、乙式高次物質化能力を扱うものとされる。元になったと思われる『高次物質化能力者』(HiMEと呼ばれた存在)の能力を模して、その世界の地球人が超常能力を科学的に再現しようとして生み出した存在であると推測されていて、理論的には、23世紀のナノマテリアル技術であれば、同等の事ができるとされる。その存在でも最強とされる『蒼天の青玉』の力を持った者のうちの誰かが古代ベルカに漂着し、古代ベルカがナノマテリアル技術を応用し、その人物が遺したモノを『秘宝』とし、独自の改造を施していたのなら、調のギアとの同調率がうなぎ登りで上がったのも頷ける。(体を活性化し、高次物質化に使われるはずのエネルギーで人体を強化したと思われ、その効果で人の領域を超えた。言わば、擬似的なマテリアライズ状態と言える)

「アリカの『マテリアライズ』状態に似た効果を永続的に得るため、ですか?」

「オトメのナノマシンは脆弱性があって、異性との性交渉で簡単に無力化する事が通達されてる。その脆弱性を古代ベルカはなんとかしたかったんだろう。聖王のゆりかごに頼らないために」

「古代ベルカは自分らの科学力でどうにかしようと?」

「たぶんな。しかし、それもオリヴィエの母親がオリヴィエを産んで死ぬまでの話だったんだろう。彼女が渡したのは、従者からその研究を聞かされていたんだろうな」

「つまり……」

「オトメの強力な力を解析し、聖王家を救う手立てにしたかったけど、代替わりで潰え、その遺産を、伝え聞いたオリヴィエが『お守り』として、お前に手渡したってのが本当だろう。宰相とかが変わると、前時代の政策を引き継ぐとは限らないしな」

ハルトマンなりの推測だったが、通常ではありえないだろう聖遺物との基礎同調率の上昇、アリカが変身した際に、調が感じたという共鳴の理由もこれで一応の説明はつく。

「なんだか不思議です。きっかけが無かったら、絶対に交わらないはずの世界のモノとヒトが互いに関係してるなんて…」

「これだから、次元世界ってのは面白いんだ」

これも運命のいたずらだった。なのはは前世でアリカ・ユメミヤと関係があり、宮藤芳佳は角谷杏として電話で振る舞い、圭子を手伝い、みほたちを呼び寄せる交渉に参加している。その様子はシュールである。その様子はこちら。




――芳佳の私室――

「あー、問題ないって。何だったら、西住ちゃんのおかーさんに頼んで、文科省をギャフンと……」

「会長、どちらからお電話を?」

「な〜に、気にしない気にしない〜」

意外と上手くいくもので、芳佳はごく自然に前世での仲間と言える『大洗女子』のメンバーと電話越しに会話をこなせた。幸いにも、黒江達のように、声帯を作り変えるほど、前世と現世での声色に差異がなかったため、言い回しを芳佳としてのそれから変えれば対応できる。

「西住ちゃんに変わってくれる?ちょっと遠いとこに出かけてるから、あんま長電話はしたくないんだ〜野暮用の出先で固定電話しかつかえなくてねー」

「わかりました。…西住〜、会長からお電話だ」

と、言う具合で事を進める。今の芳佳は立場的に、『宮藤芳佳と角谷杏の双方である』。どちらかでなく、双方の特徴を併せ持つ状態なので、この場合、芳佳は困った事になっていた。どっちでもあるという事は、軍人(士官)であり、女子高校生でもある、相反する立場であるという事だ。その為、大洗女子の制服に予め着替えており、それごと変身するつもりらしい。グランウィッチにとって、今や、自分の容姿はあまり意味をなさない。変身が程度の差あれ、可能となっているからだ。その為、『どの姿がデフォルトになっているか』程度の捉え方というのが、グランウィッチである。ある意味では、それ相応の責務も負っていると言える。前史では嫌った『汚れ仕事』も行い、みほたちを呼び寄せる芳佳。角谷杏として転生した経験がそうさせるのか、交渉術も一流であるところを見せる。上手い具合に、圭子が長電話を諌める声が聞こえてくる。みほの戸惑う声も聞こえてきた。

「やっほー、西住ちゃん」

「会長、今、どちらに」

「出先でね。日本には違いないんだけど、なんと言おうかねぇ」

上手くはぐらかしつつ、本題に入る。圭子からのメールで、『自分』は出かけていったとのことで、姿を消したタイミングで圭子が来たわけで、自分のグランウィッチとしての覚醒で『統合されたのだろう』とのこと。つまり『角谷杏』は、宮藤芳佳のグランウィッチ覚醒で、天命などが同じだったために、存在がより強い方に統合されたというややこしい事態である。芳佳にとっての前世が『現在進行中の歴史』であるのが、戦車道世界なのだと知った。(これにより、三足以上の草鞋は確定した)双方の人格が混じり合っている二重人格に近い状態だが、「芳佳」が自己の統合による消滅を望まない「杏」との共存を選んで統合するため、双方の特徴が半々、どちらかと言えば、杏よりの人格に生まれ変わり、双方の関係者が安堵する道を選んだ。それがグランウィッチとしての芳佳なのだろう。みほを「西住ちゃん」と呼ぶのが、何よりの証拠である。




――ドラえもんは今回も大忙しで、搭載する機体を増やすため、壁紙格納庫を増やしまくり、本来であれば、20機から15機前後しか積めないカシオペアの搭載数を倍以上に増やしているが、それもそろそろ限界があった。

「うーん。そろそろ足りなくなってきたなぁ」

「壁紙格納庫が?」

「ええ。ぼくの手持ち分はこれで全部になります。MSの高級機はスペース食いますね、やっぱり」

「ガンダムタイプもさ、使われる技術が上がると複雑になってったからな。Sガンダムが頂点か?」

「本体はネロとそんな変わりないんですけど、オプションが複雑怪奇ですから、あれ。Zとかmk-Vはまだマシですよ」

カシオペアには、優先して『高級機』が置かれていた。その全てがガンダムタイプで、Zガンダム以降の機体である。黒江が予め確保していた『Zプルトニウス』の他、『フルアーマーガンダムマークV』、『EX-Sガンダム』、『Zガンダム』、『HI-νガンダム』など。正規戦で使われる高級機ばかりだ。ゲリラ戦に向いているとされるVガンダム系統が一機もないため、他の系統(地上軍や空間騎兵系統)のパルチザンからは『贅沢な機体でゲリラが出来んのか?』と揶揄されており、その事もあり、専用武装の使用は控え、なるべくジム系と共通のライフルを使用するようにしている。(Zなどの可変機は例外)シャーリーが作業を手伝っていた。

「だよなぁ。そいや、前史じゃいなかった連中も増えてるな?綾香さんの差し金か」

「綾香さんがそれを望んだんでしょう。綾香さんはああ見えて、仲間がいる事を強く望んでますから」

「あの人、存外、トラウマ多いんだよな」

「ええ。智子さんいわく、『最初の時』に心から許せる相棒を持たなかったのが、レイブンズに自分がなる事を考えだすきっかけだそうで、多分、心からの友達が、ボクにとってのドラえもんズのポジションの人が最初の時にいなかったのが、綾香さんの不幸なんでしょう」

ドラえもんなりの考察は、黒江が抱えている多くのトラウマの真相の一端を暴いた。黒江は精神崩壊時、その苦しみを素直に打ち明けられる者がいない事に気づき、その苦しみに耐えかね、同じ部隊にいた経験を持つ智子と圭子に安らぎを求め、ついには歴史改変を始めたということを。黒江は二度の転生を挟んでも、このことは一貫しており、寂しがり屋であると同時に、誰かがそばにいて欲しいという心理が、黒江の行動原理の一つである事をドラえもんは知っていたのだろう。その心理の表れが調の姿になることなのだろう。

「なるほどなぁ」

関心するシャーリー。ドラえもんは一見して、黒江と調との間にある、『ないようで、実はある』共通点を、作業しつつ教える。

「綾香さん、立ち直った後はああ見えて、乙女願望強いから、今度、石神女子に入るとか?」

「ブハ!マジカヨ」

「終わりのほうが棒読みですよ、シャーリーさん」

「そりゃな。あの人、もう23だぜ?素の顔じゃ無理だぜ」

「ふーんだ。どーせ、私ゃ老け顔ですよーだ」

「うお、帰ってたんすか!?」

「今さっきな」

「あだだだ……グリグリ攻撃は勘弁してくださ……」

「ガキの頃、気にしてたんだよ、それ!」

「す、すんませ…あぎゃああ…」

黒江は箒の姿でシャーリーにグリグリ攻撃を行う。子供時代に気にしていた事だったらしく、何気に顔に怒りマークが出ている。

「今回は箒さんの容姿使ってたんですね」

「IS学園に行ってたしな。あそこにいくには手っ取り早かったし」

「あだだだ……」

「これでも老け顔なの、ガキの頃に言われた事あって、気にしてたんだぞ!これでも一応、乙女だった頃あったんだぞ」

「遠い昔でしょ」

「ぐぬぬ……ひ、一桁のころだし。心ハイツモ乙女ダヨー」

「あ、苦し紛れ」

箒の姿を取ったためか、コミカルさを見せる黒江。IS学園の制服を着込み、ポニーテールを白い布で纏めているのも、箒と同じである。箒の姿であると、コミカル成分が増加するらしい。(なお、当人曰く、風鳴翼の容姿の場合は、今のフェイトと被るところも多いため、フェイトと箒の中間程度のキャラで、マリア・カデンツァヴナ・イヴの容姿になった場合、タカオに似た残念美人になるとのこと)

「どうですか、それは」

「織斑千冬の弟に喧嘩売られたけど、アガートラームでどうにか鎮圧してきた。そいつのISがユニコーンみたいに暴走してさ。ったく、似てるのは声だけにしてくれ」

「ご苦労様」

「でも箒、愛されてるの解ったぜ?私が別人って分かった途端、斬りかかってきたしな」

「箒にはそれを?」

「言ったよ。あいつ、知恵熱だして寝込んじまった。初なやつなんだから」

「なるほど。で、艦内工場が動いてるみたいだけど、何を?」

「箒の仲間のセシリア・オルコットのISの改造だ。あのサイズじゃ市街戦には向かないし、歩行機能ないと、汎用性が落ちるしな」

「なるほど。あのブリタニアのお嬢様のか。使えるんすか?」

「光る物はあるが、どうにも射撃一辺倒でな。基礎訓練で、改造を終えたISで数日くらい生活を命じたよ」

セシリアは英国の代表候補生だが、ISでの接近戦になると、苦手ジャンルなため、ドッグファイトでは無力になる。その分野での実力も、シンフォギアを纏った黒江に一蹴される程度でしかないため、特訓を命じたという。ISのサイズがEXギアと同程度に小型するため、何事もそつなくこなすシャル以外は苦戦した特訓。セシリアは思わぬ特訓を課せられ、生まれ変わった愛機に戸惑いながら、休憩室で紅茶を飲んでおり、この時間では、セシリアのお目付け役と言う役目で参加した(実際はIS学園側のスパイ)楯無の『ミステリアス・レイディ』の構造解析と改造プラン構築が協議され始めていた。楯無はパルチザンがどういうものか、ひいては地球星間連邦という組織を見極めんとしており、当人としては煙にに巻いているつもりだ。だが、パルチザンには、ニュータイプのアムロがいるため、本心はバレバレ。スパイ半分、本心は妹のため、一夏のために動くつもりな事も既に見抜かれていた。また、楯無もパルチザンの気概を一目見て感じ取り、感銘を受け、パルチザンの一員として戦うことに偽りはないという考えも持っている。

(ロシアやIS学園の意思とは関係ない。私は……『刀奈』として……)

実家の当主としての名と別の本名で独白するあたり、本心では役目を演ずるのはお義理。地球のために命を賭けるという気持ちに偽りはない楯無。それは簪との思い出に由来しているのかもしれない。



――宇宙進出メンバーが選抜されるのは、今回はその数日後。宇宙にウッソ・エヴィンとシーブック・アノー(キンケドゥ・ナウ)がいることが分かり、第一目標は月面基地と定められた。その時にユニコーンガンダム関連の事件が起こるので、それをどうにかしつつ、ヤマト艦隊との合流を行うという事になった。可能性の獣が目覚め、赤い彗星が復活の狼煙を上げる時、アムロ・レイは終局の涙を見る――。



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