ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部
――黒江は、ダイ・アナザー・デイ作戦からの流れで、ロボットガールズにもパルチザン参加を指令し、彼女達はパルチザン旗艦に到着していた。彼女らは出自が未来世界でない者も多いが、ガイちゃんが引っ越して来たのを皮切りに、皆が未来世界に居を構え、黒江達が住んでいる地の近所はロボットガールズの本拠地と化していた――
「えー?あーやは出てるって?」
ガイちゃんだ。トリプルガイちゃんというべき姿が普段になっていたため、服装もそれだ。ロボットガールズの中では、黒江と馬が合うためもあり、ロボットガールズの代表的ポジションに収まっていた。(黒江があーや呼びを許すあたり、かなり気を許している証でもある)
「ああ、甲児君たちと一緒だ。今ならまだ戦闘に間に合うと思うぞ」
「本当?んじゃ、ひとっ走りしてくる〜!」
黒江の『素』に最も近い性格をしているガイちゃん。その性格から、スーパーロボット乗りの妹分としての地位をすっかり確立しており、鉄也とも良好な関係だった。また、剣と斧の双方を使える事もあり、安定的戦闘力は高い。また、前史での敗北から、体も鍛えたらしく、体つきががっしりとしている。ガイちゃんはそのまま、黒江達の援護に向かった。
――戦場――
『ガイキングアックス!!』
ガイちゃんは戦場に到着すると、いきなりガイキングアックスを投擲し、ジオン残党を蹴散らしながら颯爽登場した。そして、マゼラアタックの主砲の爆風で吹き飛ばされた調を救出する。
「オッス、久しぶり〜」
「が、ガイちゃん!?」
「にしし〜。間に合ったようだね」
「あ、ありがとう。助けてくれて」
「なーに、礼はこいつらを倒してからだよ」
意外なことだが、調よりガイちゃんのほうが背が高く、160cmはあるガイちゃんと調が並ぶと姉妹のようだった。ジオン軍残党は怯まずに銃撃を加えるが、鍛え上げたガイちゃんの前には通じない。ギガンタークロスが変形し、聖剣デュランダルになり、それを構える。
「しらべ。お前に守りたいものはある?」
「私は……」
「あーやは憧れた人、悔恨に嘘をつきたくない、生きる事を『大事な全てを護る』ことに賭けて生きて、神様になった。お前はあるの?」
「あるッ!私だって、師匠がいなかったら、私はフィーネに存在を乗っ取られてた。師匠は私の代わりに切ちゃんを……みんなを守ってくれた。私だって、守れなかった『モノ』がある!!だから、強くなるんだッ!どこまでも!!」
「その意気だッ!」
ガイちゃんはギガンタークロスを媒介に顕現させた『デュランダル』を、調は記憶を基に顕現させた『エクスカリバー』を構える。ジオン軍の中には、ツヴァイハンダーを担いだ時代錯誤的な者もおり、(ジオンの名家当主だったとの事)両者の鍔競り合いに発展した。二人とまともに打ち合えるあたり、ジオン軍にも超人がいたのが分かる。ジオンには『貴族』があった。コスモ・バビロニアほどにないにしろ、それらは貴族としての責務を負っていた。存在していたのは、ザビ家が消滅する一年戦争までの数十年ほどだが、サイド3には確かに存在した(マツナガ家やサハリン家などが該当する)。最も、ジオンはナチス・ドイツを模した制度や風習が多く見られ、総帥のジオンの公用語がドイツ語だった事から、ギレン・ザビは『アドルフ・ヒットラーの尻尾』と実父に揶揄されていたし、ジオン軍の風習、採用武器などもドイツを思わせる物が多い。その事から、少なからずが神闘士にもなっているなど、ナチス・ドイツの生き残りたるバダンの影響下にあったと匂わせる要素もある。その証明が二人が交戦している将校だった。
「うお、カッツバルゲルか!?こいつら手慣れてやがる!」
ガイちゃんも唸る、ジオン軍驚異の超人たち。北欧系の剣を携え、この時代では極めて珍しい、熟練した剣士。
一人は『ツヴァイヘンダー』、もう一人が『カッツバルゲル』を持ち、二人が顕現させた聖剣に当たり負けしない強度を見せつつ、お互いに風を巻き起こす。カマイタチのような鋭い剣風だ。ガイちゃんも、調も必死にジオン軍将校らに食い下がる。彼らの先祖が神聖ローマ帝国時代の傭兵である事に由来する『強さ』は、シンフォギアで身体能力が強化されたはずの調は愚か、ガイちゃんですらも大苦戦を強いられるものだった。まさに極限まで鍛え上げられた肉体は、下手な『超常』をもねじ伏せるというのに相応しい構図だった。
(この人たち、小宇宙も無しに、この力……!司令みたいな人って、ザラに居るの!?)
風鳴翼の叔父『風鳴弦十郎』は黒江をして、『白銀の上位と同等』と言わしめる肉体的強さを持つが、未来世界は俗に言う『世紀末』の世界と言えるほど、戦いに満ち溢れている。シンフォギア世界基準の超人がザラに居るのも、そのような世界であるからだ。自然と神と同種の力たる『小宇宙』に目覚める者も生じるような世界では、シンフォギアは『基礎値を引き上げる道具』でしかないという事を実感する調。黒江から引き就いだ剣技はあるものの、元々が素人であった都合、モノにしきれていないのが痛手であった(竜馬やドモン、竜崎一矢のように、素手で爬虫人類、鬼を撲殺できる力を持つ者もいるため、余計に実感した。)。
「くっ、反応が速い……お前たち、強化人間、いや、強化兵士か…ッ!?」
「差別的な物言いだな」
強化人間。ニュータイプ能力を人工的に引き出された者を指すのが一般的だが、一年戦争当時はニュータイプ能力を与えるというより、『本来、パイロットに向いてない人種をパイロットに仕立て上げる』ための研究だった。ある意味では一般的な強化人間よりよほど安定的な戦力になり得たのかも知れないが、研究が末期頃にはニュータイプと結び付けられていったために造られなくなってしまった。彼らは元々の高い能力をその研究の被検体になることで引き上げられ、シンフォギアを纏った調が押され、ガイちゃんでようやく互角という恐るべき戦闘力を見せた。正確に言えば、強化兵士とも言うべきだろう。
「くっ……シンフォギアを切り裂いた……!?」
「これは我が先祖が戦に赴く際に洗礼を受け、勝利をもたらした剣だ。そんなものを切り裂く事など容易い事だ」
シンフォギアは聖遺物をコアにした力だが、この世界においては、十字教が聖遺物を保有し、それを核に超常現象を起こしてきたばかりか、聖人が現在も生まれゆく世界である。ある意味では『聖人や使徒が戦いあう世界』の一つと言える。違いは聖衣があるかないか、聖闘士がいるか、くらいだ。
「くっ……だけど……私は……争いを起こすお前らに負けない、いや、負けられないんだッ!私に小宇宙があるのなら、極限にまで燃え上がえ!!私をセブンセンシズに目覚めさせてぇ――ッ!!」
それは黒江がセブンセンシズを燃え上がらせた記憶のフラッシュバックにより起こった奇跡。覚醒していない者がセブンセンシズに至るには、追い詰められた状況下と生存欲、強い気持ちをキーとする他はない。この場合は強くなりたいという切なる願い、黒江の記憶のフラッシュバックにより生じた生存欲と生存衝動、ジオン残党への怒りがそのトリガーとなった。
「そうか、貴様……!」
「そうだッ!聖衣はないけど、私は……『聖闘士』だぁぁ―ッ!」
響に似た感情のこもった熱き叫び。黒江との共鳴の影響により、調本来の性格からは離れたような熱き感情が迸り、それに突き動かされるようになった。その証明が歌の補助無しでの自己でのエクスドライブ発動であった。
『エクス!!カリバァァ――ッ!!』
「!!」
手に持つエクスカリバーが眩い光を発する。黒江のそれと比較しても遜色ない輝き。その剣は間違いなく、勝利を約束せし剣であった。
「あああああっ!!」
雄叫びと共に大上段から振り下ろし、将校を斬る。将校は強化兵士であるがため、一撃程度では死には至らないが、ダメージを負い、膝を付く。調は乾坤一擲の攻撃を繰り出したため、スタミナが底をつきかけ、肩で大きく息をするほど消耗した。
「なるほど……その爆発力、評価しよう。……さらばだ」
彼は即座に跳躍でその場を離れる。肩に血を滲ませつつ。
「華を持たせてくれた……?ハァ…ハァ……ダメ、今の私じゃセブンセンシズを一瞬でも発動させただけで……」
ひとまず撃退はしたが、エクスカリバーを杖代わりにしなければ立っていられないほど消耗した事に悔しさを滲ませる。
「……大丈夫だった?」
「ガイちゃん、血が……!」
「なーに、かすり傷さ」
ガイちゃんもデュランダルを発動させ、撃退したらしく、エクスカリバーと違う輝きを発する剣を担いでいる。デュランダルの霊格がギガンタークロスに宿っているため、剣はその面影を残す姿になっている。ガイちゃんはデュランダルに炎を宿し、一閃する『炎刃一閃』を今回も必殺技にしており、それを使ったのだろう。その際に頭突きもやらかしたのか、額から血が出ていた。調は兵士らの残した軍服を破って、ガイちゃんの額に巻く。包帯代わりという奴だ。
「いや、大丈夫だってば」
「ダメ、ばい菌が入るかもしれないし」
「ん、もう心配性なんだから」
ジオン残党の地上部隊は撤退を初めていた。マジンカイザーの力で機体を消耗したためだろう。廃墟と化し、崩れかけたビル街で二人は自らの鍛錬を誓ったのだった。
――黒江達もそれを察し、黒江は自分固有の攻撃で極めた。『ライトニングフレイム』だ。
「おっと、逃がすかよ!ライトニングフレェイィム!!」
光速の炎と雷の拳の乱打。逃げに入ったドップを全て消し去る。ガイちゃんが参戦した事は知っており、マリアの姿を保っているが、ガイちゃんはすぐに『黒江』と分かったらしく、黒江とお互いにサムズアップしてみせた。
『おし、帰還するぞー。のび太、ドラえもんもわかったなー?』
『了解』
なんと、ドラえもんとのび太は被弾なしであった。幾多の経験が成せる業か、のび太とドラえもんのスコアは五機づつであり、大冒険の経験が伊達でないことを示した。甲児の連絡で、放棄された陸戦高機動型ザクと、グフフライトタイプを一機づつ鹵獲し、持ち帰った。
――帰還後――
「ジオン残党は宇宙でも蜂起した。これを見て欲しい」
「シャア・アズナブル、赤い彗星……」
藤堂自らが説明を行い、シャア・アズナブル自らが『ネオ・ジオンの健在』と再度の宣戦布告を行うニュースがモニターに写しだされた。
「シャアめ、何のつもりだ?今更、ジオン・ダイクンの思想を語ったところで、それは自分がサイド3のジオニストを従えるための大義名分という事は分かってるだろうに」
アムロは冷ややかだった。シャアの本当の行動原理が自分との決着にある事を知ったからこそ、シャアの演説は空疎に聞こえる。『私は、父ジオンの下に召されるであろう!!』という一言も、周りを納得させるための方弁であるようにしか聞こえない。
「あれがシャア・アズナブル……。赤い彗星……この世界の最強の一角とさえ謳われたエース」
「アムロさんと戦うことだけが、あの人の生きがいなんだよ。ジオン・ダイクンの子供なのに、ジオンの名を背負うのを嫌がって、クワトロ・バジーナとか名乗ってた時期あるし。腕はいいんだけど、人間的にはアレだよ」
のび太が調に説明した。のび太は年代的に、アニメをスネ夫の家のビデオで見ており、シャアの素がクワトロ・バジーナとしての振る舞いであると理解していた。真意はどうであれ、戦いを巻き起こそうとするシャアに辛辣だった。
「それは同意するよ。カミーユさんから聞いたんだけど、クワトロ大尉、アムロさんにこだわる上に、ガンダムを倒したいっていう意外に単純な発想で動いてるし、戦後のプランないもんな、だからアムロさんに『世直しなど考えていない!』と言い放ったんだろうし」
ジュドーが続けた。アムロとカミーユは共に戦った経験があるからこそ、シャアに辛辣だった。それをカミーユから聞いたジュドーも、ハマーン・カーンを否定しておきながら、同じ事を行っているシャアには否定的だった。ギレン・ザビは戦後プランを一応は考えていたし、ジャミトフ・ハイマンもそれはあった。その為、マイッツァー・ロナからも馬鹿にされていたし、フォンセ・カガチすらも『若造の浅知恵よ』と一笑に付していた。だが、皮肉にもジオニズムがそれらを淘汰して生き残り、反連邦の旗印であり続けたのは、ジオン・ダイクンという偉大な指導者、ギレン・ザビという稀代のカリスマを輩出したためだ。シャアはカリスマ性はあれど、ギレン・ザビほどの政治ビジョンはない。ギレンは多くの内紛を抱えていたジオン軍を曲がりなりにも纏め、戦後も信奉者(エギーユ・デラーズのような)を出し続ける。シャアの指導者としての地位は父ジオンの名声と嫡子である血統、一年戦争の撃墜王としての栄光で持っているにすぎない。シャア自身も、信頼できる側近のナナイや、シン・マツナガ、アナベル・ガトーなどの信頼できる旧軍出身者のみに『私は所詮、道化さ、もしくはジオンに幻想を抱く者達の偶像さ、役目は連邦と闘い抜く事。 その後は私のどうこう言う話では無いよ』と述べており、戦いの中で死にたいという願望すら覗かせている。シャアは自分のクローン製造計画を掴んでいたらしく、その計画であったシャア・コンテニュー・オペレーションの書類に呆れ返っていた。デューク東郷の動きを止めなかったのは、彼を利用して、自分に成り代わろうとする野心を持つクローン人間を合法的に処分したかったからでもある。
「なら、どうして今更、ネオ・ジオンの復活なんて」
「周りがそうさせるんだよ。クワトロ大尉だって、本心はクワトロ・バジーナになって、連邦軍の飯を食って生きたいんだろうけど」
シャアはある意味では、ジオン・ダイクンの呪縛から逃れられない哀れな人間である。ジュドーはカミーユやアムロと違い、そこは同情していた。ハマーンもジオンの呪縛に囚われていたと解釈するジュドーは、アムロやカミーユと異なり、ハマーンやシャアに同情的だった。それはジュドーの若さの証でもあるが、アムロやカミーユと違う視点でシャアを見ていた。それがシャアにとっての希望の光でもあった。
「これが……ジオンの残光……。もう随分経っているし、残党の残党くらいになってるのに、どうしてあの人達は戦えるの…?」
ネオ・ジオンはハマーン派が掃滅され、今、ネオ・ジオンの主力は殆どがティターンズやギガノスと言った別組織からの流れ者で、連邦軍の軍縮騒ぎの際に合流した者も多い。その為、純粋なジオンと言えるのは限られた幹部と文官のみである。宇宙進出も夢物語である時代の人間で、尚且つ、全く別の平行世界の住人である調からすれば、その現況は疑問符だらけだった。のび太らがシャアの演説に冷ややかなのは、アニメでシャア亡き後の世界の事を見ているからだが、アメリカにいて、日本のアニメに元々疎く、尚且つロボアニメに縁の無かった調には、黒江との記憶があっても、疑問符が浮かぶ存在だった。第三者から見ても、ネオ・ジオンは継ぎ接ぎだらけのトタン屋根のバラックのような組織なのが丸わかりであるのに、反連邦の旗印として生きているのか。それを可能とするのはシャアのカリスマ性以外にもあるとしか思えない調だった。
――シャア・アズナブルは実のところ、古い時代の考えで言えば、本来は庶子であるはずの立場にあった。もし、正妻に子がいたら、スペインのカスティーリャ国のドン・ペドロとエンリケ一世のような立場となっていたはずとも言われていた。これはジオニストがひた隠しにする事実だが、シャア、つまりキャスバル・レム・ダイクンはローゼルシア・ダイクンという資産家の正妻の子ではなく、その二番目の妻で、元は妾であった『アストライア・トア・ダイクン』とダイクンとの間に生まれし子供である。ダイクンもジオニストが吹聴するような『非戦論者の聖人君子』ではなく、『抗戦論者かつ、誇大妄想と狂気に取り憑かれた危険人物』と言うのも、ジャミトフ・ハイマンは掴んでおり、シャアを小馬鹿にしていたのも、連邦内部では有名である。存命中のジオン・ダイクンを知るレビルも、ダイクンの思想は『シャアの言うものではないよ』と断じており、23世紀時点では、ジオニズムも衰退の様相を見せ始めていたのにも関わず、それにすがりつくスペースノイド、とりわけサイド3。しかしスペースノイドにとって、ジオンは特別な存在である。連邦の支配から脱するという夢を見させてくれた。他のスペースノイドを虐殺していたのにも関わず、ジオンは堅実な支持があるのも、連邦の怠慢が原因であった。調からしてみれば、『同じ宇宙生まれの人たちを20億以上殺しているのに、どうして支持するのか?』であるし、のび太やドラえもんなどの修羅場を潜り抜けた者に取っては『バカバカしい何か』でしかない。それがジオンが一年戦争で犯した過ちであり、ジオンのエースの一人で、荒野の迅雷「ヴィッシュ・ドナヒュー」でさえ、戦中に『ザビ家がシドニーを吹き飛ばした時点で、この戦争に大義はなくなった』と断ずるほど、彼らが認めぬ傲慢であった。かつての連邦軍のエース『ユウ・カジマ』の言葉を借りるなら、ジオンは『その傲慢さを償え!』と断じなくてはならぬ存在である。その考えのもと、ジオンと同質の存在に堕ちたティターンズを見限り、エゥーゴに転じた者も多い。パルチザンは一年戦争から続く、落ち武者達の最後の咆哮と言える第三次ネオ・ジオン戦争をデザリアム戦役と並行して行うこととなる。連邦政府と深い繋がりのあるビスト財団すらも敵に回す覚悟のもと。可能性の獣の物語と、『最後のジオンの輝き』の物語の幕は上がる。ジオン最後の作戦『ムーンクライシス作戦』の胎動とともに…。―
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